名前の無い2人の少し不思議な話。




とあるサイトで行われていた企画で頂いたお題

①水曜日
②スマイリー共和国が作られる
③男はビンタされる
④寒さに凍える
⑤略称「CKP」は重要
⑥戻ってくる
⑦高所での綱渡り
⑧依存症
⑨太陽にはかなわない
⑩たわしコロッケ を組み込んで作成した物語です。





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これは、とあるサイトから頂いたお題


①水曜日
②スマイリー共和国が作られる
③男はビンタされる
④寒さに凍える
⑤略称「CKP」は重要
⑥戻ってくる
⑦高所での綱渡り
⑧依存症
⑨太陽にはかなわない
⑩たわしコロッケ を組み込んで作成した物語です。




名前のない僕ら

思い出の中にいた。

 

友達みんなで小学校の近くにある山に行って、そこにあった洞窟に旗を立てて。

 

『今日からここは、スマイリー共和国だ!』

 

 

そうやってみんなで国のルールを作って、それから、そこにお菓子を持って来て、鬼ごっこなんかして遊んでいて____。

その日も、いつものようにかくれんぼをして遊んでいた。

鬼ごっこでもかくれんぼでも、最初の鬼は曜日ごとに別の人がやるとルールで決めていた。

僕は、水曜日の鬼だった。

 

「もーいいかい?」

 

「もーいいよ!」

 

僕はそう言って、みんなを探し始める。

そして僕が5,6人ほど見つけて、あと誰を見つけていないか考えている時。

 

誰かの、声が聞こえた。

それは話し声というよりは、助けを求めるような_____泣き声に近いものだった。

 

この声はどこから聞こえてくるのだろうか?誰の声だろうか?

 

周りを見渡すが、声の出処も姿もわからない。

 

そしてそのまま、広い山の中に泣き声だけが反響し続けて……

 

 

___________________________________

 

「___さの、_______麻野!起きろ!」

 

「!!?」

 

突然の大声にビクッとなりつつも、夢から意識を戻す。そうだ、今は授業中だった……。

目を開けると、日本史を教える教師がまさにご立腹といった表情で僕の方を見ていた。 そこらからクスクスといった笑い声も聞こえる。

 

「ハァ……いつもいつも寝て。たまには真面目に授業を聞こうという気にはならんのか?」

 

「すいません……一応、起きようとはしているんですが」

 

なんて一応謝っておく。まあ、単純に教師の話に興味が起きないだけなんだけれど。

 

僕はそういう人間だった。

将来、自分が何か大きなことを成し遂げるなんて自信もないし、生まれてきてからの17年間だけでも、自分より全てが優れている人間なんて沢山見てきた。『天は人の上に人を造らず』なんて言った福沢諭吉に中指を立てたい気分だ。

 

そうやって生きていたら、いつの間にかこの世の何もかもにやる気が無くなって、その場から動けなくなった。何をする気も起きない。

どうせ自分なんかいなくても世界は回る。そう知ってしまったから。

 

だから毎日を気だるげに、生産性も何も無く生きる。死んでいるのと変わらない?頑張ってたってきっとそうなる。

 

ただ、言われた後にすぐに寝るのはばつが悪い。大人しくノートを開ける。板書なんて書かない、真っ白なノート

だ。

 

 

 

の、筈だったんだけれど。

 

 

 

「……ん?」

 

真っ白だと思っていたノートを開けた僕は、そこに自分の書いた覚えのない文章が書いてあることに気づく。

 

『話をしませんか?』

 

と。板書を一切取っていないが故に新品である日本史のノートの左上に1文だけ、そう書かれていたのだ。

 

誰かのいたずらだろうか?そうだとしても、こんないたずらに意味があるとは思えないけど…

とりあえず消しゴムを取り出し、文章を消す。

 

だが、そこで驚くことが起こった。

 

シャープペンシルを使って文字を書いた訳でもないのに、ノートから文字が1画ずつ…まるで人がいて、ここでノートに文字を書いているのかのように【浮かび上がった】のだ。

 

『ねえ、話を、しませんか?』

 

と。さっきの文章と全く同じ筆跡で。

 

僕は驚いて少し混乱していた。幻覚でも見ているのか?そうでもないと、目の前で起こっているこの現象は説明ができない。

 

だが、恐怖心と一緒に。好奇心……?違う。どこか、懐かしい感じのする感情のようなものが湧き上がっていた。

 

だから、シャープペンシルを持ち直して、少し震える手を抑えながら、こう書いた。

 

『いいよ』

 

『君は、誰?』

 

なぜか、こう書けば、きっと返事が返ってくるような気がした。

 

そして、その予想通り、少し長い間をあけて、再び文字が浮かび上がる。

 

 

『わからない』

 

『あなたは?』

 

 

と。

 

僕は、麻野涼真____涼やかで真っ当に育ってほしいという願いのもと親がつけたらしいのだが……そうやって、自分の名前を書いてもよかった。

 

 

だけれど…今の僕と"それ"とは何か違う気がして。

 

 

だから、僕はしばし考えた後、

 

 

『僕もわからないんだ』

 

 

 

と書いた。

 

『ふふっ、おかしい。』

『私達、名前の無いもの同士じゃない。』

 

返事はすぐに返ってきた。

僕もすぐに答える。

 

『変な関係だね。』

 

『そうね。私自身、こうでもしないと話ができないから。』

 

『そうなのか?』

 

『私は、今自分が存在しているのか、していないのかもわからないの。目も口も耳もないし。

でも、文字を通して、あなたと話をしているって感覚はあるの。文字を書く手すらも無いんだけどね、ふしぎ』

 

 

「ふしぎ、って。」思わず笑みが零れてしまった。近くの席の何人かが【不思議そうに】僕の方を見てきた。

 

気づけば恐怖感も違和感も消え去っていた。

僕は気を取り直して彼女に尋ねる。

 

『こういう関係って言葉にするならなんて呼べばいいんだろう。

ペンフレンドとか?』

 

彼女が笑ったような気がした。

 

『ペンフレンドって、なんかよそよそしいじゃん。もうちょっとかっこいい名前にしない?』

 

かっこいい、か…彼女にも彼女なりのセンスがあるのだろう。

 

『かっこいいって言ってもなあ。何か、アルファベットの略称とかなら、かっこいいかな?』

 

『それ、いいね。えーっと、…私達の関係だから…』

 

そして、少しして、『そうだ!』と、彼女は【叫んだ】。

 

『CNKPとか、どうかな?かっこいい?』

 

『CNKP?Pは、ペンフレンド?』

 

僕が尋ねると、彼女は楽しそうに、

 

『そう。"Can_Not_Know_Pen-friend"でCNKP。英語が合っているかはわからないけどね』

『「私達は、お互いの事を知り得ない……自分のことですら。」って、言葉だけだとすごくかっこ良く聞こえるでしょ?』

 

『確かにそうかも』なんて言うと、彼女は無邪気に『やった!』と答えた。軽やかな筆跡からも、彼女が喜んでいると分かった。

 

こうして、僕と彼女の間でCNKPと呼ぶ奇妙な関係が作られたのだった。

 

_________________________________

 

 

それから何週間か経った。彼女との関係も、すっかり日常生活の中に溶け込みつつあった。

 

ノートを使って話をするだけでなく、時にはマス目を書いてマルバツをしたり、またあるときには問題を作って、軽めの謎解きゲームをして遊んでいた。

 

 

数学の問題をこの日本史のノートに書いたときには、『しょうがないなぁ、』なんて言って、一緒に考えてくれた。見えないのに僕よりもちょっと賢いから、ちょっと腹が立ったけど。

 

 

それでも僕が自分のことを話すこともなかったし、彼女も自分のことを話さない。だって、話すことが出来ないのだから。

 

でも、僕と彼女は似ているな、と思った。彼女は元気いっぱいでちょっと子供っぽいように見えるけど・・・それでも、自分に似たような波長が感じられた。"名前のないもの同士"だから?それは、わからないけど・・…

 

 

 

さて、その日も僕は、昼ごはんを食べながら、いつものように彼女と話をしていた。

 

 

『弁当食べながら話なんてして。ノートに落としても知らないよ?

っていうか何食べてるの?少しくらい私に分けてよ』

 

『いや、身体もないのに食べれないでしょ…ちなみに、今日の昼ごはんはコロッケだけ。 といっても、このコロッケはただのコロッケじゃないけどね。』

 

『そうなの?』

 

疑問に持つ彼女に対して、自慢げにペンを走らせる。

 

『もちろん。「たわしコロッケ」って言って、朝5時から……』

 

『えっ、あの朝5時から並ばないと買えない上に限定3個しかないたわしコロッケ、買えたの!?』

 

『そう!朝から並ぶのは結構辛かったけどね、買えたんだ…

 

 

 

え?』

 

 

彼女は、たわしコロッケを知っている?名前も実体もない彼女が?

 

 

『あ、あれ? えっなんで?

おかしいな、私は……』

 

彼女は動揺する。ふとして、高いところから落とされたかのように。

もしかしたら、今まで彼女が立っていた場所すらも、すぐに切れてしまいそうな細い綱の上だったのかもしれない。

 

 

 

そんな動揺からある考えがよぎった。

 

『これは、1つの仮説なんだけど』

 

僕はペンを走らせる。

 

『君にはもともと、名前があったんじゃないかな。』

 

彼女の返事はないまま、昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴った。

 

___________________________________

 

 

彼女が再び話しかけて来たのは、あれから1週間後の日本史の授業のことだった。

 

『あれから色々考えたんだけどさ。』

 

あまりにも唐突で少し驚いたが、声をあげずにはいられた。

 

『やっぱり私にだって、名前はあったはずなんだよね。』

 

それから、彼女は語り出す。どこか、懐かしげに昔を語るように。

 

『親から名前を授かって生まれてきて、成長して、みんなと同じように学校に行って……そういう人生を送ってた気がするんだ。

そんな中で私がこうなったのは、多分…自分が分からなくなったから、なのかな。』

 

『それは、個性を失ったってこと?』 僕は問いかける。

 

 

『個性、とはちょっと違う気がするな。』

 

『個性って言うのは、別に自分とは関係ない気がするんだ。

それは単に、集団で生きる中で、周りの人と比べて際立ってたり、変わってたりして目立つ部分を誰かが見つけて、そう呼んでるだけなんじゃないかなーと思うの。』

 

『そうじゃなくて、私達の自分っていうのを形成するのは、もっと……名前だったりとか、職業だったりとか、地位とか。 そういう、周りの中で「どうあるか」、「どう生きているか」を表す、名札みたいなものなんじゃないかな』

 

周りの中でどうあるか。

それは、僕が諦めて、考えるのをやめたことでもあった。自分がどうせ何をしても周りの迷惑にしかならないと思って、周りから距離を置いてきた自分にとって、その言葉はビンタをされたかのように強烈な威力を持っていた。

 

『首から下げている名札をお互いが見ることで存在が認められるってことか。僕は、自分のことを他人がどう見てるか、考えるだけでも怖いや____自分ですら自分のことが分かってないのに』

 

 

『そうだね。まぁ、自身がどういう人間だと自分がどう思っていても、結局周りが見るのは周りにとっての自分なんだけど。 周りがどうとか、私も怖かったんだと思うよ。

自分がどう生きたいのかと、どう生きなければいけないのかの間に挟まれたから私は、「私」っていう名札をどこかに落としちゃったんじゃないかな。

そしたら、皆が私のことを見つけられなくなっちゃったんだ。』

 

心なしか、彼女の字が震えているように見えた。

 

『私が辛かったのはね、』

 

『そうやって無くしちゃった自分の事を考えていく中で、君がちょっと羨ましくなっちゃったことだよ。

君も自分を見失ったはずなのにどうして?って思っちゃったんだ。そんな自分が………ごめんね、勝手に消えちゃったのは私なのに。君は私と違って、ちゃんと今を生きてるのに』

 

 

『……そんなかっこいいもんじゃないよ。君がこうなったのは、そんな状況の中で生きようとして苦しんだからでしょ。僕よりも立派だよ』

 

彼女と話していて、僕と彼女の違いに気付かされた。僕は、周りの中にいるのが怖くなって、まっとうに生きることを諦めただけなのだと。

そうやって逃げた自分を正当化するために、自分はこういう人間なんだと言い聞かせた。なりたい自分が、したい生き方が元から無いから。立ち向かおうとしなかったから……

僕は自分を見失ったわけではない。自分から、もともとあったかもしれない自分の可能性から逃げただけなのだ。

 

だが、それでも。

 

『でも、僕は、君と出会って話をして、CNKPっていうよくわからない関係を持って、ちょっとだけ、これからを、君と生きてみたいと思えたんだ。生きる意味が出来たかもしれないと希望を持てるくらいに、楽しかったんだ。』

 

心からの告白だった。よもや日本史の授業中に、こんなことを言うとは思わなかったが。

 

『だから、約束しよう。』

 

 

それでも、僕は……。

 

 

『君を、必ず見つけてみせる。』

 

彼女の返事が来たのは、それから少し間が空いてからだった。

 

『ありがとう、嬉しい。

でも……私はまだ、怖いみたい。ごめん。』

 

何が、と言っても返事は無いまま、一日が終わった。

 

___________________________________

 

また、夢の中にいた。

山の中で泣き声だけが響き続けている。

 

 

「だれか、いるの。」

 

 

と返事をしても、返事が返ってこない。どこにいるのかすらもわからない。

そんな時だった。

 

太陽を覆っていた雲が少しだけ晴れた。

余りの眩しさに思わず顔を覆う。太陽は辺りを照らし、辺り全てが明るくなった。

 

 

そして、その光が、自分の目の前にある木の後ろ側に人がうずくまっているような影を写した。

まるで、僕の呼びかけに太陽が答えてくれたかのようで。

 

太陽には敵わないな、なんて思いつつ、急いで木のある方に近づく。

 

そこには、1人の少女がいた。

 

 

「君は、確か……」

 

 

ここまで口にして、自分が少女の名前を覚えていないことに気づく。少女が私に気づき、涙ぐんだ目をこっちに向けてくる。僕は改めて、問い直す。

 

 

 

「ねえ、どうして、泣いているの?」

 

少女は泣き止まないまま、返事をする。

 

 

 

「お父さんも、お母さんも、いなくなっちゃったの……」

 

少女が手で涙を拭う。少女の右手には、まだ新しい火傷が出来ていた。

 

 

 

「やだよ、ひとりはやだよ……わたしは、どうしたらいいのかな…」

 

 

 

そう言って、少女は泣き続ける。

 

僕は、この少女がこのかくれんぼを始めるまで泣かなかったのは、きっと皆と一緒にいたからなんだと。

そして、かくれんぼで初めて1人きりになって、自らの孤独を意識してしまったのだと気づいた。

 

 

そして。それに気づくと同時に、僕は反射的に彼女の腕を掴んだ。

 

「えっ…」

 

 

 

「僕が、君のそばにいるよ。

何があってもこのかくれんぼみたいに、見つけてあげる。だから、泣かないで。」

 

 

 

僕の言葉に少女は一瞬きょとんとする。だが、言葉の意味がわかったのか、すぐに驚いたような表情になる。そして、涙を拭くと、

 

 

 

「やくそく、ね!」

 

 

 

と、クシャッとした笑顔を見せながら、小指を出した。

 

___________________________________

 

目が覚める。

 

自分の横の目覚まし時計には、【4/24(Wed)AM 04:01】と映っている。随分早く起きたようだ。

 

(水曜日、か。)

 

 

さっきまでの夢を思い出す。あの日は僕が鬼で、あの子と約束を……

 

 

 

あの子の、名前は?

 

 

 

僕は急いで自分の本棚に向かい、本を1冊ずつ取り出す。

 

 

自分の行動に合理性はなかった。

 

ただ、この前彼女に言ったことと、夢の中で少女と交わした約束が、どこかで繋がって見えたから……そんな理由と言えるのかわからないものから取った、衝動的な行動だった。

 

そして本棚の奥から1冊の古ぼけた日記を見つけると、1ページずつ、内容を見ながらめくっていく。

 

 

 

手は、ある写真の貼ってあるページで止まる。

 

 

 

それは小学生の頃に秘密基地を建てた時の、【全員の】集合写真で。

 

だから、そこには確かに、少女が写っていたのだ。

 

あの夢が現実だった事に驚きながら、『スマイリー共和国全員集合!』とタイトルが打たれたそれを一文字ずつ指で追っていく。

 

『この国の目的!』

『秘密基地の場所』

 

『国民一覧』

 

(……!!!!!!!!)

 

あまりの衝撃に止まった指は、1人の女性の名前を指していた。

 

「信じられない……!」

 

忘れていたその名前に、懐かしさを覚える。

 

そして、その懐かしさは、

 

【彼女】が初めて話しかけてきた時に覚えた感情と、まったく、同じだったのだ。

 

意識すると同時に、記憶が蘇る。

僕が彼女と、あれから……高校生になっても、同じ学校で、同じクラスだったこと。高校生になっても、手の火傷の痕とか、内気な性格で避けられてきたこと。そして、僕がそれに対して、何も出来なかったことを。

 

「……行かないと。」

 

僕はすぐに制服に着替えると、玄関のドアを開けた。

早朝のひんやりした空気が肌に触れて、寒さを覚える。寒さに足が震える。

 

 

 

震えている理由は、寒さだけか?

 

 

 

心の声が囁く。

 

 

 

彼女に受け入れて貰えないかもしれないと、恐れているのではないか?

 

 

 

「……うるさい」

 

 

 

 

このままの関係を続けていた方が、幸せなのでは無いか?

 

 

 

 

「うるさい、僕は見つけると約束したんだ。」

 

 

 

 

前へと、学校へと、1歩ずつ、急ぎ足で進んでいった。

 

 

 

___________________________________

 

 

教室のドアを開ける。

まだ日も昇っていない教室には、勿論誰もいない。

 

いや……きっと。

 

僕は【声をかける】。

 

「いるんだよね、そこに。」

 

つまるところ、彼女はきっと、ノートに宿っている訳では無いということだ。 僕らが気づいていないだけ、彼女を認識することが出来ないだけで、彼女はいつも、あの教室の中にいたんじゃないか。

 

返事は無いが、僕は確信をもって、声を出し続ける。

 

「僕は、思い出したんだ、君の事を。君との約束も。

 

ねえ、君の名前は……」

 

 

 

『やめて!』

 

 

 

僕の目の前で、彼女が叫ぶ声だけが確かに【聞こえた】。

 

 

 

『怖いの。

また私が私という名札を見つけても、きっと本当の意味で、私は私がわからないままになる。皆と上手くやっていけるとも思えない。

また私が消えちゃったら?あなたに話しかけに行くとも限らないんだよ?

この関係を続けた方が、きっと、幸せなんじゃないかって、だから……』

 

 

 

 

「消えない。僕がずっと君と一緒にいるから。」

 

 

 

『……っ!』

 

彼女が息を呑む。僕は続ける。

 

 

 

「この前も、…ずっと前も言ったけど、 僕は君と生きたいんだ。

そして、何度君が自分を見失いかけそうになっても、僕が君を見つけて、そばにいてあげたい。君を守ってあげたい。救ってあげたい。

全部僕の願望だけどさ。それが僕にとっての生きるってことだって分かったんだ。」

 

 

 

「僕だってこんな人間だからさ。人生にとって最良のアドバイスとか、周りの中でどう生きればいいとか、わからないけど。 確かに、人は変われない生き物だと思うよ。君だって、僕だって。

でも、自分っていうのが、他人に認識される事によって成り立つものなら、僕が君を知って、君が僕を知ってさ。そうやって、お互いで助け合えたら。そういう関係になれたら、きっと僕らは、この世界に【生きている】って、言えるんじゃないかな?」

 

 

 

朝日が昇る。教室が少しずつ、陽光で照らされていく。

 

彼女はすすり泣くような声を出しながら、言う。

 

 

 

 

 

『出来るの?私でも……生きられる?

 

そっか……君がいてくれるんだもんね。

 

一緒に、生きてみようか。じゃあ。』

 

 

 

そんな声を聞いて、僕は【彼女の名前を呼んだ】。

 

彼女はこの学校の制服を着て、僕の目の前で、涙を流しながら立っていた。

 

 

 

「……みいつけた、なんてね。」

 

 

 

「あの時の約束から、ずいぶんと時間が経ったね。 思い出したよ。私の名前も、君の名前も。本当にありがとう。」

 

 

 

「こっちこそ。」

 

 

 

「でも、CNKPじゃ無くなっちゃったね。」

 

 

 

「そういえば、そうか。

えーと……Cannot KnowがCan Knowになって、CKPかな?」

 

 

 

「ペンフレンドなのかも分からないけどね、それでいいや。

あーあ、CNKPって、かっこよかったのにな」

 

 

 

彼女が冗談めかして笑う。

 

人はそう簡単には変われない。

けれども、僕らの関係は、少なくとも、お互いを知らないし、知ることの出来ないものから、お互いを認識して生きていくものに変わったのだ。悪く言えば、お互いを依存しないと、生きていけないのかもしれない。けれども、僕らはこういう生き方をしていくと決めた。

 

 

 

僕らの世界は、まさしくこの時から始まったのだ。

 

 

 




皆様の意見を参考にこれからも創作をしていきたいと思っておりますので、感想は励みになります。

読んで下さりありがとうございました。

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