もし氷川姉妹に弟がいたら   作:タクティくす

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最近紗夜を殆ど出していないことに気がついた。
設定上凄く出しにくい人って理由が大半です。

紗夜は多分、主役向きのキャラだと思います。


家族らしさ

Poppin’Party が結成された文化祭から数日が経った。季節も早いもので、もう6月である。あれほどまで暑い暑いと思っていたが、梅雨の蒸し暑さはそれを圧倒的に上回る不快感だ。

 

「...こっちはいいから、大人しく寝てな」

 

「....はい。申し訳ありません。失礼します。」

 

 

俺はというと、季節外れのインフルエンザにかかってしまった。

 

何故こんな季節に?と自分でも思っているが、かかってしまったものは仕方ない。それに熱はあるし、頭痛は酷いし、悪寒もするし、膝や腰が痛い。起きているのもしんどい。1人で割と近くにある病院へ行き、帰ってきて、学校とSPACEに連絡を入れただけなのに、既に限界だ。どうにかこうにか自分のベッドの上に転がり込んで、目を閉じた途端に、意識が遠のいていくのが何となく自分でもわかった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

────ふと、目が覚めた。────

 

気がつくと自分は近所の公園にいた。インフルエンザになって、寝てるはずなのにだ。いや、仮に寝ていなくても公園に行く理由はない。

どういうことだ?自分はいつのまにか夢遊病になっていたのだろうか?だが、その割には体が軽い。まるですっかり良くなったように感じる。

 

訳の分からない荒唐無稽な状態に混乱していると、薄浅葱色の髪をした。小さな少女が2人と黒髪の少年が公園に飛び込んできた。目は3人とも翡翠色だ。

どこか3人とも見覚えがあるような気がする。

 

「ひな!あきと!きょーはかくれんぼしよ」

 

「うん!おねーちゃん」

 

「きょーはまけないもん!」

 

楽しそうに遊んでいる。随分と仲が良さそうだ。

 

 

「「あはははあはは」」」

 

3人とも服を汚しながら、楽しそうに笑っている。

 

そのまま日が落ちるまで遊び尽くし、3人は仲良く手を繋ぎながら帰っていった。

 

...間違いない。あれは日菜姉と紗夜姉と、そして俺だ。

 

ここに来てようやく現状が理解できた。

 

ああ...これは夢だ。確か、自分で夢だとわかる夢を明晰夢っていうんだっけ?だからこれは過去の遠い記憶。幼いあの日に消えた泡沫の夢に過ぎない。

 

まだ、俺が小学生になる前は俺たちは仲が良かった。俺は控えめに言っても、超お姉ちゃんっ子だったと思う。ずっと姉たちの後ろをついていった覚えがあるし、何をするにも姉2人と一緒だった。今にして思えば、親から逃げてた。という側面もあったことは否定できない。

 

 

姉達と距離ができはじめたのは持って生まれた才能の差が明らかになってからだった。一年前の姉達には出来て、俺は出来ない。そういうものが多く露見してからだ。

 

紗夜姉は秀才で日菜姉は天才だ。一方で、俺は出来損ないだった。何一つ才能と呼べるものはなかった。何をしようが姉に勝る結果を出したことは生まれてこの方一度もない。

 

理由なんてたったそれだけ。だが、そこにはもう埋まることはないであろう大きな溝が存在する。

 

だからこれはもう意味のない遠い過去の記憶でしかない。

 

今の2人は姉であっても、()()()()()()()()()()

 

そう思った時周囲の景色が変わった。より、正確に言えば時間が早送りになっている。

 

小学校中学年になる頃には、俺は完全に姉2人の劣化物として扱われ不要になっていた。否定しようにも、否定できるものなど何1つもなかった。何をやろうが、姉の方が優秀だったのだ。姉の方が早くものを覚え、より上手くやる。それを徹底的に突きつけられた。だから出来損ない。だから無能。姉の下位互換のゴミでしかない。他ならぬ姉達によってその事実が浮き彫りになっていった。

俺と姉の差は一目瞭然だったのだろう。よくいる正義感にあふれ、 「可哀想だから止めよう」と偽善あふれる勇者様すらいなかった。それはきっとどうしようもなく、本当のことだったから。

 

学校の先生も止めなかった。ただ、お姉さんのように頑張りなさい。とだけだった。俺が姉たちより劣っているのは本当のことだから。姉のようになりなさい。という意味でしかない。でも、間違っていないと思う。

 

親は当然こんな俺には期待すらしていなかった。俺が姉達より劣る出来損ないであることは、やっぱり本当のことだったから。

 

全部全部間違っていない。本当のことだったから。

 

 

俺とて何も黙って受け入れてた訳ではない。姉より愚かで鈍臭い自覚はあったが、そこそこの結果は出している。まあ、姉に比べればゴミみたいなもんだっのは最早言うまでもないが。それでも、俺なりの努力をしてきた。

いつの日かきっときっと追いつくことができると信じていたから、周囲の環境にも耐えられた。

 

 

でも、そんな想いはそもそも前提から間違っていたことを突きつけられた。

 

 

...なんというか、自分の記憶とはいえ、気持ちのいいものではない。とはいえここまではまだマシなのだ。ここから先は俺自身ですら思い返したくもない物ばかりなのだから

 

 

「ねぇ本当なの?○○が本当に××の△△なの?」

 

ほら始まった。俺自身があまり聞きたくないものだからかわからないが、所々上手く聞き取れない。

 

「ああ。間違いないよ。ほら」

 

そういって封筒と封筒の中身を手渡す男。そして中身を見て泣きだす女。

 

「最悪だわ。本当にあいつが正真正銘××の△△だなんて!」

 

金切り声を上げ絶望の顔色の女。その女は俺が見慣れた人だった。

 

 

...正直聞き取れなくて良かったと思ってる。多分一生忘れることはない言葉だったし、夢とはいえ、もう一度聞きたいとは思わないから。ある意味今の俺の原点の1つを通り過ぎた。

 

さっきからそうだが、ここから先は本当に見たくない。自分の夢なのにどうして融通が効かないんだろうか。さっさと夢から醒めろよ俺。

 

────容赦なく景色が切り替わっていく。

 

目に入るのは答案用紙。5枚中3枚に×は1つもない。残りの2枚も1つか2つ程度だ。

 

...やっぱりこれか。自分のことながらどうしてエゲツない記憶ばかり選ぶんだろうか。

 

これは2年前の都内模試の時だ。姉とは学校が違ったが、これは東京都が中高生の学力を図るために、毎年5月、公立私立を問わずに行われる学力テストだ。

 

点数は確か494点/500点だったと思う。

 

この日は俺が初めて紗夜姉に勝った日だ。同時に今まで俺を支えてきた大事な何かが壊れた日でもある。

 

ここからのことは何も思い出したくない。さっきのは心を無にすればまだ耐えられたけど、これは無理だ。見たくない。嫌だ。いやだいやだ

 

頭痛は酷くなり、吐き気もする。動悸も乱れ、舌がもつれる。体が、本能がここから先の展開を嫌がっている。しかし、忘れることは許さないと言わんばかりに耳はよく聞こえるし、目も何故か逸らせない。

 

辞めろ、やめてくれよ。やめてください。お願いだからこれ以上は...

しかし、無情にも時間が流れる。

担任が、クラスメイトが、両親が俺にとどめを刺しにくる。

 

「お前があの2人より・「暁斗?暁斗ッ...暁斗!!!

 

 

その瞬間世界にヒビが入った。そのヒビが広がり、壊れていく中で

またさっきと同じように意識が沈んでいく感覚がした。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

────ふと、目が覚めた。────

 

どこかこの目覚め方に既視感がある。しかし、今度は見慣れた自分の部屋だ。しかし電気がつき、カーテンも閉められている。

自分が寝始めたのは確か昼前だったはずだから、かなり長い間眠っていたらしい。

 

「良かった。目が覚めたのね」

 

隣に誰かいるようだ。横を見ると、心なしか安堵している紗夜姉だった。

 

「魘されてたから心配したわ。大丈夫?」

 

ギリギリセーフだった。あと数秒遅かったら危なかったかもしれない

 

「...大丈夫。それより俺インフルだから入ってきちゃダメだよ。」

 

「え?...インフル?...食欲は?あとなんでそれを先に伝えないのよ?」

 

それを伝える前にぶっ倒れちゃったんだよなぁ....申し訳ない

 

「ないけど薬飲まなきゃだから軽く食べるよ。」

 

「わかったわ。何か作るから待ってなさい。」

 

...紗夜姉料理できるんだな。まあ、俺ですら出来るんだから紗夜姉なら余裕だろ。

 

暇を持て余し始めたところで電話がかかってきた。相手はひまりだ。

 

「もしもし」

 

「あっ暁斗?やっと繋がったよ〜」

 

「ごめん。さっきまで寝てた。」

 

「うわっ声が凄いガラガラ!じゃあ、早めに用件済ませちゃわなきゃだね。」

 

普段のおしゃべりなひまりからは想像がつかない。流石に病人相手にすることじゃないって線引きしてるんだろうな。

 

「頼む」

 

「うん。あのさ....ガルジャム見に来れそう?」

 

「.......無理っぽい」

 

ガルジャムは2日後だ。仮に熱が引いても外に出る訳にはいかない。

 

「......だよね。もしかしたらって思ってたけど」

 

「.....ごめん。」

 

「ううん。お大事にね?」

 

「ありがと。皆にも俺のこと気にせず楽しんでって伝えといて」

 

「うん」

 

 

そう、本来なら明日は、SPACEでグリグリとRoseliaのライブのスタッフとして入って、明後日はAfterglowが出場するガルジャムに行く予定だった。それがインフルエンザでパーだ。

自分のせいとはいえ、何でインフルなんだよクソが。と思う。

 

ピロ-ン

今度は香澄から写真が送られてきた。SPACEに臨時でバイトに入って楽しかった。SPACEが更に好きになった。とある。なんでも、スタッフの大半がインフルエンザにかかって壊滅状態だったので、おたえ以外のポピパの4人もバイトに入ったらしい。

 

...多分SPACEの誰かから一気に感染したな。改めてインフルエンザの脅威の感染力を思い知った。

 

とりあえず店側の人間として香澄にお礼を言っておく。

 

あっ...ポピパで思い出した。沙綾に暫く店に行けないことを伝えておかなくちゃだ。同様につぐにも。そうやって連絡をしていると、ノック音

 

「どうぞ」

 

「作ってきたから食べなさい。おかゆで大丈夫よね?」

 

「ありがとう....いただきます」

 

無言で食べ続けること数分

 

「ご馳走さまでした。」

 

「お粗末様でした。何か欲しいものある?」

 

「特にないけど、強いて言うなら飲み物かな」

 

「確かスポーツドリンクがあったから持ってくるわね」

 

「ありがと。紗夜姉」

 

食後だし薬も効いてきたのか眠くなってきた。今は体も重いし。このまま睡魔に身を委ねてしまおう。

 

その夜はさっきのような嫌な夢を見ることはなかった。




インフルエンザはアニメでもこの時期に流行してたみたいです。
SPACEのスタッフが軒並み壊滅しています。

SPACEでRoseliaと会わせるのも面白そうですが、一期になぞり過ぎるのも味気ないかもしれないと思ったので、あえてダウンさせました。

設定開示するなら誰のがいいですか?

  • 友希那
  • こころ
  • 香澄
  • おたえ
  • その他
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