雨だから一日パジャマでいようと思ったのが運の尽き
そのせいで投稿が遅れるという不始末
取り敢えず一日パジャマはやめようと思います!
それは置いといて唐突な杏子ちゃん回!
杏子side
優依は今何してるんだろう?
最近そんな事ばかり考えてる。
数日前にアイツに会いにいった時、どういう訳か泣きじゃくっててアタシに泣きついてきた。最初は戸惑ったけど内心では優依がアタシにすがっているのを喜びながら慰めた。それを夜中ずっと優依が眠るまで続いた。
何で泣いてたのか結局教えてくれなくてもどかしい。
朝になると優依は飛び起きアタシに向かって土下座していた。
それはいい。誰にだって泣きたい事はあるし、何より優依がアタシに弱みを見せてくれて嬉しかったから。
でもその後言った言葉は許せなかった。
「ごめん杏子!しばらく見滝原に来ないでくれないか?」
「あぁ?」
受け入れがたい頼みに思わず凄んでしまう。優依は怯えた顔をしていたがそれを気にする余裕がない。
何故だ?
アタシに会いたくないからか?
アタシは毎日でも優依に会いたいのに・・・
黒くてドロドロしたものが胸の中で広がるのを阻止するように拳をきつく握る。
「・・理由はなんだ?」
「え、えーと今日からとても忙しくなるんだ!何でかは今話せないけど帰らない日もあるからせっかく来てくれても俺いないかもしれないから悪いじゃん?迷惑かけたくないんだ」
「・・そんなの気にしないのに。優依の事で迷惑なんて思ったことない」
「俺が気にするの。終わったら俺から会いにいくからさ、それまで我慢してくれないか?」
「・・・来なかったら承知しないぞ?」
「もちろん!杏子いつもゲーセンにいるんだよな?そこを待ち合わせにしようか!」
「ああ」
ずっと会えない訳じゃない。
ほんの少し我慢すればいいことだ。
そしたら今度は優依から会いに来てくれる。
何より真剣な頼みをしている優依に嫌だと拒否して嫌われたくない。
迷ったがアタシは優依の頼みを聞くことにした。
その朝に別れて以来優依に会っていない。
イライラする。
まだ二日しか経っていないのに。
どこにいるんだ?
今誰といる?
アタシの事考えてくれたりしないのか?
アタシはずっと優依の事ばかり考えてる。
ホントは迷惑がかかっても良かったんだ。
会えない事に比べれば。
辛い、苦しい、寂しい
憂さ晴らしに魔女を狩りまくっても心が晴れない。そこまで魔力を消費してる訳じゃないのに、ソウルジェムが濁りやすい。実は優依はアタシが嫌いでわざと遠ざけたんじゃないかって考える事が多い。
ホントにイライラする!
「チッ」
今アタシはゲーセンにいる。ダンスゲームは気分じゃないからプレイせず店内をうろうろしてる。平日だから優依はいないって分かっててもつい探してしまう。
「・・・これ」
目に止まったのは一台のクレーンゲーム。
景品は優依が好きな種類の板チョコのビックサイズ。
アイツに持ってってやろうかな?
流石に我慢の限界は近い。
そもそも我慢する事が性に合わない。
優依に会いに行こう
そう決めてふらふらした足取りで近づき景品を手に入れるため硬貨を入れてプレイする。中盤まで順調だったのに景品出口直前で落としてしまった。
「チッ、ムカつく!たかが板チョコのくせになんだよ!」
悪態をついて八つ当たりしてしまう。
最近ずっとこんな調子だ。
「・・・・・はあ」
少し冷静になって顔をあげると見覚えのある後ろ姿が目に入って驚く。
幻覚か?
いや、アタシがアイツの姿を見間違うはずがない!
あの後ろ姿は優依だ!
俺はバスに揺られている。今日は平日なので俺以外のバスに乗っている人達は日本の三大義務を果たすべく乗車している。周りはスーツと制服がほとんとだ。そのため私服の俺はとても浮いているだろう。
学校?知るか!
魔法少女体験コース?知るか!!
巴マミ?知るかあああああああああああああああああ!!!
昨日の魔法少女体験コースとほむらとの会合(二回目)の後、俺はマミちゃん、まどか、さやかに電話して魔法少女体験コースに参加しない旨を伝えた。
まどかとさやかは「無理矢理連れていってごめん」と謝罪の言葉と共に了承を得たが
マミちゃんはすぐさま俺の家に押し掛けてきて
「どうして!?」
「私の事が嫌いになっちゃったの!?」
「ひょっとして暁美さんに何か言われたの!?」
「彼女に会ってたの!?」
「あの娘に乗り換える気なの!?」
と涙ながらに騒ぎ立てられ宥めるのに深夜までかかってしまった。とりあえず危険な目にあって怖いからやだと説明したら負い目もあるからかしぶしぶ納得してくれた。
パトロールサボって来たからか慌てて帰ってくれたがその際、
「まだ聞きたいことがあるわ。暁美さんの事よ。彼女とどういう関係なのか明日きっちり説明してもらうわよ」
と笑顔で恐ろしい死刑宣告をされたので、朝一番で逃げ出した。
ほむらとの仲が少し前進したと思ったらこれだ。
厄介な事にしかならない気がする。
これから先、死亡フラグ回避のためほむらとの協力は必須だ。
でも協力の条件は俺の秘密の開示。
どうするか悩んでる時にマミちゃんの押し掛け。
あの様子じゃほむらとの接触妨害されそう・・・
一難去ってまた一難とはまさにこの事。
いや、軽く二、三難はやって来てるんだけどさ。
マジで疲れた・・・。
まだ原作始まって二日しか経ってないのに人生二周分の苦労はしてる気がする。
休みが欲しい!見滝原にいたくない!
という訳で今日はお休みにした。
今日金曜日だし、学校と母さんには今日休むって伝えてある。マミちゃんが死ぬのは数日後の平日だ。今日じゃない。
だからいいじゃん!一日くらい休んだって!
どうせこれからノンストップなんだから!
今のうちに休んでおかなくては!
ちなみにこのバスの行き先は風見野。
そう!俺は杏子に会いに来たのだ!
今のところ杏子とだけは魔法少女関係なしの友人。
俺にとってはまさに救いだ!
まさかのシロべえも許可してくれた!
「いいんじゃないかい?この二日間大変だったし、気晴らしするのは賛成だ。佐倉杏子に会いに行くんだよね?ちゃんと彼女を調教して無事に帰ってくれば問題ないよ」
と不吉な言葉と共に護身用のシロべえクオリティグッズをいくつか渡してくれた。
本当は杏子を見滝原に連れていこうと提案したんだけど
「こんなややこしい時期にあの杏子を連れてきたらそれこそ更にややこしい事になるよ。君は魔法少女のリアルなバトル・ロワイアルを見たいのかい?せめてマミかほむらがちゃんと君の協力者になってからじゃないと駄目だよ」
と却下された。
今シロべえは調べたい事があるからと見滝原に残ってくれている。ただ表向きはそう言っているが本音は杏子に会いたくないからだと思う。
だって一緒に行こうと言ったら身体むちゃくちゃ震えてたし。
ホントに杏子が怖いんだな・・・。
まあ、それはともかく今の俺には心身ともに癒しが必要だ!
頼むぞ杏子!
俺に元気を分けてくれえええええええええええ!!
「チッ、ムカつく!たかが板チョコのくせになんだよ!」
「・・・・・・」
風見野に着いた俺は早速杏子を探すことにした。
杏子と言えばゲーセン。待ち合わせ場所もそこにしているので向かってみればすぐ見つかった。
それは良かったんだけど、現在クレーンゲームの前で地団駄踏んでます。俺はそれを隠れて見ている。
そんなにあの板チョコ取れなくて悔しいのだろうか?
今とても不機嫌そうなので日を改めて会いに行こうと思う。なんかとても見てはいけないものを見てしまった気がするから。
俺はこっそり杏子に背を向けこの場を離れた。
「おい、優依」
「ひゃあああああああああ!?」
だいたいこういうパターンは見つかるのがセオリーだ。それは分かってる。
だが耳元に息を吹きかけるのはなしだ!
何がしたいんだ君は!?
俺を叫ばせたいのか!?
生暖かい風が耳に入ってきて思わず変な声あげたぞ!?
息を吹きかけられた耳を両手で押さえ涙目で犯人を睨む。案の定、犯人はさっきまで子供みたいに地面に八つ当たりしてた佐倉杏子だった。
呆れた目でこっちを見てる。
いつぞやのゲーセンで遭遇した日を思い出すな!
「お前ホントビビりだよな。これぐらいのイタズラで叫んでんじゃねえよ」
「いきなり耳に息吹きかける奴が悪い!俺悪くない!園児のイタズラじゃあるまいし誰だって驚くわ!!」
興奮ぎみに叫んでしまう。
まだ心臓バクバクいってるわ!
杏子め、めっちゃ楽しそうに笑いやがって!
「それよりさ優依」
「何・・?」
「お前アタシに気づいてたくせに無視したよな?アタシを無視するなんていい度胸だな?」
「いえ!お取り込み中だったみたいなので後日改めて伺うつもりでした!本当です!ごめんなさい!」
顔は笑顔なのに膨れ上がる杏子の怒りのボルテージに俺は慌てて頭を下げて言い訳する。
あんな触れる者皆傷付けそうな殺気に満ちた状態の人に話し掛けるなんて無理!
俺は勇者じゃない!
「・・ふーん、まあいいや。そういう事にしといてやるよ。それより優依がここにいるって事はもう忙しいのは終わってアタシに会いに来たって事だろ?」
「え、えっと・・」
どうしよう?
ニコニコしてる杏子になんて答えよう?
全然終わってないどころかまだ序盤だし、むしろ更にこれから忙しくなる。しかも想定外の問題は山積み。
半ば現実逃避に近い形で厄介事ほっぽり出して逃げてきましたなんて口が裂けても言えない・・・!
「お前ちゃんとやる事片付けてきたのか?」
言い淀む俺を怪しんで杏子が笑顔を引っ込む。
「えーと・・まだ終わってなくて、その」
「はあ?だったらお前何でこんな所にいるんだ?今日は平日だろ?学校サボってきたのかよ?」
さすがの杏子も呆れ顔。
そーだよねー。元々の約束は「俺の用事が終わったら会いに行く」だったもんなー。終わってないのに来たら怪しむわな。つうか杏子め今日が平日だって知ってたのか。普段アウトローな生活してるから日時なんて無頓着だと思ってたから超意外。
・・・誤魔化せると思ったけどしょうがない。
正直に話すしかないか。
「実は今、問題(原作開始)が起こってさ、解決出来るように色々やってるんだけど上手くいかなくて(例:魔法少女体験コース)。ようやく一つ目の問題(ほむら)が解決しそうって時に別の問題(マミちゃん)がやってきたんだよ。おまけに想定外の問題(容疑者:邪神)まで出てきて、てんてこまい。少し(かなり)疲れちゃったんだ。そんな時に無性に(ただの友人関係の)杏子に会いたくなってさ、(癒しを求めて)会いに来たんだ。情けないと思う。でも、仕切り直しには・・・杏子聞いてる?」
「・・・・・・・」
多少の説明は省いているが正直に打ち明けてる俺を無視するなんて酷くないか?
「杏子?」
「ア、アタシに会いたくなって・・・・?へへ、わざわざ学校休んでまでアタシに会いに来た?えへへへへ」
何かぶつぶつ呟いてる。超怖い。
どうしたの?やっぱり情緒不安定?
クレーンゲームの時も凄まじく不機嫌だったしな。
うん!これは帰った方が良いな!
俺の精神衛生上のためにも!
「やっぱり情けないわな!俺もう一度頑張ってみるよ!杏子も(いろいろ)忙しそうだし、じゃ、帰るわ!邪魔してごめんな!」
逃げるように告げて俺は杏子に背を向けた。
「待て」
「ぐえ!!」
Uターンした瞬間俺の首に何かが巻き付いてそのまま後ろに引っ張られた。
「そういう事なら仕方ねえな!よっぽどアタシに会いたかったんだろ?そんなら無下には出来ねえよ。学校サボったって事は今日一日空いてんだろ?だったらアタシに付き合え!」
「杏子さん・・?」
俺を足止めした犯人は杏子。どうやら首に腕を回してガッチリホールドしてるみたいだ。顔が至近距離にあってお互いの息遣いが分かるほど。俺は今マヌケな顔してると思うが顔を真っ赤にして嬉しそうな笑顔の杏子は気にしていないようだ。
「ほら行くぞ優依。取り敢えずゲームしようぜ♪」
「え!?今日の予定決定!?」
そのまま引きずられる形で連行される。
えらく上機嫌だな。何故だ?
弱音吐いてんじゃねえ!って一喝されて追い返される事も覚悟してたので予想外だ。
・・まさか、俺財布がわりにされてないよね?
金づる来たと思われてない?
だとしたらヤバい!俺の今月の小遣いピンチ!
誰か俺の財布を守ってくれえええええええええええ!!
俺の叫びは誰にも聞こえることはなかった。
やっぱり面倒事は放り投げるもんじゃないな・・・。
「はあ・・はあ・・はあ」
「・・運動出来ないって言ってたけど予想より出来ないんだな」
「・・笑ってくれていいよ?」
「流石に笑えねえよ・・ごめん」
俺は今ダンスゲームのステージ上で座り込んでいる。杏子にちょっとやってみろよと強引に勧められ押しの弱い俺は渋々踊るはめになった。
結果は散々だった。俺はダンスゲームはやった事ないし運動神経の悪さも相まって酷い有様。こういうゲームってプレイしてると目立つから周りに人だかりが出来てて公開処刑状態で精神も疲弊した。何とか一曲踊りきった時にはヘロヘロで座り込んでしまった程だ。ダンスゲームって心身ともに消耗するのね・・鮮やかに踊る人を尊敬するよ。
ちなみに杏子曰く俺の叩き出したスコアは見たことがないくらい淋しい得点だったとか。
・・知ってた。むしろ一曲踊れただけ俺にしてはよくやってたと思うよ?
せめて笑ってくれた方がまだ救いがあったのに。
「よし!何か食いに行くか!」
気まずさを紛らわせてるとしか思えない明るい声を出す杏子。
どんだけ気遣われてんの?
どんだけ同情されてんの?
がめついコイツに慰められるなんてより惨めだ。
「ほら行くぞ優依。早く立てよ」
「うお!?」
無理矢理立たされそのまま腕を引っ張られて歩き出す。
ひょっとして今日一日こんな感じなのか?
「奢るって言ったのに・・。何でアタシが奢られてんだよ?」
「杏子さん、貴女の資金はどこから手に入れてるか大声で叫んでごらん?」
「・・・・・・」
杏子は不貞腐れて黙ってしまう。
まあ、ATM破壊の常習犯だしなコイツ。
犯罪から得た金など恐ろしくて使えるか!
使ったその日は俺に精神崩壊起こしそうだ。
「お待たせしました、パンケーキです」
「おいしそう!」
「・・・ふん」
店員さんが運んできてくれたパンケーキに目を輝かせる。遅めのお昼として美味しいと話題のパンケーキ専門店(俺リサーチ)にやって来た。
俺昼飯はスイーツあり派だ!
「杏子は・・!?」
「お待たせしました、スペシャルタワーパンケーキです」
店員さんが杏子の目の前にパンケーキの数もクリームもフルーツの量もとても一人で食べるものとは思えないスペシャルなタワーを置く。
奢られるの不満な割にはがっつり食う気じゃねえかああああああああああああ!!
もしくは腹いせまぎれか!?
「うまーい!」
さっきまで不機嫌だったくせに口に入れた瞬間、嘘のように上機嫌になった。
やっぱり杏子は食べ物で釣るのが一番だな。
呆れつつも俺も自分のパンケーキを一口サイズにして口に入れた。
「美味しい!」
何という甘さと柔らかさ!人気なのも頷ける!
日頃の苦労が消えていくようだ・・・。
「なあ優依、それ一口くれよ」
俺があまりにも幸せそうに食べるからか杏子が俺のパンケーキに興味が出たようだ。女子の定番「美味しそう!一口ちょうだい?」を要求している。
「え?でも杏子のそれ・・え?」
「ん?あとちょっとで食い終わるぞ?」
がめつく俺のパンケーキを要求してきたがあの量を一人で食べるのには限界がある。欲張りはいかんと注意しようと杏子のパンケーキを見るも既に三分の二が消えてた。早くね?
「なんかこれじゃもの足りねえからさ、優依のちょっと食べていいか?」
「・・・いいよ、はい」
諦めと呆れの境地で皿を杏子の方に寄せた。
「・・・・・・・」
差し出したパンケーキに手をつけず何故か不満そうに俺を見てる。何で?
「どうした?食べないのか?」
「食べさせてくんねえのかよ?」
「・・食べたかったら自分でどうぞ。俺はしないからな」
どうやら女の子同士の食べさせあいをしたかった様子。杏子ぐらいの子はしたがるもんな。杏子の友達は今のところ俺くらいしかいないし、そういうもんに憧れがあるのかもしれない。
でもごめん。俺無理。
いくら今生は女でも中身男のまんまの俺には自分の口にしたフォークを可愛い女の子の口に入れるなんて、そんな変態行為出来ない!間違いなく犯罪としか思えない!
杏子には悪いが別の女の子とやってくれ!マミちゃんならやってくれそうだから!
「はあ?良いだろ?別に食べさせるくらい!」
「良くない。俺にそんな趣味(変態行為)ないし」
納得がいってない不機嫌な杏子はこの際放置して再び自分のパンケーキをフォークでさして口に運ぶ。
「?」
口に入れる瞬間、フォークを持ってる手が何かに握られ引っ張られた。何事かと思って顔を腕が引っ張られた方に向けると杏子の口の中に俺の使っていたフォークが・・・!?
「!?」
「んー!こっちもいけるな!」
美味しそうに俺のフォークを口に入れたまま咀嚼する杏子。
「・・・・・」
「ん?どうした優依?」
「ごめんなさい!」
「は!?どうしたんだよ優依!?」
俺は机に両手をついて杏子に頭を下げた。
なんてことだあああああああああああああ!!
とうとう俺も犯罪者だああああああ!!
変態の仲間入りしちまったよ!!
地獄にいる杏子パパが夢枕に立ちそうで怖い!
不可抗力です!俺は反対だったんです!
「・・優依アンタさ・・」
「・・!?」
泣きそうな声が頭上から聞こえたので顔をあげると表情も泣きそうな杏子と目が合った。俺の謝りかたが悪かったのか杏子がしてしまった過ちを悔いているのか知らないがこれは非常にまずい!
「杏子、何で泣きそうになってんの!?」
「アタシが口つけたの嫌だからそんな事するのか!?」
「え!?」
杏子が突然立ちあがり俺に詰め寄ってくる。
「アタシの事嫌いだから遠回しに謝ってんのか!?だったらはっきり嫌いだって言えば良かっただろ!?」
「きょ、杏子さん?」
「ひょっとして見滝原に来んなって言ったのもアタシと会いたくなかったからじゃないのか!?」
「ちょ!皆見てるぞ!?」
「そんなの関係ない!答えろよ優依!」
関係あるわ!俺が困る!
さっきから他の客がこっち見てて居たたまれないんだよ!
「修羅場?」「痴話喧嘩?」などの囁き声が聞こえるぞ!?
それにしても杏子はどうしたんだ?
マジで情緒不安定じゃん。何をどうなったら俺が杏子の事嫌いって結論になるんだ?こんなキャラだったっけ?思考がほむら並にぶっ飛んでないか?
「はやく答えろよ優依!!」
まずい!
感情が高ぶってるのか声がヒステリックになってきてる!
目なんて今にも涙がこぼれそうになってるじゃん!
ホントにどうしちゃったんだコイツは!?
何とか宥めなきゃ!!
「嫌いとかそんなんじゃないから!ただ俺が口にしたフォーク使って大丈夫かなって思っただけだ!杏子は平気なのか?」
「・・別に嫌じゃねえよ。むしろ・・」
「?」
「///・・・優依こそアタシが口つけた奴が嫌なんじゃねえの?」
「あー平気だよ」
心臓には悪いけどな。でも、もう二度とこんな体験しないだろうから安心だ。
「・・・じゃあ、ほら口開けろ」
「!?」
杏子は自分のフォークで食べていたパンケーキを突き刺し、俺の前に持ってくる。
これは「あーん」ですか!?
マミちゃんの時の看病verと違って今度はガチの百合っぽいんですけど!?
待って!!
シチュエーションは最高だけど場所は最悪!
公衆の面前で何させようとしてんだ!?
社会的に抹殺する気か!?
お前は失うものは何もないけど俺は大事な何かを失ってしまいそうだよ!?
「あの・・人もいますし」
「く・ち・あ・け・ろ!」
「はい・・はむ!」
断ろうとしても威圧感で即完敗し、観念して口を開けるとそのままパンケーキを押し込まれた。
シチュエーションは甘いのに、やり取りの雰囲気は全く甘くない。周りの視線が俺をガン見しているので味わう余裕なんてない。
「旨いだろ?」
「・・ウン、オイシイネ」
「アタシが選んだんだから当然だ。じゃあ優依、アンタもアタシに食べさせてくれよ。今度はちゃんとしろよな?」
「え!?一回で終わりじゃないんですか!?」
「んなわけねーだろ。早く食べさせろ」
鋭く睨んできたので渋々杏子に食べさせた。
俺的には猫を餌付けしてる気分で微妙だった。
「うまーい!!」
何でそんなに幸せそうに食べれるか謎だ。
こんな公開処刑みたいなやり取りに何の得があるんだ?
拷問のような昼食後、俺達は近くの公園を散歩する事にした。
「ふう、食った食った。腹八分目ってところか?」
杏子がお腹を擦りながら独り言を言っている。
あんだけ食べておいてまだ入るのかよ!?
お前のスペシャルタワーパンケーキ、値段もスペシャルだったんだぞ!?
あれ?そういえば?
「あっ」
「どうした?」
唐突に思い出した。シロべえに頼まれていた事があったんだった。俺は杏子の方に顔を向ける。
「杏子」
「ん?」
「俺が見滝原に来ないでくれって言った日から今日までどこにいた?何してたんだ?」
そう、これがシロべえに頼まれてた事である。俺がほむらに撃たれそうになった時と魔女に襲われそうになった時、誰かに助けられた。シロべえはそれは杏子だと考えてるみたい。実は俺も、もしかしてと思ってる。今のところ俺を助けてくれそうなのって杏子ぐらいしか思い浮かばないから。
俺は期待を込めて杏子を見る。
対して杏子本人は質問の意味がよく分からないのか困惑した表情をしている。
・・・あれ?ひょっとして杏子じゃない?
「何でそんな事聞くんだ?」
訳が分からないといった様子だ。
「えっと・・。見滝原で杏子に似た人を見た気がするから気になって聞いてみただけ・・?」
「はあ?なんだそりゃ?ドッペルゲンガーって奴か?それかそっくりさん?そいつが誰か知らないがアタシはずっと風見野にいてゲームしたり、魔女を狩ってたんだ。だいたい見滝原に来るなって言ったのはお前だろ?まさかアタシが約束破ったと思ってんのか?」
「ごめん、そうだよな!俺の見間違いだな絶対!」
怒り気味で説明してくれる杏子にタジタジで応答する。
しかし、残念だ。杏子だと思ってたのに。
もし、杏子ならそのまま協力してもらえるかもと思ったのに、振り出しに戻ってしまった。
思わずガックリと頭を下げる。
「まあ、我慢出来なくなったら見滝原に行くさ。でもアンタは今アタシの目の前にいる。帰さないっていうのもアリだな」
だから杏子が何か呟いているのに気づかなかった。
「はあ・・」
他に何を聞こうか考えるも思い付かない。
取り敢えず何か喋らないと。
「杏子」
「!?チッ優依!」
「え!?うわ!?」
いつの間にか俺は杏子に抱き抱えられて空中を飛んでた。
「こんな時に・・!」
杏子が憎々しげに吐き捨てる。よく見ると魔法少女に変身しており、赤いドレスが目にはいった。
「くそ!逃がさねえつもりかよ!」
周りの景色が歪む。何度も見た光景だ。
これは魔女の結界。
ええええええええええええええ!?
杏子との初めての魔女遭遇!?
俺の休暇はどこいった!?
俺を嘲笑うようにすんなりと魔女の結界は完成した。
本日の解釈
優依ちゃん→リフレッシュ休暇
杏子ちゃん→デート
シロべえ→真相解明&優依ちゃんによる杏子ちゃん調教日
杏子ちゃんは風見野にいたと言ってますが真相はいかに?