宇宙戦艦ヤマト2203 暗黒星団帝国の脅威 作:Brahma
沖田、土方といった面々の前に笑顔で頭をかく見慣れた顔が写っている。
「!!」
「元アンドロメダ艦長の…。」
「山南さんか!」
艦長席がせりあがっていく。
「まさか諸君と真っ向から意見の対立したわたしがこの艦長席にすわることになろうとはな。」
「何をおっしゃいます!ヤマトをゼムリヤの崩壊から救ってくださったではないですか。」
「そうか。今度はわたしが沖田さん、土方さんの遺志をついでこの船で敵を破るために艦長になった。以前のわたしは諸君に見えていたことが見えていなかったかもしれないが、ガトランティスとの戦いで身を以て知った。諸君もあの戦いで大きく成長しただろう。その戦訓を活かして諸君の力を貸してほしい。」
「皆ボサっとしている余裕はないぞ。地球を包囲している黒色艦隊を撃滅しなければならない。艦長!」
「うむ。ヤマトはこれより地球へ向けての出撃態勢にはいる。総員ただちに部署につけ。」
「副唱します。ヤマト乗組員、ただちに総員部署につけ。」
「!?」
「どうした?相原?」
「地球より入電です。スクリーンに出します。」
そこに映し出されたのは細面で禿頭、カイゼル髭にまでは至らない白いくちひげの人物、防衛軍司令長官藤堂平九郎だった。
「山南君」
「長官。」
山南がうなづくと藤堂もうなづき返す。
「ヤマトの乗組員諸君」
「長官!ご無事でしたか。」
藤堂は再びうなづき、
「わたしは、かってガミラス戦争の際に造られた旧地下都市にいる。ガトランティスとの戦いのときにさえ使用しなかったこの場所を、再び使うことになろうとは思いもよらなかったが。同士を集め戦い続けていくつもりだ。」
「山南君、沖田君、土方君亡き今、君だけが頼りだ。頼んだぞ。」
「わかりました長官。二人に笑われないようこの大役を務める所存です。」
藤堂はうなづいた。
「あまり長く話すと敵に傍受される。しかし、離れてもわれわれの心は一つだ。胸に刻んでおいてほしい。」
藤堂が敬礼すると山南はじめヤマト乗組員は答礼し、スクリーンは再び漆黒にもどった。
「真田さん、ただちに黒色艦隊撃滅に向かいましょう。」
真田と山南は顔をみあわせ、
「古代、それはだめだ。」
「なぜです?」
「これを見ろ。」
「これは例の敵の爆弾ですか?」
「そうだ。敵の重核子爆弾だ。やつらはこれを使って人類を滅亡させることができると言っている。実際、中性子線を放って冥王星基地をはじめ外惑星基地を遺体に損傷なく死亡させている。」
「…。」
「これは別名ハイペロン爆弾ともいう。古代、覚えているか?ガトランティス、ズオーダーの玉座にあったゴレムを。」
「はい。」
「あのときはゼムリヤ人が人造細胞を破壊する装置として設計したが、逆に他の星の人類を一瞬にして滅ぼす兵器なり装置が発明されていても不思議ではない。具体的には地球上の中間子質量を破壊することによって大脳に分子的損傷を与え脳死させるということだ。しかも大脳だけなので他の身体の機能はしばらくは正常にはたらく。」
「なぜそんなものを…。」
「わからないが人間の体をのっとろうとするならきわめて有効だ。さらに外惑星基地を飛来しながら攻撃したパターンを解析すると、プログラム化して生命反応を検知して攻撃するというだけでは説明できない動きをしていることが判明した。」
「ということは…。」
「遠隔操作が可能だということだ。」
「つまり地球周囲の黒色艦隊をいくら攻撃しても」
「そうだ。いくら敵に損害を与えたとしても一瞬のうちに人類を滅亡させられる連中にとっては痛くもかゆくもないということだ。」
「あの..真田さん。」
「何だ雪?」
「のっとるといっても魂なのでしょうか。大脳を損傷させたら意味がないのでは?」
「雪、医学に堪能な君ならわかるだろう。母親の中の胎児が母親の免疫機能をおさえること、ある種のウイルスやがん細胞が自己の免疫機能を抑えること、われわれも臓器移植の際の免疫機能を抑える技術をもっているが、あれほどの兵器を開発した敵だ。ガトランティスは蘇生技術を持っていたように、そういった技術や薬品の開発に成功していたとしていても不思議ではない。」
「敵はどこからやってきたのでしょうか。」
「敵のワープトレースは巧妙にもかき乱されてわからないが、だいたいではあるが、敵がやってきた方向はわかっている。」
「それは、どこですか?」
「敵がやってきた方向の40万光年先には、ダークマターが濃密に分布している場所がある。そこからやってきたとは限らないが可能性は高いだろう。というのは、黒色艦隊や敵の兵器を破壊した破片にはダークマターを合成したと思われる塗料が塗られ、レーダーの反応を阻害して重核子爆弾以外の敵の接近が把握できなかったくらいだ。」
「そうだったのですか…。」
「手掛かりは少ない。しかも敵が重核子爆弾を起爆させる前にそれを阻止しなければならない。苦しい戦いになる。」
「でも、それをやらなければ人類は滅亡するしかないんでしょう。」
「そのとおりだ。」
「しかし、敵はすぐにでも起爆させればいいのにどうしてすぐに起爆させないのでしょう。」
「敵はヤマトを探していることがわかっている。それ以外にも40万光年という距離だ。起爆するためにもさすがに時間がかかるのだろう。かって相原をまどわしたガミラスのリレー衛星のようなものがあるのかもしれない。」
「もしリレー衛星ならそれを破壊できれば起爆を遅らせられますね。」
「それはそうだが推測にすぎない。」
「やはり敵本星に行くしかない…のですね。」
「うむ…。」
真田はうめくように同意する。
「??長官から暗号秘匿回線です。」
「諸君。」
「長官、一刻も早く敵本星へ向かおうということになりました。」
「そうか…真田君から聞いてうすうす考えてはいたが…やはりそれしかないということか…。」
「はい。」
「わかった…厳しい旅になるが…君たちの無事とともに君たちな
らなら必ず成し遂げてくれると信じている。」
「はい!」
ヤマトクルーは胸の前で腕を曲げて敬礼する。
「ヤマトはこれより敵本星へ向けての出撃態勢にはいる。総員に告ぐ、総員に告ぐ。総員配置につけ。」
「波動エンジン始動!」
「波動エンジン、シリンダーへの閉鎖弁オープン!」
「閉鎖弁オープン!」
「波動エンジン内圧力上昇!フライホィール始動!」
「フライホィール始動!」
「波動エンジン点火5秒前4,3,2,1、フライホイール接続、点火!」
「ヤマト発進します!」
イカルス基地が引き裂かれてヤマトが飛び立っていった。