途中まででいいなら活動報告にでも載せようかな?
今回は氷川紗夜視点であり、あくまで氷川紗夜が知り得る情報だけが描写されることを念頭に置いておいてください。
個人的にバンドリ内で一番人間らしいのは紗夜だと思っています。
それはとある少年の小さい頃の話。
皆さんも経験があるだろう。「ご両親に名前の由来を聞いて、それを発表してください」というよくある催し。小学校低学年の時に恐らく誰もがやることになるはずだ。
その少年もご多分に漏れず、純粋無垢に担任の先生の言うことに従い、両親に己の名の由来を聞きに行った。
少年の名前は祖父とその兄が付けた。
漢字には様々な意味があり、名前に願いを込めるというのは日本ではさほど珍しくない。
少年の名に込められた願いは実に単純明快でありふれたものだ。それ故に邪気などカケラもない清らかで美しいものである。
────家族と仲良く過ごし、そして大成して欲しい。
大雑把に言ってしまえば、それだけだ。ただ、少しだけ捻られている。
家族として一番長く付き合っていくのは順当に生きていけばの話だが、子より20年ほど先に逝去してしまう両親ではない。血を分けた兄弟だ。
故に、姉と同様に時間帯を示し、
余談だが、本来の少年の名前は「暁翔」になる筈だった。しかし画数が多い。翔は当て字であり、所謂「キラキラネーム」になるという理由でこの漢字は却下され、「暁斗」になった経緯がある。
名は体を表すという。そして言葉には力が宿るという。それは少年が与えられた
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────懐かしいもの光景を目の当たりにし、言いようのない暖かさが湿気の多く不快な暑さへと姿を変えた。
目覚め方としては決して良いとは言えない部類だろう。中々に心地良い夢を見ている最中急に現実に引き摺り込まれたのだから。もう少しだけでもあの陽だまりなような愛おしい刹那の夢に浸っていたかった。
しかし、今日は平日で、夏休みもすでに開けた登校日だ。学生として、風紀委員として遅刻するわけにはいかない。軽く伸びをして意識を完全に覚醒させ、身支度を整え、自室からリビングへと向かう。
「おはよー!おねーちゃん」
「•••おはよう。日菜、•••
「おはよう紗夜姉」
これがここ最近の朝の風景だ。暁斗がこの時間に家にいる。朝家族と顔を合わせて朝食を食べる。これが当たり前の光景であるはずなのに暁斗があることは恐ろしく不自然極まりない。突然何も言わずにいなくなって、急に帰ってきたと思ったら今度は家にいることが増えるなんていくらなんでもおかしい。唐突すぎて不気味だ。
日菜は純粋に暁斗と一緒にいる時間が増えていることに喜んでいるようだけど、私は素直に喜べない。
今も感じている暁斗に対する薄ら寒い恐怖と、ずっと抱え続けているどす黒い嫉妬と、のしかかってくる罪悪感をどうにか押さえつけて私は姉らしく振舞わなければならないからだ。だから、暁斗と顔を合わせるのはとてつもなく気まずい。日菜にも多少の後ろめたさはあるものの暁斗へのそれは比ではない。ここ最近の朝は少しばかり憂鬱だ。
朝食を食べ終え、逃げ出すかのように学校へ向かう。我が事ながら情けない。自分の弟とすら向き合えていないのだ。日菜から逃げないと約束したけれど、暁斗と向き合うのはその何倍も難しい。
──暁斗を壊してしまったのは紛れもなく私なのだから。
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「じゃあまずは、Aメロから」
湊さんの合図で演奏を開始する。定められた旋律を五線譜を搔き鳴らして表現する。より精密により丁寧に。
機械のように冷たくてつまらない演奏だと今でも思う。
でも、湊さんはその正確さこそが私らしさだ。と言ってくれたし、日菜とも約束したのだから、私はこれを捨てるつもりはない。
正確でいい。冷たくたっていい。不純物のない氷はとても綺麗なものであるように、きっとこの先にきっと私が目指すものがあると信じている。────だというのに
「•••!」
突如として手が止まる。•••ああ、まただ。この頃ふとした拍子に脳裏によぎるのだ。「お前なんかがギターを弾いていていいのか?」と「弟を犠牲にして得た日常は楽しいか?」と自分自身の良心の呵責とも言うべき自責の念がふとした時に込み上がってくる。
「紗夜。また同じフレーズを間違えてるわ。しっかりして」
妥協は一切許さない。琥珀色の両眼がこちらを見据え責め立てる。
完全に非はこちらにあるため素直に従う。
「•••ごめんなさい。もう一度お願いします」
「•••いえ、今日はここで終わりましょう。きづいてないの?紗夜、貴女本当に酷い顔よ?」
「•••え?•••そう、でしょうか?」
周りを見渡す。白金さんは申し訳なさそうに何度も頷いており、今井さんも心配そうに見つめている。
「はい。すごく具合悪そうですよ。大丈夫ですか?紗夜さん」
さらには宇田川さんにはっきりと言われてしまった。自覚はまるでなかったが周りから見るとそう見えていたらしい。確かに、このまま練習を続けても無意味だろう。お言葉に甘えて今日は早めに帰ることにしよう。
「•••それでどうしてついてくるんですか?宇田川さん?白金さん?」
「えーっと•••その•••」
「あの•••言い•••にくいんですけど•••湊さんに•••「様子を見て欲しい」と•••頼まれて•••」
なるほど、どうやら私はそこまで重症だったらしい。湊さん普段は音楽以外のことは不安なところはあるけれど、Roseliaのことはよく見ている人だし、その気遣いは無碍にできるものではないだろう。それに2人と一緒にいることを特段拒む理由もない。一緒に家路へ着く。
「あの•••氷川さん。暁斗くん•••帰ってきたんですよね?」
そういえば白金さんは宇田川さんと同様に暁斗の友人だった。
「ええ。ただ少し様子が•••」
掻い摘んで最近の妙な点を話す。要約すると「家にいる時間が長い」になる。おかしくないはずなのにおかしいということがおかしい。
「アッキーは毎朝沙綾ちゃんの家に行ってたのに今は行ってないってことですか?」
「ええ•••そうね」
•••沙綾•••確かPoppin’Party のドラムの山吹沙綾さんのことだ。ライブの際に差し入れとしてパンを持ってきてくれていたのを覚えている。
「最近はあこの家にも来てないし、何があったんだろう?りんりんは何か知ってる?」
白金さんは首を横は振った。どうやら心当たりはないらしい。
だが、この2人は私の知らない暁斗を知っているのだ。山吹さんの家に毎朝通っていたのは初耳だ。
毎朝早くに家を出ているのは知っていたし、本人にどこへ行ってるかは聞いたことはあるが、「友人の家」としか答えなかったから。
やはり、私たちと暁斗の間には溝があるのは疑いようは無いだろう。一見仲が良さそうに見えてもしっかりと一線は引かれている。わかりやすいところだと「おねーちゃん」と呼ばれなくなったし、ついこの間まで、家で顔を合わせることの方が珍しかった。
「でも•••本当に突然ですよね?いなくなった間に何かあったんだと•••思います」
「ええ。それは間違い無いと思うわ。でも、自分探ししてたとしか答えてくれなくて•••」
せめて連絡の1つや2つはして欲しかったと思う。私と日菜がどれだけ心配したか、暁斗はまるでわかっていない
「•••ごめんなさい。少し愚痴になってしまって」
2人に聞かせるような話ではなかったと思う。微妙な空気になってしまった。
「•••いえ。気にしないでください•••あっ•••」
「白金さん?どうかしました?•••お菓子作り教室?」
「りんりんお菓子作るの?」
「えっと•••まだ興味があるだけで」
今井さんのクッキーには不思議と場を和ませる力がある。クッキーが、というよりかは今井さん自身によるものかもしれないが。
先日今井さんがアルバイトでいなかった時の練習は悲惨だった。
私たちは今井さん抜きだとてんでダメダメな集団である。
CiRCLEのイベントの時は今井さんがいない時は暁斗が色々気を利かせてくれていたのを思い出した。湊さんと白金さんへの指示は早かったし、宇田川さんの服へのフォローもしっかりしていた。
流石に2人のように、とはいかないが、私もRoseliaのためにできることをするべきだろうと思う。
「わかりました。私も一緒に行きます」
「え!?紗夜さんお菓子作るんですか?」
「いいえ、未経験よ。でもいい機会だし参加してみようかと」
それにこの店名•••“羽沢”珈琲店。日菜が暁斗の話を聞いたという、羽沢つぐみさんの実家で間違い無いだろう。暁斗の写真を提供してもらった直接のお礼をまだしていないし、ちょうどいい機会だと思う。
白金さんへのお詫びと羽沢さんへの謝礼。そして私自身のために今回はお菓子作る教室に参加する。
私が参加することに目を丸くして驚いている白金さんを尻目に申し込みを始めた。
•••ところで、私がお菓子作りなんてあり得ないのだろうか?
私はそんなに女の子らしくないと思われていたのだろうか?•••少し心外です。
やっぱり長くなるので分割します。次回は懺悔会
次回お菓子教室イベ(withりんりん)
バンドをやってる女子高生が集まる羽沢珈琲店とかいう聖地。凄くいい匂いしそう。
紗夜さんはバンドリの中で一番人間臭い。といいますか、負の感情を描写しても違和感がない美味しいポジションにいますよね。
そろそろ暁斗視点書きたいなって思うんですけど、こいつが生まれさえしななきゃ氷川家は平和だったという闇が深すぎる事態になります。生まれる前に死んどくべき系主人公ってなんなんだろうね?
設定開示するなら誰のがいいですか?
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友希那
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こころ
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香澄
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おたえ
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その他