もし氷川姉妹に弟がいたら   作:タクティくす

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この土日謎の高熱でダウンしてました。

あとアニメ12話と13話をまとめて消化しちゃいますので長めです


走り始めた彼女たち

いよいよ7月になった。

ついこの間まで降り続けた雨が嘘みたいなぐらいに晴れていて、身を焦がさんと言わんばかりにアスファルトを熱している。

 

いよいよ夏休みも目前に迫ってきたが、その前に期末試験がある。

特待の授業料免除は、それなりの成績でなければ継続されない。

当然期末試験で良い点数を取る必要がある。

 

「•••だからさ、俺に聞くなよ。モカに聞けばいいじゃん」

 

悪いけど、蘭とひまりの赤点回避の面倒を見る余裕がない。

 

「え〜教えるのめんどくさ〜」

 

「だってモカ説明下手だし•••」

 

「暁斗の方がわかりやすいからつい•••」

 

確かにモカのノートを見ても何が書いてあるかよくわからない。よくこれでテストで点取れるよな。

 

「じゃあ巴は?」

 

あいつ意外と成績良いんだよな

 

「あこちゃんに勉強教えてって泣きつかれたんだって」

 

あのシスコンめ•••絶対こっちよりあこ一人の方が楽だろ。あこは勉強は嫌いだが、物分かりは割といい方だし、やる時はちゃんとやる子だ。一方でひまりと蘭は•••

 

「あー海行きたい!今度みんなで行こうよ!」

 

「え〜モカちゃん溶けちゃうよ〜」

 

「暑いし人混みだし、行かなくていいよ」

 

蘭はどうでも良さそう。というよりかは眠そうだな。

 

「え〜!?行こうよ〜高校一年の夏は今しかないんだよ?それに母なる海に帰らなくてどうするの?」

 

 

「母なる海ってなんだよ?別にひまりが海に行くのは止めないけど、このままだと赤点で補習と追試確定だぞ?」

 

 

「うわ〜ん。つぐー!暁斗がいじめてくるー!!」

 

 

•••こんな感じだ。こいつらやる気あんのか?

 

 

「あっ、暁斗君ここなんだけど•••」

 

「ん?•••先行詞に最上級があったら関係代名詞はthat」

 

「ありがとう」

 

「なんでつぐみには普通に教えてるわけ?」

 

「やる気の問題」

 

「ひどくない!?」

 

「だってお前ら全部わかんないから教えろ!じゃん?つぐはわからない部分だけ聞いてくるから教える側としては楽なんだよ。」

 

つぐはノートをしっかり取ってるからさわりだけ教えればいいっていうのも大きい。

 

 

「とりあえずさ、提出課題は片付けろよ。教科書とノート見ながらやれば多分解けるから」

 

「うぅ〜とにかくやってみる」

 

「ほら蘭も。どっちにせよ課題なんだし」

 

「わかった」

 

そんな試験前の一幕である。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

香澄の話を公園で聞いて、Poppin’Party の皆と話した後、無事復活したらしい。あの後香澄から報告を受けた。

 

早い話が、下手だから皆の足引っ張ってるって考えて不安になったってことらしい。4人からそれを受け入れて貰えてることを教えて貰ったことで不安が解消されたらしい。

そういえば、何故俺にすんなり話したのか?と聞いたところ

 

「沙綾が『スランプなら暁斗に相談すれば良かったね。なんたってMr.スランプだし』って言ってた!」

 

と返された。まあ、満足のいく結果が出せたことないからスランプでも間違ってはいない。でも沙綾さん•••確かに否定できないけどさ、ちょっと毒が強すぎませんか?俺何か気に障ることした?

ちょっと沙綾に確認したいことができたが、とりあえず無事に治って良かったと思う。やはり香澄はやかましいぐらいがちょうどいい。

 

そんなPoppin’Party は今日、SPACEの最後のオーディションを受ける。俺はオーディションには同席しないだろうが、応援している。

 

•••そんなことを考えていたら、ポピパの面々がやってきた。香澄の面構えがこの前とは全然違う。緊張はしているし、合格できるかどうか不安な様子もあるけれど、この前のような弱弱しさはない。これならちゃんと歌えそうだし、ちゃんとしたオーディションになるだろう。

 

願うなら彼女達の望む結果になって欲しい。きっと大多数の人はそう願っている。

 

泣いても笑ってもこれが最後のオーディションだ。俺がどう思おうが彼女達の結果に何の影響もない。即座に無駄な思考を切り替えて業務に集中することにしよう。

 

我ながら屑だと自覚はしているが、こうでもしないとやってられない。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

あれから2週間ほど経ち、今日は終業式だ。

 

テストではそこそこ良い点数が取れたから、無事学費免除も継続されるだろう。退学する羽目にならずに済んでホッとしている。

 

それと、蘭とひまりも無事追試回避が出来たようだ。あの後は2人とも頑張ってたし、無事に切り抜けられて良かった。

なんだかんだで俺もあいつらに時間を取られたけど、教えることで再確認できた部分もあったし無駄ではなかった。ひまりに言ったら調子に乗りそうだから絶対に言わないけど。

 

校長の無駄に長い話を聞かされ、担任からよほどのアホ以外ほぼ無関係な諸注意が垂れ流され、ようやくひと月ほど学校から解放される。

 

今日はそのままSPACEに直行する。SPACE最後のライブだ。

うだるような暑さから、一気に身体中に冷気が染み渡る。

 

「おはようございます」

 

「氷川。最後までよろしく頼むよ」

 

「はい」

 

そういえば面接時に「最後までやりきること」って言ってたけど、もしかしてオーナーはその時からSPACEを閉めることを考えていたのだろうか?

 

俺もロッカーに向かい着替え始める。今日が最後ではあるが、仕事内容は変わらない。変わるのは精々今日がこれで最後だということぐらいだ。そんな感傷には終わってか浸ればいいだろう。今はやるべきことをやるだけだ。

 

途中Roseliaを見かけたが、自分には無関係である。姉は私語を嫌うタイプだし俺自身近寄り難いから声などかけるはずもない。

 

いつものように機材をセットする。細かい調整は演奏者と音響に任せて、今日は客が多いことがわかっているから受付に回る。

 

「機材の用意できたかい?」

 

「はい。いつも通り微調整は現場に委ねますよ」

 

「•••相変わらずだね。無駄に謙虚だ」

 

「俺はど素人ですよ?餅は餅屋ですし。それより、多分Poppin’Party ともう2人か3人来ましたよ?」

 

「•••わかった。受付頼んだよ」

 

「はい」

 

店の前にいたのはやはりPoppin’Party だった。それと多分CHiSPAの人だ。

 

「あっくん今日はよろしく!」

 

「これから俺のすることはお客の相手ばっかだけどね?」

 

「お客さん多い?入る?」

 

「おたえさっきオーナーに言われたばっかだろ!もう忘れたのか?」

 

「有咲忘れ物したの?」

 

「私じゃねーよ!お前のことだよ!」

 

「有咲私のこと忘れちゃったの?」

 

目に涙まで浮かべてらっしゃる•••天然怖い

 

「なんでそうなるんだよ!?おたえの頭の問題だよ!」

 

「頭は取れないよ?何言ってるの?」

 

「もういや•••」

 

ツッコミを放棄すればいいんだよ。俺はバイト初日でそうした。

 

「市ヶ谷さんは相変わらずキレッキレのツッコミするよね」

 

「有咲ちゃんとっても面白いよ?」

 

「おっ?関西人のりみりんが言うなら間違いないね〜」

 

どうやら牛込さんは関西出身らしい。というかCHISPA の人たちとも大分仲良くなったんだな。

 

「とりあえず早く更衣室行きな。そろそろオーナーに怒られる。後の流れは多分更衣室内に張り紙あるし、出演者の各バンドの代表にメールしてあるはずだから」

 

その言葉で皆更衣室へ急ぐ。多分グリグリ以外は殆ど全員入ってるからもしかしたら更衣室に入らないかもしれない。

•••暫くはあの辺りに近づかないようにしよう。

 

 

やがてお客さんが入り始めた。こちらも客が増えて忙しくなってくる。以前SPACEでライブをしていた人たちが最後だからという理由で集まっている。それだけSPACEが愛されてきた証拠だろう。

それより驚くべきはライブハウスに初めて来る人達の殆どが花咲川女子の一年生なことだ。恐らく香澄の友人だろう。

そうこうしてると

 

「あらあらあなたはこの間うちの蔵でライブした時に•••」

 

「市ヶ谷さんのおばあさん。お久しぶりです。お孫さんにお世話になっています」

 

「いえいえうちの有咲こそご迷惑かけていませんか?」

 

「とんでもないです。もう少ししたら開場しますからチケットを買ってお待ちください」

 

この後千紘さんと純と紗南も来た。一応オーナーに許可を取って純と紗南を沙綾に会わせにいくことになった。初ライブだし緊張が解れるならとオーナーは大目に見たのだろうか。

 

「いいか?純と紗南ここからまっすぐいって角を右に回って一つ目のドアだ。そこにお姉ちゃんがいる」

 

「なんでにーちゃんはいかないの?」

 

「ねーちゃんのとこいこーよ」

 

「ごめんな。にいちゃん仕事があるんだ•••ほら道は覚えたろ?お姉ちゃんに応援が終わったらすぐもどってくるんだぞ?」

 

「「はーい」」

 

本当は更衣室に入ったら大問題だバカタレって話である。純ぐらいの年齢なら許されるが俺は許されないだろう。

 

そのあと純が顔を真っ赤にして出てきた。まさか最悪のタイミングだったのか?「う○こー」とか聞こえてきたけど•••

 

何はともあれ激励は終わったことだし千紘さんの元へ2人を届けた後仕事に戻る。客がどんどん増えていく。そろそろ会場のキャパオーバーだぞ?オーナーにそれを伝えようとした時

 

「なんであんたがここにいるよ?暁斗」

 

はぁ••••••Roseliaがいるしもしかしたら来るかもしれないなんて思ってたけど、まじで来るとは思ってなかった

 

「ここが俺のバイト先だからですよ?()()()()?」

 

最後を強調して言う。向こうは嫌そうな顔をし、口を開いたが、被せるように、チケットを見せながら

 

「チケット代は600円」

 

接客にはあまり不適切ではないと思われる声と表情だろう。完全に無表情だろうし声も固い。あいつは忌々しげに舌を打ち、チケットをひったくった後に600円を叩きつけた。

 

•••どうやら純と紗南に見られてしまったらしい。ちょっと悪いことしたな。お詫びに後でお菓子をあげよう。親と不仲な様子などそのまま忘れた方がいい。

 

その直後にグリグリが到着し、遂にライブが幕を開けた。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

開幕からグリグリがスパートかけてきた。俺は店の入り口近くのテレビでライブを見ている。スタッフの皆もライブを見たいためここは俺が入ることにした。俺はここで十分だと思う。というか直であまり見たくない。見たら最後だと頭でも心でも理解しているから。

 

「あれ?香澄どうした?迷った?」

 

「違うよー!グリグリのライブ見ときたくて」

 

多分緊張してるんだろうなとりあえず少し自由にさせとけ

 

「•••この曲終わったらすぐ戻れよ?すぐ呼ばれるから」

 

「うん」

 

 

「すみません!今いいですか?」

 

「あっちゃん!お母さん!」

 

蔵イブにいた子だ。そっか香澄の妹なのか。道理で似ているわけだ。

ってそんなこと考えるより先に

 

「はい。ライブはこちらですよ」

 

「ありがとうこざいます」

 

「お姉ちゃん!」

 

「お姉ちゃんなら大丈夫だよ。一杯練習してたもん」

 

「•••うん!頑張るよ」

 

「香澄〜多分変に気張るなって意味だぞ?最後の練習通りでいい。それと、お前も早く控え室戻った方がいいぞー」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

ライブが終わった

 

あの3人のことを見送ったあと本当の意味で1人ライブの映像をぼんやり眺めていた。感想は特にない。皆眩しかったと思う。そんなぐらい。一応皆顔見知りと言ってもいい間柄だけどポピパと姉とあこと燐さん以外は今日を境に二度と会うことはないだろう間柄だ。特に思うところがあるわけでもない。

 

ただ、ここの片付けも終わったらこのSPACEでのバイトも終わりとなる。次は何のバイトをするべきか考える必要があるな。

 

「氷川•••1人で受付任せて悪かったね」

 

「いえ、別に。俺より皆の方がライブ見たかったでしょうし」

 

結局モニターで見てたけど特に印象に残ってないのだから、俺が見るよりは有意義だったことは疑いようもないだろう。

 

「お前は最後まで力仕事が殆どだったけどそれで良かったのかい?」

 

特に苦はなかったし、問題ない。それに、

 

「前にも話しましたけど俺音楽はど素人ですよ?餅は餅屋です。それに、大体の理由を知ってるくせにわざわざ聞きます?」

 

「•••あんたはそれでやりきったと言えるのかい?」

 

「そうですね。決めた目標はやりきってる途中ですよ」

 

「•••私自身はやりきったけど悔いがあるとするならお前のことだよ」

ありゃ。なんか気の毒そうに見られてる。所詮他人なのに本当お人好しだよなこの人。この場所が無くなるのを惜しむ人の気持ちがわかる気がする。

 

「•••そりゃ光栄ですね。今までお世話になりました。これからもお元気で」

 

こうして長い夏休みが幕を開ける。俺の矮小さと無力さを何度も見せつけられる悪夢のような夏が。




ライブシーンは皆さんの脳内補完かアニメでお願いします。
割とライブシーンの描写が不評な気がしたのと文字数が多くなりそうだったのでカットします。あと主人公はモニター越しで見てますから迫力が無いのも理由です。

もし欲しいって方がいらっしゃれば書きますよ。もしかしたらライブシーン最後かもしれませんし。
ここから癒しパートなんてほぼないです。(沙綾誕生日SS以外)

設定開示するなら誰のがいいですか?

  • 友希那
  • こころ
  • 香澄
  • おたえ
  • その他
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