魔法少女オレガ☆ヤンノ!?   作:かずwax

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ほむほむ転校から魔法少女体験コースまでのチュートリアル終了!

ここからオリジナル展開になっていくかもしれません!


32話 交渉人”神原優依”

「”江戸城無血開城”をご存知ですか?慶応四年(一八六八年)に行われた江戸幕府の幕臣”勝海舟”と新政府軍の総大将”西郷隆盛”による江戸城を新政府への引き渡しおよびそれに至る交渉の事です。新政府軍が江戸に侵攻する際の混乱を防ぎ、戦火があがれば失っていたであろう多くの尊き命が明日を紡ぎ、一滴の血も流さずに双方共に納得いく形で穏便に戦いを回避させた偉業です。これは日本だけでなく世界でも類を見ない出来事であり、武力に訴えずに話し合いだけで物事を解決出来るという日本が誇るべき好例です。ですから暁美さんもそれに倣って話し合いをしてみませんか?無抵抗の人間に銃を向けるというのは野蛮な行為です。銃を下ろしませんか?いや、それが無理でもせめて無言で睨むのはやめて下さい!お願いします!!」

 

 

「・・・・・・・・・・」

 

 

あの波乱の魔法少女体験コースの後、俺はマミちゃん達と別れ、消えたほむらを探しにいった。途中待ち合わせしていたシロべえと合流し、後を追う。人気のない公園でほむらの後ろ姿を発見したので声を掛けたはいいが、後ろを振り向き俺達(正確にはシロべえ)を視界に入れた瞬間、魔法少女に変身し、銃を突き付けてきた。

 

相変わらずのQB拒絶症で何よりだ。

 

これでは話なんて無理なのでほむらに対して話し合いで解決する素晴らしさを偉大な歴史に基づいて語ってみたがまるで効果なし。無言で睨み、銃を突き付けたまま。

 

「暁美ほむら、君は少し頑な過ぎじゃないかい?会う人全てを敵だと思い込んでたら身動き取れなくなるよ?ここは危険を承知で流れに乗っかってみるのも一つの手さ。案外なんとかなるものだよ」

 

良い事言ってんだけどさシロべえさん。

俺の後ろに隠れて弾除けしながら言うセリフじゃないよね?

張っ倒されたいの?

 

「インキュベーターのお前に言われたくない!また私を騙すつもりなの!?」

 

「ひい!」

 

ごもっともです。

ほむらからすればシロべえの言う事全部信用出来ないわなー。

火に油注いでるようなもんだ。

 

 

 

「落ち着いて暁美さん。決めつけはよくないって。そんなメガネのフレームよりも狭い視野じゃ見えるものも見えないよ?」

 

「・・貴女は喧嘩を売りに来たの?」

 

「違うよ?暁美さんに会いに来たんだ」

 

「・・信じられないわね。前に会った時も同じように銃をつきつけてるのにどうして今回は怯えていないの?前回はとても怯えていたじゃない。それに私は巴マミ達から嫌われている。私と会って大丈夫なの?貴女、彼女達の友達でしょう?」

 

友達じゃねえよあんな宇宙人ども!!

だってコミュニケーション取れねえんだもん!

俺マジであいつらと友達やめてやるよ!

一緒にいるだけで命がいくつあっても足んねえからな!

 

あと怯えてない訳がない!

ほむらが気付いてないだけで内心めちゃくちゃビビってんだよ!!

足ガクガク震えてるわ!

 

でも、もう後がねえ!

このままいけばイエロー星人がパックンチョされるんだよ!

そしたらその後、この世界もパックンチョされるから逃げ場がない!

最後の希望であるほむらを頼るしか生きる選択肢がない所まで来てるから、もうこれはなりふりなんて構っていられない!

 

俺にあのお花畑な三人の説得は無理だ!

さっきでよーく分かった。何言っても無駄だわ。

 

ここで何が何でもほむらと協力関係になっておかなければマジでデッドエンドまっしぐらだ。

 

今の俺を動かしているのはヤケクソ以外の何物でもない!

 

俺を深呼吸をして心を落ち着かせる。

焦っては駄目だ。

俺の一字一句が命運を分けるんだから慎重にいかないと。

 

「暁美さんも分かっているでしょう?このまま魔法少女体験コースを続ければ、私みたいに危ない目に遭うかもしれない。今回は運よく助かったけど次はどうなるか分からない。最悪死ぬ可能性すらある。何とか止めたいんだけど、私の力だけじゃ無理。だから協力してもらえないかな?貴女は危険だって分かってるから私達を見守ってくれてたんでしょう?」

 

こいつの場合はまどかのストーキングだけしてたんだろうけどな。

 

「・・・・・・」

 

「暁美さんが一体何の目的で行動してるのか知らないけど(知ってるけど)、お互い利害が一致してるだろうし協力出来るんじゃないかな?」

 

銃を突きつけたままだがほむらは考え込んでいる。

 

 

悪い条件ではないはずだ。

お互い考えてるのは魔法少女体験コースをやめさせたいって事だ。

 

でもほむらはマミちゃん達に警戒されていて近づけない。

俺は彼女達と親しいが止める術がない。

しかしお互い協力出来れば止められるかもしれないのだ!

 

 

 

 

しばらく待った後、ようやくほむらは結論が出たようで俺の方を向く。

 

 

「・・協力するにしろしないにしろまずは貴女の傍にいるインキュベーターを始末する必要があるわ。こいつに知られたら邪魔をされそうだもの。そこをどいて。そいつを始末出来ないから」

 

「えええええ!?どうしてそんな結論になったの!?」

 

ほむらは予想の斜め下な結論を述べた上で標的をシロべえに変更する。それから逃れるようにシロべえは俺にしがみつき、俺はほむらからシロべえを守るように大の字ポーズになる。

 

あくまで最優先は夷敵インキュベーターの抹殺!

流石攘夷浪士の鏡!

 

 

「ちょちょちょちょちょっと!シロべえは他の白い悪魔と一緒にしないで!コイツは普通のキュゥべえとは違うんだから!!」

 

「その見た目に騙されてるだけよ。コイツに感情なんて無いわ」

 

「いや、だから・・」

 

 

 

「黙りなさい!」

 

「!?」

 

説明しようとするも聞く耳なんてどっかに捨てたらしいほむらに一蹴されてしまった。

 

 

「そいつを庇うなら貴女は私の敵よ。インキュベーターと一緒にいる貴女を信用できない」

 

「ええー・・・・」

 

・・どうしよう?

ほむらがめんどくさい宣言してしまった。

こんな頑なじゃ協力なんて無理じゃね?

 

 

 

「優依・・!」

 

「?」

 

 

カチャリ

 

「!?」

 

 

 

内心めんどくさいなーとぼんやり考え事してたらシロべえに名を呼ばれ返事をする前に額に何か固い物があたる。顔を上げるとほむらが至近距離に接近しており、お互いの顔がとても近い。ほむらの紫の瞳と目が合う。

 

いや・・そんな事はどうでもいい。

本当は美少女と顔が近い事に喜ぶべきだがそれどころじゃない・・!

 

 

お、俺の額にゼロ距離で銃が突き付けられてるううううううううう!?

 

うおおおおおおおい!マジか!?

仮にも同級生だぞ!?

何考えてんだよこの暴走紫!?

 

まずい!これじゃ逃げられない!

 

 

 

 

「貴女は何者なの?」

 

「え?ええっと・・?」

 

ほむら式尋問をされ、どう答えようか考えあぐねいてしまう。

 

「今まで貴女を見た事が無いわ。本当に人間なの?魔法少女・・ではないみたいだし、ひょっとしてインキュベーターのお仲間かしら?」

 

「人間ですよ!魔法少女でもましてやあの大嫌いな白いGと仲間じゃない!シロべえは例外だけど・・」

 

ホントにキュゥべえ嫌いなのね。

知ってたけどさ。

それにしてもやっぱり他の時間軸で俺は存在しないんだな。

 

こうなったら真相でも話すか?

それは構わないけど(嫌だけど)どこにインキュベーターがいるか分からないこんな場所で打ち明けられるか!

最悪あいつらそれに興味湧いて実験のためとかで俺の前世の世界に乗り込まれたりなんてしたら笑えない!

 

 

 

 

「・・・まあ、いいわ。貴女は話す気がないみたいだし」

 

ため息を吐いて額に突き付けていた銃を下げた。

 

「え・・・?」

 

「結論は協力出来ない。おそらく貴女と話すのはこれが最後でしょうね。もうこれ以上魔法少女に関わらない方が身の為よ」

 

 

 

ほむらは身を翻して歩き出した。

 

まずい!今逃したらマジで死亡フラグ完成する!

 

 

「待って!」

 

「しつこいわよ。協力出来ないと言ったでしょう?」

 

「でも・・!」

 

 

 

「いい加減にしなさい!!」

 

「!!」

 

背中を追いかける俺に苛立ったのか再び額に銃を向けられる。目に怒りの炎が宿っているようだ。

 

「協力しないと言ってるのが分からないの!?」

 

「・・・・・・・」

 

あまりの気迫に何も言い返せない。

 

 

「そもそも仮に協力するとして私に何のメリットがあるの!?貴女に何が出来るのよ!?」

 

 

 

怖えええええええええええええええ!!

 

 

 

ほむらカンカンじゃないですか!?

ヤバい!一歩間違えたらズドンだ!

 

 

 

しかしこれはチャンス!

 

ここでアピールして俺と協力した方がいいとほむらに思わせられれば考え直してくれるかもしれない!

 

 

 

よし!俺の出来る事を考えるんだ!

人間一つや二つはあるはずだ!

 

考えるんだ俺!

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

 

 

 

 

えっと・・いざ考えてみると中々出てこないな・・

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

 

 

 

 

思いつかない・・。だ、大丈夫だ!

今の俺は冷静じゃないんだ!

何てったって額にゼロ距離で銃突き付けられてるからな!

一歩間違えば撃たれるかもしれないから焦ってるだけだ!

 

よーし、落ち着け俺。

冷静になれば一つくらい出てくるはずさ!

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

 

 

 

 

 

待って?ホントに待って?

全く出てこないんだけど!?

 

 

は!そもそも出来る事って魔法少女関連の事を言ってんじゃないのか!?

その中で俺が出来る事なんていくら考えても出てこなくて当然だ!

 

じゃあどうしよう?

 

あ!そうだ!

俺の長所をほむらにアピールすれば良いんだ!

 

うん、そうしよう!その方がいいや!

 

えーと・・・・・。

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・ウソだろ?

 

 

人間長所くらい一つや二つあるはずなのに、考えても俺の長所らしい長所が全く思い浮かばないんだけど!?

 

 

 

逆に短所なら

 

 

〇へタレ

 

〇打たれ弱い

 

〇カバーガラスハート

 

〇ポンコツ

 

〇間が悪い

 

〇お調子乗り

 

〇その場しのぎの言葉

 

〇友達=トラブルメーカー

 

〇気絶体質

 

〇超ビビり

 

 

ちょっと考えただけでこんなにポンポン出てくるよ?

 

 

・・・うん。

自分の事改めて振り返ったら結論が出た。

 

 

 

 

 

俺ただの役立たずじゃん!!!

 

 

 

 

Noooooooooooooooooooooooooooo!!

 

知りたくなかったよこんな事実!!

 

駄目だ!!

 

考えれば考える程ほむらが俺と協力するメリットがないどころかデメリットしか思い浮かばねええええええええええええ!!

 

 

しかも邪神のせいでまどか以上の魔法少女(破壊神)の素質を押しこめられてんのよ?

 

足手まといな上に存在が害悪じゃん!

 

 

涙出そう・・・

 

 

 

 

≪優依何やってるの!?さっさと答えるなり命乞いするなりしないとこのままじゃ殺されちゃうよ!?≫

 

 

 

 

全く動かない俺に痺れを切らしたのかシロべえがテレパシーを送ってきた。

 

 

≪・・・シロべえ≫

 

≪何!?≫

 

≪俺に何が出来るかな?もしくは長所って何かな?さっきから考えてるんだけど全然思いつかないんだよねー。シロべえは何か思いつく?≫

 

≪・・え!?≫

 

良いタイミングで連絡してきたので俺はシロべえに希望を託す事にした。

こいつは相棒みたいなもんだから俺の長所の一つや二つは出せるだろう。

 

シロべえの回答を期待して待ってみる。

 

 

 

 

≪・・・・・・・・・・・・・・・・・・えーと・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・お、囮くらいは出来るんじゃないかな?・・長所は・・・・・・・・・・・・・・・・・ごめん、何も思いつかないや・・・≫

 

 

希望が絶望に変わった瞬間、俺の中で何かが壊れる音がした。

 

 

 

 

 

 

「何も答えられないの?それで私に協力しろなんて呆れたわ。・・私はもう行くわよ」

 

何も答えない俺を見てほむらが心底うんざりした様子で銃を下ろす。

 

 

 

「・・・・暁美さん」

 

「しつこいわよ・・・・!?」

 

 

 

逃げないようにがっしりとほむらの両肩を掴む。

そして今最も聞きたい事を驚いてる彼女に聞いてみる。

 

 

 

 

「俺って役立たずなのかな!?」

 

「は!?」

 

 

勢いよく顔を上げた俺は泣きべそをかいている。そんな俺の様子と突然の質問に若干混乱気味のほむらは普段のキャラとは思えない素っ頓狂な声をあげた。

 

しかし今の俺にそんな事気にしている余裕はない!

たとえそれが銃を持ってる相手でも気にしてられるかあああああああああああ!!

 

「考えたんだ!俺の出来る事は何かって!さっき質問された時からずっと!でも何も思いつかなかった!それどころか自分の長所すら一つも出てこないんだよ!?ヤバいよね!?これヤバいよね!?」

 

「ちょ・・ちょっと・・!」

 

 

感情のままにほむらを揺さぶりながら俺の嘆きは止まる事を知らない。

 

 

「ただでさえ足手まといなのに俺の魔法少女の素質って破壊神と同等なんだよ!?もう生きてるだけで罪じゃん!存在そのものが大罪みたいなもんじゃん!!」

 

「何言って・・?」

 

「もうこれ死んだ方がいいかな!?俺、死んで詫びた方がいいかな!!?今すぐ銃で頭撃ち抜いてもらった方がいいかな!!!?」

 

「!? 何するつもり!?銃に触れちゃだめよ!!」

 

銃を奪おうとするもほむらが咄嗟に力を込めて阻止、力の差は歴然なので失敗に終わる。

 

 

 

「まどかあああああああああああああああ!!自分に取り柄なんて何も無いって言ってたけどそんなの錯覚だあああああああああ!君の長所は沢山あるよ!俺なんて取り柄が無いどころか存在自体アウトだからああああああああ!!!」

 

 

「・・いい加減にしなさい!!いつまでやってるの!!さっきの質問だけでどうしてそこまで思い詰めてるのよ!!?」

 

暴走を続ける俺はついにほむらの裁きを受けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ほむらside

 

「少しは落ち着いたかしら?」

 

「・・はい、すみません。・・ご迷惑をお掛けしました」

 

突然錯乱した神原優依をどうにか鎮め、落ち着かせるために近くのベンチに腰を下ろして彼女の背中をさすってやる。泣きじゃくるこの娘を見て罪悪感が胸をよぎった。

 

「・・ごめんなさい。いきなり銃を突き付けてまた怖い思いをさせてしまったわね。本当はこんな事するつもりじゃなかったのに。・・どうもアイツを視界に入れると感情的になりやすくなってしまうみたい」

 

謝罪のつもりが言い訳がましい事を言ってしまっていて内心自嘲する。弾は入っていなかったとはいえ銃を向けたのはやはりまずかった。

 

まさか奪おうとするなんて。

一歩間違えれば大惨事になってた可能性もある。

何もなくて本当に良かった。

 

 

 

二人で話がしたかったため神原優依と一緒にいたインキュベーターは追い払ったが、まだ近くにいるだろうから警戒は必要だ。

 

 

 

「シロべえは他のキュゥべえと違うよ?精神疾患だから、リンク外されちゃってね。今は私の所に居候してるの」

 

 

 

周りを警戒している私に神原優依が口を開いた。

 

 

 

「・・・随分キュウべえに詳しいのね?」

 

「うん。だから魔法少女の事も色々聞いてるから契約には反対なの。・・友達の契約も阻止したいんだけどさ」

 

そう言って俯いてしまった。

 

彼女を含めて四人を監視していたけど一貫して目の前にいるこの娘は魔法少女に否定的だった。臆病だからという理由もあるだろうがはぐれらしいインキュベーターから魔法少女の実態を教えらえれていたのなら納得できる。どこまで知っているかは分からないけどある程度の危険性は理解してるようだ。

 

「・・そう、貴女も苦労してるのね」

 

「・・・・・!」

 

「とても痛そうねそれ」

 

巴マミにリボンで拘束され跡が残ってしまった彼女の首筋を触る。労りの思いと巴マミの身勝手さに怒りを覚えた。何とか阻止しようと足掻いていたのに全て空回っているこの娘につい同情の言葉が出る。

 

 

私も似たようなものだから。

 

 

 

うすうす感じていたけど目の前にいるこの娘と私はとても似ている。

僅かな回数でしか会った事はないのにだ。

 

弱虫で何も出来ないくせに必死に足掻いてその結果傷つき苦しんでいる。

 

まだ魔法少女になる前の私を見ているようだ。

 

過去の自分を見ているようで腹ただしいと思う事は多いが神原優依から目が離せない。放っておけない。

 

 

「・・そういえば」

 

「何かしら?」

 

 

 

考え事をしていた私に神原優依が思い出したように声を掛けた。

 

 

 

「さっき魔女に襲われたとき私を助けてくれたのって暁美さん?」

 

 

 

さっきとは「薔薇園の魔女」に捕まった事かしら?

 

 

「いいえ違うわ。私はあの時隠れて見ていただけで動いていないわ」

 

本当は助けるつもりだったが私が身を乗り出す前に全てが片付いていた。

 

神原優依を助けたのは一体誰だったのか?

私が確認出来たのは何か鎖のような物だけ。

・・・まさか

 

「そっか・・暁美さんじゃないんだ」

 

「ええ・・違うわ」

 

思考を中断させるように話を振られ、少し焦ったが返事を返す事が出来た。

 

・・推測はこれで終わりにしましょう。

考えても真相は分からずじまいだし。

 

それにしてもあれは本当に気の毒だと思う。

行きたくもないのに無理やり連れて行かれ、そして危険な目に遭った。

 

本来なら怒って絶交してもおかしくない程の仕打ちだ。

 

 

それなのにこの娘は友達を助けようと自分なりに動いている。

臆病だけど優しくてとても勇気がある。

最初の時間軸にいたまどかを思い出させる。

 

どうやら私は神原優依を見誤ってしまっていたらしい。

 

 

ベンチからおもむろに立ち上がる。

 

 

 

「・・協力の話は一旦保留にしましょう」

 

「え?」

 

私が言った事が信じられなかったみたい。

神原優依が立ち上がった私を信じられない様子で見上げていた。

 

 

「まずは貴女がまだ隠してある秘密を話してもらう必要がある。例えばさっき錯乱してた時の男口調の事とかね。何か理由があるんでしょう?」

 

「・・・・!」

 

 

カマをかけてみたがどうやら図星だったようね。

まだ重大な事を隠しているみたい。

もしまどかに関わりがある事なら意地でも聞き出しておかないと。

 

「貴女の秘密を全て話してくれたその時に協力するか判断するわ。でも今はやめておきましょう。どこでアイツらが見張っているか分からないし、貴女もここで打ち明けるつもりはないんでしょう?」

 

「・・・うん」

 

この反応からどうやら秘密は魔法少女関連だと予想がつく。

ひょっとしたら私も知らない事をこの娘は知っているかもしれない。

だったら尚更話してもらわないと。

本音は既に協力する事を考えているがあえて口には出さないでおく。

 

「・・巴マミは数日後に死ぬわ」

 

「!」

 

「落ち着いて。まだ時間はある。それまでに決意が固まったら私の所に来なさい」

 

 

メモ書きした紙切れを神原優依に握らせる。巴マミの事を出したのは卑怯だけどこうでもしなければこの娘は私を訪ねてこないだろう。

 

 

「・・・・ありがとう。でもどうして?さっきまで協力しないって言ってたのに」

 

不思議そうに私に尋ねてくる。

 

当然ね、さっきまでは協力しないと言ったばかりなんだから。

 

一瞬考えたが結局答えはこれしかない。

 

「そうね・・貴女が私と似ているから・・かしら?」

 

「!?」

 

とても驚いた表情をしている。その様子にばれないようにクスリと笑ってしまった。もちろん、秘密を話して欲しいからというのもあるが根本的にはこれが理由。

 

どうしても放っておけないから。

 

 

 

「私はもう帰るわ。貴女も魔女に捕まらない内に帰りなさい」

 

「う、うん!ありがとう!またね!」

 

「ええ、さよなら」

 

気恥ずかしさもあったので逃げるようにお別れを告げて私は彼女に背を向けて歩き出す。気になって後ろの様子を確認するとあの娘は手を振っていた。再び笑みをもらす。前に会った時と違って今回はとても晴れやかな気持ちだ。あの娘が私のもとにやって来る時を待ち遠しくすら思っている。そんな自分に驚きつつも私は笑顔で歩を進めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何で俺はこんな事になってるんだろうか?

 

何なのこの状況?

 

何で俺はさっきまで銃向けられてた人に慰められてんの?

 

 

 

自分のあまりの役立たずぶりに絶望して発狂してたら、ほむらに頭はたかれベンチに強制連行された。ちなみにシロべえは慰められてる最中ほむらによって「失せなさい」とヤクザばりのドスの効いた声で追い払われてしまったが丁度いいので俺はある事をテレパシーで頼んでおいた。

 

さっきの発狂が功をなしたのかほむらは俺に対して警戒しなくなったみたいだ。具体例をあげると銃をしまってくれて、しかも変身を解除して元の制服に戻ってくれた。

 

 

あれ・・?

これ怖がる子供に何もしないよー、怖がらせてごめんねーってしてる大人みたいな対応じゃね?

 

更にあのほむらから怖がらせてしまった事を詫びる言葉が出てきた!?

完全に俺子供扱いじゃん!

 

単純に俺がパニックになってほむらに泣きついただけなのに!

むしろ謝罪は俺がしなきゃいけない立場だよ!?

 

ちなみに慰めてもらってる間でも周囲を警戒しているらしく、しょっちゅう目を動かしていた。

 

ホントにインキュベーターが嫌いなのね。

 

流石にシロべえを殺されるのは勘弁して欲しいので、あいつが精神疾患でリンク外されてることは説明しておいた。

 

 

 

「・・・随分キュウべえに詳しいのね?」

 

「うん。だから魔法少女の事も色々聞いてるから契約には反対なの。・・友達の契約も阻止したいんだけどさ」

 

 

 

 

案の定、怪しんできたので適当に誤魔化しておく。ついでに俺が契約反対派である事と愚痴を伝えておいた。

 

嘘は言ってない。

 

 

「・・そう、貴女も苦労してるのね」

 

「・・・・・!」

 

「とても痛そうねそれ」

 

 

そしたら何故か同情され、どっかの黄色さんの殺人未遂の絞め跡が残る俺の首に触れてきた。

ちなみにその時のほむらの表情は慈愛と憤怒が織り交ざったような複雑さだったと言っておく。

 

触れられてる手がひんやりしてて何故かこっちが恥ずかしくなって気まずい!!

 

話をそらさなければ!

 

 

「・・そういえば」

 

「何かしら?」

 

「さっき魔女に襲われたとき私を助けてくれたのって暁美さん?」

 

そういやすっかり忘れていたがほむらに聞きたいと思っていたのでこの場で聞くことにした。

まどかを守るため絶対どっかで見ていたことは確かだろうしなこいつの場合。

多分こいつが助けてくれたんじゃないんだろうとは予想はつく。

もし助けてくれたのなら俺の中でほむらの株はうなぎ昇りで上昇するんだけどなー。

 

 

「いいえ違うわ。私はあの時隠れて見ていただけで動いていないわ」

 

予想通りかいいいいいいい!

お前が助けんのまどかオンリーだって分かってたけどさ!

こうもはっきり見てただけって言われるとすげえ腹立つな!

 

「そっか・・暁美さんじゃないんだ」

 

「ええ・・違うわ」

 

 

何とか怒りを抑えつつ会話出来た俺に賞賛の拍手を送りたい。

 

 

 

 

 

「・・協力の話は一旦保留にしましょう」

 

「え?」

 

突然ほむらが立ち上がってこんな事言い出すので俺はとうとう熱を出したのかと思った。

だってさっき協力しないって高らかに宣言してたのに一体何があったんだ?

時間遡行の疲れがここで出てきたのか?

 

 

「まずは貴女がまだ隠してある秘密を話してもらう必要がある。例えばさっき錯乱してた時の男口調の事とかね。何か理由があるんでしょう?」

 

え?・・マジで!?

俺さっき素の口調に戻ってた!?

そんな事気にする余裕なんてなかったから分からない!

俺の口調だけでまだ何かあるって分かったのか!?

ほむら鋭いな!

 

 

「貴女の秘密を全て話してくれたその時に協力するか判断するわ。でも今はやめておきましょう。どこでアイツらが見張っているか分からないし、貴女もここで打ち明けるつもりはないんでしょう?」

 

「・・・うん」

 

うん、やだ。絶対やだ。

どこでインキュベーターいるかマジで分かんないし。

 

 

 

「・・巴マミは数日後に死ぬわ」

 

「!」

 

いきなり何言い出すんだよこいつ!?

 

「落ち着いて。まだ時間はある。それまでに決意が固まったら私の所に来なさい」

 

完全に誘導尋問じゃねえかああああああああああああ!!

マミちゃん人質にして俺に白状させる気か!?

 

 

 

「・・・・ありがとう。でもどうして?さっきまで協力しないって言ってたのに」

 

ほむらがどうして俺に優しくなったのか単純に疑問に思ったので好奇心で質問してみる。

 

 

 

「そうね・・貴女が私と似ているから・・かしら?」

 

「!?」

 

 

 

優しく微笑んで答えてくれたがその理由は俺にとって到底受け入れられるものじゃなかった。

 

嫌だあああああああああああああああああああ!!

俺がこのクレイジーサイコパスと似てるだとおおおおおおお!!?

どこ!?教えて!?

一つずつ直していくから!!

 

 

「私はもう帰るわ。貴女も魔女に捕まらない内に帰りなさい」

 

俺の願いは届かずほむらはすぐさま帰宅宣言し、踵を返す。

 

 

 

「う、うん!ありがとう!またね!」

 

「ええ、さよなら」

 

本当はいろいろ(俺とほむらが似てるとこ)を問い詰めたかったが機嫌を損ねられて振り出しに戻ったら意味はないのでそのまま見送る事にする。

 

 

 

「・・・・・・」

 

ほむらを見送った後、俺は握らされた紙を見て思った。

 

何で携帯電話じゃなくて家の住所?

この個人情報に厳しいご時世になんてもん俺に渡してんだよ。

ひょっとしてぼっちだから携帯番号教える発想なかったりして?・・なんてな。

 

 

 

 

 

「・・・終わったみたいだね」

 

いつの間にか俺の隣にシロべえがいた。

 

「まあね。そっちはどうだった?」

 

「君の予想通り彼女たちは何らかの精神操作がされてあったみたいだ」

 

俺がほむらに慰めてもらってる間、シロべえに頼んであったのはまどか達を調べてもらう事。

 

だっておかしいじゃん?

さやかやマミちゃんはともかくまどかがあんだけ強引なんてキャラ崩壊にも程がある。

 

これもう何かが介入してるとしか思えなかったのでシロべえに調べてもらった。

結果はビンゴのようだ。

 

「やっぱり?道理で変だと思ったよ。まあ、素じゃなくて良かったけどさ。それで解除できそう?どうせ腹黒いインキュベーターがやったんでしょ?」

 

「・・・それが既に解除されてるんだ。君がほむらと話してる時にね。彼女たちは今は元の状態に戻ってる。ちなみに精神介入があったのは君の同級生の二人だけでマミはあれ、素だよ。あとインキュベーターの仕業じゃないねこれは」

 

「え!?」

 

シロべえからの思わぬ報告に身を乗り出し、顔を近づけて真意をはかる。

 

・・嘘は言ってなさそうだ。

 

「嘘じゃないよ。これはインキュベーターの仕業じゃない。感情に無理解なアイツらがここまでごく自然に精神に介入出来るとはどうも思えない。あそこまで違和感なく介入できるなんてそれこそ神のみだろうね」

 

「・・・・・・」

 

「心当たりありそうかい?」

 

「そうだねーあるねー心当たりー。語尾に☆つけてそうな奴がさー」

 

「・・・そっか」

 

「「・・・・・・・」」

 

暗い沈黙が俺達の間に漂う。

 

 

 

「まあ、それは置いといて優依GJだよ!君の駄目っぷりがあの暁美ほむらの要塞みたいな心を開かせたんだ!これを偉業と呼ばずしてなんて呼ぶんだい!?あと一押しで攻略出来そうだね!よし!今度は僕も協力するよ!」

 

暗い空気を紛らわすように明るく振る舞っているみたいだが今の俺には怒りを煽ってるとしか思えない発言だ。

 

「何がGJだ!どう見ても同情されただけじゃねえか!お前ふざけんなよ!友達の俺の長所の一つくらい出てこないのかよ!あるだろ何かは!?」

 

「・・まあ、あの時は焦っていたからね仕方ないよ。君にとっては同情に見えるだろうけど警戒されるよりはマシなんじゃないのかい?前進したじゃないか。あとは君が秘密を打ち明けるかどうかだね。暁美ほむらにとっては受け入れがたい事実だから拒絶されないといいけど」

 

「そうなんだよな・・」

 

ベンチに寝そべって今日の疲れを癒やそうと努めてみたが効果なし。

 

今日は本当に酷い目に遭った。

連行されるし、殺されかけるし、銃突き付けられるしだ。

 

まあ、ほむらと少しは打ち解けられたのは一歩前進かな?

やっぱりほむらにちゃんと俺の事話した方がいいかな?

・・話すとしていつ話そうか?




優依ちゃんの駄目っぷりが活躍しました!

ほむほむの心がちょっぴり開かれた!


希望が見えてきました!

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