もし氷川姉妹に弟がいたら   作:タクティくす

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別視点トップバッターは引き金を引いた実姉、氷川日菜です。近くに理解不能な他者がいる影響で原作との変化があります。
私自身は大した能のない凡人であるため、天才の思考を描写できているか物凄い不安です。


もう少し先の過去編で書こうとしてた話(幼少期シロツメクサの花冠)を今回のRoselia箱イベでやられてしまった。もう少し早く書いときゃ良かったと後悔してます。オチの1つを潰されてしまったので割とマジで困ってます。


P.S 今更な話ですが、Twitterとかやった方がいいんですかね?ハーメルンで投稿するのは初めてなのでイマイチ勝手がわかってません。


一番近くて遠い人────氷川日菜視点①

pipipi.....

規則的な電子音の後あたしの意識は覚醒した。

時刻は午前7時。今は夏休み中だから授業はなくて、部活のない学生にはちょっと早い時間かもしれないが、今日はPastel*Palettesのみんなと新曲の練習だ。

時間通りに起きたのはいいが、ムシムシしてムカムカする。寝汗も酷いし、蝉の声があたしのことをバカにしているんじゃないかなと錯覚すら覚える。それもまた夏の風物詩といえば聞こえはいけど実際はロクなもんじゃない。

とはいえ、このままでいてもしょうがないよね。朝ごはん食べて今日も元気に行ってみよー!と気持ちを切り替えてガバッと跳ね起き、部屋を出る。次の瞬間フニャっとした虚脱感がブワッとしてくる。

 

目に付いたのは隣の部屋。そこは明らかに生活感のなく伽藍堂でシーンとした空間だった。あたしたちより小さい部屋のはずなのに異様に広く感じる。さながら別世界みたいと形容するべき部屋だった。簡素な、あたしたちとは明らかに値段が違うとわかる安物のパイプベッド。あたしとおねーちゃんの部屋はカーペットが敷いてあるが、むき出しのフローリング。

おねーちゃんの部屋も女の子としては飾り気は少ないが、あれはシンプルで余計なものがない。と言える部屋だ。おねーちゃんらしさが出ていて、凄くおねーちゃんおねーちゃんしてる部屋だからこれとは別物だ。よく見ると埃がうっすらと積もっている。

 

部屋主はもう1週間以上帰ってきていない。普段から顔を合わせることは滅多にないけれど、それでも今までは帰ってきていたのに、突然何も言わずにいなくなっちゃった。でも、悲しいほどに両親は慌てる素振りすら見せない。いてもいなくても変わらないのだろう。

 

そんな両親は見ていてムカムカするが、両親には、そして心理的なものがなければあたしにもおねーちゃんにも、生活には変化はないことが嫌でも理解できてしまった。

「嫌な言い方になるけど、暁斗は普段から家にいないから、寝に帰ってくる。という動作がなくなっただけ。両親にとっても、きっと関係のない第三者から見てもそうなのだろう」

そうおねーちゃんが教えてくれた。おねーちゃんが言うならきっと間違いはないと思う。でもあたしは心配だし、おねーちゃんも同じだ。

今は何処で何をしているのだろうか。

 

あたしが今どんよりした気分だろうと、練習は練習だ。どうせいつもみたいにビューンってしてパパパって出来ちゃうんだろうけど、行かねばならない。そーしなきゃ千聖ちゃんに怒られちゃうし、今日は全体で合わせる予定だから、パスパレのみんなにも迷惑がかかる。•••それに、暁斗がいなくなってしまったからこそ練習には参加したい。

 

────あたしがアイドルを続けている理由は他でもない暁斗への贖罪の為でもあるのだから

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

あたしにとって氷川暁斗は、よくわからない子だった。半身であり、大好きなおねーちゃんこと氷川紗夜ともまた違う。不思議な存在だった。

 

髪の色もあたしやおねーちゃんと違って真っ黒だし、顔もそこまで似てない。あたしやおねーちゃんはババって出来ることがあの子は出来ない。出来たとしても何度もやらなきゃ同じことはできなかった。なんでできないのか理解できない。あんなのパッとやればすぐ出来ることなのに、どうして暁斗は何度もやらないと出来ないのだろうか?

それでも、出来ないのに、あたしやおねーちゃんの後ろをついてきて同じことをしたがるのは可愛いと思ってたし、一人で頑張って、出来るようになったら、いの一番にあたしとおねーちゃんにドヤ顔で見せにくるのも楽しみにしていた。あたしやおねーちゃんのことをおねーちゃん、おねーちゃんと呼んで好いてくれていたのはとってもるるらるんって来てた。

そんな風に3人で色んなことして過ごす。たったそれだけでとっても楽しかった。満足していた。──でも、外の世界はそれすら許してくれなかった。

 

いつからだろう?•••多分暁斗が小学生になって暫く経ってからだっだと思う。

あたしとおねーちゃんと比べて全然やってもできない。何をやらせてもあたしやおねーちゃんより上手くいった試しがない。そうやって別物として扱われていた。あたしとおねーちゃんの弟なのに全然ダメ。出涸らし。出来損ない。能足りん。そうやってイジメにも遭ってたみたい。そうやって暁斗は少しずつ少しずつ磨り減っていった。多分どこかで限界は来ていたんだろう。

 

暁斗が聞いてきた。「どうしておねーちゃん達はそんなにすぐに物を覚えられるの?コツとかあるの?」って。今まで一度も聞いてこなかった。人に頼らず全部自分一人でやってた。そんな暁斗が聞いてきた。多分暁斗なりの「助けて」だった。

 

 

あたしは暁斗のSOSに()()()()()()()言ってしまったんだ。

 

「えー?簡単だよ?パッと見るだけ!」

 

「•••あはは」

 

ここで終われば、多分()()()()だったんだ。つまり、ここでは終わらない。紡がれた言葉に深い意味も悪意も無い。だが、時にそうした言葉の方が却って人の心を抉り、叩き潰してしまうことがある。

 

「暁斗なら大丈夫。()()()()()()頑張って何とかしてきたんだから」

 

暁斗がとっくにボロボロになっていることにも気付けず、あたしの言葉が引き金を引いてしまっていたの気付いたのはもっと後になってからだった。

 

その日を境に何もかもが変わってしまった。暁斗が全然家に居なくなった。朝はあたしが起きる頃には家に居ないし、夕飯にも帰ってこないし、ほぼお風呂と寝るために帰ってきているだけ。そんな感じになった。あたしとおねーちゃんに対する態度そのものは変わらなかった。けれど、その日から、「おねーちゃん」と呼ばれなくなったし、暁斗から話しかけてくることは殆どないし、何処かへ遊びに行こうとか誘ってものらりくらりと躱されちゃう。

 

暁斗が一体どうしてしまったのかよくわからない。理由はわからないけどおねーちゃんはあたしを避けているし、暁斗は全然構ってくれない。1人は寂しい。そんなズーンとした状態のまま中学を卒業して、高校の一年も過ごした。暁斗が同じ学校に入学するって知った時はるんって来たけど、理由を知ったらそんな気分は消え失せた。無事特待になったから良かったけど、落ちてたら危うく最終学歴が中卒になってしまうところだった。

 

 

 

4月になり、二年生になって暫くたった頃にアイドルバンドのオーディションを受けてみた。暇だったからだし、只の気まぐれ、やったことないからやってみようかな?ぐらいの適当な理由だから深い意味も全くない。でも呆気なく受かった。

 

芸能界は未知でいっぱいだった。自分とは全然違う人にいっぱい出会えた。千聖ちゃんにイヴちゃんに麻弥ちゃん、考え方も得意なことも何もかも違う。──そして、彩ちゃんに出会った。ピンクの髪色でおっちょこちょいで、本番とかでよく噛むし、見ていて飽きない。でも頑張り屋さんで、パスパレを引っ張ってくれているのは彩ちゃんだ。

 

──まず感じたのは、既知感

何度やっても全然できないところ。それでも諦めずに何度も挑戦するところ。出来るようになったら得意気な顔をして見せてくるところ。性別も歳も見た目も何もかも違うのにどことなく暁斗に似ているって思った。だからだろうか、目が離せなかった。

 

──求めしものは真実

だから知りたいと思った。彩ちゃんを、そして暁斗のことを。どうして暁斗は変わってしまったんだろう。どうして遠くへ行ってしまったのか、それを理解したい。

 

──失くしたものを取り戻したいと切に切に願う

またあの頃みたいに3人で笑い合いたいと望んでいるから、今日も彩ちゃんを通じて暁斗を知ろうとする。

 

──けれど、才はあれど意味を為さず

パスパレのみんなと一緒にアイドルをやることで、自分が周囲の人と全くな別物であると知った。自分が特別な才能を持つ人間だって知った。けど、それがあっても意味なんてない。本当に望んでいる光景にたどり着けない。なら別にこんなもの欲しくなかった。

 

──だからアイドルを続けよう

色んな人が入り乱れるこの場所なら、きっと暁斗が感じていたことも、変わっちゃった理由もわかるはずだから。

 

 




ちょっと短いけど区切りがいいからここで分けます。
幼き頃の弟の影を同僚に投影するヤベー姉の図が出来上がったけど気にしない。紗夜も大概だから許して•••

感想ガンガン書いてくれると嬉しいです。やっぱモチベーションに差が出ます。あとお前が言うなって話ですが、高評価つくと嬉しいです。

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