綺羅星を求める私、太陽が好きな貴女   作:白金星

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中々筆が進まず更新が遅くなってしまってすみません。

今日NO GIRL NO CRYの1日目に合わせてなんとか投稿できて良かったです。

今後も更新が遅くなるかもしれませんが温かく見守っていただけたら幸いです。


ホシノコドウ編
輝き、導いて


「はい! 皆さん、こんにちは! 戸山香澄、15歳です!」

 

 

後ろから聞こえる元気のいい少女の声が私の意識を呼び起こす。私が驚いて周りを見渡すと、そこは花咲川高校の教室だった。

 

 

「私がこの学校に来たのは楽しそうだったからです! 中学は地元の学校だったんですけど、妹がここに通ってて、文化祭に来てみたら、みんな楽しそうでキラキラしてて、ここしかないって決めました!」

 

 

まるで小学生の作文のような、それでも一生懸命さが伝わってくる。

そんな声に惹かれるように私が後ろを振り向く。そこには星を象った髪型にキラキラと輝く目、緊張していてどことなくぎこちなさは感じるものの明るそうな雰囲気の少女、私の知っている戸山香澄がいた。

 

 

「だから今、すごくドキドキしてます!」

 

 

その言葉につられるかのように私の心もドキドキに溢れる。私の知る戸山香澄に釘付けになる。

 

 

「私、小さい頃、星見の丘ってところで妹と一緒に星空を見たことがあるんです」

 

 

そんな彼女の声に呼応するように一面の夜空が広がるのを感じる。

 

 

「その星が宝石みたいにキラキラしてて、ドキドキって『星の鼓動』が聞こえてきてそういうのを見つけたいです」

 

 

私にはそういう彼女も宝石のように煌めき、心臓の音が耳の隣に来るような錯覚に陥る。

 

 

「キラキラドキドキしたいです!」

 

 

彼女がそう言うと私の見える景色が、まるで走馬灯でも見ているかのように移り変わる。

それは私の知る戸山香澄が辿る道のり。

ランダムスターと市ヶ谷有咲に出会い、GlitterGreenに惹かれ、牛込りみと花園たえと出会い、山吹沙綾と喧嘩をして、PoppinPartyになる。そしてその先もどんどん流れる。ガールズバンドパーティー、SPACEでのライブを前にしたスランプ、8月の海、今の大切さを知るあの出来事。そして、5人の絆が未来を紡ぐ主催ライブ。

 

 

「ねえ、飛鳥!」

 

 

そんな私を引き戻すように私の知る戸山香澄が話しかけてくる。

 

 

「これからクラスの子とカラオケ行こうと思うんだけど、一緒に行かない?」

 

 

そんな風に誘って来てくれるのは嬉しかった。でも。

 

 

「えっと……ごめん、私……」

 

 

「別に歌いたくなかったら歌わなくてもいいから! 一緒にカラオケではしゃぐだけでいいから! お願い!」

 

 

断ろうと思ったものの手を合わせて必死に頼み込む彼女を断る術を、私は持ち合わせていなかった。

 

 

「じ、じゃあ、行こうかな」

 

 

「やった! ありがとう、飛鳥!」

 

 

私がどういたしましてと言う間もなく彼女は他の子を誘いに行くためか後ろの席の方へ行ってしまう。ため息をつきながら彼女を目で追うと、そこには……。

 

 

「ねえ、戸山さん! この後クラスでカラオケに行こうと思うんだけど一緒に行かない?」

 

 

私が知らない戸山香澄がいた。下を向く香澄に彼女は話しかけている。

 

 

「え……えっ……、わっ、私?」

 

 

「うん! そうだよ!」

 

 

驚く香澄を気にしないと言うように彼女はぐぐいと詰め寄る。そんな光景を、何故か私は見ていることしか出来ない。

 

 

「わっ……わた、私は……、私、は……」

 

 

香澄はそこまで言うと顔を真っ赤にして何も言えなくなってしまう。そんな香澄を放っておけなくて私は。

 

 

ピピピピ、ピピピピ。

 

 

 

☆ ☆ ☆

 

 

 

ピピピピ、ピピピピ。

 

 

そんな、最近ようやく聞き慣れてきた目覚ましのアラーム音で私は目を覚ました。別に遅刻する心配もない時間だ。

私は大きく背伸びするとベッドから起き上がり、身支度を始めた。

 

 

他の身支度を済ませた後、私は制服を着ながらこれからのことを考える。私と同じクラスの戸山香澄が私の知らない戸山香澄だったこと。それによってこの世界がどうなってしまうかということ。そして——私は戸山香澄に対してどう関わるべきかということ。

 

 

少なくとも、私が好きで憧れのように思っていた戸山香澄なら、夢のように放って置かなず、そして強引にでも関わりに行こうとするような気がする。でもそれが出来る人はそう多くない。

だから……、とそう考えようとして思い出す。どちらの戸山香澄も、星を象ったような髪型をいていることを。そして繋がる。あの下を向いている香澄も、星の鼓動を聞いたことがあるのではないかと。もしその輝きの元があの香澄にもあるのなら、私はどうしたいのかと。

私は制服のリボンを結ぶと決心したように1歩を踏み出し、鞄を持つ。そのまま玄関へと歩いて行きながら決意を胸にする。

 

 

"あの戸山香澄と友達になろう"と。

 

 

行ってきますと母親に聞こえるように言うと扉の前で立ち止まる。不安を抑えるように深呼吸をすると外へ飛び出すように走り出す。その決意に押されるように。


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