幻覚かと一瞬思いました・・・
嬉しい気持ちが六割、悪ふざけな部分も多々あるので申し訳ないさが四割・・
でもやっぱり嬉しい!!
杏子side
アタシは優依に会うためいつものように見滝原に向かい、アイツの家まで歩く。不思議な事に今は夜だがまだ寝るには早い時間なのに優依の部屋に明かりはついていなかった。
今日は留守なのか?無駄足かよ・・。
そう思ったが、前は明かりがついていなくても部屋にいた事があったので、念のために出入りしている窓まで近づいてみる。
窓ガラスを通して部屋の様子を見ると優依がいた。暗い部屋の中でベッドの上で膝を抱えて顔を伏せている。様子がおかしい。アタシは窓を開けて中に入る。
「優依・・・?」
恐る恐る声を掛けてみる。部屋の暗さもあって雰囲気が酷く落ち込んでるように見えた。優依は突然名前を呼ばれたからか肩をビクリと揺らした後ゆっくり顔を上げてこちらを見る。
「・・・杏子」
「お前どうしたんだよ!?」
驚きで声を荒げてしまった。顔を上げた優依は瞳にいっぱい涙を溜めて気を抜くとすぐに泣き出してしまいそうな程弱々しい雰囲気だった。慌てて傍に駆け寄って隣に座り優依を抱き締めた。
「大丈夫か?」
「う・・ぐす、ひっぐ」
我慢の糸が切れたのか優依はアタシの腕の中で泣き出した。抱き締めてる両手から震えが伝わってくる。必死にアタシにしがみついて時々嗚咽まで混じってる。
「何があったんだ?誰かに酷い事されたのか?」
もしそんな奴がいるなら殺してやる。優依を傷付けた罪はソイツの死で償ってもらわなきゃな。・・いや手足砕いて死ぬまで苦しむような生き地獄を与えてやろうか?
優依に優しく問いただすが心の中では殺意と憎悪が入り乱れていて、それに呼応するように抱き締める腕にも力がこもる。
「違う・・そんなん・・じゃない」
だけど優依は首を横にふって嗚咽混じりに否定した。
「じゃあ何で泣いてんのさ?」
理由を言う気が無いのか何度、何があったか聞いても優依は首を横にふってただアタシにしがみついて泣くばかり。
つまりそれは・・
「アタシに言う気は無いって事か?」
自分がこんなに低く冷たい声が出せた事に驚きだ。別人かと思うくらい底冷えする声だった。
優依に信頼されてない。頼りにされてない。
どうしてアタシを頼ってくれないの・・?
アンタにとってアタシはその程度の存在なのか・・?
無性にそう考えてしまう。一度でも考えてしまうと怒りと悲しみがアタシの中で荒れ狂って感情の赴くまま体が動いてしまいそうで怖い。今だってそうだ。表に出ないように唇を血が出そうになるほど強く噛み、優依を更にキツく抱き締める。
・・純粋に優依のためという訳では無い。そもそも人のために魔法を使うつもりはない。
親父がアタシだけを残して一家無理心中してしまったあの日から魔法は自分のためだけに使いきると決めた。この誓いを覆す気は無い。だからこれはアタシのため。
喉から手が出る程欲しい優依を手に入れるためなら・・ね。力を貸す事で優依をアタシだけのものに出来るなら喜んで魔法を使う。アタシだけを見てくれるなら何だって奪って優依に差し出すだろう。
暗い欲望に嘲笑してしまう。相当優依に入れ込んでるようだ。優依という名の底なし沼にズブズブ沈んでいる。もう戻れないし戻る気もない。アタシは喜んで自分から沈んでいく。
「アタシはアンタの力になれないのか?」
少し頭が冷静になってきたので今度はさっきと違って悲しそうな声と表情で聞いてみる。
こう聞けばアンタは答えるだろう。
さあ、何があったかアタシに教えてくれよ?アンタを手に入れるために何をすればいいんだい?
案の定、優依は涙で濡れた綺麗な顔を困った表情にしてこちらを見ている。でもすぐに首を横に降ってアタシにしがみついた。
「ごめん・・今は言えない。いつかちゃんと話すからさ・・今は一緒にいてほしい・・だめ?」
「・・はあ、分かったよ。今は聞かない。その代わり約束守ってきちんと話せよ?」
「うん!ありがとう杏子!」
懇願するようにウルウルした目で見つめてくるからアタシが折れてしまった。優依はそのままぎゅっとアタシに抱きついてくる。アタシも抱き締め返す。
「一緒にいてほしい」・・か。
何度も頭の中でリピートする。優依にそう言われて気分が良いな。今はアタシに抱きついて顔を伏せてるから表情が見れないのは残念だが都合が良い。
だって今アタシは笑ってるから。
優依がアタシに泣いてすがってる。まるで全てをアタシに委ねているようだ。
錯覚だけど嬉しい!有頂天になってしまいそうだ!本当にそうなってしまえばいいのに!
・・おかしいな。優依と初めて会った時もコイツは泣いてた。その時は泣かないで欲しいって思ってたはずなのに今は泣いてほしいと思ってる。そのまま泣いてすがってアタシに依存しちゃえばいいとさえ・・。
アタシはホントに狂ってたんだ・・そしてこれからはもっと狂っていくんだろな・・。
・・構うもんか・・!優依がアタシのものになるならアタシはどこまでも狂ってやる!!アタシの全てを優依にあげる。だから優依の全てをアタシに頂戴?
溢れんばかりの想いを胸にアタシは優依の綺麗な髪を撫でながら出来るだけ穏やかな声を作り語りかける。
「優依、泣くなよ」
嘘だ。もっと泣けばいいのに。
「心配すんな。アタシが傍にいてやるから」
アタシ無しじゃ生きていけなくなってしまえばいい。アタシは優依無しじゃもう生きていけないだろうから。優依が死んだらアタシも後を追うだろうな。いやいっその事、親父のように優依と心中すんのもありか?まあそれはどうしようもない時に限るが。
「ずっと一緒にいてやるよ」
一人ぼっちは寂しいんだ。だから優依、早くアタシの所まで堕ちてきてよ?
残酷な現実は俺の心を砕き絶望に染める。夜の時間帯になり暗くなっても電気をつけず一人ベッドの上で涙を流してた。
「優依・・・?」
あれからどれくらい時間が経ったのか分からない。ベッドで縮こまってしばらく時間が過ぎた頃、窓が開く音がして俺の名を戸惑った声で呼ぶ杏子の声がした。
涙で濡れる顔を上げると杏子が驚いた顔をして慌てて駆け寄り俺を抱き締めてくれた。抱き締める温もりが心地よく俺は本格的に泣き出してしまった。
杏子は何があったのか聞いてくるが首を横にふって言わないようにする。言えるわけがない。だってこれは俺しか苦しみが分からないものだ。
《優依!大変だよ!暁美ほむらがどう見ても堅気じゃないヤのつく人達の事務所に乗り込んで銃漁ってるよ!あ!今ショットガン手に持ってる!》
《優依!大変だよ!暁美ほむらが自衛隊基地に侵入して武器を漁るという日本に喧嘩売ってるとしか思えない蛮行をしているよ!え?ちょっと待って?何で戦車見てるの?あれも持ってく気!?盾に入んの!?》
《優依!大変だよ!暁美ほむらが無表情で自室でくつろいでる鹿目まどかをガン見してるよ!友達を救う決意はカッコいいけどやってる事はただのストーカー行為だよ!あの娘もう色々戻れないよ!》
うわああああああああああああああ!!
心の中で絶叫する!
頭の中で響くシロべえのテレパシーに耳を塞ぎたくなる。俺は今日シロべえに頼んで暁美ほむらの一日の様子を監視し報告するようにしてもらった。
おかしいな?俺は様子を報告してくれって頼んだ筈なのに何で犯行の一部始終を実況中継されてんの!?ほむらマジでぶっ飛び過ぎだろうが!!序盤からエンジンフルスロットルじゃねえか!!彼女の目的はまどかを救う事なんだよね?国家転覆を企ててる訳じゃないんだよね!?
こんな武装集団率いてそうな奴が明日、俺のいるクラスに転校してくるとか、ましてや直接関わりを持たなきゃいけないなんて心折れるわああああああ!朝からずっと涙止まんないもん!
仲良くなれる気がしねえ!ほむらと協力関係になるのが理想的だと考えてたけど、今回の一日犯行スケジュールのせいで無理ゲーにしか思えねえよおおお!!完全武装した鉄壁のほむら要塞の心を俺がひのきの棒一本でこじ開けるとか無理!始まってすらいないのにオワタな結果しか想像できねえええ!!
ていうかこんなもん杏子に言えるかああああああ!!犯罪実況中継なんて言えるわけねえだろうが!これから先協力関係になるだろう二人だ。いきなり心証悪くしてどうする!?ほむらに比べたら杏子の窃盗が物凄く可愛く見える!ホントあの暴走紫にはドン引きだ!
それにしても杏子が来てくれて助かった!!じゃなきゃ俺今頃廃人コースに突入しそうになってたから!しばらく抱き締めたままでいて!ガタガタの俺のカバーガラスハートをあっためてえええええ!!
「アタシに言う気は無いって事か?」
ん?
体温の温かさで荒みまくった心を癒すのに集中して杏子が何か聞いてくるのを適当に首をふって対応してたら心なしか氷みたいな声に変質してた。
えー・・杏子さん何で怒ってんの?だからほむらの更新中の犯罪史なんて言えるわけないじゃん。しかもなんか抱き締める力強くなってません?
「アタシはアンタの力になれないのか?」
今度は捨てられた子犬みたいな顔をして悲しそうに聞いてきた。なかなか切り替え早いな。
俺はその態度を見て何気に感動していた。
杏子分かっているじゃないか!怒った感じから悲しそうな顔に即チェンジして罪悪感から自白させようとしているな?なかなかしたたかな奴だ。
だが絆される訳にはいかん!今はまだ様子見だ。シロべえと相談したが、イレギュラー(俺とシロべえ)がいるため、何が起きるか分からない。どんな流れになっているのか見極めるまでは内密に動くように決めている。ここで自白する訳にはいかない!
「ごめん・・今は言えない。いつかちゃんと話すからさ・・今は一緒にいてほしい・・だめ ?」
秘技!抱きつきからのウルウル目懇願!
効果はあるだろう。ただいくら今世が美少女でも元男の俺がこれやってると思うと気持ち悪いな・・。まあ嘘は言ってない。言えない理由は適当に誤魔化すし、俺の心の癒しと鎮静化のために一緒にいてほしいのも事実だ。
「・・はあ、分かったよ。今は聞かない。その代わり約束守ってきちんと話せよ?」
「うん!ありがとう杏子!」
杏子が渋々と言った感じで折れた。
流石美少女効果!実にチョロいものだ!もちろん分かっているさ!約束は忘れてなかったら多分話すよ!
杏子が再び俺を抱き締めてくる。あーまじ癒されるわー。その温かさに俺はウトウト眠気が襲ってきていた。
「優依、泣くなよ」
大丈夫です。朝から泣いてたんでもう涙枯れました。
「心配すんな。アタシが傍にいてやるから」
魔女の結界の時だけ傍にいてくれたら問題ないですよ?
「ずっと一緒にいてやるよ」
ワルプルギスの夜の戦いが終わったら一人で平気なんでそれ以降は好きにしてください。
杏子が優しく語りかけるのを半分寝惚けて回答する。なんか物凄いSP力を感じたがそこまでしてもらう必要性ないです。
《優依!大変だよ!暁美ほむらが・・・》
いやあああああああああああああ!!まだ終わってないんかい!もう聞きたくねえよ!!
眠気なんて瞬時にさめて杏子にしがみつく。なんか杏子がとても嬉しそうに見えたけど、多分気のせいだ。
結局シロべえ中継によるほむらのテロ行為を夜中ずっと聞かされ必死に杏子にしがみついていたが途中で気絶に近い寝オチになってしまった。
学校行きたくねえええええええええええ!!!
原作前ラスト最後の最後までアホ回になりました!
次から原作になります!
長かった・・・
番外編投稿に葛藤しており、少なくともほむほむ直接登場するまでは本編投稿するつもりです!
次回お楽しみにー