もし氷川姉妹に弟がいたら   作:タクティくす

30 / 56
遅くなってしまって申し訳ありません。多忙とモチベ低下していたところにデータが消滅というアクシデントが発生しました。
今までは以前書いてお蔵入りにしたものを直す形を取っていたのですが、これからはまた1から書き直すことになりました。

本当はCiRCLEでの準備の様子でまだ絡みのない彩と千聖を絡ませたり何らかの描写を入れようかと思いましたが、もう伏線は大分貼りましたし、必要な分は別キャラの視点で書くことに決めたので、一気に進めてしまいます。


終わりを告げる音

悲しみが来るときは、単騎ではやってこない。かならず軍団で押し寄せる。かの有名なシェイクスピアの言葉だ。

ならば彼にこれから訪れる喪失も起こるべくして起こった当然の出来事であり、ただの連鎖反応でしかない。純然たる事実として、当たり前の事象として、そこに存在するだけだ。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

先日のミニライブは成功した。と言って差し支えないだろう。ネットの評判も上々で宣伝効果も期待できるらしい。なにより出演者たちのモチベーションが良くなったことが大きい。

この調子でいけばきっとライブも上手くいく。そんな空気が広がっている。

 

それに水を差すようで申し訳ないが、自分は不安で仕方ない。あくまでこのライブは練習の延長線上のものだ。ただでさえ個性が強い5バンドがあつまっているのだ。これからお互いの主張の食い違いから一悶着ある気がしてならない。現ににRoseliaとAfterglowのボーカル同士がすでに険悪な雰囲気だから、有り得ないということこそ有り得ないだろう。

とはいえ何とかなるだろう。まったく取り付く島もないというほどではない。それに――確信がある。俺が動かなくても、Poppin’Partyの5人が解決してしまう。ガールズバンドパーティーを成功させてしまうだろう。その後にはもう──今まで通りとはいかない。誰が悪いというわけではないが、どうしたって変容してしまう。それだけ姉は凄まじいのだから。

もう死神の鎌は喉元にまで迫って来ている。逃れる術はありはしない。このまま座して終わりを待つか、自分から鎌へ飛び込み首を搔き切るかの二択しかない。どうせ終わってしまうものならば、自分のタイミングで幕引き、納得したいと思うのはおかしいことではないだろう。どう足掻いても綺麗なままではいられない。大切だったものが壊れてしまう前にどうか遠くへ、どこか遠くへ•••

そんな滑稽でどうでもいいことをつらつらと考えながら今日も今日とてCiRCLEで働いている。ついこの間ミニライブをしたばかりだ。今日彼女たちはファミレスで今後の話し合いをするらしい。今日は通常業務だ。ライブ前より客は増えたが、まだまだ宣伝が足りない。かつてのガールズバンド聖地と比べるのは厳しいかもしれないが、SPACEにいた頃と比べるとぶっちゃけ暇である。

そんな思考を遮るように、自動ドアから熱風が吹き込んでくる。どうやらご来店のようだ。

 

「まりなさん!あっ君〜。大変だよ•••」

 

話し合いの報告に来るとは思っていたが、想像以上に早い。それになんだか随分と深刻そうな顔をしている。

どうやら万事恙無く進行する。なんて都合のいい事はあるわけが無いらしい。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

やはりケンカになってしまったらしい。

ライブの内容や、MCの有無で5バンドの意見がバラバラになった。

音楽一本、他のものは要らないと主張し、それを曲げない蘭と湊さん。店にとってもアイドルとしてもMCは必要だと主張し、どこかビジネスライクなPastel*Palettes。笑顔になるのならMCの有無どころか、ライブですらなくても構わない、自由奔放でカオスなハロー、ハッピーワールド!。まるで個性の見本市と言わんばかりだ。この惨状を鑑みると、むしろよくミニライブが上手くいったなと感心すら覚える。

 

 

5バンドの目指すべきもの、重きを置いているもの、良いところは何もかもが別物だ。それを己が信じる物がこそ正しい。だから皆それに従えとお互いのエゴを押し付け合った結果がこれだろう。なるべくしてなった結果だし、別に俺がとやかく言うべきことは何も無い。

しかし、このままという訳にもいかない。ライブをするためには必ず何かしらの折り合いをつける必要がある。どうにかこうにか互いの主張を擦り合わせ、違いを認めて妥協点を探させなければならない。骨が折れそうだが、不可能ではないと思う。

 

まず、蘭はさほど問題ではない。あいつの場合MCが必要ない。というより自分が喋りたくないってニュアンスの方が強い。Afterglow全体としてはMCは有りだ•••といういつものやつだろう。基本的にMCを回すのはひまりと巴だろうし、他の4人も蘭の説得に回るだろう。

それに、他バンドとのセッションを完全に切り捨てる訳ではなく、織り交ぜるようにすれば蘭も折れてくれるだろう。

 

湊さんと紗夜姉は話し合いの席に着かせることができれば、後は問題ないと判断する。湊さんは少しわからないが、紗夜姉は聡明な人だ。無理に主張を貫き続けると却って時間の無駄になると理解すれば後は勝手に調整してくれる。

「今のままだと湊さんと紗夜姉以外のRoseliaのメンバーの士気が低下する」「香澄はかなりしつこいから、話し合いに参加しない限り練習中につきまとう」「下手に拗れるよりさっさと話し合いを終わらせた方が結果的に練習に多く時間を使える」「ライブ前に空中分解したとなれば、バンドとしての印象は悪くなる」

などのデメリットを列挙すれば、嫌でも話し合いに参加してくれるだろう。半ば脅しに近い気もするが、デメリットを打ち消せるのは大きいし、彼女達にとっても悪い話ではないだろう。

 

残りのパスパレとハロハピは特に問題ない。

 

 

「•••そっか。ケンカになっちゃったんだね。私たちが間に入ってもいいけど•••」

それじゃ根本的な解決にはならない•••か。月島さんの意見も尤もだ。

なら当事者達に委ねるべきなのだろう。その時に──

「あっ•••そうだ!共通点を見つけるのはどうだろう?」

 

「5バンドの、ですか?」

「それがないからこうなっているんじゃ•••」

 

牛込さんと沙綾も困惑している。俺も精々皆はバンドをしている女子高生であること、一応このライブを成功させたいということぐらいしか思い浮かばない。だが、全くない訳ではない以上一定の理解は得られるはずだ。

 

「でも、皆音楽をやってるのは同じだよ?」

「それ以外にも、もしかしたら•••」

 

だから、きっと探せばあるのかもしれない。共通点を見出し共有すれば多少なりとも仲間意識は生まれるだろう。

 

「でも、そんなのどうやって探せばいいんだ?」

 

時間に余裕がある時なら、カラオケ行くなり、ボウリング大会してこいって言えるのだが、生憎とそんな余裕はどこにも有りはしない。

 

「•••要はそこから考えろってことか?」

市ヶ谷さんはポピパのブレインとして頑張ってほしい。

 

恐らくその通りだ。とはいえ彼女達の目にはやる気が満ち溢れている。きっと全部うまくいく。そんな予感がある。

•••とりあえず話がまとまったらしい。ポピパの5人は来た時より足取りはずっと軽快でかつ、力強くCiRCLEを後にした。

 

「ところで、暁斗君はどうするつもりだったのかな?」

 

俺から不穏なものでも感じたのだろうか?顔に出てたとしたら気をつけねば。

 

「•••多分まりなさんと同じですよ?」

 

流石に「Roseliaのボーカルとギターに脅迫紛いなことをして会議の場に引きずり込んでしまおう」と考えていたとは素直に言えない。それに、あまり口出しせずに、彼女達の自主性に委ねる方針なのはきっと両者とも同じだろうから、これも嘘ではない。

 

ひとまず納得してくれたのか、月島さんは仕事に戻っていった。俺も切り替えて仕事に精を出す。

 

今自分がしていることは、彼女たちの行動を阻害しないことは、もっといえばこのイベントに手を貸していることは俺自身の首を絞めていることとなんら変わりはないのだとわかっている。それでも辞めようとはどうしても思えなかった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

数日後、CiRCLEに25人の少女が集合した。どうやら香澄が全バンドを集めたらしい──正確には強制連行である。

相変わらず凄まじい行動力の高さだ。たった数日でここまでやるとは思わなかった。まあ、他のバンドの居場所を香澄にリークしたのは俺だから共犯なんだが。

 

どうやら各バンドで一曲ずつ演奏するらしい。なんだろう?バンドマンならではの何かがあるのだろうか?それとも前に湊さんが言っていた「音楽はなによりも雄弁」というやつだろうか?

自分は特に何も感じない。既に一度聞いたことがあるため特に思うことなどありはしない。しかし、当事者達はそうでは無いようだ。皆の中に同じで確かなモノがあったらしい。考えや価値観がバラバラでも、音楽をやるもの同士ハートは一つ。なんか少年漫画みたいなノリだ。現に巴のテンションが上がっている。

 

音楽をやっている時の「楽しい」を分け与える──『笑顔のおすそ分け』それをテーマにするらしい。

 

今ここに25人の心が一つになった。多少意見が食い違っても、もう空中分解したりしないだろう。あとは準備だけだ。

 

ここから先のことはもう語るまでもないだろう。

少女達の成功は確約されたも同然だからだ。紆余曲折を経てぶつかり合ったが、違いを認め、手を取り合い、一致団結した以上何があろうとも乗り越えていける。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

2週間後ガールズバンドパーティーが成功し、打ち上げが終わった翌日、氷川暁斗は姿を消した。




この話は他の話と比較すると違いがあると思います。
(ヒント:おたえのバイト、Roseliaの初ライブ、まりなさん)
本当に些細なことですが、ある意味この作品の核とも、そして最大の矛盾点とも言えます。•••冒頭のことじゃないです。

そしてここからはようやっと主人公以外の視点で核心に触れていけます。誕生日ssは大事な部分はかなりぼかして書いていましたし、一応本編とは別世界です。とはいえ全く意味がない訳ではないです。


関係ないけど書いてる途中に寝落ちして バンドリ×Dies iraeとかいう電波受信しました。

設定開示するなら誰のがいいですか?

  • 友希那
  • こころ
  • 香澄
  • おたえ
  • その他
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。