幼馴染は素直になれないどころか冷たい気がする 作:バタースコッチ
俺は生まれてから一度もモテた事が無い。
何でモテないか、俺にも分からない。
ナルシストって訳でも無いが、そこまでルックスは酷くないと思ってる。
俺には1人、幼馴染がいる。
周りには優しい癖に、俺にだけは冷たい。
そう、俺にだけ…冷たい。
別段変な事をした事も無い、それなのに冷たい。
そんなあいつは、何も最初から冷たかった訳でも無い。
大体中学に入ってからだろうか、所謂思春期ってやつだ。
それまでは普通に仲良く話してたと思う、思春期に入ってから冷たくなってきたが。
そんな幼馴染、桜もちはクラスの人気者だ。
俺には冷たいが、他の人間にはむしろ明るく接してる。
そして、男子達からの評判も凄い。
笑顔が可愛いとか、太ももが好きとか、罵られたいとか、何というかコアなファンまで居たりする。
そして、その矛先は俺に向く時がある。
理由は簡単、俺がもちの幼馴染だからだ。
幼馴染なんだから甘々な展開とかあるんだろ?って聞いてくる奴も結構いるが、そんな事は無い。
俺にだけ冷たいんだ、甘い展開はおそらく来る事は無い。
少しでもデレというか、甘えてくれればまだ可愛げがあるのかもしれないが。
ピピピ!ピピピ!
目覚ましが鳴る、今日も朝が来た。
もう大学3年になり、年齢も成人している。
それなのに、朝起きるのは辛い。
時刻は6時、普通なら後もう少し寝れると思うが俺の住んでる所は大学より少し距離がある。
その為多少早く起きなければ間に合わなくなる。
そしてもう一つ、俺が起きなければならない理由がある、それは…
コンコン「…起きてる?」
ノックが聞こえる、これが俺が起きなくてはいけない理由。
毎日大学がある日は必ずこれがある、近くに住んでる幼馴染、桜もちが朝起こしに来るのだ。
俺の家にも親は居るが、所謂顔パス状態ですぐ迎えてしまう。
起こされる俺としては、もう少し寝ていたいがずっと寝ていると
ガチャ「まだ寝てるの?早く起きなさいよ」
問答無用で中に入られてしまうのだ、鍵を付けた方が良いのではと思った事もあった、が…起こされなかった場合確実に遅刻してしまうと思うと付けるに付けられないというのが現状だ。
だから鍵は付けられない
「早く起きなさいよ、遅刻するんだけど」
「…zzZ」
まだ眠いのか、俺はまだ起きられない。
しかしそろそろ起きないと
「早く起きなさいって言ってんでしょ!」
もちはそう言うと何故か手に持っていたピコピコハンマーで俺を叩いてきた。
ピコピコハンマーなのだからダメージは無いとは思うが、音がとにかくうるさい。
「うぅ…後5分…」
「ダメ、起きて、アンタと一緒に遅刻なんてもち嫌だから」
そして俺は布団を引き剥がされた、正直寒い。
だが寒くなったおかげなのか、眠気は消えてきた。
「寒っ…」
「ほら、早く起きて?下でおばさんが朝ご飯用意してるから」
「ったく…少しは優しく起こしてくれよ、もち」
これが俺ともちの朝の日常
甘さなんてこれっぽっちも無い
これを見てまだ幼馴染が居る俺を羨ましいと思う奴が居るのだろうか?
「あらもちちゃん何時もありがとねぇ、朝ご飯食べる?」
「いえ、もう食べたので大丈夫です」
「…俺の飯は?」
下に降りるとあるはずの朝食が見当たらない
「あら○○、起きるの遅いからもう片付けちゃったわよ?」
「…おぅふ」
結局俺は飯を食べずに家を出た、もちは俺の後ろを歩いている。
「はぁ…腹減ったな…」
本来朝食を食べてから家を出るのが日課の為、今日食べれなかったのは正直言うと辛い。
だが、起きれなかった俺にも非がある為何も言えない。
「…○○」
「ん?」
振り返るともちが右手に白い物を差し出していた。
「これ、食べれば?」
もちはこちらを見ようとせず、それを差し出した。
「もち、それって…」
「いちご大福」
もちは和菓子が好きだ、その中でもいちご大福は特に大好きだ。
そのいちご大福をあげるというのは、滅多な事だと思う。
「良いのか…?」
「要らないなら別に良いけど」
「いや、貰うよ、ありがとう」
だがもちは知らない、俺が和菓子を食べれない事を。
何年もずっと一緒に居るが、あいつの前で和菓子を食べる時は割と痩せ我慢しながら食べていた。
小さい頃なんて食べた後理由をつけてトイレに行っていたほど、和菓子が苦手だ…
「ふんっ…」
もちは俺にいちご大福を渡すと、早足で行ってしまった。
俺はというと…
「…これ、どうするかな?俺苦手なんだよな」
いちご大福を見つめたまま立ち尽くしていた…
「…おはよう」
「お?○○おせーぞ!もちちゃんはとっくに着いてるってのに」
教室に入り真っ先に声を掛けてきたのは竜星アイル、一言で言うとハイテンションバカだ。
ただ、クラスを盛り上げる役割もあるからぞんざいには扱えない。
「あー…アイルか、朝からテンション高いなお前」
「おいおい、朝だからこそテンション上げてくんだろ?ったくよぉ…ところで、そろそろもちちゃんの連絡先とか教えてくれねーか?」
アイルは俺個人の印象からすると、チャラい。
もちに気があるらしいが、何故か俺は連絡先を教えてない。
本人から直接聞けば良い話なんだが、過去に一度玉砕したらしい。
だから今度は幼馴染である俺から聞き出そうとしてるみたいだが…
「あのな、何度も言うが俺は連絡先なんて知らないから」
実際知ってはいるが、全然連絡をとっていない。
家が近いし連絡する程の事は無いし、あったとしても直接家に出向く方が遥かに早い。
「はぁ…ったくしょうがねーな…ちゃんと後で教えてくれよ?」
「いやだから俺は」
アイルは俺の話を聞かず、もちの所へ行った。
最初も言ったが、もちはクラスの人気者だ。
普通に笑顔を振り撒くし、優しい。
だからこそ俺に冷たいのは解せないのだが…
「もちちゃん本当に可愛いよね、人気もあるしさ」
そう声をかけてきたのは同じクラスメート、早乙女ユズセ。
女みたいに見えるかもだが、男だ。
所謂男の娘ってやつらしい、本人の事をクラスの人間は男と認識してるのだが、たまに忘れて女扱いしてユズセに怒られてるのをたまに見かける。
「あぁ、ユズセか…おはよ。人気…なんだな、あいつ…俺にはあんな笑顔とか見せないから違和感なんだよな」
「へー、○○には素直になれないんだね…」ボソボソ
「何か言ったか?」
「ううん、別に」
ユズセは「まぁ、頑張れ」と一言だけ言うと席に戻って行った。
俺には何を頑張れば良いのか見当がつかなかった。
その後講義が始まる、俺ともちは席が離れている。
最初はもちとは隣同士だった、しかし幼馴染だからと言ってもそこまで一緒だと流石に嫌だろうと思い、ユズセと席を交換して貰っていた。
他の男子達からは是非俺と交換してくれ、と迫られたが…ただ単にお前らもちと一緒に居たいだけだろうって思った、そこで交換を持ちかけてこなかったユズセと交換したという訳だ。
ユズセも「分かった、交換しよう」と快諾してくれた、横目でもちを見ていたが、普通に女子達と会話してる感じだった。
俺には無関心なんだろう、別に構って欲しいという訳でも無いが。
ただ他の奴らみたいに俺にも少しは愛想良くしてくれてもバチは当たらないだろうと思う事はある。
昼休み
俺は購買でパンを買い、屋上へ向かう。
教室で食べても良いが…男共がもちに群がる姿を見ながら食べるのも嫌なのだ。
まぁ、傍にユズセが居るから多分大丈夫とは思うが…
何故ユズセに信頼を置いているか?それはあいつがもちに無関心だからってのもあるが、言っちゃなんだが見た目女に見えるからなのかもしれない。
本人は女と呼ばれるのを嫌っている、性別はちゃんと男なのだから。
「あ…そう言えばいちご大福まだ食べてなかったわ…」
俺はいちご大福を齧る、やはり慣れない…
餡子が元々苦手なせいで、和菓子は全般苦手だ。
それでもたまに見せるもちの優しさ、受け取らない訳にはいかない。
普段から優しく接してくれるならまだ…
教室
「はぁ…もちちゃん可愛いなぁ」
「罵られたい…」
「…はぁ」
「もちちゃん大変だね、毎日」
「そう思うなら助けて欲しいんだけどね」
もちは毎日男子達の視線を浴びて疲れが出ていた。
しかし誰も助ける事は出来ず、もちはずっと耐えていた。
○○はすぐに教室から消えてしまう為、論外だ。
「○○に頼んだらどうだい?暫く一緒に居てくれってさ、あいつが居るなら多少はマシじゃない?」
「嫌よ、何でアイツと一緒に居なきゃいけないの?」
「もちちゃんさ、○○の事嫌いなの?」
「嫌いじゃないけど」
「じゃあ好き?」
「…好きでもないわよ」
もちは一瞬何か言うのを躊躇ったように感じた。
「ふーん…まぁボクからは一つだけ、たまには頼っても良いと思うよ?彼に…」
ユズセはそう言い残し席を外した、もちは無言でユズセの背中を見つめていた。