もし氷川姉妹に弟がいたら   作:タクティくす

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いい夫婦の日ということでちょっとした雑談をば。

√入ったこころんは暁斗を一生手放さないので、相性は規格外。ただしルート入らないと相性は最悪。

次点で友希那千聖美咲辺りの若干冷めてる人たち。
特に暁斗は銀髪ロリに縁があったりするかも元ネタ的に。その場合本編前に友希那が逆レかますんだよなぁ...


勝利とは

────勝利ってなんだろう。何を以てそれを誇ればいいのだろう。

 

勝利(しょうり)は、争いごとなどに勝つこと。対義語は敗北。なお、多くのスポーツなどにおいて勝利でも敗北でもない引き分けが存在するが、このことを敗北と引き分けを合わせたものとして未勝利と呼ばれる。戦争においての勝敗は、戦争・作戦目的を達成したか否かによって判定される。

 

辞書を引いたらおおよそこのようなものが出る。

 

勝利とはどんな姿形をしていても、ありとあらゆる生物が目指す結果。弱肉強食、生存競争というように、生きることとは即ち闘争の連続であり、戦って勝ち続けなければ死あるのみ。

 

とはいえ、この平和なご時世、人間社会において命のやり取りが是とされている場所は少なくなっている。少なくとも今俺がいるこの日本ではそうだ。しかし、形を変えて闘争は残っている。受験競争、就職活動。もっと言ってしまえば商いだってパイの奪い合いという名の立派な戦いだ。

 

それが自然で、当たり前の行動原理。負けてばかりでは生きていることさえ難しく、またそれを無制限に敗者を許容できるほど世の中は甘くないのが現実だ。

 

故に誰もが勝利を目指す。

 

 

ここまでは当たり前だ。最早前提条件といっても過言ではないし、誰に聞いても否というものはいないだろう。

 

ならばこそ、ここまで要件を定義した際に生じる疑問がある。

 

 

何故、俺は一向に”負け”ているのだろうか。敗者のままでいるのか。

自分で言うのも変だが、頑張っていると思う。わかりやすいところだと、羽丘に特待で入学だってしている。少なくとも俺の暮らしている空間内ではそこそこ上位の結果を出しているはずだ。

 

でも一向に勝ったと思えない。

 

誰もそれを評価しない、認めない。大多数の見解という圧倒的民主主義。

 

紗夜と日菜()に比べたら大したことないから。彼女達はより短い時間でお前以上の結果を出すからという現実的な理屈。例え誰が言ってもその現実は否定しようがないもので、事実あの2人はそういう存在で、俺もその程度のモノでしかない。

 

 

 

では、改めて問おう。勝利とは何だ?何を以て俺は勝ったと言えばいい?

 

まずは姉達の例で考えてみよう。こういう時は身近な人を参考にしてみるのが基本中の基本だろう。

 

 

 

まず紗夜姉の場合、勝利とは「辿り着いた極点が指し示すもの」だろうか。

 

姉の所属しているバンドであるRoseliaが掲げている「頂点へ狂い咲け」そのままで、早い話がゴールすること、或いはゴールそのものである。血の滲むような努力の果てに掴み取った結果、極致であり、目標を叶えた時が、彼女にとっての「勝利」だと言っていいだろう。先の見えない荒野を歩み続けていく、情熱的で、求道者のあり方だ。正道故に険しい道だが、賛同者も多いだろう。

まだ足りない。自分はこんなものではない。思い描いた理想に向けて貪欲に、ひたむきに走り続けるそのあり方はどこまでも傲慢でありながら、それと同時に謙虚でもあり、故に雑魂とは比べ物にならないぐらいに強烈だ。だからこそ俺の目にはとても眩しく映っていた。憧れていた。

 

一方の日菜姉は「走り抜けた後に振り返るもの」といったところだろうか?

 

彼女にとってのゴールなんてどこにあるのかは不明瞭だ。そもそも日菜姉はそういう類の目標を持つことはない。理由は単純明快。何故なら“出来てしまう”から。言葉に出すのも馬鹿馬鹿しくなるほどの圧倒的な天賦の才能を持った天災、それが動くだけで、紗夜姉ですら霞んでいくほどの華々しく鮮烈で凄烈な事象を引き起こす。

彼女からすれば呼吸や声を発するのとなんら変わらぬ当たり前のことに過ぎなくても、後塵を拝することは決してない。

紗夜姉と違い“気がついたら”勝っている。そんなことは全く思慮に入れておらずとも、彼女の才能が、そんな不条理を可能にする。

ふと振り返ると存在する残骸、彼女にとって勝利とはそのような代物だ。破格の才、圧倒的な無双。それに憧れるのは最早必定じゃなかろうか。

 

 

 

さて、自分のことに焦点を戻そう。俺はこの2人と比べて如何様か?

俺はあんなふうに風に格好良く生きられない。

 

にんじんが食べられる?

ポテト欲を抑えられる?

地図記号が読める?

薄味のものを好きになれる?

 

 

俺が明確に姉に勝っていることなんてこれぐらいしかない。どれも彼女達の欠点と言うにはあまりに些細なことで...どうでもよすぎる。こんなことでしか自分が優っている部分を見つけることができない。

 

それ以外は誰がどう見ても姉の方が優っているし、姉のポテンシャルと最近の様子を鑑みると今現在姉よりはできると言える家事や料理なんかもあっという間に追い越されるのは火を見るよりも明らかだ。自他共にそういう認識を持っている。

 

つまり俺は周囲に”負け”と判断されている状態で俺の”勝利”とやらを見つけるしかないってことだ。よもや“ポテト我慢できるよ”。“地図記号読めるよ”と胸張って生きていくわけにはいくまい。

 

それ以外の全てにおいて圧倒的に負けているのだから。別に卑屈なわけでも後ろ向きというわけでもない。俺個人が都合のいい解釈をしたところで、それが他者の認識である以上それが事実で現実だろう。

 

果たしてこんな状況で勝利とやらは一体どこに存在しているというのだろうか。

 

爺さんが言っていた俺“だけ”の独りよがりの勝利の形をどうやって見つけるべきなのだろうか?

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ここまで暁斗の話を聞いてきた身として、暁斗の境遇は流石に不味いものであると言わざるを得ないし、同情だってしている。理解だってできている。暁斗の言う通り確かに無意識のうちに暁斗とお姉さんを比べていたことだって否定しない。「似ていない」と思ったし、お姉さんたちが凄い人だと思ったことに今更言い訳できるわけでもない。

ああ、理解できるとも、私だって怖い。ポピパのみんなが今までと一転して自分に対して白い目を向けるなんてことになったら耐えられるかわからない。そもそも暁斗にそんな目を向けられることが堪らなく嫌だからここにいる。

 

だから気持ちはわかるし、共感だってしている。

 

けど、それ以上にふざけるなと叫びたい。何を勝手に切り捨てているんだ。何を勝手に諦めているんだ。私の中の氷川暁斗はただ()()()()()な姉に塗り潰されるものじゃない。

 

これはこれを聴いている()()()も同意見なはず。

 

でも、今それを伝えたところで、ダメだ。暁斗には響かない。取るに足らない有象無象、路傍の石くれ、塵芥。暁斗がそう判断して切り捨ててしまった私の想いは届かない。

 

なら、私のじゃなく、暁斗自身に波紋を呼び込む何か、今こうして奇跡的に繋ぎとめられているうちに、何か、何か言わなくちゃ。

 

もう少し、もう少しなんだ。さっきから感じている何か。暁斗の言動と何かズレているもの、見落としている大事なもの。それがあるはずなんだ。探せ探せ、記憶を洗い直せ、脳細胞のありったけをフル回転させろ。足りないなら、ない部分を総動員だ。この機を逃したら、もう次はない。諦めなきゃいけないんだ

 

諦めなきゃ...諦めなきゃ、諦め...ん?

 

「ねぇ、暁斗?」

 

「なに?」

 

「なんで、お姉さんたちは諦めないの?」

 

そう、これがずっと引っかかっていた。

 

一番最初に諦めるべきはそこだろう。暁斗本人がそれは一番わかっているはずだ。本人の言う通り、傍目から見ても正攻法で勝ち目など万に一つもありはしないのに。

 

暁斗はそういった結果で測れる人間じゃないのに。どうしてそうやって一番辛くて苦しくて、報われることが無い選択肢を取ろうとするのか。

 

暁斗は生粋のマゾヒスト、というわけじゃない。辛いことや苦しいことは辛い、苦しい、嫌だと思える感性をしている筈なのに。そこに悦楽を見出しているわけじゃないというのに、なぜなのだ。

 

「暁斗はどうして、私たちを置き去りにしちゃうの?」

 

あれだけ大切だと言ってくれたのに、どうして捨てちゃうの?

私は嫌だ。嫌だ。離れたくない。行かないで...

 

そう言外に訴えて暁斗の目を見据える。

 

ここに来て初めて暁斗の瞳が揺れた。本人すら自覚していなかった度し難い矛盾。“絶対に叶わないもの”を追い続けるその破滅的な在り方を今この瞬間に漸く認識したのだ。

 

 

「...なんでだろうな?」

 

...惚けているわけじゃなさそうだ。本当にわからないのだろう。その様子から一つの仮説が導き出された。

 

もしかして暁斗って、()()()()()()()()んじゃないか?小さい頃からお姉さんに憧れ、比較され続け、蔑まれても尚折れていないと言えば聞こえがいいが、もしそれしか選択肢がなかったとしたら?

 

自殺という逃げの手段すら封じられ、萎えてしまったと言っていた暁斗は、姉の背を追う以外知らないんじゃないだろうか。

 

確かに一見すると、姉から逃げて私たちと居たのかもしれないけど、もし完全に心が折れていたなら、態々姉がいて、進学校である羽丘を選ぶ必要もない。他の学校でも特待はあるし、羽丘より幾分か楽だったろう。

これについては進学校だから選んだと言えなくもないかもしれないけど...

 

 

「...ああ、そういえば、それしかしてこなかったから」

 

本人の口からそれを断定する言葉が漏れ出た。幼い頃に感じた憧憬に暁斗は灼かれていたのだ。眩い光に目がくらんでそれ以外の選択肢を失った。 

 

確かに暁斗の両親は控えめにいって屑だと思うけど、暁斗自身の意思がその道を選んでいたんだ。

 

 

「暁斗だけが苦しむ必要なんて無いよ。そんな辛いことしなくていいよ」

 

これ以上暁斗が傷つくのなんて、私は見たくないし、お姉さんだって見たくない。逃げたっていい。暁斗は十分がんばったし、少しぐらい休んだっていい。

 

 

「...誰が許すんだよそんなこと」

 

「私が許す。巴やつぐみが許す。あこやはぐみやみんなが許す」

 

それじゃあ足りないかな?

 

 

「...無理。結局少数じゃん」

 

 

結局俺は塵屑なことに変わりはないだろうと暁斗は吐いて捨ててしまう。

 

今漸くわかった。暁斗の問題点は大きく分けて二つだ。

 

 

一つは先程からも出ているが「諦め切れていないこと」

惰性とまでは言わないが、ズルズルと引きずりながら燻っている。他に選択肢を知らないから、今更それを選べないという保守的な思考。

 

もう一つはこれまた単純明快だ。「自己評価が低すぎる」こと

元がどうだったかは知らないが、暁斗の取り巻く環境は自己肯定感が低くなるのは無理はない。暁斗の抱える問題は大半がこれに起因するものだろう。勿論お姉さんと比較されること自体はなくなることは無いだろう。けれど、自分を認めることで傷は浅くなるし、違う生き方だってできると思う。

 

 

暁斗に足りないのはたったそれだけ。自分自身を信じる勇気そのもの。

だから、どうか気づいて欲しい。

 

 

されど、言葉は届かない。氷川暁斗は振り返らない。鈍足だろうが進み続けている以上、そんなことは起こり得ない。愚かさを知ってなお、止まることはできない。否止まり方を知らず走り続ける。

 

 

 




香澄に沙綾は救われた。けどそれと同時に暁斗の居場所を壊していた。
だからこそ沙綾の出番が多いし、暁斗に対して説得力があるのも沙綾。
(実はあこと燐子が一番早く事を片付けられるとか言っちゃダメよ?)

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