チャリンチャリンと音を立てて自転車を漕ぐ。
「ふぃー」
両親に無理を言って買ってもらった自転車を毎日のように使って、達也は東京を走り回っていた。
近場に野球グラウンドがあればそこへ行き、バッティングセンターを見かければ立ち寄って。遊び歩いているように見えるため言い訳のように各地の図書館も巡り。行ける範囲の小学校は元より中高の野球部と巡り、おおよそ『野球』と名がつくものは片っ端から調べて回る。
「えーと。星、星……こっちか」
勿論子供の足である。当然移動できる範囲などたかが知れている。精々が自分の住んでいる区と、その隣くらいまで足が伸ばせた程度だろう。
ガシャーン
だが。根気と熱意を持って続けた努力は、どうやら報われたらしい。
「うおっと!?」
ガラスを突き破って飛散する丼をとっさに受け止める。縁がかけたそれに思わずゾッとしながら丼が飛来した方向を見ると、様子を見に来たのだろう少女の青ざめた表情。
そして『星』と書かれた表札に、達也はどうやら目的地に到着した事を察した。
はい。思い込んだら試練の道を行くっきゃない。生首実況はーじまーるよー
―急展開
いやいや。前回言ったとおりの状況ですよ。ヒッチハイクならぬチャリンコ暴走族ですが。
―野球要素は
丼キャッチしたでしょ(スットボケ) さて、話は戻りまして。現状を分かりやすく説明するなら児童虐待されている少年を保護に来た、でしょうか。保護しないけど。
―冷やかし?
そこまで性格は悪くありませんよ開発陣じゃあるまいし(マジレス) いや、まぁ今回は本当に顔つなぎというか星君と知り合いになりにきただけなんですよマジで。
「平気ですよおねえさん」
「駄目よ。こんなに赤くなってるじゃない」
丼を受け止めた際に赤くなった手のひらを少女に見られ、治療のため引きずられるように家の中に通される。玄関を越えて中に入ると、家の居間では昼間から酒をかっ食らう男性と、やたらと顔の濃い少年が言い争いをしている。彼らはチラリと達也を見たあと、再び口論を始めた。
―なんだこいつら(素)
流石は星親子。予想通りの反応ですね。反応ないけど。
―自宅にアカの他人が居るのに迫真のスルー
まぁこの人達、というか昭和編の主役格は大体なんかおかしいんで気にしてたら駄目ですよ。ほら、達也もスルーされてるのに全く気にもせずに明子姉さんに治療されてますし。
―そして家主はそれを尻目に丼に注いだ酒をかっ喰らい、長男は号泣する
よくある星一家の一コマですね? さて、星一徹は大酒をかっ食らうとそのまま爆睡する仕様なので、ようやく話が進みます。
―仕様
仕様です。さて号泣していた星飛雄馬も涙を拭ってボール遊びを始めました。可哀想に彼は父親から玩具の類を買ってもらえず、唯一与えられたのはバットとボールにグラブだけ。彼に許された唯一の遊びは、立派な巨人軍のエースになるための練習だけなのです。
―スパルタ教育
巨人の星の序盤は頭のおかしいスパルタで鍛えられた頭のおかしい超人少年のお話ですからね。巨人軍に入れたいのに大リーガー養成ギブスはないだろ、とネーミングにケチをつけたのは懐かしげふんげふん。
―生首の生前は昭和生まれ
流石に巨人の星連載時は生まれてすら居ませんでしたよ(目そらし) と、話がそれましたね。それでは早速飛雄馬に話かけてみましょう。彼は今、壁に空いた野球ボールがギリギリ入るくらいの穴に向かってボールを投げ、跳ね返って戻ってきたボールをグラブでキャッチしています。
―ワッツハプン?
ギリギリボールが入るくらいの穴にボールを投げ込んで、跳ね返ってきたボールをキャッチしてます。穴の向こうには庭があり、そこに経っている木が跳ね返してるんですがね。少しでもズレたら全然別の方向に飛んでくるそうです頭のおかしい精度ですね。
【少年がボールを投げて遊んでいる】
→ぼくにはとてもできない
面白そうだ。やってみたい
ここで選択肢です。勿論下を選択するんですが、これ上選んだらいきなりコメディになるので見てみたい方はぜひこのゲームを購入してプレイしてみてください。エセRPGっぽくなりますよ
―隙あらば宣伝する。なまくびさんはすごいなぁぼくにはとてもできない
【少年がボールを投げて遊んでいる】
ぼくにはとてもできない
→面白そうだ。やってみたい
「面白そうだ。やってみたい」
「ん?」
彼のボール遊びを見ながらそう呟くと、少年が初めて達也に気づいたかのように視線を向けてくる。再度同じ言葉を繰り返すと、彼はキョトンとしたあと、笑顔を浮かべてボールを手渡してきた。
飛雄馬君、少年期は本当に友達いないから嬉しかったんやろうなって。ほら、手取り足取り投げ方まで教えてくれます。ありがたい事ですね(ゲス顔)
―生首の血の色は何色?
緑ですかね。それではミニゲームです。星家の茶の間に座った達也を操り、角度、パワーを調節して投球。少しでもズレると失敗になる難易度の高いミニゲームです。
―これは星家限定のゲーム?
限定のゲームです
―開発陣頭おかしいのでは(素)
作り込みだけは凄いんですわこのゲーム。さて、打席と同じく3球勝負のこのゲーム。成功すれば大変大きなボーナスが貰えます。成長性+系の。
―直接能力アップはない?
少年期はありませんね。少年期は行動によって本編開始時の能力が上がったりします。後は前回手に入れた『天才』のように練習の結果が他者より高くなる称号ボーナスなんかも多く手に入ります。ここの準備でゲームの難易度が変わるってのは本当の話なんですね。
さて、無駄話はここまでにして早速プレイ。初見の時は全く出来ませんでしたが、1年に渡って鍛え続けたミニゲーム感を持つ私ならば。とりゃ!
「とりゃ!」
ヒュッと投げられた球は見事に壁の穴を抜ける。少しした後にカツンという乾いた音と共に壁の穴を抜けてボールが返ってくる。
「えっ!」
「まさかっ!?」
姉弟の驚きの声を聞きながらグラブを構える達也に向かってボールは飛んでくる。後は受け止めるだけ、とグラブを構える達也の前に、大きな影が現れた。
バシン、とボールを受け止める影……星一徹は酒気を帯びたとは思えない鋭い眼差しを背後に居る達也に向け、ドスンと彼の前に座り込んだ。
「明子、水をくれ」
「あ、はい」
一徹の言葉にバタバタと台所に駆け込むお姉さん。彼女から水を受け取った一徹はグビリ、と茶碗に入ったそれを飲み干すと、深い息を吐く。
「……用件はなんだ、坊主」
「おじさん、元プロ野球選手なんだろ」
目の前に座る酒気を帯びた大人に気後れもせず、達也はひょうひょうとした態度を崩さない。
自分の言葉に更に鋭さを増した一徹の表情もどこ吹く風、とばかりに受け流し、は笑みすら浮かべて口を開いた。
「おれさ。南を甲子園につれて行くってやくそくしたんだけど。野球ってのがまだよく分かんないんだ」
「ほぉ、甲子園」
達也の一言に一徹は頷きを返す。甲子園で活躍した選手の多くはプロへと活躍の場を移していく。息子をプロ野球選手、しかも球界の盟主たる巨人軍に入団させエースにしようと教育を施している一徹にとっても、甲子園という単語は興味を引く価値を持っていた。
そして、何よりも。
「だからさ、おじさん」
それこそ赤ん坊の頃から手ずから育て上げた息子、飛雄馬。その息子しか成し得ないと思っていた神業を、ただの一度で成功させたこの少年。
「おれに、野球がなんなのか。おしえてくれない?」
「――ふっ」
その姿に、息子と接する時以外久しく感じなかった野球人としての熱が湧いてくるのを感じながら、一徹は口角を上げた。
大リーグボール1号で全バッターを病院送りにすれば飛雄馬の勝ちだったよねって今でも思う