宇宙戦艦ヤマト2203 暗黒星団帝国の脅威   作:Brahma

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第33話 最後の戦い(後編)

真田はおもむろに答える。

「波動砲のシリンダーを積み替えるんだよ。」

「しかしあの敵には波動砲は通用しません。」

「そうだ。だから反波動格子をしかけてある。その意味が分かるな?」

「しかし、それには膨大なエネルギー輻射が発生するはず。船体を守るものがないと不可能では?」

「ああ、仕方ないから『しゅんらん』に、尾崎君に手伝ってもらおう。」

「それから古代、君には俺に変わって艦長としてヤマト乗組員を、そして未来の地球をまもってもらう。この戦いが最後ではない。わかったな。」

山南は力尽きて、その首はがくりと横を向いた。

第一艦橋には重苦しい空気とすすり泣きが聞こえる。島だけが肩を震わせながら必死に操縦桿をにぎっている。

 

「尾崎艦長」

古代は暗号文で作戦を送る。

「書かれた通りです。お願いできますか?」

「わかった。乗組員は脱出させる。」

 

『しゅんらん』乗組員に対し尾崎は脱出の指示を下す。

「みんな。これが最後の戦いだ。ヤマトがガトランティス戦役の時に使った例の兵器を使う。それでしか倒せない。『しゅんらん』は、そのエネルギー輻射からヤマトを守る盾になるのだ。もちろん船体はもたないからそのまま船に残ったら全員死んでしまう。だから退艦し、冬月に移乗してもらう。そしてタイミングを計って自動操縦で敵の砲門の前に『しゅんらん』船体を小ワープさせる。皆は、家族のため、これからの地球のために生き残るんだ。」

「提督は?」

「俺も救命艇に乗り移るから安心してくれ。自分も家族がいる。艦とともに死ぬのもひとつの考え方だが同じような強力な敵が現れた場合一人でも熟練した戦士が必要なのだ。誇りを持って帰還しよう。」

「はい。」

みな『しゅんらん』から脱出していく。

敵の砲撃は、距離があるにもかかわらず救命艇を目ざとく発見し、一機また一機と沈めていく。

撃墜から無事に逃れることのできた乗組員は宇宙服で宇宙空間にただよう。3日分の酸素と流動食がつまれている。

 

古代は艦内放送で話始める。

「みんな聞いてくれ。山南前艦長の指示を伝える。ヤマトは波動炉心のシリンダーを積み替える。ただの波動炉心ではない。反波動格子を仕掛けた特殊なものだ。そして敵を倒す。空間磁力メッキで防げず、波動砲も効かない敵を倒すにはこれしかない。」

「で、われわれはどうするんですか?」

 

「皆も知っているようにその炉心は波動砲のエネルギーを何乗倍にも増幅し、使い捨てになる。しかも凄まじいエネルギー輻射がある。『しゅんらん』の尾崎艦長に話し、『しゅんらん』をヤマトの前に自動操縦で小ワープさせるさせるために乗組員に退艦するようお話するよう伝えてある。これで発射時のエネルギー輻射のほとんどは避けられるだろう。しかし一回発射しただけでもヤマトの船体はもたないだろう。したがってヤマト乗組員のみんなにも退艦してもらう。」

「我々も一緒に戦います。」

「『しゅんらん』でも同じ話し合いが行われているだろう。俺もヤマトを降りるのはくやしい。しかし、ここで皆のような優秀な乗組員を喪うのは地球の損失だ。これからも同じような強力な敵が現れるかもしれない。その時はだれが戦うのか?そしてそのような敵と戦う方法と力を後輩たちに伝える役割がわれわれにはあるんだ。わかってほしい。」

古代の気迫に乗組員たちは息をのんだ。

「そうときまったら俺は降りる。我々が率先しないからほかの乗組員はおりないだろう。ただし必要な操縦が終わってからだ。」

島が口を開く。

「島、ありがとう。」

古代は笑顔でうなずいた。

 

「波動砲のシリンダーを積み替えたか。上出来だがそんなものではこの要塞は倒せんぞ。」

ヤマトが敵の砲門の前にワープする。ガンマ砲がエネルギー充填され始める。

「予定宙域に『しゅんらん』ワープアウト!」

エネルギー光球が幾重にも重なり『しゅんらん』を焼いていく。

 

ヤマト救命艇の窓から第一艦橋が見える。

乗組員の一人が声をかける。

「真田一佐、古代一尉がまだいます。」

「心配するな。大丈夫だ。」

 

ヤマトのコックピットで古代は波動砲のスコープを見つめトリガーを構える。

「電影クロスゲージ明度9」

「エネルギー充填120%」

「トランジット波動砲発射準備完了。」

「発射10秒前,9,8,7.,,」

 

「!!なんだ?あの光球は?」

空間磁力メッキすら知っていた暗黒星団帝国技能陣もグレート・エンペラーもトランジット波動砲までは知悉していなかった。

 

「トランジット波動砲発射!」

団子状に連なる光球で『しゅんらん』の船体を焼き尽くしてから生まれた激しく黄色く燃える光の槍がヤマトの波動砲口から突き出されガンマ砲口を貫いた。超巨大要塞は外側は堅牢であっても内部からの誘爆には耐えられない。裂け目が生じて、みるみる広がっていく。

一方で強力なバリアに対し至近でトランジット波動砲を放ったヤマトの船体も無事ですまない。超巨大要塞の裂け目が輝きを増して全体に広がりきらないうちにヤマトの船体も爆発し、火球となる。輝く裂け目が網目のように超巨大要塞をつつむと、やがて火を吹いて、大爆発を起こし、火山の噴煙のような激しい煙と超新星のような猛烈な輝きを放ち、巨大な火球に変わっていった。

 

『しゅんらん』の10機あった救命艇は撃墜されていた。5機のみであった。

「『しゅんらん』救命艇2号、3号、6号、7号、9号ただいま着艦しました。」

「『しゅんらん』乗組員250名無事に収容。」

「尾崎提督は?」「古代一尉は?」

「まだ発見されていません。救命艇が撃墜されたようなので...」

冬月艦橋は重苦しい空気に包まれる。

『しゅんらん』の乗組員がそのとき発言した。

「救命艇が撃墜されたときにうまく脱出した人もいるはずです。3日分の食料と酸素をつんでいるので早めに発見すれば十分にたすかるはずです。」

真田、島は顔を見合わせてうなづく。

冬月から救命艇が発進される。5秒ごとにその位置を宇宙空間に送信する。それを傍受した宇宙空間に浮かぶ『しゅんらん』乗組員は、宇宙服に取り付けられた装置から自分の位置を送信する。救命艇は、宇宙空間にうかぶ尾崎や乗組員45名を発見する。

「尾崎提督以下45名の救出に成功しました。」「古代一尉の脱出カプセル回収成功しました。」

冬月艦橋の空気は明るくなる。

 

「提督。」

「真田、古代。」

「無事でよかったです。」

「あずかった艦隊を全滅させてしまったな...。」

「いえ。提督と乗組員の皆さんは...無事にかえって来たじゃないですか。」

「そうだな....。」

 

回収ができた『しゅんらん』乗組員の遺体が宇宙葬にされ、数百にのぼるカプセルが宇宙空間に流される。

「宇宙戦士の霊に敬礼!」

弔砲が撃たれた。

「みなさん、連続ワープでいよいよ地球へ帰還します。」

「山名艦長、よろしく頼みます。」

山名が冬月の航海長に「ワープ準備。」

と命じる。航海長は微笑んで「ワープ準備します。」

と復唱した。いよいよ地球に帰れるのだ。

航海長は、スクリーンで上下する光点が5本の空間曲線の交点と一致する瞬間に「ワープ」と宣してレバーを大きく倒すと、冬月の船体は、40万光年先の白色銀河からその姿を消した。

 

「重核子爆弾の機能停止。」

「敵円盤形三脚戦車完全にコントロールを失っています。」

円盤型三脚戦車はぶつかり合ったりして倒れていく。

「長官、お喜びください。敵本星と敵巨大要塞をトランジット波動砲で破壊成功との戦闘詳報です。」

「そうか、ヤマトがやってくれたか。」

「はい。しかし帰還は冬月1隻のみだそうです。」

「苦しい戦いのようだったからな...帰ってきたことを歓迎しなければなるまい。」

長官は空へ向かって敬礼した。

 

 

「地球艦隊が本星を破壊したようです。」

「そうか...。」

「司令、仇をとらないのですか。」

「いや、ここでたった一隻の地球艦隊を叩いたところで、戦闘詳報を送られて備えている地球の本隊と戦わなければなるまい。

グレートエンペラーが倒れられ、数百万光年に及ぶ我が帝国の版図に派遣された将軍たちと戦うことになるだろう。今までは圧倒的な戦力をもったグレートエンペラーにつきしたがってきたが、ガミラシウムとイスカンダリウムの収奪に頼りきって無制限な版図の膨張に狂奔してきたことに反対してきた将軍たちも数多い。こうなっては我が帝国も一枚岩ではないだろう。やつらと戦ってきたことで宇宙空間からエネルギーを調達する波動エネルギー技術を得ることができた。われわれはその意味で他の勢力に対して優位に立てるのだ。」

「はい。」

ガイウス艦隊はいずこへとひきかえしていった。

 

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