マミちゃんと友達になって数日。頻繁に休み時間に会ったり、お昼を一緒に食べたり、メールのやり取りをしている。友達になった当初冗談抜きで「何も怖くない」とか言ってマミらないか物凄く心配だったが、今のところ頭と胴体が繋がっているのでホッとしてる。俺という友達が出来たからか最近彼女は楽しそうだ。
・・ただね、マミちゃん。連絡来ないからといって、不安で間もあけずに着信やメールをするの止めてくださいませんか・・?携帯あけたら数十件不在着信ありの表示は怖すぎます。重い女認定されるよ?
まあ、そんな悩みは死亡フラグよりはマシなので、付かず離れずの適度の距離を保てというトモっちのアドバイスを参考にしつつ、現在に至る。今は放課後。マミちゃんは放課後パトロールに出掛けるので捕まる心配はなし。まどかは委員会の仕事。さやかはあの仁美お嬢様と寄り道してる。つまり今の俺は自由!
「ふーんふーんふーん♪」
何のしがらみもなくのびのび出来るのは実に気分が良いもんだ。鼻歌混じりに公園に寄り道してると、どこからかヴァイオリンの調べが聞こえてくる。普通は誰の?と思うが俺の脳内では九割隣の席のヴァイオリン野郎だと確信している。音の聞こえる方に向かってみると案の定奴が。
健気で一途な幼馴染の想いに気付かず、別の女性と結ばれやがった人魚姫のムカつく王子様の転生体にして鬼畜外道ヴァイオリン馬鹿「上条恭介」!
ほぼこいつのせいで魔女化免れられないんだよなーさやかは。そう思うと怒りの炎が沸き上がる。決してかわいい女の子二人に好意を寄せられて羨ましいなチクショウとか思ってない!ただ俺は魔法少女に変身出来ないし、変身したくもないが、今なら「リア充爆発サセルマン」に変身できそうだ!俺の怒気に気付いたのか、上条が演奏を止め、こちらに振り向く。
「やあ、神原さん。こんな所で会うなんて奇遇だね。どうしたの?」
お前こそどうしたの?と聞きたい。普通外で演奏なんてするか?公園だぞここ。まさか僕の演奏は凄いだろうってアピールしてるとかないよね?
「ヴァイオリンの音がしたから見にきただけ。まさか上条君だとは思わなかったよ(ほぼお前だと思ってたけど)」
当たり障りのない事を告げ、本音はのみこむ。席は隣なんだけど、殆ど喋る事はない。まあ、俺が避けてるからなんだけど。下手に話すと誤解されるからね。青髪あたりに。それなら何でわざわざ見に行ったんだというと、あわよくば、さやかとくっついていただければ幸いと下心を持って話し掛けました。「さやかちゃんを応援し隊」隊員募集中。ちなみに「マミちゃんを救い隊」と「杏子ちゃんを幸せにし隊」もあります。隊員は俺しかいないけど。
俺の当たり障りのない返答を鵜呑みにしてる上条君。考え事してる俺に向かって口を開いた。
「そっか。良いフレーズが浮かんだから、ここで演奏してたんだ。神原さん。今時間良いかな?良かったら感想を聞かせて欲しい。率直な意見が欲しいんだ」
うわー凄いな君。ヴァイオリンの為なら殆ど喋らない知人以下でも感想が欲しいってか?まあ、断らないけど。これも死亡フラグもといさやかの恋愛成就のために!俺はOKを出し、上条の奏でるヴァイオリンの音に耳を傾けた。
「それでね、この人は本当に凄いんだ!力強い演奏だけでなく繊細なフレーズだってお手のもので・・・」
「へ、へえ・・そうなんだ・・」
どうしたものか。何を思ったのか上条は俺を同士と認識したらしくマシンガントークが止まらない。好きなものを語るのは誰だって好きだが、心なしかオタクのトモっちと似てる気がするよ上条君?
「そろそろ帰らないとレッスンがあるからこの辺にするよ。今日は楽しかったよ神原さん。付き合ってくれてありがとう。また明日ね」
と一方的に告げられ、俺が一言も発しない内にさっさと帰っていった。この後もレッスンがあるとか彼のヴァイオリン愛は予想以上に凄まじい。あれだな。彼女に「あたしとヴァイオリン、どっちが大切なのよ!?」って聞かれたら迷わず「ヴァイオリン!」って即答しそうだな。青髪と緑髪よ。上条で良いのか?もっと他にも良い男がいるぞ?まあ、それはともかくあれほど大好きなヴァイオリンが出来なくなるって言われたら、そりゃ自棄になるわなあー。ホント面倒な奴好きになったなお二人は。別に羨ましくないですよーケッ!さて、とりあえず明日から誤解されないようにしなきゃな。さやかとかさやかとかさやかとかさやかとか。すっかり夕暮れも暮れた中、俺は帰るのであった。
さやかside
最近あたしのクラスに転校生が来た。名前は「神原優依」。これがもうどこのモデルよ!ってな感じの美少女でさあ。ホント世の中不公平って思ったわ。でも、中身は面白い奴でさ、からかったら予想より面白い反応してくれるから、ついやり過ぎちゃうんだよねー。そこは反省かな?ただ困った事に、優依の席の隣がさ幼馴染の恭介なんだ・・・。あたしは優依の後ろの席。だから二人が隣同士で嫌でも目に入る。お互い殆ど喋らないけどさ、優依はあんだけの美人だし、恭介だって、実はどう思ってるのか分かんない。そしてとうとう恐れていた事が起こった。今日になって急に二人が仲良くしゃべってるんだよ・・しかも恭介から話かけてるみたいだし・・ひょっとして付き合ってるのかな?そうだよね・・優依はあんなに美人だもの・・。
「やっほー優依!恭介と仲良いね!?昨日まで全然喋ってなかったのにさー。ひょっとして付き合ってんの?どっちから告白したのさ?」
気になって席に座ってる優依に惚けたふりして聞いてみた。いつもの調子に言えてるか、いつもと同じように笑えてるか分からない。もし付き合ってるなんて言われたら、あたしどうすればいいんだろう・・?
すると突然優依が立ちあがり片方の手をあたしの肩においた。もう片方の手は親指を立てて、全てを包み込むような慈愛に満ちた笑顔で口を開いた。
「さやかちゃんを応援したい」
「!?」
「ふぐ!」
想いがばれていた事と勘違いしてた事の恥ずかしさであたしは無意識に優依を殴っていた。
どうやら二人は付き合ってないらしい。それを息が絶え絶えの優依から聞いた。あたしはそれを聞けて安心しちゃった。とりあえず、ごめん優依。何か奢るわ。
ヴァイオリン野郎の接触の次の日、やっぱり俺に話し掛ける上条君。そのせいでやっぱり誤解してくるさやかに俺は肩に手をおき、親指を立てて、
「さやかちゃんを応援し隊」
とキメ顔で言ったら、真っ赤な顔で殴られた。ひどい。まあ、誤解は解けたようなので、良しとするか・・・。
上条君絡み回でした!何か上条君オタクの匂いがするんですけど、自分の気のせいですかね?