ワー、ワーと騒がしい音。声援、野次、ブラスバンドの演奏する応援曲
それら全てが遠くの世界で行われているかのような、研ぎ澄まされた感覚の中。
片やマウンドの上からバッターボックスを見つめる細身の少年。片やバッターボックスからマウンドを見つめる体躯の良い少年。瞳と瞳をぶつけ合いながら、二人は対峙していた。
ゆっくりとマウンド上の彼が両手を振りかぶる。ワインドアップ。己の全てを右手に込めながら、ゆっくりとした動作で体が動いていく。
持ち上げた足、着地、弓のようにしなる腕。体重移動とともに発生したエネルギーの全てを右手のボールに集め、指先からそれは放たれた。
全力の一球。最後の一瞬まで指先でコントロールされたそれは回転しながらキャッチャーの構えるミットに向けて突き進む。
対峙するもう一人、バッターボックスに立つ彼はそれを見、そして足を軽く上げ、自然体のままにテイクバックを行い。
風を切り裂くようなバットの音。そして交差するバットとボール――
【実況ウルトラMANGA野球】
はい、始めましての人は初めまして、お久しぶりの人はお久しぶりです。しゃべる生首ことうp主と。
―ヒョコン、と画面上右下に生首型の何かが姿を表した。生首というには少し丸みを帯びたそれは、どちらかというとドラクエというゲームに出現するモンスターに酷似した外見というべきか。いや、今の時代ならば魔王なスライムが良いか。
スライムではありません。生首です。こちらは相方のテロップさんです。よろしくおねがいします
―よろしくおねがいします。
さて、改めて今回の動画についての説明と目的についてをお話しますが。先程のOP映像で察しの良い方はお気づきかもしれませんが、今回プレイしていく作品はこぉれ(ねっとりとした音声)
―20XX年、KADOYAMAコンマイより発売された令和最初の核弾頭こと【実況ウルトラMANGA野球】。核弾頭とは一体どういう意味なのか
はい。えー、まぁ色々な評価がありますしうp主も色々思うところはあります。ただ、純粋にどういったゲームであるかというと、一言で言えば大手漫画雑誌に掲載されていた野球漫画を一つのゲーム世界でプレイできる夢のようなゲームです
―KADOYAMAコンマイはどのくらいの人間を脅迫したんですか?(素)
わかりません(素) 私も発売当日に徹夜で並んで購入して三日三晩プレイし続けて救急車に運ばれたりしましたが、それだけの価値はあったと思っています。
―自重
はい(土下座) さて説明に戻ります。このゲームは先程言った通り、様々な野球漫画の登場人物が出る野球ゲームです。それぞれの作品のストーリーを追体験する【原作プレイモード】、様々な作品のキャラクターでチームを組んでの【対戦モード】、プロ野球のペナントにお気に入りの選手を入れて独自ペナントレースを行う【ペナントモード】などなど
―それはどこの実況パワ
開発会社が同じなのでそちらからシステムを流用してるのは間違いありませんね(食い気味)人によってはパワプロの発展型の一つとしている方もいます。キャラ画面でも2等身デフォルメモードとか選べますし。ま、そんなことはどうでも良いんだ重要なことじゃない。
―霧が、濃くなってきたな……
この作品の目玉はなんと言ってもこれでしょう。【育成モード】
―パワプロでいうサクセスモード
はい。言ってみればサクセスのように選手をある一定期間育てて、その結果強い選手データを作る事を目的とするモードですね。サクセスと違うのは、あちらはオリジナル選手しか作れませんがこちらは原作キャラも育成できるという点でしょうか。
―好きな漫画のキャラを育成できる。神ゲー?
まぁ、この動画も【育成モード】である目的を達成する事を目標にしていますので、その辺は進めていきながら説明していきます。まずは最初の画面から【育成モード】を選択。
たたったたったたったーたった!
―えらく気の抜ける効果音
はい。これがうp主にとって気になるポイントの一つ。貧弱なSEです。いっそパワプロシリーズから持ってきても良かったんじゃ?と個人的には思っています。さて、それでは早速育成モードを開始……の前に。
―モード選択時の昭和に平成前期・中期・後期に令和。この時代表記は一体?
そうですね。これが育成モードの特徴の一つ、時代システムです。昭和なら昭和、平成なら平成、令和なら令和の時代に合わせた環境があります。『巨人の星』の星一家なんて平成の時代だと児童虐待ですからね。
―昭和の時代でも立派な虐待だったんですがそれは
勿論、対戦相手も変わります。昭和世代は昭和世代の作品ですし、平成はそこから更に細分化して前中後の3期に分かれています。令和はまぁ、まだ分けるほどの日数と作品数ではないですからしょうがないとして。
―時代ごとに分けている。つまり、育成モード中、選んだ漫画以外の漫画のキャラも出現するのだろうか
出てきます。というか、まぁ。それがこの作品の最大の魅力であり、同時に最も批判をされている部分でもあります。
―魅力であり、批判を? 作品同士の試合となるとかなり盛り上がる。どちらの作品のキャラが勝るのかというのは、野球漫画が好きな人間であれば誰しもが考える事柄では
その通りなんですが、ここで大きな問題が2つあります。えー、その片方がこの動画の目的というか、主旨になるのでここで説明しますが。時代設定の『昭和・平成前中後期・令和』という区分けを思い出してください。
―はい
では次に、昭和の時代を思い返して。その時代の野球漫画を思い起こして見てください
―先程あげた『巨人の星』。ほかは『ドカベン』、『アストロ球団』、『キャプテン』、『タッチ』、『わたるがぴゅん!』、『なんと孫六』、『4P田中くん』、『県立海空高校野球部員山下たろーくん』、『ジャストミート』……
さすがテロップさん、よくご存知ですね。比較的若い年代の作品が多いですが、知名度を考えたらその辺りが出てくるでしょうね。因みにドカベンしか仰られていませんでしたが当然のように水島先生の他作品も登場していますしなんなら諸作品のライバル高校なんかも当然のように出てきます。
―くっそ多いな(素)
くっそ多いですね。平成に入っても多いっちゃ多いんですがね。あっちは3期に分散されてる分マシなんですが昭和は全都道府県に優勝候補級の学校や超高校級の人材が溢れてます。
―野球漫画は魔境だった?
魔境ですね。これとあと一つ、今回の動画の目的になるんですが、これが難しすぎてこのゲーム、発売から半年くらいとある学校以外の昭和編の全国制覇が成し遂げられませんでした。で、今回の動画はこの『とある高校』を倒して全国制覇し、プロ入りする事を目標にしています。普通のゲームなら努力すれば達成できる目標かもしれませんがこのゲームだと半分運ゲーですね。5回の内1回は勝てる……準備さえ怠らなければ……今から胃がキリキリしてきました
―その学校とは一体。
明訓高校です。
―ドカベン。確かに有名所。
まぁ、明訓高校のヤバさはおいおい紹介していくとして。今回はプレイするキャラクターを選択して〆とさせて頂きましょう。
―明訓高校を打倒する、ならその明訓高校に勝ったことのある学校?
弁慶高校は悪くない選択肢なんですが、諸事情あり明訓高校と当たる前に負ける可能性が高い学校です。ですので、ここはもう一人。昭和編において打の象徴とも呼ばれるドカベン山田太郎に、唯一真っ向勝負が行える素養を持った人物を選択しようと思います。
―それは
私が選ぶ人物、それは。
カチャカチャとコントローラーを弄る音と共に選択される人物。作品名を選び、その中から更にリストアップされた人物の中から選ばれたキャラクターの画像が画面にアップで表示される。
上杉達也。漫画『タッチ』の主人公にして、今作屈指の成長力を持つ人物です。彼が唯一、真っ向からドカベンを上回れる可能性を持つ投手になります。
決定を押された瞬間、気の抜けた表情をしていた上杉達也は、右手で∨サインを示した。