昨日は柄でもないことをしてしまった。
何が家族を信じてもいいんじゃない?だ。ふざけんてのか
俺が言えたことじゃないのは俺自身が一番よくわかってる筈だろうに
沙綾も知っているはずだから、あのまま沙綾がお前が言うなってキレてた可能性だってあった。そうならなかったってことはあの場でまた沙綾に気を遣わせてしまっていたんだと思う。
実に情けない話だ。沙綾だけが我慢する必要がないと言いながら我慢させてるとか滑稽過ぎて笑えてくる。
柄でもないことを言った羞恥と後悔と自分自身への叱責と嫌悪感が入り混じり思考が加速していく。
やっぱ俺何もしないで静観してる方が結果的に良くなるんじゃないか?何も変えられないか悪化するかしか今のところ成し得ていない。それなら行動するべきじゃないだろう、多分それがあいつらのために、ひいては自分のために一番良いのは最早疑う余地はないだろう。
これは前に考えた縁切りも視野に入れておくべきなのでは?
「暁斗ー!!明日一緒に文化祭に行こー!!」
勢いよく開け放たれたドア。入り込んでくる日菜姉。そして文化祭。
理由も察したので、ため息がこぼれる。
「毎回言ってるけど、ノックしようよ。」
何度も言ってるけど多分直す気ないよね。
「そんなことより一緒に文化祭行こうよ。きっとるんっ!てして楽しいよ?」
文化祭か。また明日なんて言ったけど、どんな顔で沙綾に会えばいいのだろうか?とりあえずいつも通り朝はやまぶきベーカリーに行くから、そのまま?いやそもそも沙綾に合わせる顔がないんだけど。
変にギクシャクするなら会いたくないなとも思ってる。
「いや、日菜姉。ライブ近いんでしょ?パスパレの方で練習あるんじゃないの?」
「あっ•••そうだった。でもおねーちゃんと一緒に回りたいし•••」
それは紗夜姉が嫌がりそうな気がする。
「あっ!練習午後からだし、ちょっとだけだけど行ける!」
時折日菜姉のこの他人を顧みない、自分に正直なところが羨ましいと感じる。
「暁斗も一緒に行く?」
「いや。一緒には行かないよ。そもそも女子校だよ?」
「一緒には?誰かと行くの?」
誰と誰と?と姉は興味津々
あれ?今のは無意識だった。花園と話してる時に頭が空っぽになるのと同じだ。ってことは大体俺が感じたことをそのまま••••そっか
「うん。やっぱ一緒には行けそうにない。」
「そっか。残念だな〜」
日菜姉には悪いけど、やっぱ俺沙綾のドラムが見てみたい。沙綾には世話になってるし、やっぱ沙綾には自分のやりたいことをやって欲しいんだと思う。
まあ、実際に文化祭に一緒に行くのは多分純と紗南だけど。沙綾と回るのはさすがに申し訳なさすぎるし、ハードル高い。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
翌朝、いつも通りやまぶきベーカリーへ赴く。
今日は沙綾のクラスで出すパンだけだ。店は休み。パンの種類はいつもより少ないため、俺が手伝えることが想像以上に少なかった。
手持ち無沙汰になったため、千紘さんの元へ向かう。
「手伝いますよ?」
「あら、暁斗君がうちの台所で料理するのは久しぶりね」
大体一年ぶりぐらいだろう。沙綾がいたし、俺が料理をする必要がなかったというのもある。
黙々と作業を進める。この一年で俺も背が伸びた。前より狭く感じる。
「暁斗君。昨日はありがとう」
まさか昨日のアレ聞かれてたのか?うわっ恥ずかしすぎる。
「いえ••••別に、大したことでは」
「そんなことないわ。多分沙綾に誰かが言わなきゃいけないことだったから」
「••••そうですか?」
「ええ。沙綾はお姉ちゃんだからって我慢しちゃう子だから、家族じゃない人がガス抜きしてあげなきゃきっとパンクしちゃうわ」
「大丈夫ですよ」
それこそ沙綾には香澄達がいるのだから。
「ええ。そうね」
どうやら満足のいく回答だったらしい。千紘さんはご機嫌そうだ。
時間になったので純と紗南を起こす。普段は中々起きないが、お姉ちゃんの文化祭だぞーと言うと2人ともすぐに起きた。紗南はともかく純もちゃんとお姉ちゃん大好きなのがよくわかる。
しかし、当のお姉ちゃんが寝坊助だ。ならば、純と紗南を投入しよう。
制服で下へ降りてきた沙綾の表情は暗い。
やはりあの程度じゃダメなんだろう。やっぱ俺じゃ無理なんだろう。香澄とCHiSPAと家族の言葉じゃなければ沙綾を動かすことはできない。いくら沙綾のことを知っていようが、所詮は外様だ。
なら、もういつも通りでいいだろう。
「おはよう沙綾」
「•••おはよう。ってお母さん1人で作ったの!?」
相変わらず母親の心配から入る。
「暁斗くんが手伝ってくれたから大丈夫よ?」
「•••久しぶりだね」
「まあな。とりあえず食べよう。純と紗南も待ってる」
純と紗南はお母さんとお姉ちゃんの方が美味しいとのこと。まあ当たり前だと思う。
「いってきます。」
「いってらっしゃい。あとで行くからね」
「純も!」
「紗南も!」
「多分俺も行くぞ」
「うん。わかった」
ドアを開けると何やらヒラヒラと落ちるものが。これは、手紙か?
ガタンッ!
•••••え?
隣を見ると具合が悪そうな千紘さんが
「千紘さんッ!?」
すぐ近寄り様子を伺う。多分貧血だとは思うんだけど、千紘さんの場合怖いな。ともかく肩を貸して椅子に座らせる。
「お母さんッ!?」
当然沙綾も心配する。
「純、紗南。お父さんを呼んできて。千紘さんは俺が見とくから沙綾お前は学校いって大丈夫。」
純と紗南はすぐに父親を呼びにいった。••••沙綾?
「私も残る。」
「沙綾お前•••」
本当にタイミングが悪すぎる。
「私だけ楽しく文化祭なんて無理だよ。」
千紘さんがこうなったのを見てしまった以上こうなるのは仕方ない。
でも多分大したことないし、検査だけで終わるだろう。そこからならライブは十分間に合うと思う。
皆で車に乗り病院へ向かう。千紘さんと沙綾と純と紗南を下ろし、俺と沙綾のお父さんは花咲川へとパンを届けにいく。
正門前に、制服を着た少女達が複数人。沙綾のクラスメイトだろう。
早速パンを渡す。
「重いから気をつけてね」
しばらくして香澄が出てきた。
「あっ、あの!沙綾は•••」
「沙綾ならお母さんと病院だよ。」
「あっ君、どういうこと?」
「妻は昔から貧血気味でね、娘が病院に連れていくって聞かなくて」
その後香澄からいくつか伝言を頼まれた。
「あっ君。沙綾のことお願い!」
どういう意味だ?伝言を伝えることか?沙綾を文化祭に行かせることか?後者は俺だけじゃ力不足だ。
その後2人で車に乗る。行き先は勿論病院だ。
さっき沙綾から精密検査もするが恐らく問題ない。と連絡があった。
でも、文化祭に行く。とは言ってない。
「暁斗くん。沙綾は•••?」
「やっぱ千紘さんのことが心配なのと、純と紗南だけにしておくわけにはいかないってことだと思います」
つまりこの車が病院に着いたら問題無いと思う。千紘さんや純と紗南が沙綾を文化祭に送り出すと思う。
「そうだね。ところで暁斗くん、昨日のアレなんだが」
「••••聞いてたんですか?」
「君は部屋の外にいたからね。聞こえてしまったよ。」
こんなことなら沙綾の部屋に入ってから言えば良かったな
「親としてお礼を言わせてもらうよ。ありがとう•••娘の心配をしてくれて。でも、1つ言わせて欲しい」
何だろう?
「あの言葉は間違っていないし、多分沙綾もわかってくれている。
今頃妻も同じ言葉を沙綾に伝えていると思う。
でもね、君は自分のことを勘定に入れてない。沙綾が一番気がかりなのは妻でも純と紗南でもない。暁斗くん、君なんだよ」
「•••••え?どういうことですか?」
「沙綾がバンドをやってた頃は君がよくウチに来てくれてただろ?
自分がまたバンドを始めたら君が••••沙綾は多分僕たちより君に申し訳ないと思っているんじゃないかな?」
「いやいや、それはないんじゃないですかね」
「どうしてそう思うんだい?」
「元々好意に甘えてご飯を頂いてる身ですし、手伝いはその対価ですから」
「時給で考えると明らかに君が損してるんだけどね」
「•••そうでしたっけ?」
「そういうところを沙綾は気にしてるんだと思うよ?」
つまり沙綾は俺が損をするから、バンドをしちゃダメだって思ってるってことなのか?千紘さんや純と紗南より俺なんかのことを気にしてるのか?
つまり────俺が沙綾の邪魔になっている?
沙綾視点を書くのは作者のメンタルがズタボロになりそう。
主人公と沙綾はお互いのこと考えてすれ違うある意味両想いです。
設定開示するなら誰のがいいですか?
-
友希那
-
こころ
-
香澄
-
おたえ
-
その他