むしろ自己犠牲なんて優依ちゃんのキャラじゃない!と彼女の行動を不思議がってる方までいる始末w
まあ自己犠牲キャラじゃないですしね優依ちゃんはw
ほむらside
「優依・・!いやぁ・・どうして、こんな・・・!?」
私の目の前には使い魔が変化した剣で心臓を貫かれた優依が力なく倒れている。動く気配はなくその代わりに彼女の周りには血の水たまりが出来上がっていた。
「っ!離しなさい!離してよ!離せ!!」
急いで優依の傍に向かおうとするも私を拘束する鎖を振りほどけずただガシャンガシャンと音を立てていてビクともしない。
「優依!私の声が聞こえる!?お願い返事して!!」
鎖を引きちぎろうともがきながら優依に呼びかけてみるも返事がない。最悪の事態が脳裏によぎって涙が出てきた。
「優依・・お願い・・私を独りぼっちにしないで・・置いていかないで!」
涙声で倒れているあの娘に懇願しても返事はなかった。頬に涙が伝うのが分かる。ギッと怨敵の魔女を睨むも今の私にはあの魔女を倒すどころか触れる事すら出来ない。
「っ!」
再び使い魔が剣に変化して私に狙いを定めている。今度は優依を貫いた剣よりも大きくかなりの数がある。それらが全て私に切っ先を向けて迫って来た。
ガシャンガシャン
急いで振りほどこうにもさっきよりキツく拘束されてしまって身動きとれない。
「く!」
鎖から目を上げれば既に目の前に剣が迫っている。どうやらここまでのようだ。
優依・・私もそっちに行くから待っててちょうだい。
覚悟を決め今度は目を閉じずしっかり剣を見る。
「ッ!? 何!?」
剣が私に触れる瞬間、視界が真っ白に塗りつぶされて何も見えなくなった。
「う・・!」
いや違う!真っ白に見える程のとてつもなく強い光がこの結界内全体に広がっている。あまりの眩しさに目を開けるのもやっとなくらいだ。
「・・え?」
私を拘束していた鎖がみるみる内に解けていく。それどころ逃げるように後退している。
ひょっとしてこの魔女は光に弱いのかしら?
確かに今までの時間軸で戦った事があるあの魔女は暗闇を好んでいた。周りが暗闇になればなるほど強くなる性質かもしれない。なら光を浴びれば弱くなるのも当然ね。
それにしてもこの光は一体・・?
! そんな事気にしてる場合じゃない!
急いで優依を探し出して治療しなくては!魔法を使えばまだ間にあうはず!
優依を見つけるためあたりを見渡そうにも結界全体が光で覆われているので薄目しか開けられず視界は悪く方向感覚も曖昧になっている。何度も時間停止して優依を探すも見つからない。
「優依!どこ!?すぐ治療するからもう少しだけ待ってなさい!」
「$※*%@!」
「!? 邪魔しないで!!」
手探りで優依を探すも立ちはだかるように魔女が私の前に姿を現した。光を浴びて苦しいのか、がむしゃらに暴れまわってあちこち身体を叩き付けている。近くに優依がいるはずだから巻き込まれてしまったらひとたまりもない。
先に魔女を倒さなくては。
盾の中からショットガンを取り出して魔女に向けて数発発砲する。
「--------------!!」
「・・効いてる」
さっきまでどれだけ銃弾を浴びせてもダメージがなかったのに今は嘘のように魔女の身体に貫通しており、魔女は痛みのあまり絶叫している。トドメは今の内にした方が良さそうね。
ガチリと盾が音を立てて時間を止めその間に出しておいた手榴弾を数個魔女に向けて投げた。まだ時間停止解除まで時間はある。
「優依!」
全ての時間が止まる中、光の中の結界を走り回るも優依の姿が一向に見つからない。視界はほぼ白一色で何も見えず焦りばかり募っていく。
「まずい!時間が・・!」
背中で爆発音が聞こえて時間停止が解除された事を知る。それと同時に空間の揺らぎが出てきてもうすぐ結界が消える事を悟った。
「待って!まだ優依が・・・・え?いない・・?」
謎の光も次第に弱まってきたのですぐに地面を見るもどこにも優依は倒れていなかった。
「どこにいったの・・・?」
完全に光が消えてかなり揺らぎ始めた結界を見渡すも優依はいない。呆然とする中、結界は完全に消滅し私一人が元の場所に戻っていた。
「優依・・」
ズルズルと地面に座り込んで愕然となる。
『魔女の結界内で死ぬと死体は残らない』そう頭の中で反芻している。
「あ・・ああ・・あああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」
地面に何度も拳を叩き付ける。血が出ようと関係ない。
やり場のない怒りが今の私を支配し暴れまわっている。
分かってた。分かってたはずなのに!
『結界内で死ねば死体は戻ってこない』
そんな事嫌という程知っているのに!
そもそも魔女の結界は一般人が入るような場所じゃない!
それなのに私の我儘で優依を無理やり結界内に引っ張り込んだ。それ程強くない魔女と油断したが故に力量を見誤って拘束されてトドメをさされそうになって、そしてあの娘が私を守ってくれた。自分の命と引き換えに。
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい」
無意識に盾に手をかけるもすぐ思い留まる。時間遡行してもたどり着くのは並行世界。過去に行くわけじゃない。そしてどの時間軸にも優依はいない。この時間軸にしか存在しない。
どこにもいない。あの娘はもういない。
「優依・・・」
ポタポタと地面が濡れる。雨かと思ったけどそれは私の涙だった。
「うぅ・・うぅぅ」
涙だと気付くと堰を切ったようにとめどなく目から溢れてきて抑えられない。
優依と出会えて私はようやく終わりの見えない迷路から抜け出せた。
これからずっと彼女の傍にいて色んな思い出を作るんだと思ってた。
気持ちを自覚したばかりなのに。
ずっと一緒にいたかった
私を見ていて欲しかった
もっと私を抱きしめて欲しかった
「貴女の事が好きなのに・・・!私なんて庇わないで欲しかった!傍にいてくれるだけで良かったのに・・」
言えなかった私の気持ち
どんなに泣いても優依はもういない
私のせいだ
私が殺したようなものだもの
「優依・・・」
返事があるはずもないのに名前を呼んでしまう。夜遅いため周りは暗くとても静かでそんな場所で私は一人座り込んで顔を俯かせていた。
『----------だよ!』
「え・・・?」
遠くから誰かが話す声がかすかに聞こえる。聞き覚えのある声にわずかな期待感を込めて聴覚を強化して聞き耳を立てる。
『---------それ俺の------じゃねえか!!』
「・・・ウソ・・・」
拾った声は聴きたくて堪らなかった優依の声だった。気付いたら私は無意識に声のする方に走っていた。
幻でもいい!もう一度優依に会えるなら!
その想いだけで無我夢中に走る。
「ふざけんなよ!」
「! 優依」
ようやく声がした場所にたどり着くと目を見開いた。優依がいる。怒っているようで彼女が連れていたインキュベーターの首根っこを掴んで揺すっていた。
その元気な姿に安堵と同時に激しい怒りが湧いてくる。ドスドス音を立てて一悶着中の優依に近寄った。
「優依!」
「あ、暁美さん!無事でなにより・・ !?」
足音で私に気付いたらしい優依がこちらに振り返り微笑んでいるのを無視して肩に指が食い込むくらい強く握りしめる。
怒りが抑えられない。
「どうしてあんな事したの!?」
「え?だってあのままだと暁美さんやられてたし・・」
「だからってあんな馬鹿な事しなくていいじゃない!」
「すみません!」
涙目で私に謝っている。その間に優依の胸の部分を見てみるも貫かれた傷跡どころか血も出てないし服も破けていない。優依は私の目の前で心臓に剣が突き刺さり血も流れていたはずなのに・・?不可解な事に首を傾げる。
「どういう事?さっきのは一体?」
独り言で疑問を口に出してみるとそれを聞いたらしい優依が納得した顔で笑っていた。
「あ、ひょっとしてさっき俺が貫かれた時の話?あれはシロべえが・・ふぐ!」
その言葉を聞いて一つの可能性が思い浮かんでしまい優依の胸倉を掴む。
「貴女・・まさか契約したの!?なんて馬鹿な事を!魔法少女の末路を知っているのにどうして!?」
私を助ける前後のどちらかで契約してたとしたらこの奇跡のような復活劇に説明がつく。
この娘はまどかのように優しいから「私を助けたい」などと願って契約したのだろう。リスクを承知で契約した優依と予想できなかった自分に腹が立つ。
そしてインキュベーター。優依を友達だと言っていたくせに何故止めなかった?
横目で近くにいるインキュベーターを睨む。私の凄みに奴は「ひっ」と軽く悲鳴をあげていた。
「ち、違うよおおお・・契約してないから!あの時はああするしかなかったんだ!シロべえのおかげで今生きてるようなもんだよ!!」
息も絶え絶えで契約していない事を優依は弁明していた。その言葉を聞いて事情を悟った私はそっと優依を降ろす。酸素を求めて咳込むこの娘を見つめながら顔を俯かせて下唇を噛んだ。
優依はどうやら私を庇って負った傷をこのインキュベーターに治してもらったようね。謎の光もコイツの仕業に違いない。
アイツらの技術力ならそれくらいたやすいはず。
余程信頼しているみたい。だって一歩間違えたら死んでいたかもしれないのに。
場違いなのは分かっているけど嫉妬せずにはいられない。
簡単に命を投げ打てるくらい優依はこのインキュベーターを信頼しきっている。魔法少女では私が優依の特別になれるかもしれないけど到底アイツには勝てない。
インキュベーターに対する殺意を抑えようと耐えていると突如、甘い香りを放つ暖かい何かに包まれた。
「優依?」
優依が私を優しく抱きしめて頭を優しく撫でている。何故こんな事するのか分からなくて混乱してきた。
「暁美さんが無事で本当に良かった!」
「え?」
「助けられて良かった!生きててくれて本当にありがとう!」
「うぅ・・」
慈愛に満ちた表情で私に微笑んでいる。その瞬間全てを悟った私の目から涙が溢れてきた。
優依にとって私は命をかけてでも助けたい大切な存在なんだ。
だってあれだけ私に銃を向けられて怯えていたこの娘が死んでしまうかもしれない程危険な事をするのはそれだけ私が大切だという事でしょう?
今まで沢山の時間軸を巡って来たけど私を必死に庇って助けようとしてくれたのは優依が初めて。
まどかでさえ守ってもらった事があるけどそれはあの娘が魔法少女だった場合だ。
でも優依は魔法少女じゃない。ただの一般人なのに私を助けようとしてくれた。
その事実が今まで感じた事がないくらいの幸福感で私の心を満たしていく。
「暁美さん?」
優依の背中に手を回して抱き寄せる。
「ほむらって呼んで?」
いつまでも苗字呼びに不満があったからこの機会に私の名前を呼んでほしい。
「えっと・・ほむら?」
「何?」
「いや・・その大丈夫?」
「大丈夫よ。今はこうさせて?」
「いいけど・・」
生きている優依を少しでも感じようと心臓近くに顔を寄せる。ドクンドクンと鼓動が聞こえ、確かにこの娘が生きている殊に歓喜している自分がいた。
優依が好き。・・これじゃ駄目ね。
「好き」じゃ全く足りない。
まどかが幸せなら私はどうなっても構わないと思ってた。今もそれは変わらない。
でも優依が勝手に幸せになるのは嫌。私の傍で幸せになってほしい。
我儘ね私、でもこんな風にしたのは優依。責任とってもらわないと。
優依のためにこの身を捧げるからどうか私から離れないで。
「貴女が無事で本当に良かった」
優依、貴女を愛してるわ
「あ」
さっきまでの曇り空のような脳内に突如日の光がさした。もしこれがアニメなら頭に豆電球がついてるだろう。あ、この世界アニメだったわ。ではなくてようやく思い出した。「園児の落書き」ことあの魔女の名前を。
確か「暗闇の魔女」だ!
そうだ!そんな名前だった!
名前だけならラスボス級の強さのイメージだが実際の見た目は金平糖に手足くっつけた凄い弱そうな感じでその外見と名前のギャップのインパクトが印象に残ってたんだ!
魔女図鑑にもそんなに脅威じゃないとか書いてあったな。なるほど!これなら俺も安心だ!無事に帰れるだろう!胸のつっかえも取れたし気分が良い。
そういや思い出すのに必死で見てなかったけどほむらはどうしてるんだ?
発砲音も爆発音も聞こえないしどうなった?
「そんなに強くないってほむら本人も言ってたし大丈夫だろうって・・え?え!?あれええええええええええええええええ!?」
ルンルン気分で顔を上げて戦況を確認するとほむらが鎖で雁字搦めにされて今にもトドメをさされそうな状況だった。思わず二度見するも幻覚ではないようだ。
おいマジかよ!!
あの魔女って弱いんじゃないのかよ!?もしくはほむらが弱いのか!?
暗闇じゃなきゃあの魔女はそれほど強くないって・・あれ?
そういえば結界に入る前周り物凄く暗かったような?
街灯今にも停電しちゃいそうだったしな・・ヤバいじゃん!!
結界内の街灯に隠れながら必死に頭をフル回転させる。
俺が助けに行くのは・・・無理です!嫌です。死にたくない。
でもこのままじゃほむらが死ぬ!そして俺も死ぬ!何とかしなくては!
応援は無理だ。
ほむら今身動き取れないし、何よりアイツ攻撃力皆無に等しいから自力で抜け出すの無理そう。
くそ・・こんな時にシロべえがいれば。
! そうだシロべえだ!!
俺は必死にポケットの中を探る。確か昨日俺が風見野に出かける時にシロべえが作ったアイテムをいくつか持たせてくれたんだった。護身用にって。すっかり忘れてた。
「もっと早くに思い出してたら杏子の時も楽に魔女退治出来てたかもな・・おっと」
くれたアイテムはかなりコンパクトな物なので探すのに苦労したがようやく一つ取りだせた。
「・・なにこれ?」
俺の手に握っているのはキーホルダー並みの大きさの人形だった。胸にある赤いボタン以外何の特徴もないその人形に紙切れがついてある。どうやら説明書のようだ。
『身代わり君』
胸についてある赤いボタンを押せば押した本人とそっくりに変身する。大きさ・種族問わずに変身可能。服装からホクロやシミまで完璧に模倣します!命令通り動いてくれるけど一つの指示しか受け付けないので注意。使い捨て。
≪使用例≫
貴女を監禁しようと企てる病んだ魔法少女に襲われた時、囮として使用する。魔法少女が囮に気を取られている隙に逃げ出そう!
何だこの使用例?どんな特殊な例だよこれ?どんな場面だ一体?
シロべえは何を思ってこんな説明文にしたのか謎だがこれは使える。すぐに胸にある赤いボタンを押すとあっという間にその身代わり君は俺(美少女)の姿に早変わり。服装まで完璧に再現している。
「おお、すげー・・。それにしてもこの道具、どこぞの小学生ヒーローを沸とうさせるな・・・!?」
あまりの完成度に状況を忘れて感心してるとシャキンと金属音が耳に入った。音のする方に視線を向ければ剣に変身した使い魔が今にもほむらをその鋭い刃で貫こうとしている。
「や、ヤバい!行け俺!ほむらを助けるんだ!!」
ほむらの絶対絶命のピンチにテンパった俺は俺(身代わり君)に無茶な命令を下してしまった。俺(身代わり君)は無表情に頷いて信じられない速さでほむらの元に走っていきそしてほむらを庇うようにして貫かれた。
「ぎゃあああああああああああああああああああ!!」
「いやあああああああああああああああああああ!!」
俺の目に心臓に剣がぶっ刺さった俺(身代わり君)がうつる。あまりの衝撃に俺とほむらの悲鳴が飛び交った。
トラウマになる!一生もののトラウマになるううううううう!!
何で自分が殺される姿を客観的に見なきゃいけねえんだ!!
他にほむら助ける方法なかったの!?
使い魔の剣を引き抜かれた俺(身代わり君)はそのまま地面に倒れ込みドクドクと周りを血の海にしていた。
そんな所まで再現せんでいいわ!シロべえの奴、無駄にこりやがって!!
ほむらが俺(身代わり君)に向かって何か叫んでいるがそれ本人じゃないです。本人街灯の後ろに隠れてます。
ほむらが喚いてくれるおかげでこっちはすぐに冷静になる事が出来た。再度ポケットを探る。さっきの攻撃は防げてもまた次があるのは目に見えている。対抗手段になりそうなアイテムを使わなければ。
「暗闇の魔女」は光が苦手だったはず。何か明かりを灯すアイテムはないだろうか?
「よし、あった」
出てきたのはさっきのキーホルダーより小さい懐中電灯だった。急いで説明書に目を通す。
『ぴかりんライト』
明るい所を照らすのに便利な超コンパクトな小型ライト。光の調節は可能で最大にすると大きな部屋もこれ一つでめっちゃ明るい。嫌いな相手の目潰しにも使えるよ!(光調節最大の場合サングラス着用推奨)
≪使用例≫
貴女に発情した病んだ魔法少女に襲われた時、相手に向かってこのライトの光を向けると目潰しとして使える。魔法少女が眩しさで怯んだ隙に逃げ出そう!
だから何なんだこの使用例!?あるか!こんなありえない使用例!何で魔法少女に襲われる前提なんだよ!?
・・・ふざけた説明書はともかくこれさえあればあの魔女を弱体化できるかもしれない!
すぐさま光を最大に調節して説明書の付属でついていたサングラスを装着後、ライトのスイッチを入れる。
「ぐおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!目があああああああああああああああああああああああああああああ!!!」
突然目に衝撃が来てライトを放り投げてしまいそのまま目を押さえて地面をのたうち回る。あまりの痛みに目が焼けただれそうだ。
何が『ぴかりんライト』だ!
微笑ましいネーミングの割には発光量エグイわ!!目が物凄く痛い!!
これサングラス推奨じゃない!必須だ!!そもそもサングラス意味ないくらい目痛いんですけど!?てかつけてたサングラスどこいった!?
「うぎゃああああああああああああああああああ!!」
「・・・・・何やってんの君?」
「・・・・え!?シロべえ!?何で!?あれいつの間に結界出てたの俺!?」
どのくらい時間が過ぎたか分からないがのたうち回ってたら横から氷みたいな冷たい声が聞こえた。塞いでいた手をどかせると俺のすぐ近くでシロべえが寛いでた。心なしか俺を見る無機質な目がごみを見る目つきに見える。
「何やったら地面のたうち回りながら結界から出てくるのさ?ほむらはどうしたんだい?」
「いや、あれはお前のアイテム使ったからで・・ほむらどこだろ?」
辺りをキョロキョロ見渡してみてもほむらの姿が見えない。まさか死んでたとか?
『あああああああああああああああああああああああああああああああ!!!』
「ひい!?」
「どうやら彼女も無事なようだね」
遠くで女性の絶叫が聞こえたので悲鳴をあげるもよく聞くとほむらの声だった。無事で何よりだが今近づいたらヤバそう。触らぬほむらに祟りなしだ。
「つうかシロべえ、俺に持たせたアイテムは一体何だ?どういった意図で作ったんだよ?」
「おや?僕の作ったアイテムを使ったのかい?あれらは全て君にとって必要になると思ってね。どうだった?なかなか役に立つだろう?」
「そうだね。軽く一生のトラウマが出来たくらいすごかったよ」
「君はすぐにトラウマが出来るでしょ?全くこれだからへタレは」
「お前あの光景見てないからそんな事が言えるんだよ!!」
思い返すのは自分の姿した奴が剣で貫かれて血がドバドバ出ている光景。思い出しただけで震えてくる。
「やれやれ心外だね。かなり拘って作った自信作なのにそんな言い方されるなんて傷つくよ」
「やかましい!また妙な所に拘りやがって!お前が寛いでる間こっちはピンチだったんだぞ!そもそもお前何でまた食べてんだ!?それ俺のポテチだろ!?隠しておいた期間限定の塩胡麻油味じゃねえか!!」
シロべえの前には封を開けたポテチ袋が転がっている。食べたいと思ってスーパーをはしごした苦労が水の泡だ。
「上手に隠さない優依が悪いんだよ。優依の食べ物は基本僕の物、僕の食べ物は絶対僕の物さ」
「お前ふざけんなよ!」
「きゅぷ!」
ギャーギャーくだらないやり取りをしているとタタタと誰かがこちらにかけてくる音が聞こえてくる。おそらくほむらだろうが今はそんな事関係ない。
「優依!」
「あ、暁美さん!無事でなにより・・ !?」
そのままムカつくシロべえの首根っこ掴んで凄んでいると血相を変えたほむらがやって来て俺の肩に指が食い込むくらい掴んできてめっさ痛い。
「どうしてあんな事したの!?」
いつものクールさが嘘のような般若みたいな顔していて怖い。あの化け物級の発光の事だろうか?正直あれはすまんかった。俺も想定外。でもあれのおかげで多分勝てたようなもんだしそんなに怒らんで欲しい。
「え?だってあのままだと暁美さんやられてたし・・」
「だからってあんな馬鹿な事しなくていいじゃない!」
「すみません!」
何とか言い訳して逃れようとするも一喝されて涙目で平謝りする。そんな俺をほむらはじろじろと見ていたがやがて首を傾げていた。
「どういう事?さっきのは一体?」
ほむらのこの一言で俺は勘違いに気付いた。
どうやらコイツは俺が庇って重傷を負ったと思い込んでいるらしい。だから無傷の俺が不思議に見えるのだろう。思い込みが激しいところはあると思っていたがなかなか厄介だ。
ここは一つ、誤解を解いた方が良さそうだ。
「あ、ひょっとしてさっき俺が貫かれた時の話?あれはシロべえが・・ふぐ!」
「貴女・・まさか契約したの!?なんて馬鹿な事を!魔法少女の末路を知っているのにどうして!?」
俺の胸倉を掴み宙ぶらりんに持ち上げてくるので首が締まって息が出来ない!死ぬ!
どうしよう!?全然人の話を聞いてない!
さやかはその筆頭だけどほむらも大概だ!
実は似たもの同士なんじゃないのこの二人!?
まずい!意識が飛ぶ!
しかもほむらの奴、シロべえを殺しそうな勢いで睨んでるし、今にも発砲しそう!
何がどう転んだら俺が契約した流れになるんだ!?
思い込みもほどほどにしろ!
せめて契約の誤解だけは解かないと!
「ち、違うよおおお・・契約してないから!あの時はああするしかなかったんだ!シロべえ(のアイテム)のおかげで(俺ら)今生きてるようなもんだよ!!」
息も絶え絶えで俺とシロべえの潔白を証明し、ようやく解放された。不足した酸素を求めて深呼吸を繰り返すが顔を俯かせて沈黙するほむらが怖過ぎて上手く呼吸できない。よく見るとぷるぷる震えてるし爆発寸前に見えなくもない。
ほむら怒ってる?何に?
怒っている原因は分からないがこのまま爆発させるのはまずい。早急に意識変革を行う必要がある!
俺はほむらを抱きしめて頭を撫でた。突然の事態にほむらは混乱気味に「優依?」と呟いている。
作戦成功!
人間想定外の出来事に出くわすと身動き取れないというからね!
よし!
このままほむらを宥めてなあなあにしてしまおう!
「暁美さんが無事で本当に良かった!」
「え?」
「助けられて良かった!生きててくれて本当にありがとう!」
にっこり笑ってほむらを見た。
もちろん本心から言っている。
だってここでほむら死んでたらこの先どうやって生き残ればいいか分からんもん。
マジ長生きしてください!
そして無事ワルプルギスの夜を倒して俺に平穏をお与えください!
「うぅ・・」
俺の顔を不思議そうに見ていたほむらは本日急速に目に涙を溜めて一気に頬に流し、そのまま俺の背中に手を回してぎゅっと抱きついた。
え?何がやりたいのこの娘?
「暁美さん?」
「ほむらって呼んで?」
誰だコイツ?
本当にあの「暁美ほむら」なのか?
「やだ」と言いたかったがほむらが懇願するように俺を見つめているので心折れて仕方なく名前で呼んでみる。
「えっと・・ほむら?」
「何?」
「いや・・その大丈夫?」
「大丈夫よ。今はこうさせて?」
「いいけど・・」
大丈夫じゃなさそうだ。キャラ崩壊にも程がある。
「貴女が無事で本当に良かった」
そう言って更に俺をキツく抱きしめてくる。あまりのキャラの変わりように鳥肌がたってきた。
一瞬偽者かと思ったが俺に当たっているまな板みたいな胴体が嫌でもコイツをほむらだと断言してしまっている。
≪ミッションコンプリート!暁美ほむらGETだぜ!!≫
隣にいる白い奴にSOSの視線を送るも素かわざとか分からないがスルーされ代わりにふざけたテレパシーが送られてきた。
まあ、元はアニメと言えどここが俺の生きる世界だし想定外な事もあるだろう。
どうやらこの世界のほむらは少し(かなり)甘えたでキャラ崩壊しているがそれも個性だ。
色々あったがこれから先、一緒に頑張って生き残らなくちゃいけないから内面を知れて良かったと思う。
あとさっきの怒りもなあなあに出来たし仕方ないか。
俺はそっと溜め息を吐いて苦笑いしながらほむらの頭を撫でた。
「そういえば」
「何?」
「携帯番号教えてよ。この前住所教えてくれたけどこっちは教えてくれなかったじゃん」
抱きついてくるほむらから離れるための良い理由になるのと今後テレパシー以外の連絡手段も必要になるだろうと思うので今のうちにほむらから番号を聞き出そうと思い話を振ってみた。
携帯電話を取り出しほむらに向けて促す。なのにほむらはキョトンとしてこっちを見るばかり。まさか・・。
「・・・ほむら?」
「それはどう使うのかしら?」
「!?」
ほむらの事で分かった事がもう一つある。携帯電話の扱いはマミちゃん以下という事だ。
優依ちゃん庇うどころか動いてません!
強いて言えば目が痛くてのたうち回ってたくらいです!
でも紫は完成しました!
何がとは言いませんが完成しました!
これで優依ちゃんの平穏はまた遠のいていきました!
次は番外編出来るかな?
・・・・・・・・番外編投稿出来るかな?