氷川父「姉なら出来たぞ?姉なら出来たぞ?姉なら出来たぞ?」
でも、ある意味ではあのヤンホモの方が何倍もマシとかいうね。
何のことかわからない方は「ヴァルゼライド閣下なら出来たぞ?」で検索してみてください。
遂に暁斗のシスコンっぷりが明らかに。どれくらいかと言いますと自殺未遂と今から沙綾に色々ぶっちゃける以外の本編中の暁斗の行動原理は最終的には姉に行き着くってぐらいにはシスコン。
使命を持って生まれることが幸せなのか不幸なのかはわからない。
明確な意図や期待を持って、祝福されるなら、必要とされ、愛されるのならば幸福なことだろう。一方で、その役割以外を認めず、強制するという側面もある。そもそも子が生まれること自体が親のエゴとも言うべきものなのだからこれはある種の必然といってもいい。
結局当人達がどう思うか、どう捉えるかなのだ。生まれ生きていること、必要とされることに喜びを見出すのも、それを操り人形やロボットのようだと考えるのも当人の受け取り方次第だ。
ただ、殺すために産むというのは流石に本末転倒というべきものであったと言えるだろう。そのために態々十月十日を掛けるのは時間の無駄と言っても差し支えない程の愚行でしかない。そういう意味では氷川暁斗とはひどく滑稽なものである。本来生まれる必要すらなかったことは火を見るよりも明らかだ。
ならばその滑稽さを帳消しにするだけの物が無ければ氷川暁斗の存在そのものがガラクタ同然だと言えるだろう。慈悲の心で役目を与えるならいてもいなくとも変わらぬ道化師が関の山。
氷川暁斗はまだその生に見合う対価を見つけられていない。そもそもこの世のどこかに存在するのかどうかも定かではない。
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ひとまず一旦家に帰って腹を満たした。そういえばこの頃は姉と同じ時間を過ごすことが多くなった。まあ外に行く機会が減ったから必然的にそうなるんだが。
別に姉は嫌いじゃないから構わない。今のままなら特に苦しくないから、放置してくれるとありがたい。
改めて自分がなんなのかとかこれからのこととか色々考えたけど、結局この2人の姉がいる以上何をしたところでその先は袋小路だ。俺も考え無しじゃないし、現状の突破口はあるにはある。
高校卒業した後は、2人とは関係のない所へ逃げる。親は元よりそのつもりのようだから引き止められることはない。幸いなことに俺と姉達の容姿はそれほど似ていない。だから遠くへ行けばなんとかなる。”Pastel*Palettesの氷川日菜の弟の存在と姿形“がテレビに映らない限りは例え名前がバレても同姓同名の別人として生きていける。
だから今は前を向けばいい。姉が持って行ってしまったものなど戻ってくることはないし、今更取り返す気にもならない。そこに嘘偽りは何一つない。でも、喉に小骨が刺さったみたいに心に何かが残ってスッキリしない物がある。それは共に過ごしてきた彼女たちへの惜別、未練によるものなのかはたまた別の何かか。その答えはこれからきっとわかるだろう。
「この時間から何処へ行くの?」
見つかっちゃった。少しばかり面倒くさい
「ちょっとコンビニ」
で買い物した後に沙綾とお喋りだ。
「あまり遅くなってはダメよ?」
「なるべく早く帰るよ」
恐らくは楽には帰してくれないんだけどね。でも一日家に帰らないなんて少し前はよくあったんだし今更だ。特に問題はないだろう。紗夜姉の小言だけが杞憂だが、今までと何か変わるわけじゃない。寧ろ半分嘘とはいえ行き先を教えるだけマシだろう。
実のところ沙綾に何から話すべきかはまだ決めかねている。
どうせ今生の別れだ。別に嫌われても痛くも痒くもないし、いっそのこと全部話してしまおうかと思わなくもない。
...そんな身勝手な俺が嫌いだ。結局愚痴を吐き出して楽になりたいだけなんだ。そんな楽な方に逃げていいはずがないというのに。
とはいえ、向こうが納得して離れてくれるならそれでいいんだし、相手に合わせればいいか。
もう要らないんだよ。俺にとっても皆にとっても、「氷川暁斗」は邪魔なんだ。用済みの役者は速やかに舞台から降りるべきだろう。
考え事をしていたら、あっという間に着いてしまった。先ほどとは違い夜の帳が下りており、街灯だけが辺りの道を照らしている。咲いている白い金木犀の香りがどことなく心を切なくさせるのはどうしただろうか。
ベンチの上でサファイアみたいに綺麗な双眼がこちらを見据えている。
「...よかった。ちゃんと来たね」
「押しかけられたらもっと面倒なことになるからな」
小心者なんで、チビって警察呼んじゃいそう。
「...じゃあ、お願い」
おそらくこれが最後だろう。楽しい時間はこれで終わりだ。
...ぶっちゃけたこと言うと未練が全くないわけじゃないんだ。俺とてこうすることには忸怩たるものが有る。でも、これ以上こいつらといると、俺が壊れるから。これで全部終わりにしたい。そう言葉にはしないし、釈明もしないけど、唐突で身勝手なことをしているのは申し訳なくは思っている。
でも、俺は、どうしようもなく弱いから。姉という存在の重さに耐えきれなくて、今にも潰されそうなんだ。
色々とそれっぽいこと言ってるけど、要は早く楽になりたくて、死にたくて、色々なものがどうでも良くなっていて、自暴自棄になっているだけなのかもしれない。
積もり積もった自壊の渇望。何故か
「長くなるから、飽きたら帰っていいよ」
最期の予防線だけはちゃんと貼っておく。聞きたくないならいなくなって欲しい。正直聞いていて気分のいいものじゃないだろうから。
少しずつ少しずつ、半ば独り言のように話し始める。
この場に竪琴なんて小洒落たものがないから
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氷川日菜は天才で、氷川紗夜は秀才である。その言葉に間違いはない。日菜姉の持つ才能は紛れもなく怪物の領域にあるから、それよりは控えめな紗夜姉は人の範疇であると言える。
しかし、それはあくまで両者を比較した時の話だ。凡人から見ればどちらも類い稀なる才を持って生まれていた。その在り方は凄烈で眩しくて、そして何より格好良かった。
「その輝きに身も心も灼かれたよ。あんなもの見せられたら他のものなんて目に入らなくなった。俺もあんな風になりたい。そう強く強く願った」
あの輝き、煌めきを前にして目移りなどできる者などこの世に果たしていたのだろうか?常軌を逸した感性と圧倒できるに強靭な個我を持たぬ限り必ず魅了されるに違いない。
追おう。追い続けよう何処までも。その輝きへ手を伸ばし続けて走り続けていたい。そして────
...その時胸に抱いた情景が氷川暁斗の胸裡に刻み込まれた
「でもさ、現実は非情だったよ。俺はどうしようもないほどの出来損ないだったから、2人の足元にすら及ばなかった」
よく考えなくても、あの2人に届くと思うことそれ自体が身の丈をわきまえておらず、傲慢不遜で、思い上がりも甚だしいことなのだが、この時はそんな単純なことさえ理解できずにいた。なぜなら自分は
しかし悲しいかな。氷川暁斗にはあれらに匹敵するものはなかった。
両親は落胆した。本来は産むつもりもなく...更に、後になって発覚したことだが、
故に氷川暁斗の苦難は必定のもの。避けようがなく、誰もが否定しようがない当然の理屈。「氷川暁斗は姉より劣る」覆しようがない残酷な現実が幼き愚か者に襲いかかった。
普通ならば心が折れてもおかしくない環境だ。感性の程度により多少は変わるだろうが、少なくとも何年も耐えられていいものじゃないだろう。ところが、暁斗は平然と...とまでは言えないが、全てを投げ出そうとしたその直前まで、あろうことか7年以上も耐え抜いてしまっていた。それが意味するものはただ一つ。それは”まとも“じゃないということ。異常な環境下で異常ではなく、ごく普通の倫理観を持ち、平凡に見えるということ自体が異常事態であるのだから。
それを支えていたのはひとえに姉への身を焦がすほどの憧れ。不撓不屈、例え今は届かなくてもいつかは天上の星に手が届くと信じていたが故のもの。“諦めなければなんとかなる”そんな自己陶酔で、根拠のない思い上がり。たったそれだけで耐え抜いてしまっていた。
その精神性、苦痛と知りながらやると決めたら進み続けられる歪さは”姉に並び立ちたい”たったそれだけの稚児のような願いから来るもの。早い話が「おねーちゃん大好き」。たったそれだけの理由で走り続けることができてしまっていた。皮肉なことにそういった身内に対する重く深い愛慕。それだけは姉とそっくりだった。
しかし、気持ち1つで現実が変わるわけではない。精神力で世の中の道理が捻じ曲がる。そんなことは起こり得ない。当然ながら苦難は続いていく。いくらやっても先行きが見えない暗い道。与えられるのは『お姉さんはもっとすごい』『お姉さんならもっと...』『姉に才能を持ってかれた』『氷川家の恥晒し』『出来損ない』そんな言葉以外ない。何故なら結果が全く伴わないから。単純明快で否定のしようがない理屈が
やがて暁斗は磨り減り磨耗していった。表情は消え、感情の波もなくなった。それでも折れていなかったのは、たった1つの願い事。幼き頃に己自身への
「色々頑張ったんだ。まあ、全部ダメだったけどさ」
努力が必ず報われるとは限らない。そもそも努力がきちんと実ることも立派な才能だ。それを極端に表したのが紗夜だろう。日菜のような反則じみた記憶力があるわけではないが、「やればできる」を体現した存在。そんな彼女を追い続けるとはどういうことかは語るまでもないだろう。
「でも、折れるわけにはいかなかったから頑張った...うん。頑張ったと思う」
ある時から、思い始めるようになった。自分は姉にとって邪魔なのではないか?と。単純な話自分自身に割り振られたリソースは無駄なのではないか?その分を姉に回した方がきっと素晴らしい。その考えは周囲との見解も一致していた。『氷川の恥さらし』『姉のお荷物』
それらを間違っていると否定しきれる人間はこの世のどこにも存在しない。それ程までにあの2人は素晴らしい人間だったから。弟である氷川暁斗の存在そのものがあの2人の足枷になっている。その事実は心を確実に壊していった。
────ああ、嫌だ。認めない。あってはならない。それだけは絶対に...嫌だ。姉にまで否定されたくない。やだ。見捨てないで
その狂気は回転率を押し上げた。それによる性能の向上。それに呼応するかのように氷川紗夜は恐怖し、逃げるように差を広げる。それに負けじと暁斗は身も心も粉にして追いすがる。時々日菜が顔を見せて一気に2人を追い越して...また同じことの繰り返し。負の螺旋は続いていくかに思えた。
しかし、その螺旋はあっけなく終わりを告げた。なんと信じられないことに、氷川暁斗が姉を上回ったのだ。たかが都内の模試、されど今まで一度も姉以上のものを残せなかった暁斗のことを鑑みればまさに快挙といってもいい。耐え難きを耐え、忍び難きを忍び続け、遂にもぎ取った
氷川暁斗が生きているのはフィクションの世界や物語ではないのだから、努力の末に姉に勝てました。ちゃんちゃん♪で終わるわけではない。現実である以上、その先がある。
『どうせズルしたんだろ』
『まぐれ』
『そもそもお姉さんの費やした時間を考えれば寧ろ普通』
『それだけ?』
一度だけではまぐれもあり得る。だから何度も勝ち続ける必要がある。追う側と追われる側と立場がはっきりと逆転するまで、いやした後も勝ち続けなければならない────そう、勝利からは逃げられない。
さらに、紗夜と日菜の強みは万能性だ。つまり1つ勝った程度では話にならない。暁斗はありとあらゆるものを削り全身全霊をかけて、漸く1つだけ、たった一つだけの勝利をもぎ取ることしか出来ないのに、それを継続し、その上で更にあれもこれも...その事実を突きつけられた時に、とうとう
心身を限界まで削ってやっと掴めたものは、足がかりと言うことすら烏滸がましい。その現実に遂に
「でもさ、やっぱ無理だったんだ。どう足掻いても希望なんて見えやしない。あるのは敗北より辛い激痛だけ」
一度勝っただけでは足りない。勝ち続けなければならない。あの怪物たち相手に不屈の心を持ってそれを続けられるほど、狂人にはなれず、負け犬に成り下がった。
「だから逃げ出した。沙綾も知っての通りだよ」
だから
「まあ、それは巴に邪魔されたんだけどな」
ケタケタと笑う顔から、一瞬だけ湧き出る憤怒からいかに死にたかったのかが伺える。
「でも、それすらも疲れた」
どうでもいいと諦めた。流されるまま彼女達と出会った。
「人間って案外逞しいもんでさ、少ししたら『しょうがないから』って案外諦めついちゃってさ」
姉に追いつくことはもう諦めた。無理なものは無理なのだから。人が生身で空を飛ぶことは出来ないように。生身で深海や宇宙では生きていけないように。姉達は次元が違うのだからもうどうにもならない。
「ならせめて、紗夜姉と日菜姉の迷惑にならないように生きようって思ったんだ」
根本にあるのは居たたまれなさ。両親は嫌いだ。でも、姉は憧れだし尊敬している。嫌うところなど何一つない。でも、姉と比べられるのはもう嫌だ。痛いし辛いし逃げ出したい。そんなわがまま。
言い方が悪いが沙綾達は暁斗の手前勝手な都合で利用されていたことを暁斗は告げた。
「それに...もう嫌なんだよ。また比べられてボロクソ言われて、その上お荷物になるのなんて」
そこにあるのは自己嫌悪。姉の枷になる自分自身が嫌いだと吐き捨てる。
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開いた口が塞がらないとはこのことだろうか?どんな言葉をかければいいのかわからない。
暁斗の言っていることは第三者から見たら言い訳のようなものだろう。「もう無理だから」と諦めている自分を正当化していると言われたら否定できないのかもしれない。
暁斗もそれがわかっているから今まで口にすることは無かったのだろう。だから今するべきことはコメントじゃなくて...
「なんで、CiRCLEのライブの後いなくなっちゃったの?ううん、どうしてそのタイミングで遠くへ行くことを決めたの?」
数瞬こっちを見て惚けた後にため息をついた。
「誰から聞いた?千紘さん?」
「お父さんから」
「約束したのにな...まあ仕方ないか」
「どっから話せばいいのかな?...ああ、そうだ」
まだまだこの程度では終わらない。暁斗の独白は続く。
この毒抜きで何かが変わることを私は今も祈っている。
長いから分割。
花音SSを書いてた時は暁斗の強みは”対人”って考えていたんですが、いざイベストを読み返してみるとそこに活路を見出すのは無理でした。
日菜は、持ち前の観察眼や尋常じゃない嗅覚とワンダラでの成長によって、紗夜は秋時雨以降は”戻った“ことでかなり安定した対人性能を誇っています。
マジで隙が無い。この2人に“勝つ”のは暁斗にはもう無理です。精々人参や味の薄いものが食べられる。地図記号を読めることぐらいしかないね。
次回は多分さよひなヤンデレか誕生日近いしモカちゃん過去篇のどちか。
ぶっちゃけ暁斗が一番病んでるって思ったやついるだろ?
設定開示するなら誰のがいいですか?
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