宇宙戦艦ヤマト2203 暗黒星団帝国の脅威 作:Brahma
目の前に味方と敵、そして地球の危機をどうするか会議は長引かざるを得ない。
「われわれは、敵の本星に行って二度とハイペロン爆弾を他の星に送り込めないように討伐するという任務がある。ここで交戦するのはあまり得策とはいえないと思うが。」
「敵は気がついていないようだから、敵が通過するまで様子を見て、背後をすり抜けたほうがいいのでは?」
「!!....艦長!至急戻ってください。敵の前方に反応があります。」
レーダー手から第二艦橋のインタホンに連絡がはいる。
「地球防衛軍の船じゃないか。どうしてこんなところに。」南部が驚く。
南部重工の御曹司でもある南部康雄は、南部重工の造船ドッグでつくられる新鋭艦をなんどか見かけていたので、レーダーの反応から艦種が地球防衛軍のものであることがわかる。
「南部二尉、急いで識別番号を確認しろ。森一尉は、敵の予想進路をもう一度計算してくれ。」
「出ました。識別番号は、BA1090062、アンドロメダ級『しゅんらん』です。」
「『しゅんらん』?」
「地球防衛軍の旗艦クラスがなぜこんなところに?」
「『しゅんらん』は、新型波動エンジンの調整のためと、白色彗星艦隊迎撃のために出航して、いったん地球へ帰ってから再び第7艦隊の旗艦として出航、その後第7艦隊ともども行方不明になっていた。」
「真田さん、向こうは新型の通信機ではないから、敵に察知される恐れがあります。」
「艦長、敵は第7艦隊を狙っています。このまま放ってはおけないと思いますが。」
「艦長…。」
「わかった。相原三尉、第7艦隊に通信してくれ。」
「了解。」
「第7艦隊からの通信をキャッチしました。微弱なため確認が困難でしたがSOSを発信しています。」
「もしかしてメインの通信機が使えない状態なのかもしれんな。」
真田がつぶやく。
「SOSしてくるってことは、艦隊がまだなんとかもちこたえてる証拠だ。救出するなら急ぐ必要がある。」
「!!ジャミングです。敵がこちらに気がついたようです。」
「総員、戦闘配備。第7艦隊救出へ向かう。」
第7艦隊は、多数の敵と少しでも有利に敵に応戦するために小惑星帯の中にいる。ヤマトは敵とは逆の方向にいるが迅速に救援にむかうには小惑星帯がどうしてもじゃまである。このままではコスモタイガー隊がつくまでに第7艦隊が致命傷を負う可能性があった。
「波動砲発射準備!」山南は命じる。
「ここで波動砲ですか。」
「ほかに有効な方法はあるまい。」
反論は出なかった。承諾する旨の沈黙が艦内をつつむ。
「波動砲への回路開きます。波動砲安全装置解除。」
山崎機関長が波動砲への回路開放を機関部に指示する。
「島航海長、古代戦術長に操舵をゆずれ。」
「了解。」
「古代、受け取りました。」
「電影クロスゲージ明度20、エネルギー充填80%」
「ターゲットスコープオープン。電影クロスゲージ明度20!」
「エネルギー充填120%、発射準備完了。」
「発射10秒前、対ショック対閃光防御!」
第一艦橋では皆がゴーグルをつける。
「...4,3,2,1,0、波動砲、発射。」
古代の手からカチッっと波動砲の引き金の軽い音がするやいなやヤマトの艦首からまばゆいばかりの光の束が怒濤のごとく放出される。
波動砲の光の束は小惑星帯をのみこんで一瞬にして消滅させる。
「コスモタイガー隊、発進!」
「了解!」
「第7艦隊に接近!古代戦術長!第7艦隊はもう敵の攻撃を受けているもよう。」
「了解。加藤、山本、坂本、そのまま敵を迎撃し、第7艦隊を守れ。」
「了解!」
「古代戦術長は島航海長に操舵を戻せ。」
「了解。戻します。」
「島、受け取りました。」
「戦闘宙域へ500宇宙キロ!」
「総員戦闘配備!」
接近するにつれ、被害報告も入ってくる。
「駆逐艦シキナミ戦線離脱!」
「駆逐艦レイピアⅡ、通信途絶!」
駆逐艦が炎上している様子がパネルに映される。
「島、右に転進だ!」
「了解。面舵いっぱい、コースターン!」
「防衛軍の力を思い知れ!」
一点集中砲火をあびせて敵の被害を増やすものの、6隻もの空母から発進されるイモムシ型戦闘機と、白色円盤型戦闘機の数は数千機にものぼり、コスモタイガー隊も苦戦している。
「加藤、山本、敵機を主砲の軸線に誘導しろ。」
「了解!」
「南部、主砲最大射程だ!」
「了解!」
「誤差修正0.2、主砲、発射!」
イモムシ形戦闘機と白色円盤型戦闘機のパイロットたちは
「回避!!」と叫ぶが次の瞬間には悲鳴を発して気化していく。
ショックカノンの光条の槍が暗黒星団帝国艦隊の円盤状の船体を貫らぬき、次々と爆発光がきらめき、爆発煙と金属片を撒き散らしていく。暗黒星団帝国艦隊の注意はヤマトに向けられ、艦隊の隊列が方向を変えようとする。その隙を尾崎宙将は見逃さなかった。
「全艦、拡散波動砲発射用意!」
「波動砲へのエネルギーパイパス接続。」
「エネルギー充填120%」
「対ショック対閃光防御」
秒読みがはじまり、いっせいに発射されたエネルギーの奔流は、宇宙をてらし、一点で拡散する。
暗黒星団帝国の空母、円盤型の戦艦、巡洋艦、駆逐艦はつぎつぎとエネルギーの槍につらぬかれ、閃光と爆煙を噴出してつぎつぎと四散する。
「敵艦隊、エネルギー反応消失。全滅のもようです。」第七艦隊のオペレーターは安堵したように尾崎へ告げる。ヤマト艦内でもレーダー手が
「敵艦隊全滅のもようです。」と伝える。
「なんとか勝ったな。」島がつぶやく。
「ああ。」古代が返事をする。
「見たところ、炎上もおさまっているようだし、あの拡散波動砲の斉射がきまったから助かったようだな。」
「島一尉、『しゅんらん』に接舷してくれ。」
「了解。」
「相原三尉、有線通信回路をつないでくれ。」
「了解。」
回線をつなぐとさっそく通信があったらしく、相原の表情があかるくなる。
「古代さん、さっそく通信がはいっています。」
「ヤマトの諸君。よくわれわれを見つけ出してくれた。ありがとう。」
「尾崎司令!」
「山南、古代に島、ひさしぶりだな。」
「連続ワープのテストを行ったが、通信機器が不調になって地球と連絡がとれなくなっていた。そのうち、微弱な通信波をかぎつけたらしく、敵艦隊がやってきた。艦形を照合したところ、地球を攻撃している暗黒星団帝国の艦隊だということがわかった。なんとか戦ってきたが損害もバカにならず、この小惑星帯に追い詰められたというか、逃げ込んだんだ。そこへ君たちがきてくれたというわけだ。しかし、どうして君たちはここに来ているんだ?ヤマトには、シリウス方面への航海予定はなかったはずだが。」
尾崎は話している間に落ち着きを取り戻してヤマトが予定にないシリウスに現れたことについて問うてきた。