ぱちぱち小ネタ集   作:ぱちぱち

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誤字修正。げんまいちゃーはん様ありがとうございます!


死に様動画配信中っ!4

 はい。えー、皆様。少し間が空きましたが、ワタクシ復活でございます。

 

 え、待ってなかった? そんなー。ま、まぁCM前は見どころさんのオンパレードでしたからね。でもあれ、ワタクシが結構頑張った成果なんですよ?

 

 どういうことかと言うと、ちょっと彼と同期して来ましてね。こっちの情報とあちらの情報を互いに共有するといえばわかりやすいでしょうか。もうラストスパートですからね、彼には完全に使命()を思い出してもらいます。

 

 明らかに何かの誘いだってタイミングで持ち場を離れてたのはその辺りが理由です。まぁ当人は最後まで葛藤してましたが、下手に流れをずらすと余計被害が広がるのがこういう場合のパターンでしてね。

 

 仮にあのタイミングで彼があそこを離れなければ櫻井女史は更に被害を拡大させる形で陽動をかけてたので、あれ以上に被害を抑える方法は完全に櫻井女史を的にして動きを封殺するしかありませんでした。それは、現状の彼には出来ない事です。

 

 何せ彼、疑ってはいたんですがどうも櫻井女史に対して本気でお熱っぽかったので。で、後手に回った状況で彼女の掌の上を転がされた結果、歌ってしまったわけですね。

 

 え、なんで牙狼〜SAVIOR IN THE DARK〜だったのかって? 牙狼といえばこの歌でしょ(偏見)

 

 さてさてそれでは細やかな()説明を終えて、場面は移ります。ここは病院ですね。集中治療室でしょうか。ビニールで包まれた診療台に彼が寝かされていて、それを翼ちゃんや奏ちゃんが囲んでいます。

 

 彼の姿は……推定60から70歳。完全な老人の姿です。また、見た目以上に体力が吸われているらしく呼吸もままならないようです。口と鼻を呼吸器で、また右腕には数本の点滴が刺さっています。

 

「……先生」

 

 ぽつりとした翼ちゃんの呟きが部屋に響きます。ピッ、ピッと言った心電図の音くらいしか音源がありませんからね。自分が呟いた言葉にはっとしたように顔を上げて、そしてまた俯いてしまいました。

 

 翼ちゃんの言葉に、彼がうっすらと目を開けます。意識ははっきりしているのでしょう、まぁ、彼の場合怪我とか病気ではなく生命力の枯渇が原因ですからね。意識が飛ぶという事はなかったんでしょう……むしろ余計危ない気がしますね?

 

「お師さん!」

 

 彼が目を開いた事に気づいたのか、奏ちゃんが声を上げます。勿論駆け寄るなんて事はしませんが、ビニールがなければそのまま飛びついたんじゃ、という勢いです。

 

 そんな奏ちゃんに苦笑いのような表情を向けて、彼はちょい、ちょいと二人に向けて手招きを。ええと、これは……指輪を取れ、というジェスチャーでしょうか。

 

 命じられた奏ちゃんと翼ちゃんが彼の両手から指輪を取り外します。それぞれ両手の人差し指につけられていたものですね。彼はそれを二人に一つずつ渡るように手振りで示して、疲れてしまったのか目を閉じました。

 

 餞別のようなものでしょうかね。まぁワタクシはこれが何かは知ってるんですが、ネタバラシはタイミングが大事ですからね。もう少しお待ち下さい。

 

 さて、二人が帰った後は時間を飛ばし……おっと、その前にどうやら来客です。これは見ておいたほうが良さそうな相手ですね。

 

「はぁい、元気かしら」

「…………」

「て、元気なわけないわね。おじいちゃん? もうまともに言葉を話す力も、残っていないんだもの」

 

 はい、櫻井女史ですね。表情はいつもの櫻井女史ですが、声音はまるで別。どうやらもう、彼に対して取り繕う必要はないと考えているみたいですね。

 

 櫻井女史は彼のベッド脇に椅子を置いて腰掛けると、その魅惑的な足を組んで優しく語り掛けるように彼に経緯を話し始めました。

 

 フィーネという存在。そして櫻井了子の最後。自身の暗躍。まるで刑事モノで白状する犯人のようですね。これはちょっと不味いかもしれません。

 

「私の計画は順調。月を穿つ算段も整い、そして最大の懸念であった黄金騎士も居なくなった。ああ、お前の一族から話は聞いている。次代の継承者はまだ10にも満たぬそうだな? ふふっ。その子が育つまでお前が持たせる事ができればあるいは違った未来もあっただろうが……最早、過ぎた話」

 

 彼の呼吸器に手をかけ、櫻井女史は静かに語りかけます。

 

「さようなら、黄金騎士。お前との日々……悪くなかったわ」

 

 少しだけ、噛みしめるような間の後。櫻井女史は呼吸器の管に穴を開け、空気が漏れるようにした後立ち上がりました。

 

 呼吸が出来ず、彼が苦しげにうめき始めます。そのうめき声を背に浴びながら、櫻井女史――フィーネは病室を去っていきました。恐らく彼女がここに来た事は誰も知らず、調べられないようになっているんでしょう。随分と迂遠な殺害方法です。

 

 さて、今回の物語のレギュレーションとしては原作キャラからの殺害という点を満たしているのでここで終わっても良いんですが――どうにも反対の方がいらっしゃるようなので、もう少しお付き合い頂いてもよろしいでしょうか?

 

 あ、おk? ありがとうございます。いや、CM前がやたらと撮れ高ばかりだったんで恐縮ですがね。ワタクシもまぁ彼がこのような失意のまま終わる結末はちょっと望んでおりません。ので、少し行ってまいります。

 

 それでは皆様、次に会うときはフィナーレの向こう側となるでしょうが。そこまで彼のお話を、どうぞお楽しみ下さいますよう。

 

 おさらば、おさらばです。

 

 

 

 陸で溺れるという珍しい体験をしながら、彼は自分の中に”彼”が戻ってくる事を感じた。

 

 生まれた瞬間、分かたれた自分自身を名乗る誰か。いや、むしろ自分が彼から別れたのが正しいのだろう。彼の存在を初めて認識した時、彼はこの世界と、そして自分が生まれてきた意味を知り、大きな声で罵声を上げた。並大抵の事柄では激昂しないと思っていたが、どうも存外自分は沸点が低かったらしい。

 

 まぁ、どれだけキレちらかした所で結果は変わらない。それに、ここまで生きてきた人生を振り返ればむしろこの年令まで生きていたのは御の字なのではないか、という位に無茶を重ねていたので、ある意味連中の思惑に乗って動いていたからあのライブ会場で自分は命を使い切らず、今ここで寝そべっているのだと考えれば……どちらにしろ死ぬことに変わりはないのだ。多少気持ちを誤魔化すことは出来た。

 

『ま、そこはワタクシも気持ちは分かるよ。なんせ同じ経験を同期してるからね』

 

 戻ってきて早々の同情ありがとう。今、この死にかけのタイミングという事はどうやら仕事納めという事で良いのだろうか。なら早目に楽にしてほしいものだ。窒息は存外苦しい。

 

『おっと、少し焦り過ぎだぜワタクシ。時に確認したいんだが、このままベッドの上で死ぬのと戦場で果てるの。お好きなのはどちらかな?』

 

 聞くまでもない事を自分に尋ねるなよ、俺。

 

『それもそうだね、ワタクシとした事が失態、失態』

 

 所で、そのわざとらしい一人称はなんだい。俺の元はそういった話し方だったのか? なら、自分に幻滅する所だが。

 

『……どういう人生を送っても、この一人称なら被らないからな』

 

 なるほど――――それは違いない。

 

 

 

 ――ある病院で、一人の老人が亡くなった。

 

 死因は呼吸困難による心不全。医療機器の故障による事故だった。

 

 彼の亡骸は火葬され、その骨は故郷へと返され――教え子二人が、一欠片ずつ。

 

 教え子たちは嘆き、悲しみ。涙が枯れ果てるまで泣いて。泣いて、泣き叫んで。

 

 やがて――二人は悲しみの底から立ち上がり。二年の歳月が経って。

 

 そして、物語は。

 

 彼が居なくなった物語は、新たなる装者の誕生とともに。

 

 終へと向かって走り始める。

 

 

 

「別によ、翼もお前の事が嫌いってわけじゃないんだ」

 

 苦笑するように笑う女性。天羽奏の言葉に、立花響は何も言わずに口をつぐむ。分かっているだとか、そういった言葉が頭に浮かんで、消える。

 

 そんな響きの様子に苦笑を浮かべながら、奏では首にさげたストラップの先。ガングニールのコアと、少し彼女の指には大きすぎる指輪を手で弄ぶ。

 

 困った時。考え事をする時。答えがそこから帰ってくるような気がして、いつの間にか癖のようになってしまった仕草だ。

 

「ただ……私もあいつも、さ。仲間って言葉がな……少し、怖い」

「……奏さん」

「立花が悪いんじゃないんだ! だから、お前は胸を張れ。悪いのは、意気地のない私達だから。ハハッ、こんなんじゃ……お師さんに笑われちまう」

 

 ポリポリと頬をかいて、天羽奏は目を閉じる。瞼の裏には、いつだって師の姿があった。何も言わないけれど、困ったような笑顔を浮かべて、彼はいつもまっすぐに奏の目を見つめている。

 

 勇気がほしい時。瞼の師は何も言わず、ただ背中を推してくれるのだ。

 

「――行くぞ、立花。いや……響。学園を、開放する」

「――はい! 奏さん!」

 

 決意を胸に、ガングニールの装者はガングニールの装者を連れて戦場を駆ける。

 

 その胸に下げられたリングは、何も言わず。ただ、キラキラと光りを浴びて揺れていた。

 

 

 

 この身は、剣。

 

 ノイズの群れを切り裂くただ一本の剣で良い。

 

「おい、邪魔すんじゃねぇぞ!」

「そちらが、なっ!」

 

 未熟な戦士である立花は奏が見てくれている。彼女はいつだって、自分ができない事をしてくれる。

 

 その事に申し訳無さと、情けなさと。

 

 少しの安堵を覚えながら、 風鳴翼は天羽々斬を振るう。

 

「はぁ!」

 

 次々と現れるノイズを倒しながら、だけれど心の中ではいつだって泣き虫な私が叫んでいる。

 

 もっと早く。もっとたくさん倒さないと。また、失ってしまうと。

 

 複製した天羽々斬を天から落としながら、風鳴翼はほぞを噛む。

 

 何を考えているのだ、風鳴翼。そんな無駄な思考を、先生に教わったのか?

 

 そんな焦りしか産まない言葉を、先生がいつ私に言ったのだ?

 

 思い返す。戦いながら。記憶の奥底までを思い返す。彼の教えは全てこの脳裏に焼き付いている。

 

 先生はいつだって飄々としていた。戦いの中でも、日常の中でも。稽古をつけてもらった時。初めて先生から一本を取れたあの日。今でも瞬時に思い返せる……あの黄金の日々。

 

「残念だ」

「あん?」

「お前と立花を、先生に紹介できなかった」

「……何いってんだお前?」

「戯言だ!」

 

 にやりと。誰かの微笑みを思い返しながら頬を歪ませて風鳴翼は笑う。

 

 その胸に下がるリングは光を反射させゆらゆらと。

 

 まるで彼女と共に笑うように揺れて、光りを放つ。

 

 

 

「……存外、やるじゃないか」

 

 ため息を一つ。櫻井女史――フィーネは眼下の4名を見ながらそうひとりごちた。十分な数のノイズをそこら中にバラ撒いて居たのだが、予想を超える速さでその全てを討滅してきた彼女たちに、ぱちぱちとフィーネは手をたたき称賛の意を示す。

 

 その仕草に眉を寄せる少女たちの視線を受けながら、フィーネは余裕を崩す事なく彼女たちを見やる。

 

 彼女にとって、勝利はすでに確定した未来だった。唯一の懸念材料はすでに亡く、あるいはそれを扱う戦士も未だ未熟。しかも、この場にすらいない。

 

 対して自身はあの時と違い完全聖遺物2つを使いこなしている。一つは月を破壊するために必要だが、もう一つのネフシュタンの鎧は立花響というモルモットのデータを元に自身と融合。フィーネの身を守っている。

 

 まぁ、強いて言えばこの場で4人全員が絶唱を使ってカ・ディンギルを破壊しようとしたら面倒だが……その場合はノイズに抵抗できる人間が存在しなくなる事を意味する。ならば、ノイズの存在を交渉材料に再度カ・ディンギルを再建すればいい。

 

 どう転んでもどう流れてもどう立ち回っても己は目的を達成する。達成できる。故にこそ彼女は余裕を持って眼下にいる哀れな子羊達を称賛した。

 

 

 事実。事態は彼女が思い描いた想定内で進行する。

 

 

 雪音クリスによる絶唱を用いたカ・ディンギルの相殺。

 

 立花響の暴走によるフィーネへのダイレクトアタック。

 

 風鳴翼のカ・ディンギルへの特攻。

 

 それらを見ながら、対処しながらしかしフィーネは余裕を崩さなかった。中途半端に砕けた月を眺め、醜いなと嘲笑う事すら出来た。

 

 ただ一人残り、そして今なお涙ぐましい姿で時間切れの身を奮い立たせる天羽奏を片手間に相手しながら、彼女はこの後のプランを頭の中で思い描く。日本にいるシンフォギア装者は残り2名。一人はガラクタで、一人は心折れた未熟者。

 

 大人の度量を持って命だけは助けてやるべきか、とも考えたが万が一の事を考えればこの場でふたりとも始末するのが吉だろう。とくに立花響はその特性上、あるいは自らにすら並び得る可能性がある。

 

 ――そうだな、殺そう。

 

 理由を並べて、それしかない。それが最も良いと数回頷き、フィーネは倒れ伏す立花響へと足を向ける。

 

「了子さん、まさかっ!?」

「フィーネ、だ」

「やめてくれ! 立花は、響はもう戦える力も心も!」

「私に逆らう可能性は万に一つ、億が一つでも許さない。あの男のように枯れ果てた身であっても。この小娘のように心折れた者であってもだ」

 

 思い返すように空を眺め、そしてフィーネは歩みを進めていく。

 

「……あの、おとこ?」

 

 遮二無二振り回されていた槍が、ピタリと止まる。耳に入ってきた言葉にただただ呆然とする天羽奏を振り返り、湧き上がる嗜虐心に従ってフィーネは頬を釣り上げた。

 

「簡単だったぞ。呼吸器を少し細工するだけだった。それだけで、あの歴戦の勇者はこの世を去った」

「へ……」

 

 その唇の動きを、発された言の葉を。最初、天羽奏は理解できていなかった。耳に届いた言葉を、頭の中で再度並べて、読み上げて。そして、その意味が彼女の胸にストン、と落ちてきた時。

 

 天羽奏は殺意を持って、フィーネの胸に槍を突き入れていた。

 

「ああああっ! あああああああっっああああああああ!」

「くくっ……無駄だというのに」

「おま!お前が、お前えええぇぇぇぇぇ!!?」

 

 悪鬼のごとくその可憐な表情を歪ませる少女の姿を、フィーネは貫かれた傷を修復させながら、ムチを振るい嗤う。嗜虐心もある。己の計画を邪魔するコバエに苛立ちをぶつけたのもある。

 

 だが、最も多くを占める感情。それは――

 

「想い人を失ったのが、己だけだと思うてくれるなっ!!」

 

 己と同じ想いを持つものを作りたいという、歪な共感の押し付け。

 

 フィーネという女は、良くも悪くも女だった。

 

 この世の誰よりも一途で、この世の誰よりも愚かな少女だった。

 

 少女のまま、幾星霜を越え。数多の人生を生きて。そして、やがて自身の思いに止まれなくなった、哀れな少女だった。

 

 だから。

 

『良い女の涙は、惚れた男にだけ見せるもんだぜ?』

 

 誰かが、止めてやらなきゃいけないのだ。

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