魔法少女オレガ☆ヤンノ!?   作:かずwax

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九連休の人超羨ましいですチクショウ!


43話 ほむらの休日①

「優依ちゃん!ずっと一緒だよ!」

 

ピンクのツインテールの女の子が俺に笑いかけている。

 

 

「優依、ねえ、どこにも行かないって誓って」

 

青色が基調の騎士の衣装を纏った女の子が俺の手を握っている。

 

 

「優依ちゃん、二人きりになれる場所に行きましょう」

 

黄色のリボンを持った女の子が俺を見て泣いている。

 

 

「優依、貴女を誰にも渡さないわ」

 

紫に輝く宝石を持った女の子が俺に手を伸ばしている。

 

 

「優依・・・逃がさねえぞ」

 

赤い槍を握っている女の子が笑いながらそれを俺に向かって振り下ろしてきて・・

 

 

 

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!・・あれ?ここって?」

 

 

勢いのまま飛び起きる。恐怖で汗が止まらず呼吸が荒くハア、ハアと繰り返している。

視界に映るのは見覚えのない部屋だった。少なくとも俺の部屋はリフォームした覚えはない。

 

「・・あ!ここってほむらの部屋じゃん!」

 

じっと部屋全体を見渡してようやくここがどこか思い出した。

 

昨日色々あったが何とかほむらを仲間に出来たのは良かったのだけど魔女退治が終わったその晩、何故かほむらは泊まっていけと猛プッシュしてきた。

 

正直、連日激動だったのでゆっくり休みたかった俺は日用品や服の替えがない事を理由に断ったが諦めが悪い事に定評のあるほむらは折れずそのまま俺を担いで人の家に不法侵入し服や下着を鞄に詰め込むように強要した。

 

逆らったら後が怖いので渋々従ったがほむらは更に暴走して俺の制服と学生鞄を盾にしまいこんでしまった。

 

曰く「明後日の学校はこれで心配ないでしょう?」との事だ。

 

まさかの連泊する羽目になった俺は泣く泣く母さんに友達の家に泊まる事になったのを連絡する始末。駄目だって言ってほしかったけど母さんは「楽しんでこい」としか言わなくて泣いた。

 

シロべえの奴も「マミが心配だから様子を見てくるね」と逃げられるし、就寝時、同じベッドの中に入りほむらに抱きしめらるという恐怖の一夜を過ごしたものだ。よく暗殺されなかったな俺。

 

 

ん?つまり・・?

 

 

「じゃあさっき見たのはゆm・・駄目だ!これ以上言ったら正夢フラグになってしまう!あんな恐怖体験はもう思い出さなくていい!忘れてしまおう!」

 

さっきのは夢だと分かった。何か凄いヤバい内容だった気がするけど今はあまり思い出せない。知ってる人が出てきた気もするけど今となってはそれも分からず仕舞いだ。

 

 

「悲鳴が聞こえたから来てみれば・・さっきから一人で何ぶつぶつ言ってるのかしら?」

 

「!? あ、ほむら」

 

俺一人しかいない部屋で凛とした声がして身を固めるが声の正体がこの部屋の主だった事にほっと息をつく。

 

「・・うなされていたの?顔色が悪いわよ?」

 

俺の顔色を確認したほむらが心配そうな表情で近寄って顔を覗き込んでいる。こいつがまどか以外の他人を心配出来ることに驚くも本来は気弱で心優しい女の子だった事を思い出して納得。

 

「あーちょっと怖い夢見ちゃってさ、心配しないで!ただの夢だから」

 

心配かけたくなくて安心させるようにニコッと笑った。

 

そういや夢でほむらに似た女の子が出てきた気がするが気のせいか・・?

 

「そう、大丈夫だと言うならその言葉を信じるわ。体調に変化があったらすぐに言いなさい」

 

「うん、ありがとう。そうするよ」

 

ほむらってこんなに過保護な奴だったっけ?

まどか限定じゃね?何で俺に発揮してんの?

 

「食欲があるなら朝食を作ってあるかr「え!?」・・何よその反応は?私がご飯を作ったらいけないの?」

 

ムッとした表情のほむらだが俺はそれどころではない。

 

ほむらって料理出来んの!?

てっきり出来ないと思ってた!

 

だって長い病院生活を経てその後は無限ループの時間の旅と犯罪行為だ。とてもじゃないけど料理してる暇はないし出来ないと思い込んでた。だって初めてほむらの家に来た時も大量のカップ麺見たし。

 

これは超意外!

 

俺の思っていた事が顔に出ていたのだろう。ほむらが不機嫌そうに俺を睨んでいておっかない。銃を向けられない内に謝った方がいいかもしれない。

 

 

「ごめんなさい!俺てっきりほむらは料理出来ないと思ってました!」

 

「失礼ね、私だってこれくらい出来るわよ。・・と言っても貴女の料理の腕前には負けるわよ?それに一人暮らしだと作るのが面倒でいつもは簡単に済ませてたから・・その・・」

 

「あー・・俺お腹空いてるし朝食食べるよ。顔洗ってくるから」

 

「え?ええ、分かったわ。いってらっしゃい・・」

 

恥じらいか分からないけどもじもじしてるほむらを見てるのが何だが居たたまれなくなったので逃げるように俺は寝室から出た。

 

ほむらマジでキャラ崩壊凄まじくない?

なにこれ?世界滅ぶ前触れ?

 

不安を振り払うように顔に思いっきり水を叩きつけた。

 

 

 

 

 

 

「・・・思ったよりまともな食事だな」

 

「文句があるなら食べなくていいのよ?」

 

「いただきます!」

 

顔を洗い、身支度を整えた後、魔改造されたSF部屋に行くと机の上にはトースト、目玉焼きにサラダ、コーヒーとドラマでしか見たことないような割と豪勢な朝の食事が用意されている。

 

てっきり黒い物体が出てくるのかと構えていたから安心したけど余計に疑問が出てくる。

 

何だこの好待遇?

昨日ここに来た時と態度が一八〇度違うと逆に怖くなってるくるな。毒入ってないよね?

 

震える手でトースト掴み恐る恐る口に入れてみる。

 

「・・うま」

 

口に広がるのは毒の刺激ではなくバターの香ばしい風味。

 

「当然でしょう?まさか毒が入ってるとか思ってたんじゃないんでしょうね?」

 

「ハハハ!まっさかー!」

 

疑いの眼差しで俺を睨んでくるので冷や汗流しながらなんとか誤魔化す。幸いほむらはそれ以上追及してこなかったので内心息をつく。

 

気を取り直してもう一度ほむらが作った朝食を口にしてみるもやっぱり毒なんて入ってなくて普通に美味しい。

特に目玉焼きが絶品だ。ここまでの半熟加減を出すなんてほむらはひょっとして料理が上手いのか?

 

疑ってごめんよほむら!

俺二度と君に料理関係の偏見を持たないから!

 

「ふふ」

 

「?」

 

罪悪感もあり夢中になって食べ進めていたら笑い声が聞こえてきたので顔を上げるとほむらがニコニコしながら俺を見てた。その表情に思わず鳥肌が立ちそうになったのは内緒。

 

 

「随分と急いで食べるのね?」

 

「うん、だっておいしいから(+贖罪も込めて)」

 

「そう、気に入ってくれて良かったわ」

 

 

ほむらは頬を染めて綺麗に笑っているが俺は気が気じゃない。

やはり女の姿で男みたいにガツガツするのはまずかっただろうか?

 

しかし俺がこうも急いで食べるのには想像以上に美味しかったからもあるがその他に早く食べておかなきゃいけない理由がある。

 

それは、

 

「おはよう。よくも僕抜きで朝食を満喫してくれたね?随分と美味しそうな食事じゃないか」

 

シロべえが来ない内に食べ終わりたかったからである。

 

なんせこいつはかなり食い意地が張っている。

何度奴に俺のご飯や隠しておいたお菓子を食べられたことか!

 

くそ!匂いにつられてやってきたのか!?

マミちゃんはどうした!?

 

 

「おはよう。巴マミの様子はどうだったかしら?」

 

シロべえの登場でほむらはさっきの少女らしい笑顔は引っ込み代わりにいつもの仏頂面に戻ってしまったがその様子を見て安堵してしまった。

 

今までがあまりにもキャラが違い過ぎたので心配していたところだったから。

 

良かった!ほむらの奴いつも通りに戻ってくれた!

これなら精神科に行かなくても大丈夫だろう!

 

 

「その前に僕に労いの言葉があってもいいと思うけど?朝食はないの?」

 

「さっさと答えなさい。巴マミは今どうしているの?」

 

 

相変わらずバチバチと二人の間に火花が飛んでいて凄く気まずい。

 

この二人の仲の悪さは元々の因縁差し引いても悪い。

おそらく性格が合わないんだろうな。

 

だいたいはほむらが突っかかってきてシロべえが適当に流してる感じだ。シロべえと他のインキュベーターは違うって言ってんのに忘れたのだろうか?

 

ここは俺が諫める場面なんだろうけどほむらと同じくマミちゃんの様子が気になるので何も言わずにシロべえが答えるのを待つとしよう。

 

マミちゃんとは魔法少女体験コースがあった日の夜以降、顔を合わせていないし電話もしていない上に簡潔なメールでしか返事返してないもんなあ。

 

だってマミちゃん病んだ女の子みたいに泣きわめいたり大量の着信とメールしてくるんだもん!

怖すぎる!マミちゃんに何があったんだ?

次会った時俺刺されないよね!?

 

ここで彼女は大丈夫だと言ってくれればかなり救われるんだけどなぁ。

 

祈りを込めてシロべえを見る。ほむらと二人して固唾をのんで口を開くのを待つ。

 

 

「マミかい?様子はどうだと言われてもヤバいとしか言いようがないよ?かなり思い詰めてるね。優依、今マミと会わない方が良い。君を見たマミが何するか分からないから。もし会うとしても人の目がある所で会うんだよ。間違っても二人で会っちゃダメ。人の目がある学校で会うのをお勧めするね」

 

俺の願いはいつだって裏切られてばかりだ。

 

マジかよおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!?

マミちゃん!君に一体何があったんだ!?

俺のせいじゃないよね!?

俺何もしてないし関係ないよね!?

お願い!誰か俺は悪くないって言ってくれ!

 

 

「随分と巴マミは優依にご執心みたい。私と一緒にいる所なんて見てしまったら発砲してきそうね」

 

「間違いなく攻撃してくるだろうから気を付ける事だね。まあ、休日は夜の魔女退治以外ずっと引きこもっているみたいだから今外出しても大丈夫だよ」

 

「あまり必要ない情報ね。それにしても今でそんな心理状態じゃ協力を求めるのは難しそうね」

 

「そうだね、かなり難しいだろう。優依の口から君の名前が出てきただけでも激昂しそうなくらいマミは不安定になってるから」

 

「・・はあ、頭が痛いわね。全く愛に溺れて我を見失うなんて勘弁して欲しいわ」

 

「君も大してマミと変わらないじゃないか。今君が独りぼっちで優依がマミと一緒にいると知ったら狂っちゃうでしょ?」

 

「黙りなさい!はぐれの分際で!」

 

 

内心焦る俺をガン無視して目の前にいる一人と一匹が更に火花を散らしている。

ほむらなんて今にも魔法少女に変身して・・・あ、魔法少女に変身した!何で!?

 

 

「何勝手に食べてるの?それは優依に用意した朝食よ。貴女のじゃないわ!」

 

「いいでしょ別に、優依は僕が来てから一口も食べてないじゃないか」

 

「貴女が来たからでしょう?今すぐ食べるのをやめて巴マミを見張ってきなさい!」

 

「大丈夫だよ。これ以上マミのソウルジェムが濁らないように応急処置はしてきたから今日一日くらい放置しても問題ないさ」

 

「そういう問題じゃないわよ!」

 

 

むしゃむしゃと俺の朝食にかぶりつくシロべえとそんな盗み食い中の白い奴に銃を向けてるほむら。

 

何だこの展開は?正直俺は食欲失せたから食べてくれても構わないんだけど。何でほむらはこんなに怒ってんの?

 

ただでさえマミちゃんの事で胃が痛くなっているのにシロべえとほむらのいがみ合いまで勃発したら胃に穴が出来そうだ。

 

どうすれば・・?いや、待て!

 

こんなにピリピリしているのはきっとこの雰囲気がいけないんだ! 

だからこんなにも俺は息苦しいと感じている!

 

よし!ぶち壊そう!

だってまだ今日は休日だもの!休みは楽しまなくては!

マミちゃんについて考えるのは平日からでも大丈夫だろう!多分!

 

取り合えずシロべえとほむらを仲良くとはいかなくとも険悪な関係から脱却させなきゃ!さもないとこれから先、協力して生き残るなんて不可能だ!

 

俺は今にも虐殺が始めそうなほむらをしっかりと見据える。

 

「ほむら!今日は気分転換に一緒に出掛けないか!?」

 

「え!?」

 

ダメ元でほむらから先に振ってみる。

 

シロべえはノリが良いから多分応じてくれるけど空気読めない紫はどんな反応をするのかと思ったけど今は固まって俺を凝視している。

 

おや?てっきり「まどかを救う気があるならふざけないで」とか言って怒るかと思ってたから意外だ。

 

これはひょっとして脈ありですか?

 

「協力関係にあるんだから連携をとるためにも交流を深めておきたいんだ。ほむらは前までは休みという休みを過ごした事がほとんどないだろ?何事も最高のパフォーマンスをするためには気分転換は必要だよ」

 

「まあ、理にかなってるんだけど、君が言うと単にこの空気が嫌だから紛らわそうとしてるとしか思えないよ」

 

「・・・そんな事ないよ」

 

最もらしい事並べてみたけど流石シロべえ。俺の思考をよく分かっていらっしゃる。そうです、この空気に耐えられないんです!

 

まあ、本心はともかく言ったこともあながち嘘ではない。ほむらには気分転換が必要だと思う。

 

心に余裕のない人間は視野が狭くなるから大事な事を見落としがちだ。ほむらがまさにその典型例。

 

それを解消するためにもまどか以外の事に目を向けさせる事が必要だ。俺の考えてることは間違っていないはず!

 

「まあ、とにかくほむら!まどかじゃないのは申し訳ないけど俺と一緒に出掛けないか?」

 

隣で訝しげに俺を見てるシロべえの視線から逃れるようにほむらに話を振る。当の本人は俺に話しかけられてようやくハッと我に返り顔を赤らめてもじもじしている。

 

え?なにその仕草?かわいいんだけど。

 

 

「そ、それは・・デートって事なのね?私と優依がデートするって事なのね!?」

 

「え?いや、単純に遊びに行くだけだけど?シロべえも一緒に行くし。そもそも中身男でも身体は女だからデートって言わなくない?」

 

あまりにぶっ飛んだ発言に顔がひきつりそうになる。

 

何がどうなったらデートっていう結論が出てくるんだ?あ、ひょっとしてこれまどかとのデートの予行練習か?

 

しかし俺の言ったことに対して何故かほむらはすっと冷たい表情になりさっきまでの乙女の恥じらいっぷりが嘘のように消え去っていた。その変貌ぶりに「ひっ」と小さく悲鳴が口から出る。

 

「そうね、貴女ってそういう娘よね。よく分かったわ。一緒に出掛けても構わない。一日くらい大丈夫よ。ただし私の貴重な時間を使うのだからちゃんと楽しませなさい。もし退屈だったら承知しないわよ?」

 

「え?怖っ・・何で?」

 

全身から凄まじいプレッシャーを放ちながら俺を脅してくるので涙目になり身体は本能的に震えてる。

 

何でこんなに怒ってんの!?

 

「準備してくるから玄関で待ってなさい。その間にちゃんとしたデートプランを練っておくことね」

 

「え!?待って!」

 

俺の制止は無視されほむらは朝食の皿を下げてそそくさと部屋を出ていってしまった。俺とシロべえだけが主のいない部屋に残される。

 

 

「あーあ、怒らせちゃった。紫をGETしたとはいえまだまだ扱いはなれていないね。機嫌直しにちゃんとエスコートしないと後が怖いよこれは」

 

「軽い感じで出掛けようと言っただけなのに何でこんな事になってんの?ほむらの気分転換からまさかの俺の生命危機一髪に早変りしてるよ?どうしよう!?何も考えてないよ!そもそもシロべえ!お前がほむらに喧嘩売るから!」

 

「知らないよ、さっきのは君の自業自得だね。それに僕は至って紳士的に振る舞ってるつもりだよ。ほむらは色々やらかしてくれたのに多少の意地悪で許してあげてるんだからむしろ感謝して欲しいくらいさ」

 

頭を抱える俺を冷たく突き放しシロべえは寝転がって寛いでいる。無関係だからって呑気なもんだ。

 

 

「出掛ける事は決まっちゃったけどシロべえはそれでいいのか?」

 

そういえばこうもすんなり決まってしまって拍子抜けだ。一緒に来てくれるだろうが嫌味の一つ二つは覚悟してたんだけどな。

 

 

「僕は構わない。優依の意思を尊重するよ」

 

「え?何でまた?」

 

 

今日はやけに素直だから何かありそうで怖い。いつもならここらで心抉れる事吐いてくるのに。

 

 

「だって明日は学校でしょ?」

 

「うん」

 

「マミに会うじゃない?」

 

「まあ、同じ学校だしな。それがどうした?」

 

「そう考えるとさ、優依にとって今日一日が最後の晩餐みたいなものになるかもしれないんだよ?」

 

「え?」

 

 

俺の聞き間違いか?最後の晩餐って聞こえたけど?

 

 

「今のところほむらがいるからマミと対抗出来るし僕も最善を尽くすけど何事にも想定外は起きるものだ。だから今は出来る限り優依のやりたい事をさせてあげたいと思うのが相棒の優しさってものじゃないかい?」

 

「不吉な事言うな!そんなもん本人に言った時点で優しさでも何でもないわ!ていうか何?シロべえの話だとマミちゃん=死に聞こえるんだけど?マジであの娘どうなってんの!?」

 

「んー、一言で言うなら極めてしまったね」

 

「何が!?」

 

「日の光を浴びたいならあの状態のマミと二人きりで会っちゃ駄目だからね?分かった?」

 

「だから何が!?」

 

 

凄く不吉で意味深な事を謂うのでかなり気になり散々シロべえを問い詰めるも奴はひたすら「知らない方が良い」と黙秘を貫いて何も答えてくれなかった。

 

 

 

 

 

「待たせたわね」

 

「いや、そんなに待ってないよ」

 

玄関でほむらを待ってる間にもシロべえを詰問したが効果はなく、プイッとそっぽを向かれている間にほむらは来てしまった。どうやら追及するのはここらで潮時のようだ。

 

 

「・・・どうかしら?」

 

「え?どうって?・・お」

 

 

シロべえからほむらに視線を向けると真っ先に白いワンピースが目に入った。肩が少し露出するデザインらしく女の子らしさを際立たせており、胸元はピンクのリボンがついている。春の妖精みたいでとてもかわいい服だ。

 

「うん、似合ってるよ」

 

素直にそう思う。服のセンスはあるようだ。

 

しかし、中身男とはいえ一応女の俺と出掛けるのにここまで気合いの入った格好するものなのだろうか?ひょっとしたら今時の女の子は友達と出掛ける時はこれくらい気合いを入れるのかもしれない。

 

最初はそのワンピースから感じる気合いの入れように少し引いたがよく考えればほむらって元々ぼっちだから誰かと一緒に出掛けるのも初めてかもしれないから浮かれている可能性はある。ならば仕方ないだろう。

 

俺は一人そう納得して改めてほむらを見る。

 

そういえばほむらの私服って初めて見たな。

アニメのほむらはずっと制服だった。まあ、杏子を除いた他のメンバーもほぼ制服オンリーだったけど。

 

興味本意でワンピースをじろじろ見ていたがほむらは何故か不満顔で俺を睨んでいる。何故だ?一応本心から褒めたのに?

 

 

「それだけ?他に言うことはないのかしら?」

 

「まだ言っていいの?」

 

「ええ、たったの一言よりは良いわ」

 

 

どうやら俺の感想が一言だけだった事にご不満のようだ。ほむら面倒臭いなと思ったが、本人から許可をもらった事だし遠慮しなくていっか。

 

長話になるため思いっきり息を吸い込んで口を開く。

 

「そもそもほむらって凄い美人だから何着ても似合うじゃんか?」

 

「!?」

 

ボンと顔を真っ赤にしているが俺の語りはまだ始まったばかりだ。このくらい序の口だから耐えなさい。

 

 

「普段はクールな美少女というイメージだけど今着ているような女の子らしいワンピースもとても可愛くて似合ってる!春の妖精といった感じでふわふわしたほむらの新しい魅力を引き出している!」

 

「ふえ?ちょっと!」

 

「見滝原中学の制服は可愛いデザインだけどほむらが着るとカッコ良さと可愛さが絶妙な加減で合わさって最高なんだ。君はスレンダーな体型だから制服を着るとスラッとしたミステリアスな魅力まで併せ持つ素晴らしい性能まで発揮する!」

 

「ふぇぇぇ・・もうやめて」

 

「俺的にはその路線で行った方が良いと思うんだ!キリッと決めたクールな服装も確かに似合うが女の子らしさをふんだんに詰め込んだ格好の方がより、んぐ!」

 

「分かったわ!もう十分よ!それ以上言わないでちょうだい!」

 

 

ほむらが真っ赤な顔の涙目で俺の口を両手で必死に押さえている。

 

俺の女の子の可愛い理論を語り出すと止まらないから一言で済ませたのに俺の優しさに気付かず「それだけ?」なんて不満そうにしたほむらが悪い。

 

俺は悪くない!チクショウ!もっと語りたかったのに!

 

 

「////時間がもったいないから早く行きましょう!ぐずぐずしないで!」

 

「うお!?」

 

頬を染めたほむらに手を引っ張られそのまま引きずられる形で外に出る。

 

 

《やれやれ、初っぱなからこれじゃ先が思いやられるよ。優依、ほむらをあまり口撃しない方が良い。ただでさえマミの問題もあるのにこれ以上厄介な事増やさないでよ?》

 

《攻撃した覚えはないぞ!?ただほむら可愛い理論を熱く語っただけだ!それに今日は休みなんだ!マミちゃんもほむらも知ったことか!全力で満喫するのみ!明日を生き抜くために!》

 

《はあ・・》

 

後ろから付いてくる白い奴の謎の忠告は置いといて俺はほむらと手を繋いだまま道を歩いた。

 

 

 

 

 

 

「・・・どうですか?」

 

「似合ってるじゃない。次はこれを着なさい」

 

「これまだ続くの?」

 

「当然よ。今日一日私に付き合ってくれるのでしょう?」

 

「そんな事言った覚えないけど」

 

「細かい事は気にしないの。早くこれを着なさい」

 

 

現在、俺たちは繁華街にあるショップの中にいる。

 

ホントはショッピングモールに行きたかったんだけどマミちゃんと鉢合わせする可能性があるから止めておいた。

 

で、今何してるかというとほむらが着せ替え人形のように服を試着させて俺で遊んでいる。かれこれ二十回は服を着替えた気がする。

 

俺で遊んで何が楽しいのか分からないがほむらはかなり上機嫌だ。ずっと口角上がりっぱなしだし。

 

それにしても持ってくる服の系統はバラバラなのに何で色はほとんど黒か紫のものばかりなんだ?

こいつは俺をホムラーにしたいのだろうか?

 

 

《はは!遊ばれてるね優依!》

 

《うるさい!他人事だと思いやがって!》

 

傍観を決め込んでるシロべえからの冷やかしに殺意を覚えるもほむらが俺を離してくれないので手出し出来ない。目の前にいるのにかなり歯痒い。

 

 

「さ、次はこれよ」

 

「もう勘弁して下さい!」

 

まだまだ序盤。早くも軽はずみな言動した事を後悔する俺であった。




ほむほむとのデート回です!
まだ続きますので学校編(マミる編)はもう少しお待ち下さい!

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