宇宙戦艦ヤマト2203 暗黒星団帝国の脅威 作:Brahma
「??何かしら。ホタル?…」
かすかな光が人影のようなものを浮かび上がらせる。雪はあわてて管制室に戻る。
「皆さん、留守の方を残して双眼鏡をもって至急屋上にきていただけますか?」
雪の表情がただごとでないのをみてとって管制室の職員たちは屋上に昇ってくる。
そして雪が示す数十個の光点の方向を双眼鏡でながめるや、顔色がみるみる蒼白に変わり、おもわず叫び声をあげる。
「なんだ、あれは…人間??ま、まさか降下猟兵か?」
「たいへんだ、緊急事態だぞ!」
「皆さん、落ち着いてください。」
ほどなくヴィーヴィーという警戒音が管制室になりとどろく。
「AB地区に正体不明の降下猟兵による銃撃。死者50名以上。」
「CD地区のチューブレールを走る●○線が敵の攻撃をうけ、乗客死者多数!」
「高速道路管状50号線が攻撃を受け、死者多数。至急道路システムを停止し、通行止め」
「首都防衛システム稼働!砲撃せよ」
首都防衛システムからミサイルや光線銃が降下兵に向けられるが、すべて手前からはねかえされ、降下兵の銃が火を吹くと紙をもやすようにあっさりと破壊され炎上する。
「11号対空砲台沈黙」
「13号対空砲台大破」
「17号対空砲台沈黙」
「19号対空砲台、敵の攻撃で炎上中」
「23号対空砲台沈黙」
「29号対空砲台沈黙」
次々と悲痛な声の報告が入る。そしてついに
「首都防衛システム完全破壊されました。全滅です。」
「BD地区ミサイル基地占拠されました。」
「第二宇宙港占拠されました。」
「第四宇宙港占拠されました。」
「連邦議会議事堂、包囲されつつあり。第二、第三、第五、第七首都防衛師団と交戦中。形勢不利。」
「あ、あれは….何だ??」
とおくから黒光りする円盤状の物体が多数接近してくる。
「拡大投影しろ…。」
「カメ…じゃないな」
黒光りする円盤状の両わき腹には、牙のようなとげが多数生え、いかめしいごつごつした額、顔をもつ頭、そして頭の反対側の位置にゾウの鼻のように長い「尾」の先端には黒々とした巨大な「鉄球」がついている。あたかも黒光りするアルマジロのようなアンキロサウルスのような兵器が多数都市の上空に接近してくる。
黒い頭部の目が赤く光って、口からたけり狂ったような炎を吐きだされ、街が焼き払われる。
街の上空は、炎であかあかと空が照らされ、煙がもうもうと立ち込める。
首を左右に動かして街を火の海にして焼き払い、焼かれていない街は尾の黒光りした「鉄球」がくさり状のもので振り回され、ぶつけられた建物は砕け散ってがれきを四散させる。黒い「アンキロサウルス」から脚が生えてくる。やがてそれは六本になり、のしのしと歩き、ズーンズーンと振動がして街の地盤がぐらぐらと激しく揺れる。
海からも六本の細長い脚をもった黒い「アンキロサウルス」が迫ってくる。それは全体では、黒いタカアシガニかクモのように見える。
六脚のカニの脚をもった黒い「アンキロサウルス」の化け物は、口から火を吹き、尾の黒光りした金属球を縦横無尽に振り回す。わき腹に並んだ牙のようなトゲがミサイルとなってさらに街を焼き払う。
「機甲部隊出撃。敵を迎撃せよ。」
戦車と高射砲が黒い「アンキロサウルス」の化け物に向かって発射されるがすべてはねかえされる。逆に化け物の火によって次々に炎上させられる。「鉄球」の尾が戦車をおもちゃのように横転させ爆発させる。
「長官」
芹沢が語りかける。
「うむ…。」
「次元断層なし、兵員はさきほどのガトランティス戦役で多数の死者を出したとはいえ、置き土産の無人艦隊は健在です。ヤマトの元航海長島一尉に操縦させ迎撃させましょう。」
「わかった。それしかあるまい。」
「島一尉」
「はい。」
「無人艦隊を、衛星軌道上に集結させよ。」
「了解。無人艦隊出撃します。」
10分後
「無人艦隊衛星軌道上に集結、艦砲射撃で地上の鎧竜型六脚戦車を攻撃します。」
無人艦隊の砲撃で次々にタカアシガニとアンキロサウルスのあいのこの六脚戦車は次々に撃破され、炎上していく。
(よし、いける…)と地球側が考えたとき
「後方に時空歪曲場多数、何かワープアウトしてきます。10,20,100,500…敵艦隊です!敵艦隊多数!!」
地球防衛軍の通信回路は悲鳴に満たされる。
それは円盤状の胴部に樹木のようなオベリスクのような艦橋がそびえたつ黒色の船体をもつ大艦隊だった。
「黒色艦隊多数出現。無人艦隊の後方150宇宙キロ!」
黒色艦隊の旗艦の司令官席には、禿頭で、ヘタのないナスのような、具体的には明の洪武帝の醜い方の肖像画のような細面であるが、顔はグレーの皮膚でしみがなく、あごがつきだしたような人物が座っている。黒色艦隊地球討伐艦隊の司令官ガザンであった。ガザンは、ほくえむんだ表情で、つぶやくように命じる。
「ふふ、撃て!」
光線が豪雨のように無人艦隊を襲う。
「大きく旋回し、敵艦隊の後ろにつけ!」
島は炎上して次々に爆発四散する無人艦隊の被害を最小限にとどめ、隊列をととのえて、必死に操縦し敵艦隊の後ろにまわりこませようとする。
ガザンが再びほくそ笑む。
「敵の無人艦隊のコントロールタワーを攻撃せよ」
多数の光条が島たちのいるコントロールタワー付近にふりそそいだ。
コントロールタワーでは悲鳴が上がり、建物はがれきになって崩れ、死者が続出した。
島はけがをおいつつもなんとか脱出に成功する。
(あの艦隊に自分自身がいれば…こんなところで死んでたまるか。ヤマトに乗って敵を倒す!)
長官は画面から管制室の雪に話しかける。
「森君、司令部は包囲されつつある。至急こちらに来てほしい。」
外へは降下猟兵がその数を次々に増やし司令部を包囲せんとしていた。
長官はうなづいて
「敵の包囲は完全ではない。この命令書を古代に届けてほしい。」
「はい。」
雪は返事をする。
「雪さん。」
そこには、相原と初老の背の低い禿頭の医師が笑みを浮かべている。
「相原君、佐渡先生、いつのまに…。」
「わたしたちも同じ命令を受けているんですよ、さあ急ぎましょう。」
雪、相原、佐渡は司令部秘密地下通路を通り、緊急用脱出シャトルにとびのる。
「司令、なにか上昇してきます。」
「なんだ?画面に映せ」
そこに映ったのは大気圏を墜ちていく隕石だった。
「隕石のようです。」
巧妙なステルス機能で、進路を欺瞞し、レーダーには隕石があたかも落ちていくように黒色艦隊のスクリーンに映す。
「そうか…問題あるまい…。」
(仮に地球人の愚か者であってもいつか捕捉されるだろう。)
黒色艦隊の指揮官は放っておくことにした。