もし氷川姉妹に弟がいたら   作:タクティくす

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感想50件、評価数40突破しました。そしてお気に入り数1000人突破!本当にありがとうございます。これからも完結まで頑張っていきますのでよろしくお願いします。

活動報告にイヴちゃん誕生日SSの途中までを載せました。


いや、まじでごめんなさい。ただのクッキー作りなのに思ったより長くなった。切らなきゃ一万文字いきそう。紗夜さんは小難しく色々考えちゃうから必然的に文章が長くなるんだよ!

あこちゃんの誕生日完全に忘れてた。


甘くて苦いお菓子作り

お菓子作り教室当日、私と白金さんは羽沢珈琲店の前に集合した。

必要なものは全て主催者側が用意してくれているらしいので、参加費以外は殆ど着の身着のままだ。

事前に軽く予習はしてきたが、白金さんは「何かを作る時は我流で変な癖がつく前に、まずは先達からしっかりしたやり方を教えてもらった方がいい」と言っていた。とはいえ本人は引っ込み思案だから、裁縫は殆どネットで調べたものを自分で試行錯誤して体得したものらしいが。

•••それであの完成度の衣装や宇田川さんの私服をいつも手作りしているのだから、相当のセンスがあるのではないでしょうか?•••いや、寧ろ逆に我流でやってきて、何処かで行き詰まったからこそのアドバイスなのかもしれない。

 

 

だが、今回に関してはお菓子作りを習得するのは正直二の次だ。確かに今井さんのクッキーに近いものが作れるようになり、先日の今井さんが居なかった時のあの惨状を繰り返さないようになれればいいなとは思っている。だが、それ以上に白金さんの新たな挑戦を寿ぎ見守りたい。という気持ちと、日菜からある程度聞いた上で改めて、自分も羽沢さんから暁斗の普段の様子を聞いておきたいという考えだ。さらに白金さんからもRoseliaの練習時には聞くわけにはいけないことをこの機会に聞いておきたいという完全に私利私欲で邪な思いもある。

 

 

「氷川さん•••お待たせしました•••」

「まだ時間より前ですから、気にしなくて大丈夫ですよ」

 

白金さんが姿を現した。私はオシャレには疎いのであまりうまく表現できない。シンプルな色合いだが、白金さんの容貌と雰囲気も相俟って、さながら深窓の令嬢といったところだろうか?•••中身はかなり世俗的。というかお嬢様といった感じではないのだが。

 

「そろそろ時間ですし、入りましょうか。今日はよろしくお願いします。白金さん」

「はい•••お願い•••します」

 

扉を開ける、そこから先は見知らぬ世界。•••不本意だが、この間の宇田川さんたちの反応からも察せられるように私には似つかわしくないであろう領域だ。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「いらっしゃいませ!お菓子作り教室の参加者ですk•••ってRoseliaの紗夜さん!?燐子さんまで!?」

 

扉を開けたカランカランカランという音の後、来店者を出迎える太陽のような笑顔と鈴のような声。そして自分たちを見て驚愕へと目まぐるしく変わっていく表情•••ああ、なるほど。この微笑ましさはまさしく看板娘というほかない。珈琲店という店の性質も合わせ、来るものを癒すという意味ではこれほど適した存在は無いのではと錯覚しそうになる。見てるだけで癒されそうだ。これは繰り返し来たくなるのも無理はない。日菜が気に入っている理由もなんとなくわかる。•••まさか暁斗はこの娘目当てでこの店に通ってたわけじゃないでしょうね?もしそうなら別の意味でも話をする必要がありそうだ。

 

「ひょっとして、お2人もお菓子作り教室に?」

 

「はい。羽沢さん、今日はよろしくお願いしますね」

「え?•••羽沢って•••あっ•••」

 

知り合いがいたことに狼狽し、その理由を悟る人が1人•••まさか白金さんが、このお店が羽沢つぐみさんの実家だと気付いていなかったとは思わなかった。けれど、自分も日菜から話を聞いていなかったら絶対に気付けていなかっただろうし、あまり人のことを言えた義理ではない。

 

「はい。今日は一緒に頑張りましょう」

 

•••正直なことを言うと羽沢さんには嫌われてるかと思っていた。暁斗とは親しい仲だったらしいから。私は暁斗の敵と思われていてもおかしくないような立場にいる人間だから。

この笑顔もあくまで業務上の接待だけで、心の奥底ではどう思われているかもわからない。なんてこともあるかもしれないが、最悪、来た瞬間追い返されるかもしれないと考えていたから、1つ肩の荷が降りた気がする。

 

 

 

 

 

「あの、羽沢さん。今日作るアイシングクッキーとは一体どのようなものなのですか?普通のクッキーより難しそうですが•••」

 

アイシング•••icing?冷やすのだろうか?

 

「いえ!アイシングというのは普通のクッキーの表面を卵白やお砂糖で着色してデコレーションすることです」

 

「ですからやることは普通のクッキーを焼いて、絵を描くだけです」

 

「うまくいけばいいのだけれど•••」

 

少し不安になってきた。初めてだから当然と言えば当然なのだが。

一方で、白金さんはかなり落ち着いている。というよりかは今は深く考えず自然体。という感じだ。こういう時はもう少し慌てるタイプと思っていたのだけれど•••

 

「そんなに心配しなくても大丈夫ですよ!今から母が詳しく説明しますから見ていてください。それでもわからなかったらなんでも聞いてくださいね?」

 

そう言って準備に戻ってしまった。

 

『テーブルの上にある材料を分量通りに混ぜて、焼いて、絵を描いておしまい』

さっき羽沢さんはそう言っていたが、不安が残る。やはりもう少し予習してくるべきだったのではないだろうか?私とは違い、隣の白金さんはかなり落ち着いているのが羨ましい。ここに来ると決心するまでは恐らく葛藤や緊張もあったのだろうが、いざその場に立ったときには肝が据わっている。思えば、初ライブの時からそうだった。ライブ前は震えるほど緊張していたのに、ステージに立った途端人が変わったかのように堂々としていたし、途轍もない集中力だった。Roseliaのメンバーとして頼もしいことこの上ない。

 

ならば、私も1人でやりきろう。彼女の集中を乱すなどあってはならない。無粋極まれりだ。

 

 

そう、思っていたのだけれど────何をすればいいのかわからない。いや、手順はさっき羽沢さんのお母様から説明されたから理解している。けれど初めてだから困惑している。

こういう時日菜ならとりあえずやってみよー!といって我流でやり出す。今井さんは他の人と混ざる。湊さんは•••多分今井さんがなんとかする。宇田川さんは白金さんと一緒になるか羽沢さんに遠慮なく聞きに行くだろう。暁斗は•••どうするのだろうか?

 

「あの、紗夜さんっ?ど、どうかしましたか?」

蜘蛛の糸が垂らされた。ああ•••なんたる僥倖。なんたる慈悲だ。救いの光は今ここに。最早恥も外聞も要らない。

 

「すみません。お恥ずかしい話なのですが、何をすればいいかわからなくなってしまって」

 

「大丈夫ですよ!まずはさっき言った通り生地をこねましょう。生地ができれば、あとは型を抜いて焼くだけですから!」

 

「私がそばにいますから、わからないことがあれば聞いてください」

 

「羽沢さん、ありがとうございます。

とにかく、やってみます」

 

その後もバターの白がどのくらいか。生地がまとまった感じ。など言葉では説明しにくいし、されてもわかりにくいこともあったが羽沢さんが側にいてくれたおかげでやり遂げることができた。

 

生地を30分ほど冷やすため白金さんも混じり雑談となる。どうやら白金さんは上手くいったらしい。やはり白金さんは手先が器用だ。一方で私は初めてのことで戸惑い、羽沢さんに迷惑をかけてしまった。

 

冷やし終わったあと生地を薄くする際に定規を使ってしまったりと中々に恥ずかしい珍事もあったが、どうにか乗り越えることができた。

 

羽沢さんに上手く指導できなかったことを謝られたが、とんでもない。融通の利かない私のそばにいて、アドバイスもくれたのだから、こちらがお礼を言うべきです。それに一生懸命さが直に伝わってくるから仮に拙くても嬉しいですよ。そう伝えると嬉しそうにして、驚いて、悲しそうな顔になった。コロコロ変わる表情は大変愛くるしいが、いきなりそんな顔をされたので此方も驚く。

 

「羽沢さん?どうかされました?」

 

「いえ、驚いちゃって•••やっぱり家族なんですね」

 

「•••暁斗も同じことを?」

 

「いえ、『紗夜姉はきっちりした性格で融通利かないけど、お礼はちゃんと言う人だ』って」

 

•••少々腑に落ちない部分もあるが、現にこうして暁斗の言葉通りのことが起きている。そもそも外では私のことをどのように言っているのだろうか?

 

「あの子私のことをなんて言ってました?やはり•••」

 

そこから先は言えなかった。

気になるけど、聞くのが怖い•••馬鹿馬鹿しい。何を今更そんなことを。既に私は暁斗に取り返しのつかないことをしてしまっているのだから、憎まれこそすれど良く思われてる道理は欠片もない。

そう思っていたから返答は驚くべきものだった。同時に暁斗の危機的状況を知ることになる。

 

「そういえば暁斗くん•••氷川さんのこと悪く言ってたことって•••一度もないですよ」

 

「確かに、私も聞いたことないかもしれません•••」

 

•••は?•••え?いや、いくらなんでもそれはないだろう。あんな状態に追いやった張本人を憎まずにいるなんて、そんな事があり得るのだろうか?

本人を前にしては言えない•••とかならまだ理解できる範疇ではある。だけど、仲良くやっていた相手にすら一度たりともそのような素振りを見せなかったとなるとまた、話は違ってくる。溜まりに溜まった呪詛の毒を、負の泥濘を、憎悪の汚濁を吐き出さずにいるなら、それは果たして正気を保っていられるのだろうか?

 

私や日菜に対してだけでなく申し訳ないが色々と駄目だろうと言わざるを得ない両親に対してすらそのような素振りすら見せず、更には仲の良い友人達にすら愚痴1つ言わない。

 

私は無理だ。現に日菜には冷たく当たっていたし、張り詰めた弦みたいにピリピリしていた自覚がある。今にして思えばあれはひどい。

 

Roseliaの前にいたバンドは喧嘩別れではなく、ちゃんと円満に解散したが、完全に手前勝手な都合で脱退した。それなのに今でも私のことを応援して、Roseliaのライブは毎回参加して、最前列で応援してくれている彼女たちが良い人なだけで、相当私は駄目な部類な人だったと思う。

 

そんな駄目な私の弟の暁斗には怨まれていると思ってたし、それを改めて実感するためにここに来たのだが。予想外の事態に困惑する。

 

「紗夜さん、ど、どうしました?何か辛い事でもあったんですか?」

 

「いや•••暁斗は強い•••なと」

 

「ひ、氷川•••さん?」

 

ああ、駄目だ。罪悪感が込み上げてくる。吐き出さなきゃ壊れそうだ。ごめんなさい。弱いおねーちゃんで。ごめんなさい。私のせいで暁斗をここまで追い込んでしまった。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。

 

「紗夜さん!落ち着いてください!」

 

パンと手拍子が聞こえはたと気付く。どうやら思考に没頭してしまったらしい。

 

「ごめんなさい」

 

「•••あの、紗夜さん。もしよかったら話してくれませんか?暁斗君のこと。•••その、何があったのかを」

 

言いたくないならごめんなさい。とそう言われた。

•••良い機会かもしれない。彼女達にここで全て話し、断罪され楽になりたい。そんな卑小で身勝手なな我が身をどうか許してほしい。

 

「•••ええ。お話しします。少々長くなりますが、全部」

 

ついに真実の扉が口開く。そこには善も悪もない。あるのはただただ人のエゴと、儚くて悲しい家族の愛だけだった。

 

 

 

────暁斗は、私のために追い込まれたんです。




アイシングクッキーを冷やしたクッキーだと思ってた人はきっと私以外にもいますよね?

主人公もっとメンタル弱かったら楽になれてたのにね。なまじ強度高かった分外から見たらまるで大丈夫なように見えてた。

あこちゃんの話を頑張って7/3中にちょっとだけ書いた後は紗夜の懺悔書いて。その次は沙綾視点かな?それかお気に入り数1000人いったし記念で何か書こうかな?
裏話、IF、ヤンデレetc•••割とこの作品から派生できそうなネタ多いな。活動報告にその旨書きますね

設定開示するなら誰のがいいですか?

  • 友希那
  • こころ
  • 香澄
  • おたえ
  • その他
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