書いてて思う。設定少し変えたら鈍感系ラノベ主人公やれるわこいつって。
山吹沙綾との付き合いは約2年になる。
毎朝山吹ベーカリーに行って開店の手伝いをして、一緒に朝飯を食べて、2人で学校までの道を歩く。高校生になるまでは、放課後や休日に、店が忙しい時や沙綾がいない時に店に入っていた。
朝は朝ご飯がもらえてるし、放課後や休日は家から抜け出す口実が作れたから寧ろ感謝していたし、それなりに楽しかったから俺の負担について考えたことがなかった。
それも沙綾にとっては良くなかったのだろうか。俺から見たらきちんと対価を貰えてるのだが、沙綾から見たら無償の奉仕に見えていたのかもしれない。
この状況を解決する方法は多分いくつかある。
1つ目は俺が給料をもらうこと。これは個人的には微妙だ。既に対価は貰っている。これ以上は己には過ぎたものだ
2つ目は沙綾に俺が現状に不満を持っていないことを伝えること。
そして3つ目は...
「沙綾の前からいなくなることを考えてるなら、それは大間違いだよ?」
...どうやら沙綾の父さんにはお見通しだったらしい。
「沙綾は間違いなく自分を責める。君が沙綾を思って選んだ行動が沙綾を苦しめることになる。君はそれをわかっている上でそれを選ぶ気かい?...親としては看過できないね」
正直に言ってしまうと、まるで理解できない。俺が居なくなって沙綾が辛い思いをするっていうのがどうしても想像出来ない。
俺なんて所詮姉の劣化物でしかないんだから、いなくなってもそんなに悲しむことじゃないだろう。代わりなんてそれこそ幾らでも居ると思う。
俺とてこの場所に居られなくなるのは惜しいが、沙綾の負担になっているなら居ない方がいいと思う。
でも、それだと沙綾は悲しむらしい。いや?どうだろう....そこまで必要にされてると自惚れてはいない。
「それにね、妻も純と紗南も、勿論私も、そして...沙綾も君に居なくなって欲しくないと思っているよ」
この言葉を信じ切ることはできない。
でも、本当だったらきっと嬉しいことだと思う。...それに、折角姉達が関係ない空間にいられる現状を手放すのは勿体無さすぎる。
加えて、沙綾といるのは特に嫌いじゃないから、消えるべきかどうかは必要になってから考えれば良いのかもしれない。
そんな俺の考えなんてお見通しだったのだろう
「うん。今の君なら大丈夫そうだ。....沙綾のこと任せたよ。」
「...はい」
もうすぐ病院へ着く。今日は飛行機雲すら1つもない快晴だ。
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「沙綾はとっても優しい子。だからその優しさを自分にも向けてあげて」
「無理だよ」
「沙綾なら出来るよ。1人じゃないから」
「おれもいるよ!」
「さなもいるー!」
「でも...」
....なんとも微妙なタイミングで着いてしまったようだ。どうしよう。この空気を壊して、あの2人の間に入っていける気がしない。
「あっ!にーちゃんきた!」
「おーい!こっちー」
純と紗南に気づかれてしまった。
これからは2人とかくれんぼするときすぐ見つからないようにどうすればいいか考える必要もあるかもしれない。
だが、2人のおかげ(?)で空気が変わり、沙綾の元へ向かえる。
「パンを届け終わったし、文化祭も順調らしいぞ?さっき香澄から連絡があった」
「うん....そうらしいね」
どうやら沙綾にも伝言があったらしい
「それと伝言。『沙綾のこと待ってる。たとえ今日じゃなくたっていい。いつまでも沙綾のこと待ってる。』だってさ。」
「••••」
手紙のようなものを握る力が強くなる。あの手紙香澄からだったのかな?とにかく意外と効果覿面だったらしい。
「俺からの伝言は••••そうだな、『沙綾がドラム叩くところが見てみたい』でいいかな?」
「あぁそれと俺のこと
とりあえず言いたいことを先に言っておこう。多分これでいい。
なにかが琴線に触れたのか沙綾の顔が一瞬強張り、肩を震わせて、顔を上げる。──────そして、
「なにそれ...?暁斗はそれでいいの?私の代わりに店に入って、自分の時間を私なんかのために使って、それで楽しいの?私が暁斗に損させて楽しめると本気で思ってるの?ふざけないでよ!!」
流石沙綾の父親だ。沙綾のことやっぱよくわかってるんだな...
俺沙綾にそれなりに大事に思われてるってことで良いのかな?だとしたら...うん。ちょっと嬉しいかも。
これなら、多分俺が特に損をしてないことを伝えればいいだろう。
「あのさ、沙綾は勘違いしてるよ」
「え?」
「その....さ、俺家族と仲悪いじゃん?だから、沙綾といる方が楽だし、その...なんつーか、好きだからさ、損だ負担だって考えたこと全然なくて....」
「暁斗...?」
「だから、俺のこと気にする必要はないよ。沙綾はやりたいことやればいい。というか、俺が沙綾にドラム叩いてほしいし、見てみたい。それじゃダメか?」
我ながらこっぱずかしい事口走ってんなおい。
ああぁぁぁ!!もう間違いなく黒歴史だ。自殺もんだ...やばい。死にたい。脳内から記憶を抹消したい、
「あははは•••すごい恥ずかしいこと言ってる自覚ある?」
柄に合わないことやってんのは自覚してるからあまりほじくり返さないでほしい。
「それに皆見てるのに...すごいね。色々と」
「あっ....」
やっべすっかり忘れてた...!何という羞恥!失態!純と紗南はともかく、千紘さんも沙綾の父さんもニヤニヤしながらこっちみてる。
「もうダメだ。お終いだ。殺してくれ.....!!」
「あは、あははははっはひーっお腹痛い。あっはっは...ふぅ...」
「ちょっと笑いすぎじゃない?」
「ごめんごめん•••お父さん、お母さん、純、紗南。それに...暁斗。ありがとう。私、行ってくる」
「「行ってらっしゃい」」
「姉ちゃんがんばれー!」
「がんばれー」
なんか色々やらかした気がするけど、無事に沙綾の背中を押せたようだ。それだけは良かったと思う。願わくば沙綾の記憶からさっきの言葉が消えることのみ。
「いってこい。後さっきのは忘れてくれ!」
「あはは、それは無理〜」と声を上げながら、彼女は走る速度を上げていく。
...マジで頼むから本当に忘れて欲しい。香澄とかに知られたら、きっとそこら中に知れ渡ってしまう。どうにかしてそれだけは避けねばなるまい。俺も沙綾を追いかけて交渉に入る必要があると思う。
「あらどこに行くつもりなのかしら?」
しかし呼び止められてしまった。
「どこって沙綾を追いかけて花女へ...」
「それなら僕たちも行くから一緒に行こう」
なんか逃がさないって意図を感じるのは気のせいか?
「えっと••••もう帰って大丈夫なんですか?」
「もう少ししたら検査の結果が出るんですって」
なんか2人とも有無を言わせない感じがするのは何故なんでしょうか
「さて、さっきのはどういうことなのかよく聞かせてもらおうか」
なんでこんなニヤニヤしてるのこの人たち
「...はい?えっと俺の家族より山吹家にいる方が居心地がいいってことですけど」
「またまた〜そんなこと言って本当は沙綾とどうなの?」
「普通の友人ですけど。って皆知ってますよね?」
結局この要領を得ないやり取りは、千紘さんの検査が無事終了し、花女に着くまで続いた。
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花女の体育館に着いた時には既に曲が始まってしまっていた。最初から聴けないのは残念だと思う。でも、幸い序盤のようだ。
沙綾は本当に楽しそうにドラムを叩いてる。あんなに楽しそうな沙綾を見るのは、多分一年ぶりだろう。ほんとに良かった。
というか、曲昨日送られてきたばっかだよな?素人だから断言はできないけど、それであれだけ叩けるって沙綾相当凄かったのか?あるいは、今までも未練タラタラで実は家で時々ドラムの練習してたとか?
というか、そうであってくれないと俺は...
「にーちゃん、どうかした?」
...ッ!!あれ?俺は今何を考えてたんだ?折角沙綾がドラム叩いてるのが見られるんだから、今こんな無粋な事を考える必要はないだろう。
「なんでもないよ。純と紗南のお姉ちゃんはすごいなって思っただけだよ」
多分上手く笑えてない。だから純と紗南を手元に手繰り寄せる。顔を見られないように、考えてたことが伝わらないように...
やがて演奏が終わった。
「「「「「私たち5人で──Poppin’Partyです」」」」」
Poppin’Party──可愛らしさを感じさせる彼女たちのバンド名。
それは俺にとっては大事なものを壊してしまう死神の名前でもあった。
遂にポピパが結成されました。タグにポピパを追加します。
感想として沙綾をタグ追加しないのかと聞かれたのですが、追加していいものなのでしょうか?皆さんの意見を聞かせて欲しいです。
個人的には山吹沙綾でタグ検索した際に、この小説が検索妨害にならないのか不安です
設定開示するなら誰のがいいですか?
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友希那
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