「料理うまいんだな!久しぶりに手作りの飯食ったよ!」
「そうですか・・・」
結局殆ど食べられなかった。理由は隣で満足そうにお腹をさすってる暴食娘で察してくれ。すごいよこの娘。正直作りすぎたと思ってたのに、掃除機の如くおかずを吸い込んていくんだよ。その姿は圧巻だった。というよりさっきのシリアスモードどうした?完全にギャグにシフトチェンジしてるぞ。
「・・誰かと一緒に飯食ったの久しぶりだな・・うまかったよ・・アリガト」
「え?う、うん」
あ、シリアスモードに戻った。そしてデレた!?お礼言われたよー。写真撮りたい!その赤らめた顔に目を逸らした様子、撮っていいですかね!?ツンデレ最高です!
「そーいやーアンタってどっから来てんの?初めて会ったとき迷子だったじゃん」
わざと話題逸らしたのか知らないけどのっておこうか。杏子顔まだ赤いしさ。
「隣の見滝原市。ちょっと前にそこに引っ越したんだよね」
「・・ふーん・・・見滝原市・・・ね」
何ですか?その意味深な言い方は?そんなにマミちゃんが気になるのか?師匠だしね。コンビ組んでたしね。
「あーあ、厄介な奴がいるからなー。アンタの家に遊びに行ってやろうかと思ったけど難しいなー」
そう言って俺の肩にもたれかかってくる杏子。体重かけてんな?重いぞ?
ていうか、え!?来る気だったの!?もし見滝原以外に住んでたら俺の家に来る気だったの!?危ねええええええええ!!マミちゃんありがとう!君のおかげで杏子が俺の家に襲撃する目論見は潰えたよ!!
「俺が会いに行くんじゃなかったのか?」
すっかり安心した俺は意地悪な質問をぶつける事にした。きっと今の俺の顔はムカつくだろうな。
「いた!」
そんな俺がお気に召さなかったのか杏子がむっとした表情になり、太ももつねってきました。まさかの暴力ですよ。しかも俺今日スカートだからダイレクトに痛みが来る。スカート履いたっていいんです。俺今女だし、美少女だし。ただ、次に杏子にあう時はズボンだな。毎回やられたらたまんない。
「・・いきなり何すんの?」
つねられた所をさすりながら聞いてみる。結構痛いんですけど・・。
「ふん。アタシに生意気言ったおしおきをしただけだ。確かにアタシに会いに来いって言ったけどさ、毎回優依に来てもらうのもなんかさ・・その・・悪いじゃん?住んでる場所知ってたら・・会いに行けるしよ・・」
天使がいる。顔を赤らめモジモジしてる赤い天使がいる!俺は無言で頭を撫でた。本当は抱きしめたかったがセクハラになるので我慢する。それにしてもかわいい!何だこのかわいい生き物!?デレた女の子は最高です!
「な、なんだよ!?なんなんだよ!?」
顔を更に赤くしてアタフタしている。俺をかわいいの暴力で殺す気だろうか?
しばらく頭を撫でていたが、夕暮れで帰る時間が迫ってきたので名残惜しいが撫でるのを止める。意外にも杏子は大人しく頭を撫でられてた。しかも途中から目つぶって体寄せてきてた。申し訳ないが俺は猫を連想してしまった。
「そろそろ帰るわ。今日は付き合ってくれてありがとうな」
俺はおもむろに立ち上がり杏子を見下ろす。こう見ると結構かわいい顔立ちしてるな。
「もう帰んのかよ・・まだいいじゃねえか。明日も休みなんだろ?」
俺の服を引っ張り子供のように駄々をこねてくる。そういえば杏子って年齢いくつなんだろうか?甘えたか?
「そろそろ帰らないとバス無くなるんだよ。それとも杏子一緒に来る?」
「・・・・やめとく」
ですよねー。マミちゃんと顔合わせる可能性あるもんね!分かってて言ったんだけど!
「あ!それとこれ、ほい」
俺はあることを思い出し、バッグから封筒を取り出す。そしてそれを杏子の手に握らせた。
「?・・なんだよこれ?」
「無駄遣いしなかったらそれで数日過ごせる分はあるぞ」
手渡したのはお金。もちろん俺の貯金から出してきたものだ。
「はあ?何でそこまで?」
杏子が怪訝な顔で聞いてくる。
「えーだってさ杏子、前会った時から思ってたけど訳アリだろ?事情は知らないけど、これからもお金必要だよな?前に助けてくれたお礼と、友達が困ってるみたいだし助けたいと思ったからだよ。複雑だと思うけど今回は恩返しだと思って甘んじて受けてくれないか?」
というのは建前でぶっちゃけこれからも友達としてやっていく杏子が犯罪してるという事実から俺の精神衛生を守るためにやってるだけです。まあ、自己満足です。いいじゃないですか!俺のなけなしの貯金で一人の女の子が生活できるんですから!またの名を買収という。生存権を金で買えるのは安いものさ!
「・・・分かった。遠慮なく使わせてもらう。今回だけだからな」
俺の本心は分かってないだろうが、納得してくれてよかった。心配すんな!多分また渡すから!百パーセント俺の生存のために!
「そっか、受け取ってくれて良かったよ。じゃあ俺は帰るから。またな杏子!」
珍しく俺から別れを告げて駅に向かう。
「ああ、またな」
杏子が短く告げて俺とは正反対の方角へ歩き出す。今日の任務達成!
逞しく生きろよ杏子!少なくとも「ワルプルギスの夜」と戦うまでは生き残ってくれると嬉しいです!見滝原に来ても問題なし!さやか説得のために喜んで軍資金を渡しますので遠慮しないでね!すべては俺の死亡フラグの回避のために!
何となく生存の道しるべが見えてきたので、俺は軽快な足取りで駅に向かった。
杏子side
「~♪」
アタシは駅に向かう優依をつけてる。観察する限り、何故かご機嫌に見える。しかも鼻歌まで歌ってるし。つけてる理由はお礼を言い忘れたこと、次いつ会えるか聞きたかったからだ。本当はすぐ声を掛けるつもりだったが、優依の様子を観察してみたかったのと、どのバスで帰るのか調べるために尾行してる。優依の住所を聞き出したかったが、何故かはぐらかされてしまった。アタシに来てほしくないってか?ムカつく。
今日はいろんなことがあった。優依がアタシに会いに来てくれて、しかも手作りのお弁当まで食べさせてくれた。・・すごくおいしかった。アタシがATM破壊の未遂を起こしたときは止めたくせに何も聞かないでくれた。その上アタシの目を見てちゃんと理由を話してくれるまで待ってる、アタシの事信用してるようなことを言ってた。本当に泣きそうになった。その後に何故かアタシの頭を撫でてきて驚いた。あんまりにも気持ちよかったから、そのまま身を預けてた。優依が帰るときは凄く嫌だった。もう子供じゃないのに駄々こねてしまった。本当に優依と会ってアタシはどうかしてる。変わってるよアイツは。
アタシを止めたと思ったらお金を渡してくるし、アタシの実情気づかれてたんだと分かった。情けないと思ったよ。でも、アタシを助けようとしてくれてうれしかった。アイツ実は天使の生まれ変わりだったりしてな?意外としっくりくるな。
「・・・おっと」
今日の事を振り返ってたら優依がバスに乗り込んでた。ふーん、あのバスで帰るのか。いっその事、家まで尾行すんのもアリだな。マミに会う可能性はあるが、魔女に近づかなければいいだけの話。そうしよう。家を知ってればアタシから会いに行けるし。
「・・・・チッ」
決心した途端、ソウルジェムに反応がある。この反応は魔女か。なんてタイミングだ。迷ったが、仕方なく今回は魔女の方に向かう。尾行は次優依が来たときにするか。それに危険な目にあわせないって約束もしてるしな。アタシは来た道を引き返す。八つ当たりを含めて魔女を叩きのめす事を考えながら。
ねえ優依。次はいつ会える?
大丈夫ですよね杏子ちゃん?なんか怖くなってますけど・・
とりあえず魔女様グッジョブ!このあと杏子ちゃんに八つ裂きにされるだろうけど!