自分の脚色が入ってますので多少違ってるかもしれませんが苦情は一切受け付けません!
動画見てて無性に書きたくなっちゃいました!
番外編 もしも神原優依が魔法少女になる前の佐倉杏子に出会ったら
ガラガラ
パンパン
「神様ああああああああ!!お願いですから俺を生存の道へとお導き下さあああああい!佐倉杏子に会わせないで下さあああああああい!ついでに俺を食パン地獄から解放して下さあああああああああい!!」
休日の昼前、俺は近所の神社で魂からの願いを叫ぶ。
もはや、なりふりなんて構っていられない!何としても生き残らなくては!!
俺、神原優依は前世「男」の今世「女」な転生者である。
どっかの少年の振りした邪神のせいで前の世界で死亡しこの世界に転生した。
あの「魔法少女まどか☆マギカ」の世界にである。
どうして分かったかというと急遽するはめになった引っ越し先があの鬱アニメに出てくる街の名前だったからだ。
引っ越した街の名前は「風見野」
幸いなのは破滅の中心街「見滝原」じゃなかった事だ。
・・まあ家を出て数分歩けば地獄が待ち受けている「見滝原」に到達するわけで言い方を変えれば見滝原郊外、もしくはギリ風見野といった方が良いかもしれない。学校は風見野だけど買い物は見滝原なので生と死を往復している毎日です。
それはまだいい。用がなければ見滝原には行く用事はないからある程度死亡フラグは回避出来てると思う。
問題は別にある。
引っ越し先に初めて向かう時、「それ」を目にして俺は気を失ってしまった。
俺の家からは視界圏内で、ある建物が見える。普通に暮らしてればだいたい人生でそこに入る事もないが、人生最大の行事の一つでもある結婚式の時、神様の前で永遠の愛を誓う場所、そう教会である!
しかもただの教会ではない!とても前世で見覚えのあるこの教会はあの「魔法少女まどか☆マギカ」に登場するツンデレ魔法少女「佐倉杏子」が住んでいる教会!将来、一家心中という心霊スポットにしかならない惨劇が巻き起こる超曰く付きの建物なのだ!
そんなホラー物件が見える厄介なこの土地に引っ越してしまったと悟った時は本気で神を呪った。幸いまだ心中が起こっていない上に信者が集まっていないところを見るとまだ佐倉杏子は契約していないと判断できる。今の所関わりあいも無いし、知り合いでもないのでほっとしていてこのまま赤の他人でありたいと願っている。
だが油断出来ない!死亡フラグとは常に油断している時に襲いかかってくるものなのだ!気を引き締めなければ!
ていうか見掛けるんですよ!杏子パパを!
ゲームで見たときと同じ容姿で一生懸命演説されてるもの!!道行く人達から思いっきり無視されてるか冷たくあしらわれてるけどね!見てるこっちが痛々しいわ!
それも悪いが更に悪いのは一生懸命説法してるおっさんを心配そうに見つめる赤いポニーテールの方が問題だチクショウ!
だいたい遠目で見掛けるんだけど、見掛ける頻度は笑えない!
最近は一日に二、三回は視界に赤毛ポニーテールがチラつくし、至近距離ですれ違うことも多くなった。その場合は即Uターンか遠回りで撤退している。しかも気のせいか段々見掛ける距離範囲が近づいて行ってる気がする。
気のせいだと思いたい!
まだお互い面識はないし向こうも俺の事に気付いていないが時間の問題だ!
その内バッタリなんて事になりかねない。
死亡フラグとランデブーな佐倉杏子と知り合いになんてなりたくない!
でも死亡フラグとは俺がどんなに細心の注意を払ってもスキップのように軽やかにやって来る。
俺にはどうしようもない。
もうこれは神頼みしかない!
そう考えた俺は今日、家の近所にある神社にお参りしにきた次第である。
神様は大嫌いだが背に腹はかえられない!それにこの神社は導きの神様らしいので是非とも俺を生存へと導いてもらわなければ!
嘆きに近い願い事をした俺は一礼して神社を去る。
魂からのお願いをしたから佐倉杏子については大丈夫だろう。
次はあともう一つの問題をどうするかである。
俺は手に持っているバスケットを一瞥しため息を吐いた。
正直もう食べるどころか見たくも考えたくもないです「食パン」。
母さんの知り合いが何故か大量の食パンをくれたので、
我が家は現在「神原家地獄の食パン祭り」が開催されている。ここ最近朝昼晩全ての食事のどこかに食パンが登場するので今や食パン拒絶症が出てきてしまっている。食に無頓着な母さんでさえ「もう食パンは見たくない」と言わしめた程の大群だ。痛まないように冷凍保存するも既に冷凍庫は食パン軍に占拠されそれ以上の侵入を許さない極限状態。万事休すとはまさにこの事。
今日は休日なので学校は休みだ。俺は出掛けるついでにカツサンドを作って外で食べようかと思ったが奴がカツを挟んでいると考えるとどうも食欲が失せるためまだ一口も食べていない。
「どうしたものか・・」
色々と問題が多いが考えても仕方がない。気を取り直して俺はひとまず歩くことにした。
今日は何か良いことないかなー?
「何でアタシ達がこんな目にあわなくちゃいけないんだ!?」
「お願いだ・・誰でもいい・・誰か父さんを救って・・」
「こんな現実は嘘だと言って・・!」
「・・・・・・・・・・」
とんでもねえ場面に出くわしちまったあああああああああああああああああああああああ!!!
俺の目の前でうずくまって現実を嘆いてる赤毛のポニーテールはどう見ても純度100%・一分の一スケール「佐倉杏子」じゃねえかあああああああああああああ!!
コイツに出会わないように路地裏をチョイスして移動してたのにまさかの杏子の方からやって来た!?
鼻歌歌いながら歩いてる時にいきなり杏子が俺の目の前に走って来た。その後追いかけてきたらしいおっさんに捕まって殴られてた。最初は突然の出来事に混乱したけど思い出した。
これゲームで見た杏子がキュゥべえと契約する前の出来事だ!
確か杏子が空腹のあまりリンゴを盗んじゃって追いかけてきた店員に捕まって殴られるんだっけ?リンゴは回収されて現実に嘆いてた時に悪魔の囁きの如くキュゥべえが契約をもちかけるんだったよな?追いつめられてた杏子はついに契約するという流れだったような気がする。
流石白い悪魔!見事なまでの契約タイミングだ!
俺の中で「絶対近づきたくない奴第一位」に今君臨したよ!
ていうか、神様あああああああああ!?
願った直後に来るのはなしだろうが!!向こうからやってきたぞおい!
・・・あ、そういえば・・・
あの神社に祀られてる神様って確か少年の姿してるって説明書きがあったような・・?
えええええええええええ!!?
まさかの邪神だったりするうううううううううう!?
ひょっとして俺破滅に導かれたああああああああああああ!!?
「・・・・・・っ」
脳内で邪神疑惑の奴を罵倒してる最中に地べたに座り込んでた杏子が俺に気付いたらしく気まずそうに顔を俯かせている。
そりゃ未遂に終わったとはいえ窃盗やらかして殴られた現場を目撃されたら誰だって気まずいわな。
しかしどうすればいいんだこの状況?
立ち去った方がいいのか、声掛けた方がいいのか分かんねええええ!!
ぶっちゃけ俺は前者を選びたい!
ぐうう~~~
「//////」
迷っている間にマヌケな音が耳に届き音がした方に顔を向けると杏子が顔を真っ赤にしてお腹を押さえている。むしろその動作が空腹な自分アピールになっているのに気付いていないのだろうか?
そういえばこの時ロクに食べてないらしいな。ゲーム内では水をスープに見立てて口にしてた程らしいしね。
涙出そう・・。
目頭を押さえていた俺に突如天啓が降りた。
! そうだ!良い事思いついた!
今俺が持っているカツサンドを杏子に押し付ければいいんだ!
そしたら杏子はお腹を満たせるし、俺は奴を口にしなくて済む!
一石二鳥じゃん!俺冴えてる!
そうと決まれば早速杏子に話しかけよう!!
「あの!」
「! ・・・何?」
視線を合わせるように俺は杏子の近くに腰を下ろし彼女の前に持っていたバスケットを差し出す。
「良かったら食べてください!」
「え・・・?」
戸惑う杏子を安心させるようににっこり笑う。
安心してください!毒は入っていませんよ!
中身はカツサンドですから!
ただ廃棄寸前の食パンを使用してるだけですから!
「・・・・・・」
なかなか受け取ろうとしないので、仕方なくバスケットから取り出して杏子に持たせる。作ってからそれ程時間が経っていないのでまだ暖かくカツの油の匂いとソースの香りが漂ってきて杏子がごくりと唾を飲んだ。あと一押しのようだ。
「私(食パン拒絶反応出てるから)お腹空いてなくて食べれないからどうしようって思ってたの。だから貴女が食べてくれると助かるんだ」
嘘は言ってない。
杏子がしばらくじっと考えていたけどやがて俺のほうを振り向いた。
「いいの?」
「うん、いいよ(むしろ助かる)」
「・・いただきます」
最初は恐る恐るの一口といった感じだったが、余程お腹が空いてたのかすぐにがっつき始めた。ほとんど丸呑みに近い勢いだ。しばらくその様子を観察しようとしたがあっという間に完食してしまった。恐るべし早食い。
「ごちそうさま!」
嬉しそうな顔だ。
「お粗末様・・ん?」
「え?・・あ?」
何故か杏子の目にポロリと涙が!?
「う・・うう・・」
最初は止めようとしていたようだが止まらないらしくとうとう本格的に泣き出してしまった。
「ええ!?どうしたの!?ひょっとしてまずかったとか!?だったらごめんね!」
突然の事態にオロオロしてしまう。
女の子の涙にどう対応していいのか分からない。
そもそも何で泣いてるのかさえ分からない。
思い当たる事といえばさっきのカツサンドくらいか?
一応自信作なのに・・ひょっとして廃棄寸前の食パンを使用した事バレた!?
俺はヒヤヒヤしながら謝るも杏子は泣きながら首を横に振っている。
「違うよ・・凄く美味しかった」
「え?じゃあなんで泣いてんの?」
「こんなに優しくされたの家族以外で初めてだったから・・」
「・・・・・・」
どうしよう・・?目合わせられない!罪悪感すごい!
杏子は優しさで食べ物恵んでくれたと思っているみたいだけど現実は俺の都合で残飯に近い物を押し付けたようなもんだから!
「ありがとう!こんな美味しい物初めて食べたよ!」
やめて!そんなキラキラした表情で俺を見ないで!
実際はそんな聖人君子を見るような目で見つめてもらえる事やってないから!
「そんな・・大したことないよ・・」
痛む胸を押さえつつどうにか笑顔で言えた。危なかった。
それにしても過去の杏子って素直にお礼を言える天使みたいな子だったんだな。
原作ではヤンキーとヤクザを足して二で割ったみたいな性格してるのに・・。
よっぽど一家心中に傷ついたんだね。
目の前の杏子見てると原作杏子って相当荒んでるように見えるし。
ん?
「ふぇ///」
「ここ赤くなっちゃってるね」
杏子の顔を何となく眺めてたら頬が赤くなっている事に気付き少し触ってみる。
良かった!赤くなってるけど腫れてない。これなら冷やしたらすぐ治りそうだ!
それにしても、
おのれええええええええええええ!!
あの店員がああああああああああああああ!
窃盗したとはいえ美少女の顔を殴るとはどういう了見じゃあああああああああああああ!?
万死に値するわボケ!!
「//////」
「あ!ごめん!痛かったよね!?触ってごめん!!」
「・・えっと、大丈夫だから」
あの店員を心の中で罵倒しまくってて忘れてたけどそういや杏子の頬に触れっぱなしだった。
ヤバい!杏子の顔真っ赤!俺が思ってたよりも痛いやつだった!?
ごめんよ杏子!殴られて痛いのに触れるなんて傷口に塩塗るみたいな事してええええええ!!
俺はしばらく両手で顔を隠す杏子にひたすら謝る。そこでふと思い出した。
そういえば杏子がここに来てしばらく経つのにキュゥべえが現れる気配が無い。
今日じゃないのか?
もしくは俺がいるから出られないとか?
疑問に思って杏子が耳まで真っ赤にして顔を隠してる間に辺りを見渡す。どこにも奴の姿が見えない。
どうやら思い過ごしのようだ・・・!?
ぎゃあああああああああああああああああ!!
QBいたああああああああああああああ!?
ふと何気なく顔を上に向けたらいるじゃないですか!?白い悪魔が!!
俺達からみると横にある建物の屋上からこちらを見下ろす格好でスタンバイしてる!!
薄暗いからか赤く光ってる目がこっちを見つめていて超こええええええええええええ!!
やっぱり契約直前だったんだ!?
俺がいなくなったらいつでも契約出来るようにスタンバってんの!?
勘弁してくれよ!
もう知らない間じゃないし俺が去った後に即・契・約☆とか笑えない!後味悪いわ!
こうなったら今回は契約阻止するしかない!この後は知った事じゃないけど今は絶対やらせない!
取りあえずここから離れよう!最悪俺も契約とか迫られたら嫌だし!
インキュベーターの顔なんて見たくもないわ!!
俺はそう決意し絶賛待機中のQBから目を離して未だに顔を隠している杏子に向き直る。
「ねえ良かったら家に来ない?顔冷やした方がいいし。今誰もいないから遊びにおいでよ」
「え?ちょっと、え!?」
杏子の手を取って無理やり路地裏から連れ出す。後ろを振り返るも奴は追ってこない。
どうやらQB難は去ったようだ。
「はい、これで冷やしてね」
「うん、ありがとう」
俺の家に杏子を招きリビングのソファに座らせタオルでくるんだ氷袋を渡す。
本音は家に死亡フラグキャラを入れたくなかったけど他に連れ出す案が思い浮かばなかった事とふと思いついたことを実行するため思い切って家に入れた。
他人の家が珍しいのかキョロキョロしてて可愛い。俺からすれば教会が自宅という方が超珍しいんだけどさ。
「ちょっと待っててね」
俺はそれだけ告げて雛鳥みたいに動き回る杏子をほったらかしてキッチンに向かう。冷蔵庫にあった牛乳と卵、そして冷凍庫から食パンを取り出し調理にかかる。
そう!俺は我が家にある食パン軍を杏子に一掃してもらおうと考えて連れてきたのだ!
赤いダイソンと呼ばれる奴の胃袋は無尽蔵!
杏子の胃袋に詰め込めるだけ詰め込んで一刻も早くこの食パン地獄から抜け出させていただこう!
「はい、召し上がれ」
「うわあ美味しそう・・」
出来上がったフレンチトーストを待ってろって言ったはずなのに何故か俺の後ろについて回ってた杏子の前に差し出す。座らせてフォークとナイフを出してやるもまた杏子は手つかずでじっと見てた。
「・・・・・・」
何?食べる前にガン見するの癖なのか?
「どうしたの?ひょっとしてお腹一杯で食べられないとか?」
まあカツサンドの後にフレンチトーストって、並みの女の子なら遠慮したい重さだよな。だとしたら失敗した。杏子だからいけるだろうと思ってたんだけど。
しばらく杏子はじっと見てたがやがて何かを決心したような表情で俺を見上げた。
「・・・あのさ」
「うん?」
「これ持って帰っちゃだめかな?」
「え!?」
まさかのお持ち帰り!?
フレンチトーストってお持ち帰り出来たっけ!?
「無理言って悪いって思ってる。・・でもこれ妹に食べさせてやりたいんだ。ここ最近アタシらまともに食べてなかったからさ」
凄く辛そうな表情で俯き涙を誘う。
いやそれよりも・・お姉ちゃん力パネエ!!
自分だってお腹空いてた筈なのに妹を優先するとはやはり天使だ!!
そういやゲームの過去編でリンゴ窃盗した時も妹にあげるつもりだったらしいしな!
「・・だめかな?」
懇願する程のもんじゃないのに、何で一生のお願いみたいな表情で俺を見てんのか謎だ。
さて、どうしたもんか・・。身の上話をちょろっと聞いてしまったからなー。
同情はするけど我が家に飢えた一家を満腹にする程の食料は・・あるじゃん!!
この家に蠢く無数の食パン軍団が!
限界まで杏子に食べさせようかと思ってたけど予定変更!
一家総出で食パン制圧に協力していただこう!これで完全に我が家は解放される!
ありがとう佐倉一家!!
君たちのおかげでようやく希望が見えてきたよ!
不安そうにみつめる杏子に俺は邪な笑みを浮かべて口を開いた。
「だめじゃないけど出来立てが一番美味しいからそれは貴女が食べて?妹さんには今からサンドイッチ作るからそっちを食べさせてあげてよ」
「え!?アタシはアンタに随分食べさせてもらってんのに!?その上まだ用意してくれるのかよ!?」
「もちろん!いいよ♪いいよ♪」
物凄く驚かれたがこっちは上機嫌で準備にとりかかる。
「・・何で?」
「?」
ぼそりと何か聞こえたので振り向くと座っている杏子は俯いてて表情が見えずちゃんと耳をすまさないと聞こえない程のか細い声で何か呟いてる。
「何でここまでしてくれるんだ?アンタとはさっき会ったばかりなのに・・」
「・・困ったときはお互い様だよ?神様はきちんと良い行いをした人を助けてくれる。貴女は妹想いな優しいお姉ちゃんなんだね。だから神様は貴女を助けるために私と会わせたんじゃない?」
「・・・・!」
やってみたかったウインクをしてキメ顔で言ってみる。
ぶっちゃけ成り行きと俺の心の平穏と食パン地獄からの解放が理由なんだけどね?そんな事は言えないので適当に誤魔化しておく。杏子が教会の娘なので神様関連に結び付けておいた。誤魔化す理由が見つからなかったからだけど。
あと言いたいんだけどさ杏子さん、この世に神様はいるけど容赦ないぞ?
俺を絶望させたくて君と鉢合わせさせるような性悪邪神なら絶対いるから。
「・・そっか・・ありがとう」
泣きそうな顔でお礼を言われるがむしろこっちがお礼を言いたい!
「どういたしまして!だからあったかいうちに食べてね?その間に作るから!」
「・・うん!」
俺はウキウキで冷凍庫の食パンを取り出した。
「こんなにたくさん・・ホントにいいの?」
「もちろん!良かったら家族で食べてね!」
「ありがとう・・・!」
玄関先にて片方ずつ大きめのバスケットを持っている杏子は何度目か分からない泣きそうな顔で感謝の言葉を口にする。
はっきり言ってお礼なんて必要ない!
むしろこっちが言わなければ!
ありがとう!お陰様で我が家はようやく底なし沼から抜け出せたよ!
ついでにサンドイッチのレパートリーも増えた!
感謝してもしきれない!ホントにありがとう!
「なあ」
「何?」
上機嫌でニコニコする俺に杏子が決意を固めた表情で見つめてくる。
「アタシ佐倉杏子。・・アンタの名前聞いていい?」
「え・・!?」
まさかの爆弾だった。
嫌だああああああああああああああああ!!
教えたくねえええええええええええ!!
これから先死亡フラグに突っ走る人と絶対仲良くなりたくない!!
今日限りの縁にする前提で助けたんだから名乗る必要ないじゃん!
「な、名乗る程じゃないよ・・?」
「だめだ!それじゃ意味ないんだよ!アタシにとってアンタの名前は大事なんだ!」
「ひい!」
「お願い教えて!アタシ、アンタの名前知りたいんだ!!」
何でここまで鬼気迫る表情で俺に詰め寄ってくんのか分からないがこの並々ならぬ気迫から何が何でも聞きだすつもりなのは分かる。
教えなきゃ帰ってくれなさそうだな・・。
仕方ない。
「優依・・」
「優依?」
「神原優依です」
「優依って言うんだ。アンタにお似合いの可愛い名前だな。優依か・・えへへ」
俺の名前を教えただけで何でそこまで嬉しそうに笑うのか分からない。
食べ物くれる人認定されてないよね?
やだよ?もう会う気ないし。
「優依ホントにありがとな!ちゃんと家族で味わって食べるよ!また会おうな!」
「(二度と会いたくないから)早く帰ってあげた方がいいよ?さよなら!」
上機嫌に俺に手を振る杏子を見送り家の中に入った。
取り敢えず玄関先に死亡フラグの厄払いで塩でも振っておいた方がいいだろうか・・・?
杏子side
「お腹空いた・・何でもいい・・誰か食べさせて・・せめて妹だけにでも」
空腹のままふらふらした足取りで街を歩く。ここ最近まともに食べてない。
アタシの父さんは教会で経典の文言を教える仕事をしていた。
だけど苦しむ人々を救うには経典の教えはもう古いと考えた父さんはある日教会に集まった信者の方々に自分の考えを説いた。
父さんは間違った事を言ってない。正しい事を言っていたはずなのに信者の人は話を聞いてくれず離れていった。教会の本部からも破門された。寄付してくれる人もいなくなってアタシ達一家は食べる事に困ってしまった。皆がアタシ達を見殺しにしようとしてるみたいだ。
なんで・・?なんでなの?
父さんは正しい事を言ってるのに!
何でアタシ達がこんな目にあわなくちゃいけないんだ!?
この世に・・神様はいないの?
視界が涙で滲む。
ここ最近ふと思い出す事がある。
キュゥべえと名乗る白いマスコットに願いを叶えてあげると言われたあの日。あの時はアイツの人の弱みに付け入るようなやり方に怒って拒絶したけど今は少し後悔している。
あの時契約してれば・・
「あ・・」
考え事をしていたがふと視界に赤いものがうつった。
「リンゴ・・」
商品棚に置かれているリンゴ。今は近くに誰もいない。
「あれさえあれば・・」
ごくりと喉を鳴らす。いけない事だって分かってる。
でもお腹を空かせてる妹に持っていってあげれば・・!
「あ!このガキ!」
アタシは覚悟を決めてリンゴを手に取り一目散に駆け出した。
「うあああ!離せ!これはアタシんだ!」
「ふざけやがってクソガキ!」
まともに食べてないから体力もなくて路地裏に逃げ込んだところを捕まってしまった。
「っ!」
暴れていたが頬に衝撃を受けて地面に倒れこむ。じんじん痛む頬でようやくアタシは殴られたんだと分かった。
「返せ・・妹に持ってってやるんだ・・!」
アタシの言葉は無視されリンゴを取り返した店員はさっさと来た道を戻っていく。その背中を見て再び涙で視界がぼやけた。
くそ・・くそ・・くそ・・くそ!!
「何でアタシ達がこんな目にあわなくちゃいけないんだ!?」
父さんからは絶望に負けちゃいけないって教わったのに嘆きが止まらない
「お願いだ・・誰でもいい・・誰か父さんを救って・・」
優しすぎるあの人をこれ以上苦しめないで!
「こんな現実は嘘だと言って・・!」
誰か助けて・・・!
叶わない願いだと分かっていても願わずにはいられない。
ふと視線を感じ顔を上げたら女の子と目があった。とっても綺麗な女の子で最初は女神様かと思った程だ。
「・・・・・・っ」
見とれていて忘れてたけどさっきのやり取りは見られてたに違いない。気まずさに顔を俯かせる。
ぐうう~~~
「//////」
気まずい沈黙を壊すようにアタシのお腹が鳴った。慌ててお腹を押さえたが顔に熱を帯びるのが分かる。
空腹だから鳴っても仕方ないけどこんな時に鳴らなくても!
「あの!」
「! ・・・何?」
綺麗な声が間近に聞こえて顔を上げる。女の子がアタシの目の前にいた。
やっぱり綺麗な顔だな・・
ぼーっとその子の顔を見てたら女の子がアタシの前にバスケット差し出してたのに気付かなかった。
「良かったら食べてください!」
「え・・・?」
花が綻んだような可愛い笑顔を見せて胸が少し高鳴った。そして同時に戸惑う。
・・どうすればいいんだろう?
困惑したまま動かないでいると痺れを切らしたのかその娘が中身を取り出してアタシに持たせた。
どうやらカツサンドみたい。すごくいい匂いで思わず唾を飲み込む。
それでも動かないアタシに女の子が「今お腹空いてないから食べて欲しい」とアタシが遠慮しないように優しい嘘までついてくれた。
ここまでされて遠慮するなんて悪いし何よりお腹空いてる。アタシはもう一度確認し、許可をもらってから一口かじった。出来立てのようで衣はサクサクでソースが香ばしい。気づけば夢中で頬張ってた。凄く美味しくてあっという間に完食してしまった。
こんなに美味しい物食べたの久しぶりだった。
こんなに誰かに優しくされたの・・初めてだった・・
「う・・うう・・」
いつの間にか涙が出てきて止めようとしたけど止まらなかった。女の子は不味かったのかと心配してオロオロしてたけどそんな事ない。何とか嗚咽気味に誤解を解いた。
「ありがとう!こんな美味しい物初めて食べたよ!」
涙が止まり精一杯の感謝を込めて女の子にお礼を伝える事が出来た。
「そんな・・大したことないよ・・」
目を逸らして呟くように謙遜してた。
可愛いけど随分謙虚な奴だなあ
この後その娘がじっとアタシを見てたかと思うと突然手を伸ばしてきた。
「ふぇ///」
「ここ赤くなっちゃてるね」
最初何されたのか分からなかった。頬に感触を感じたからアタシはようやくさっき伸ばした手で触れられてると分かった。顔が熱くなってる。
心配そうな表情も可愛いな・・
今アタシだけを見ていてくれてるんだ
ずっと見て欲しい
ずっとアタシだけを見ていて欲しい・・!
恥ずかしい事考えてて顔が更に熱をもったのだろう。それに女の子が気づき慌てて手を放してアタシに謝ってきた。誤解なのだが今のアタシに訂正する余裕はない。
アタシ何考えてんだ!?
同じ女子に触れられてドキドキするなんて変態じゃん!
触れるのやめられてすごくガッカリしてやめないで欲しかったなんて考えてるし・・!
あああああ!どうしよう!?
心臓がうるさい!恥ずかしくて顔見せられない!
両手で顔隠しているが熱が凄いのか物凄く熱かった。
少しの時間はそのままだったけど女の子はまだアタシの傍にいてくれて慰めてくれてるみたいだった。
「ねえ良かったら家に来ない?顔冷やした方がいいし。今誰もいないから遊びにおいでよ」
「え?ちょっと、え!?」
一方的に捲し立てられアタシが何か言う前に手を掴まれ立ち上がらせて引っ張られる形で走った。
連れてこられたのは大きな家。たぶん女の子の家だ。テレビでしか見た事ないオシャレなリビングに案内され頬を冷やすようにとタオルでくるんだ氷袋をくれた。
ひんやりして気持ちいい。けど自分が場違い過ぎて落ち着かない。ソワソワしてあちこち見渡してしまう。
その娘がアタシに待ってるように言い残してリビングを出ていくが少しでも一緒にいたくて後ろをついて回った。何かを作ってるみたいでその後ろ姿を一心に見つめた。
飽きないし退屈なんてしない。
ずっと見ていたい
しばらく経ってアタシの前にフレンチトーストを出してくれた。どうやらこれを作ってたみたい。
食べていいの?・・でも
しばらく目の前に出されたものを見て悩んでいたが決心がついて目の前で不思議そうな表情をしている女の子を見た。
「・・・あのさ」
「うん?」
「これ持って帰っちゃだめかな?」
「え!?」
とても驚かれてしまった。
まあ確かに今食べるために用意してくれたのものを持って帰りたいって言ってるしな
・・気を悪くさせちゃったかな?
「無理言って悪いって思ってる。・・でもこれ妹に食べさせてやりたいんだ。ここ最近アタシらまともに食べてなかったからさ」
今こうしてる間にもモモはお腹空かせて泣いてるかもしれない。アタシはさっき食べさせてもらった。だからこれは妹にあげたい。
「・・だめかな?」
不安になって見つめる。その娘は少し考えてから女神様みたいな慈愛に満ちた笑顔になって口を開いた。
「だめじゃないけど出来立てが一番美味しいからそれは貴女が食べて?妹さんには今からサンドイッチ作るからそっちを食べさせてあげてよ」
驚いたと同時に訳が分からなった。アタシを助けてくれるだけじゃなくて妹まで。目の前にいるコイツは何を考えてるのか分からない。
「・・何で?」
言うつもりはなかったのに勝手に口が動いてた。
「何でここまでしてくれるんだ?アンタとはさっき会ったばかりなのに・・」
神様も信者の人も本部の人も誰もアタシ達を助けてくれなかった。
だから何で今日会ったばかりの子がアタシを助けてくれるのか分からない。
「・・困ったときはお互い様だよ?神様はきちんと良い行いをした人を助けてくれる。貴女は妹想いな優しいお姉ちゃんなんだね。だから神様は貴女を助けるために私と会わせたんじゃない?」
ウインクまで決めて悪戯っぽく笑いながらアタシを諭すような優しい口調だった。
「・・・・!」
そうだ・・。神様はちゃんと見ていてくれてたんだ。
だからアタシはこの娘と出会えた!凄く嬉しかった。
絶望しちゃダメって父さんは言ってたじゃないか!
希望を見失っちゃいけないって!
アタシはもうちょっとで希望を失う所だった。
でもそのおかげでアタシは神様に出会えた!
アタシは凄く幸せ者だ・・
涙ながらにお礼を言うが女の子は気にせず冷めないうちに食べろと告げただけでウキウキでサンドイッチを作り始めた。
何でそこまで嬉しそうなのか分からないけど人を助ける事に喜びを感じる聖女様だからかも。
アタシも見習わなくちゃ
楽しそうにサンドイッチ作ってるその娘の背中を見ながらフレンチトーストを食べた。
甘くて柔らかくて優しい味だった。
帰るときその娘はアタシに大き目なバスケットを二つ持たせてくれた。中身はギュウギュウまで詰め込まれたサンドイッチ。凄く重くて持ち帰るのは大変だけど嬉しかった。
これなら家族全員お腹一杯食べられる・・!
改めてお礼を言ったけど女の子は「家族と一緒に食べてね」とただ繰りかえした。
どこまで優しいのか分からないなコイツ。
ホントに聖女様みたいだ。
「なあ」
「何?」
帰る間際に大事な事を思い出し、声を掛ける。
「アタシ佐倉杏子。・・アンタの名前聞いていい?」
「え・・!?」
名乗るなら自分から。どうしてもその娘の名前が知りたくなったから聞いてみただけなのに何で驚かれてるんだろう?
「な、名乗る程じゃないよ・・?」
「だめだ!それじゃ意味ないんだよ!アタシにとってアンタの名前は大事なんだ!」
名乗る気はなかったのか教えてくれなくて焦って詰め寄ってしまう。重い物を両手に持ってるはずなのに重さが全然分からなくなる程アタシは慌ててた。勢いに任せて詰め寄ったからか女の子は怯えてたけどそれを気にしてる余裕はない。
ここでお別れなんて嫌だ!
また会いたい!
名前も知らない赤の他人なんて耐えられない!
アンタにもっと近づきたい!傍にいたい!
「お願い教えて!アタシ、アンタの名前知りたいんだ!!」
懇願の形になってるのを自覚していたがなりふり構っていられなかった。
教えてくれるまで帰らない!
何時間でも粘ってやる!
「優依・・」
しばらく硬直状態が続いたけどやがて諦めた表情でため息を吐いてぼそりと女の子は呟いた。
「優依?」
「神原優依です」
「優依って言うんだ。アンタにお似合いの可愛い名前だな。優依か・・えへへ」
思わずにやけてしまう。
なんだか優依と距離が縮まった気がして嬉しくなった。
心の中で何度も優依の名を呼ぶ。
呼ぶ度に胸が高鳴るのが分かった。
「優依ホントにありがとな!ちゃんと家族で味わって食べるよ!また会おうな!」
早速教えてくれた名前を呼んでお礼と今度会う事を告げて手を振った。
「早く帰ってあげた方がいいよ?さよなら!」
最後までアタシの名前を呼んでくれなかったけど優依も手を振ってくれた。最後まで可愛い笑顔だ。
「杏子・・このサンドイッチは一体どうしたんだ?ウチにはそんなお金はないぞ?まさか盗んだんじゃ・・?」
「違うよ父さん!これは今日友達になった子がくれたんだ。良かったら家族で食べてって」
「・・そうか。ありがたい事だ。優しい友達が出来たんだね」
「うん!女神様みたいに優しくて可愛い女の子なんだよ!」
「今度何かその娘にお礼をしなくてはいけないね。ただウチにはお金が・・」
「父さん大丈夫だよ。今度会ったらアタシが何かお礼するから」
「そうか、すまない。では遠慮無く頂くとしよう。杏子、母さんとモモを呼んできてくれないか?」
「はーい」
教会に帰ってアタシが大きなバスケットを持ってる事に父さんは驚いた。中身は色取り取りのサンドイッチが入っていて、最初はアタシが盗んだと思ってたみたい。
まあウチにはお金がないからそう思うのは当然か。ちゃんと説明したら父さん分かってくれて良かった。久しぶりに父さんが嬉しそうな顔してるからアタシまで嬉しくなっちゃう。
今日はお腹いっぱい食べられるからモモは喜ぶだろうな。そう思うと笑顔になる。
人生で最低の日かと思ってたけどそんな事はなかった。
今日は人生で最高の日。
だってアタシの、アタシだけの神様に会えたんだ!
優しくて可愛いアタシを救ってくれた神様!
今までの辛い毎日は神様に会うために必要な事だったんだって今なら思える。
待っててね優依!アタシまた会いにいくからさ!
アンタの為ならどんな事だって耐えてみせる
アンタが望むならどんな事でもする
だからずっとアタシといてね?
そんな事を考えつつアタシは軽やかな足取りで母さんとモモを呼びにいった。
IF番外編でした!
過去の杏子ちゃんが凄い切ないのでせめて二次創作だけでも救われてほしいという願いをこめて優依ちゃんぶっこみましたがどうしてこうなった?
既に病みの片鱗が出ちゃってます!
出会い編はこんな感じですかね?
このシリーズ続けようか悩み中です
他にも番外編考えてますのでちょいちょい増えていきますよ!
IFシリーズ、イベントなどを投稿する予定です!
はよ本編に杏子ちゃん出したい・・
番外編で登場してほしいマギレコの魔法少女は誰ですか?
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環いろは
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七海やちよ
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由比鶴乃
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深月フェリシア
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二葉さな