今回は序盤で多分みんなが思ってるであろう「姉と仲よすぎておかしい」のアンサーのお話。突き抜けたらこうなるよね(実体験)
矮小な
──その筈だった。本人もそうなることを是とし、堕ちていくつもりだった。それにより、自分の生の幕を引き、逆襲劇の幕を上げようとした。
しかし、幸か不幸か、氷川暁斗は生き残ってしまった。
──死んで逃げることなど許さない。
──楽になどさせるものか。
──道化のごとく踊り続けろ。
──元よりお前はそういうものだろう。
そう言わんばかりの降って湧いた幸運。ご都合主義。陳腐でありふれた正義感と自殺なんてするもんじゃない。という綺麗事により生き延びてしまった。しかし、綺麗事は実現されたら美談だろう。つまり、氷川暁斗以外から見れば実に良い話。自殺を止めた正義のヒーローの美談になる。...尤も当人にとってみれば堪ったものではないのだろうが。
死を、終わりを、そしてその先を見据えた彼の一世一代の大勝負、文字通りの命賭けは、相手がその席に着くことすらなく頓挫してしまった。終焉を望み、その先を信じ、その刹那を、希い恋い焦がれた。それでも、今この現実に生きている。生きてしまっている。
そんな彼に残ったものは焼き切れた心と血の通った骸の身体。生ける屍といっても相違ない。...堕ちて海の藻屑となった只人。決して輝くことはない地星。
────もう、氷川暁斗は変質してしまっていた。時間の流れは不可逆で、もう在りし日の彼は帰ってこない。
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お菓子作り教室から数日後、羽沢つぐみ、氷川紗夜、氷川日菜の三人がアタシの家に来た。理由はつぐから聞いている。暁斗のことで話を聞きたいらしい。あこは燐子さんに頼んで外へ連れ出してもらった。正直あこにはまだ早い。
正直なことを言うと、「何を今更」これに尽きる。
勿論つぐに対してではない。寧ろ今まで暁斗のことを深く聞かないで欲しい。とこちらから頼んでいたぐらいだ。今回は非常事態...というか、放っておくとあっさり暁斗が自殺しそうだから、つぐにも話しておいた方がいいと判断した。
本当は暁斗から「あこやつぐや沙綾やはぐみには言わないで欲しい」とずっと前に言われていたことだけど、そうも言っていられないだろう。それに、
...でも、この姉2人は全くもって別だろう。アタシのところへ来るのが正直遅すぎると思う。せめて居なくなってからすぐに来るべきだったろう。なんなら2年前に来て欲しかった気がしないでもない。ただ、あの時は暁斗の精神状態が脆すぎたからなどなどの理由があったから微妙と言うべきかもしれないが。
「...それで、何を聞きたいんですか?」
「えっとね...巴ちゃんの知ってる暁斗君のこと、なんだけど...」
つぐにそう言われても、そもそも何を話せばいいのかがわからない。私の知ってることを伝えるまでもなく、暁斗本人は姉2人が謝って来たら間違いなく許すだろう。いや、許すというのも語弊がある。...あいつは姉を
最初に会ったあの日の後、殴ったお詫びとしてラーメンを奢った。関係はないが、外でラーメンを食べたのは初めてだったらしい。
悪いと思わなくもなかったが、好奇心からどうして自殺しようとしたと聞いてしまった。
物凄く優秀な姉がいること。自分はそれに比べたらカス以下のカスであること。ずっとそれを比較され続けること。周りからボロクソ言われること。正直それに疲れてしまったこと。
でも、結局姉と比べて劣等な自分が悪かった。そうやって残酷な現実を他人事のようにケラケラと泣き笑いながら話していた。
だから、実はつぐもズレていた。そもそも許すもクソもない。優しいからとか悪く思ってないから大丈夫とかそういう問題じゃない。これはそんな簡単な話じゃない。
まず暁斗は姉達にも非があったと思えてすらいない。全部自分が悪い。...とことんまで低くなった自己評価の成れの果て。それが氷川暁斗なんだ。
暁斗本人も「姉は悪くないし、仲良くやってな?」とか言ってたけど、正直アタシは無理だ。
他のみんなには暁斗がある程度持ち直してからアタシが紹介した。
少なくとも、放っておくわけにはいかないと思ったからとりあえず...といった感じだった。
当人が話したがっていなかったし、私とてそこまで話したいわけじゃなかったから、みんなは、「優秀な姉がいて、その人に何から何まで比べられていて、家庭環境が悪い」ぐらいしか知らない。
だからみんなは暁斗がどこまで追い詰められていたか知らなかった。それ故に紗夜さんや日菜さんのことを応援できるし、間を取り持つことに協力もできるのだろう。寧ろ友人に対する至って普通で善良な働きかけだ。何らおかしいことはない。
でも、この2人は、暁斗の姉は...
「────あいつ最初に会ったとき何しようとしてたかわかります?自殺ですよ?自殺。」
あそこまで追い込んでおいて、謝ってそれでめでたしめでたしっていうのはいくらなんでも都合が良すぎないか?それを許容できるほどアタシは大人にはなれない。
息を呑む音が聞こえた。これはつぐも知らなかったことだ。当然驚いている。
「じ、自殺...うそ、嘘だよね...?」
「嘘なんかじゃないですよ。自殺です。死のうとしてたんですよ。駅のホームで」
駅のホームで向こうからふらふらと歩いてくるあいつとぶつかりそうになって、危ない奴だなと思って振り返ったら懐から何か白いものを出したこと。そこに「遺書」と書かれていることに気づいてダッシュで首根っこを掴みに行ったこと。あと一歩遅かったら死んでいたこと。
それらのことを話した。
あいつが書いた遺書はあの後本人が破り捨ててしまったため、何が書いてあったのかはわからない。けれど、家庭環境の悪さとかあいつ自身の呪詛を書いたと言っていた。
...どうやらショックを受けたらしい。自分もあこが自殺未遂を起こしたと聞いたら正気でいられる気はしないから気持ちはわからないでもない。
「そこまで、追い詰めておいて今更何なんですか?謝りたい?ふざけるな...!どれだけ自分勝手な都合で暁斗を追い込めば気が済むんですか!?」
多分これ暁斗にバレたらすげー怒られるんだろうな。何勝手に話してんだ!?って。でも言わなきゃ気が済まないし。多分誰かが言わなきゃいけないことだから。
「...それは...でも」
.
「あいつのこと本当に考えてるならもう関わらないでやってください。そっとしてやってください。」
この2人に悪意が無いのなんて、とっくの昔から知っている。アタシが暁斗の話を聞いて頭にきて文句を言いに行ってやろうとした時に諭すように姉のことを話していたからよく知っているとも。
ただ、当人達以外の周囲はそんなものお構いなしだ。彼らの関係がどう転んだって暁斗が傷つく未来しか無い。寧ろ環境は以前より悪化してるかもしれない。RoseliaとPastel*Palettesという2つの名のあるガールズバンドの存在がより一層比較対象の暁斗の背にのしかかる。より多くの人に存在が認知されてしまったから。より多くの人から弾劾される暁斗のことを少しは考えてやって欲しい。
今の暁斗はつぐだけじゃなくて誰ともまともに話していない。勿論挨拶をすれば挨拶はしてくれる。でも、他人行儀。いや本当に他人と変わらない応対だ。
どこへ行ってたとか何があったかはわからない。けれど、恐らく限界がきたのだろう。いや、それも違うか。そもそも自殺まで行ってたんだ。限界スレスレどころかとっくに超えていたと考えるべきだ。もしかしたら表面は取り繕ってるだけで心が壊れてしまったかもしれない。
それでも貴女達は暁斗とよりを戻したいと思いますか?
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誰も何も言えないでいた。場を支配しているのは重苦しい沈黙。
自らの生を放棄するほど追い込まれていたなど知らずにいた3人は動揺を隠せずにいた。
巴としてはもう言うべきことは何もない。普段の話は自分よりつぐの方が詳しいだろう。
この流れを切ったのは紗夜だ。
「...暁斗が変わったのは、やはり、その日がきっかけですか?」
青くなった顔で、やや震えながら、小さな声で問いかける。
「その前の暁斗とを知ってるわけではないのではっきりとは言えませんけど、そうだと思いますよ」
その答えに紗夜と日菜は明らかに気落ちした様子だ。2人が得ようとした問いの答えは「自殺をしようとするほど追い込まれていたから」だったのだからそれもそのはずである。
ここに来て今まで沈黙を保っていた日菜がようやく口を開いた。
「...どうしよう...なんて、なんて謝ればいいんだろう?おねーちゃん。あたし...」
嗚咽が漏れる。つい先日、自分が暁斗を追い込んでいたと初めて気がついたばかりであった。今彼女は、具体的にどれほど追い込んでいたかをようやく自覚して罪悪感に支配されている。
それは紗夜も同様だ。しかし、日菜と違い自身が追い詰めていたことをある程度自覚していたからこそ余計にショックは大きい。
「謝って謝りきれない。暁斗のことを考えるなら...今のままでいるのが暁斗にとって一番いいんだと思うわ...」
「紗夜さんッ!?」
「おねーちゃんッ!?」
それは暁斗のことを第一に考えた発言でもあり、暁斗から逃げている発言でもあった。
「...そうですね。それが一番暁斗が傷つかない」
普通はそれが一番無難だろう。無闇につついて刺激するのは良くない。
──そう、
宇田川巴はなんてことは無いように、当たり前のことを諭すように、それでいて爆弾級の発言を投下した。
────ただ、暁斗のやつかなりのシスコンですよ。
まだ希望は0ではない。しかし、同時にそれはどうしようもなく、救いようがないことを意味してもいた。
本編では絶対にやりませんが、ぶっちゃけ既成事実作って囲うのが一番手っ取り早い解決策だと思います。子は鎹って言いますしね。
でもCV.聖徳太子だとインポなんだよな
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正直ラブコメが一番ハードル高いんだよね。
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