「・・結構おいしいわねこれ」
「でしょー?俺のスイーツリサーチ力は中々のもんなんだよ」
俺リサーチによる美味しいと評判のクレープを食べながらほむらと二人繁華街の道を歩く。
俺はチョコケーキが入ったクレープでほむらがイチゴとホイップがたっぷりなクレープだ。(意外と可愛いチョイスだな)
ちなみにシロべえはいない。「マミの様子が心配だから」と言って途中で別れたから。まあ本当の理由はきっと俺らがアイツを怒らせたからだと思う。
レディース店でほむらにさんざん着せ替え人形にされた後、俺達は書店に入り本を漁っていた。(ちなみに試着したいくつかの服を買わされた挙句、「着なかったらただじゃおかないわよ」と脅されてしまった)
その時ほむらがある本を持ってきたんだ。男の子二人が頬染めて上半身裸で抱き合ってる表紙のBL漫画を。
最初はほむらの趣味かと思ってドン引きしたがどうやら違うようで、
「これを持った上条恭介を見たら美樹さやかの百年の恋は冷めるかしら?」
と、とんでもない事を真顔で言ってきたのである。
シロべえは止めていたけどリア充に恨みを持つ俺は半分冗談で、
「どうせならそんな緩いBL漫画じゃなくてガチホモなエロ本の方が良いんじゃない?」
と殺る気満々で言った所「妬むのも大概にしろ!」ってマジギレされ結局この案は破棄されてしまった。
その後はぷりぷり怒りながらマミちゃんの所に行ってしまい俺とほむらの二人が残された。
「これで邪魔者はいなくなったわね」
シロべえのマジギレ具合に恐怖する俺と違ってほむらはいけしゃあしゃあとそんな事をほざいてあっさりBL本を戻し私用で購入するつもりだったらしい本二冊を持ってレジに行ってしまった。会計を済ませたほむらはポカーンとする俺を引っ張って書店を後にし今に至る。
ちなみにほむらが何の本を購入をしたのか気になったので聞いてみたけど答えてくれなかった。
でも実は俺は見てしまったのだ。ほむらの購入した本を。
見た所、漫画と本だった。
確か漫画はトモっちお気に入りの百合漫画の表紙だった気がする。
(ちなみにストーリーは魔法少女と一般人の少女の恋愛ものだったと記憶している)
もう一つの本は何かのハウツーだ。タイトルは
『高嶺のあの娘を射止めよう!女性の口説き方全集』だった気がする。
買った本がこれじゃあ絶対に言わないわな。
俺なら口が裂けても言わないしその秘密を墓場まで持っていくだろう。
物凄く気になるが長生きするためにはこれ以上追及しない方が身のためだ。
取りあえず言えることはただ一つ。頑張れまどか!
それにしても気分転換のために出かけたはずなのにどうしてこんなおかしな状況になってんだ?
「ふふ」
「どうしたの?」
さっかまでの出来事を思い出して憂鬱になっている俺の隣でほむらが何故か笑っている。いきなり精神崩壊したのかと思ったけどどうやら違うようだ。俺の頬を指差して笑っている。
「クリーム、ほっぺについてるわよ?子供みたいね」
まさかの俺の醜態に笑っていたらしい。嘘だと言ってくれ。穴があったら是非入りたい。
「え・・・?ホント?」
「ええ」
「どこ?」
急いで拭こうとしてもどこについてるのか分からないからあちこち顔を拭いてみるも取れた気がしない。
「ここよ」
そう言ってほむらが俺の頬に触ってクリームを取る。指には白いホイップがついていた。
マジで俺年下扱いじゃんか。
マミちゃんといい杏子といい何で俺を小さい子扱いすんの?
実質俺が精神年齢一番年上のはずなのに。
「え!?」
ハンカチで拭くのかと思って見ていたらほむらは何をトチ狂ったのかそのままホイップがついた指を口に含んでいる。
「ごちそうさま」
指を舐めて妖艶に笑うほむらに一瞬、劇場版の悪魔がダブって見えた。とんでもない錯覚に急いで頭を振って追い出すも寒気が止まらない。
何やってんだコイツは?
それ彼氏にやるやつじゃね?やる相手間違ってんじゃないの?
まさかこれが数多くの時間軸を渡って来た経験というやつか!?
だとしたらとんでもない猛者だ!もうへタレ紫なんて呼べないな!
感心しながらほむらをじっと見ているとだんだん顔が真っ赤になってついに両手で隠してしまった。・・・もしや?
「////////」
「・・恥ずかしくなるくらいなら初めからしなきゃ良かったのに」
「うるさいわね。貴女はこれくらいしなきゃ意識しないと思ったからしたのに何で素面でいられるのよ!?」
涙目になって俺を睨んでいるも、どう回答すればいいか分からないから困ってしまう。平気なんじゃなくてぶっちゃけ状況整理に頭が追い付いてないから反応出来ないといった方が正解かもしれない。訳分かってないもん。
「いや混乱してるだけだし・・それにしてもほむらって中々大胆なんだね。その後自分のした事を思い返して悶えるなんてツボを押さえている。グッドだよ!」
ギャップ萌えのあまりの完成度に思わず親指を立ててほむらを褒め称える。どうやらコイツは萌えを分かっているようなのでほむらに対する俺の好感度がちょっぴりアップだ。
「貴女って娘は・・。 ! 優依、あそこのお店に入りましょう。ほら早く!」
「わ!ちょっとほむら待って!まだ食べかけ・・」
「いいから早く!」
血相を変えたほむらにほぼ押し込まれる形で店内に入る。中の様子を見るとどうやらここは雑貨屋さんのようだ。
なかなかオシャレな小物やアクセサリーがたくさん置かれていて人気店なのか俺達と歳が近い女の子達で賑わっている。
「いきなり何なんだよほむら。俺をこの店に連れ込んでどうしたんだ?」
「別に。ただこのお店が気になっただけよ」
何かあったのは明白なのにしれっと嘘吐いてくるなコイツ。そのポーカーフェイスが憎たらしい。
「ほむら、こういうの興味あったんだ・・超意外」
強引な上にしらばっくれる気満々みたいなので皮肉を込めてみたがほむらには通用せず鼻で笑われてしまった。
「貴女は本当に失礼ね。まあ、いいわ。しばらく店内を回ってやり過ごしましょう」
「ごめん、何からやり過ごすの?」
「さあ、行くわよ」
「あ!待って!」
俺の問いは無視され、さっさと店内を歩くほむらを追うためクレープを口に押し込んで慌てて駆け出す。
店内は女の子が喜びそうなデザインのものばかりで正直興味がない。
一人だったら絶対来ないけどよくピンクや青もしくは黄色に引っ張られてこういう雑貨を扱う店には顔を出すから今どういった物が流行っているかは一応心得ている。
というかめっちゃ勧めてくるからな。
主に青が「あんたは可愛いんだから少しはこういうのに興味を持ちなさいよね」って言ったり
あと黄色が「私、お揃いに憧れてるの」とキラキラした目で俺を見てきたりとか。
どちらも丁重に断ってる。
そういうのは別の娘とやってほしい。面倒だから俺はやりたくないんだ!
「優依はあまり興味なさそうね」
「ん?まあね。はっきり言って興味ないや」
俺が雑貨に興味がない事に気付いたらしいほむらは事も無げに聞いてくるから俺も軽い感じで答えておいた。可愛いとは思うんだけど欲しいとは思わないし興味も引かない。
「こういう髪飾りも興味ないの?貴女綺麗な髪してるんだからアレンジするのもありだと思うのだけど」
ほむらがそう言って近くにあった髪飾りが置いてある棚からシュシュを手に取っている。すみません、興味ないって言ったんですけどね?聞こえてないの?
「あーごめん、興味ない。髪弄るのも面倒だし」
「その割には佐倉杏子からもらったそれはしっかりつけてるのね?」
視線が俺の髪、いや杏子がくれた髪飾りに向いている。
ほむらはこういうタイプの髪飾りに恨みでもあるのだろうか?睨む目に憎しみが込められててさっき言った事も妙に刺々しい気がする。
「あー・・まあ杏子がわざわざ作ってくれたものだし、無下には出来ないからね。これは例外でつけてるだけだよ」
一先ず当たり障りのない事を言っておく。もちろん本心ではあるがそれよりもつけてないと知った時の杏子の反応が怖いというのもあるからだ。
「テメェ!アタシがせっかく作ってやったのに何でしてねえんだよ!?」とか怒鳴り散らして胸倉掴まれそうだからな。それはやだ、怖い!そうなるくらいなら本来はしない髪飾りも喜んでやるさ!
「ふーん・・・・そう、随分と佐倉杏子を特別扱いしてるのね?」
「いや、そういう訳じゃないって・・」
「本音はどうかしら?」
何故かほむらはムッとした表情になってぷいっと顔を逸らされてしまった。全身から滲み出る不機嫌オーラで怒っているのは分かったが理由が分からない。取りあえず分かるのはほむら超面倒くさい!
「はあ・・・。 お?」
むくれるほむらをどう対処すっかなーと何気なく辺りを見渡しているとある物が目に入りそれを手に取ってみる。
うん、これはいける!
「ほむら、これしてみてくれないか?」
「何よ?・・・これを?」
さっきまで不機嫌だったほむらの顔が困惑に変わっている。俺の差し出した物をどう対処したらいいか分からないらしい。そんな難しいものじゃないのに何を迷うんだろうか?
俺が今ほむらに差し出しているのはカチューシャだ。
それも赤が基調の側面に一羽の蝶がついた中々派手なデザインの物だ。
つける人を選ぶが誰が見ても美人だと太鼓判を押すほむらなら似合うはずだろうと自負している。
「俺の見立てでは絶対ほむらに似合うと思うんだ!ね、すぐ外してくれていいからこれつけてくれない?」
「ち、近いわよ!分かったから少し離れなさい!」
似合うと思ったのは当然だがとある思惑ありありで興奮気味に詰め寄ってみたらほむらは折れて渋々カチューシャを受け取った。おずおずとリボンかカチューシャか分からない謎の自分の髪飾りを外している。
「・・・変じゃない?」
不安そうな目で見上げるほむらの頭には俺が選んだカチューシャが乗ってある。うむ、実際つけてるところを見るとアニメ最終話の「リボほむ」を連想するな。これはカチューシャだから「カチュほむ」か?
「せめて何か言いなさいよ!何も言わないって事はやっぱり変って事でしょう!?」
「ふご!?」
俺が何も言わないからほむらは顔を真っ赤にして首を凄い力で締め付けてくるから一瞬昇天しそうになる。このままじゃ俺は絞殺されてしまう!
「ぐえ!そんな事ないよ!凄く似合ってる!思わず見惚れてたからつい感想言うの忘れてただけだよ!」
「見惚っ・・!?」
「隙あり!」
「! 待ちなさい!」
ほむらが怯んだ隙を見逃さずそのまま絞殺から逃れ、ついでにカチューシャを取り上げて逃げる。
慌てて俺を追いかけてくるけどもう遅い!いくらお前が早くてもゴールは俺の方が近いのだから!
「すみません!これください!」
「!」
俺が一足先にたどり着いた場所はレジ。素早くカチューシャの会計を済まし、驚きの表情で立ち止まっているほむらの元に行き買ったばかりのそれを差しだした。
「はい、これあげる。俺からのプレゼント。気が向いたらつけてね」
「え・・?」
戸惑ったまま動かないほむらがじれったいのでだらんとぶら下げている手を取って無理やりカチューシャを握らせる。
「・・・・・・・」
眉間に皺を寄せた表情のほむらは一言も発さずただ握らされたカチューシャを見つめている。何かに迷ってるのか?ここは無理にでも押した方が良いかもしれないな。
「お金なら気にしないで思ったよりも安かったからさ」
「・・何故私に?」
何故にお金?他にもっと言う事なかったのかと俺は自己嫌悪したがほむらは気にしておらず不思議そうにこちらを見つめている。
「んー強いて言うなら俺からのプレゼントかな?これからよろしくっていう意味も込めて」
「・・・・・・・」
ほむらがじっと俺とカチューシャを交互に見つめていてだんだん不安になってくる。
やっぱり急過ぎただろうか?あげる理由は俺の思惑しか入ってないから不審に思われたかも。
もしくはセンスない物渡されて対応に困ってるとか?ありえる!
だって俺、女の子にプレゼントした事ないし、ほむらの好み全く知らない!
どうしよう?余計なお世話だったみたいだ!自ら墓穴を掘ってしまった!
今すぐ返品して無かったことにしてしまおう!
「ほむらごめんね!いきなりこれ押し付けちゃって!迷惑だったよね!?俺、女の子にプレゼントなんてした事なくて勝手が分からないん・・ひい!」
この後「返品してくる」と伝えるつもりだったがほむらがカチューシャから目線を外しクワっと顔を振り上げて睨み付けてきたので思わず悲鳴を上げる。目が血走った幽霊に見えるけど幻であってほしい。
「今まで誰かにプレゼントした事ないの?つまりそれは私が初めてって事?」
「え?えっと・・家族とかにはした事あるけど女の子はほむらが初めてだよ?」
そのまま鬼気迫る様子で俺に詰め寄ってきたのでタジタジになりながらも何とか答える事が出来た。俺の回答に満足したらしいほむらはそわそわしてどこか落ち着かない様子だ。
「ふふ、そういう事だったのね。初めてプレゼントしたものを返すのは失礼だもの。仕方ないからもらってあげるわ」
「いや、そんな気使わなくて大丈夫ですよ?買ったばかりだし返品出来るからしてくるよ」
「駄目よ。これはもう私の物なんだから、どうするかは私が決めるわ」
生意気な発言をされ再びプイッと顔を逸らされてしまった。
チクショウ!これをやったのが杏子なら俺は萌えるのにほむらがやると凄いムカつくな!
お仕置きにカチューシャを取り上げようとしたけど、ご丁寧に抱え込んでしまったので奪うのを諦めるしかない。
それにしてもほむらの奴、何であんなに大事そうに抱え込んでんだ?
あ、ひょっとして友達いなかっただろうからプレゼントされた事もおそらく皆無なのだろう。それなら仕方がない。
渡したものはともかく喜んでくれて何よりだ。
だって上がりそうになってる口角を必死に抑えようとしていて少しおかしな表情になってるもん。
「ふふ、優依の”初めて”は私がもらったわ」
「すみません誤解を招きそうな言い方やめてくれませんか?てか、今つけなくてもいいのに」
「別にいいでしょう?私の勝手なんだから」
相変わらずの爆弾発言したからそれを咎めるも無視され、頭につけたカチューシャをあらゆる方向から鏡でチェックしている。そんな様子に俺は苦笑いを浮かべるしかない。
気に入ってくれて何よりだがまさかここまでとは流石に予想外だ。
これで少しは厄除けになればいいんだが。
そう、俺は何もこれからよろしくという友好の証としてこれを送ったのではない!
ほむらが赤いリボンをつけないように予防策を張ったまでだ!
だってほむらが赤いリボンをつけるという事は不吉の象徴!
その先の未来には混沌とした悪魔の叛逆しか待っていない!
そんなロクでもない未来を示唆する赤いリボンをほむらの頭に見た日には俺はうつ病になってしまいそうだ・・・。
というより既に悪魔の片鱗を見てしまったので結構ヤバいかも?
そんな展開は御免被るのでこうして予防をしておいた訳だ。
九割くらいその場しのぎと軽いノリだっただけにこのほむらの喜びようは嬉しい誤算だ。俺も二千円を犠牲にしただけはある。
出来ればずっとそれをつけてて下さい!
間違っても赤いリボンはつけないで!俺の明るい未来のために!
未だに鏡にかじり付いているほむらを見ながら俺はこっそりほくそ笑む。上手くいったようで何よりだ。
「そろそろ帰ろっか」
「ええ、そうね。明日は学校だもの」
あれからあちこち回っていたが日が暮れて来たのでスーパーで買い物した後、ほむらと二人パンパンになったレジ袋を持って街中を歩く。
「何を作るつもりなの?」
「俺特製ハンバーグ!自信作なんだよね!」
「・・ハンバーグってこんなに材料必要だったかしら?」
ほむらは訝しげにパンパンのレジ袋を見ている。・・まあこれは全部ほむらの財布から出ているから無駄遣いしたんじゃないかと思われても仕方ないけど絶対に必要なので譲る気はない!
「ハンバーグじゃないけど絶対必要なの!色々作って冷凍するから次の晩御飯にでも食べてよ。どうせ俺が帰った後、カップ麺生活に戻るんだろ?」
「まあ、そうね。料理してる時間があるなら他の事に時間を使いたいもの。でも貴女が作り置きしてくれるなら嬉しいわ。ゆっくり味わって食べるから」
「おうよ!任せんしゃい!とびきり美味しい物を作ってやるさ!」
料理には自信があるから高らかに腕を掲げて宣言する。荷物が重くてあんまり上がらなかったけど。
「・・・ふふ、これじゃまるで遠方からきた彼女みたいよ優依」
「そ、そうか・・?」
ほむらが可笑しそうに笑っているが正直理解に苦しむ。どっちかっていうと俺がやってる事って遠くに住んでる娘を心配したオカンみたいは対応だと思うけどな。
「・・・・・・・」
「どうした?」
反抗期っぽい娘なほむらを想像していたらいつの間にか俺一人しか歩いていなかった。後ろを振り返るとほむらが立ち止まっていて周囲を見渡している。繁華街から抜けてほむらの家に続く街中だがここも結構賑わっているので人通りはかなり多いのにどうしたのだろうか?まさか魔女でも出たのか?
俺の不安な予想とは裏腹にほむらは周囲を見渡した後、特に気にする様子もなくそのまま歩き出していた。突然の行動が気になった俺はポーカーフェイスのままのほむらの隣に並んで歩く。
「ホントにどうしたんだほむら?『ほむレーダー』になんか反応あったのか?」
「何でもないわ。それにしても何よ『ほむレーダー』って?私はロボットじゃないわよ」
「何言ってんの?君は未来からやって来た『ほーむネーター』じゃないか。もしくは『ほむドロイド』か?いっ!?」
「馬鹿な事言ってないで早く帰るわよ優依」
「いてて・・あ!待ってほむら!」
俺の足を踏んでさっさと先を歩いてしまうほむらを慌てて追いかける。ようやく追いついて二人並んで歩いているとほむらが再び立ち止まってこっちを見ている。
「優依」
「何?」
「今日は楽しかったわ。ありがとう」
「!」
ほむらが綺麗に微笑んで俺を見ているので思わず息を呑みそして下唇を噛んだ。くそ!写メ撮るの忘れた!今のはレアな現象だったのに!
「また一緒に出掛けましょう」
いや、それはもういいです。結構です。貴女といると命がいくつあっても足りないので遠慮します。
などと口が裂けても言えないので曖昧に笑いながら帰路についた。
「ふーん、そんな事があったのかい?道理でほむらが上機嫌だった訳だ。僕の顔を見ても殺気すら飛ばさなかったくらいだし」
「へー、珍しい。ほむらが?どんだけ機嫌良かったんだよ」
「そりゃ、あの暁美ほむらが鼻歌歌ってたくらいだからね」
「え!?」
現在夜遅くの『ほむホーム』。
この部屋の家主であるほむらは「魔女狩りに行ってくるわ」と言って出かけており、俺は作り置き用の惣菜を調理しながらマミちゃんの所から帰ってきたシロべえに晩飯で作っておいたハンバーグを出してやった。
文字通りシロべえはがっついている。
「僕がいない間に一体何があったのさ?と聞いてみたけど絶対またやらかしたんだろうなぁ。だって優依だし」
「失礼だな!俺は特に何もやってないよ!」
「うっそだぁ!君が何もしていない訳ないじゃないか!」
俺が原因だと決めつけてくる超無礼者はどんなに否定しても全く意に介さずひたすらハンバーグにがっついてる。その皿取り上げてやろうかな?
「じゃあ、ほむらが出掛ける時つけてた派手なカチューシャは何だい?」
「うぐ!?」
皿を取り上げようとする手がピタリと止まる。
「大方君があげたんでしょ?少し様子を見てたけど、ほむらが隙あらば鏡を見てたしカチューシャをよく触ってたよ。絶対優依絡みだと思ってたら案の定君が原因だったから笑えるよ」
「いやー・・だってね?これからお世話になるじゃん?色々頑張ってもらうじゃん?友好の証って必要でしょ?」
「そんなに赤いリボンつけたほむらが見たくないのかい?」
「・・・・・・・・・・・はい」
無理です!コイツを騙せる日が見えてこないぞ!?
項垂れた俺を見て図星だと察したらしいシロべえは「ハア・・」とため息吐いてやがる。俺がため息つきてえよ!お前勝手にいなくなったくせに!
「ほむらの意図を汲んで二人っきりにしてあげたけど良い結果と悪い結果が同時に出てくるなんて思わなかったよ。また勘違いさせたね優依。君がいれば魔法少女の共同戦線も可能かと思ってたけど逆に不可能にしてしまってて泣けてくるよ」
「俺のせいみたいに言うな!そもそもお前に涙腺なんてあんのか!?てか、シロべえは上条恭介(社会的)抹殺計画に怒ってたからいなくなったんじゃないのかよ!?」
俺の九割本気な態度を見てシロべえが激怒してたと思ってたのに!
「もちろん君のリア充への憎しみに呆れてたのは事実だよ?でも君もある意味リア充じゃないか」
「え!?ホント!?どの辺が!?」
まさかの俺リア充発言!?どの辺が?どの辺が!?
「バッドエンド直行の特殊なリア充さ。僕なら絶対遠慮するよ」
「はあ!?」
やっぱりコイツの言う事に期待なんてするもんじゃないな。俺はいつになったら学習するんだろうか?
「あ、その一部のマミは昼間留守にしてたみたいでさ。まさか鉢合わせしてないよね?」
「え・・?してないけど?」
何かを思い出したようだがその意図が分からず困惑する。シロべえは何が言いたいんだ?
「なら良かった。マミは夕暮れの終わり近くに帰って来たんだけど食料やら日用品やら一人暮らしにしては多すぎる量を買い込んでいたからね。その時のマミはやたら機嫌が良かったから心配だったけど何もなくて良かったよ」
「・・・・・・・・」
何それ?マミちゃんは何がしたいのかな?
大量の買い物の品を誰もいない部屋に運んでいるマミちゃんの姿を想像したら泣けてきそうだよ?
「ほむらとマミを会わせて大丈夫なのかい?」
「その事なんだけど俺に考えがある!」
シロべえは心配そうだが俺は待ってましたとばかりに答える。
「そっか。どうせロクでもない考えなんだろうな」
「やかましいわ!今日ほむらと接してみて思ったんだけど意外とアイツ社交性があったみたいでさ」
一日ほむらと一緒にいたが案外ノリ良いし会話も慣れればすぐには途切れる事はない。案外ほむらは交友関係広められるんじゃないの?
「ホントに?優依が相手だからじゃないの?」
「まあ意外だっただけで不器用な上にコミュ障なのは間違いないんだけど・・。そこは俺達がフォローすれば良いんじゃない?」
実際これで何とかなりそうだと俺は思ってるし、少なくともまどか辺りとは仲良くなれると自負している。敵対したり孤立するよりははるかにリスクは低いだろう。
「それは火に油注ぎそうな考えだね・・。僕は反対だよ」
「え!?何で!?」
まさかのシロべえの反対に思わず叫んでしまう。賛同してくれるとは思わなかったが反対までされるとは想定外だ。
「だってそれはほむらと一緒にいるって事だよね?間違いなく学校に血が舞いそうだしロクな結果にならないだろうね」
「不吉な事言うな!何で流血沙汰の展開なんだよ!?」
「それくらい考えなよ。じゃ僕はマミの所に行ってくるから」
「シロべえ待ってえええええええええええええええええええ!!せめて不穏な空気は拭い去ってから行ってくれええええええええええええええええええ!!!」
ご飯を食べ終えたシロべえはそのまま俺の制止をフルで無視して夜の闇に消えて行きこうして何だかんだで夜も更けていった。
明日は学校だ。シロべえはああ言っていたがやれる事やらないとマジで死ぬ!
死なないためにもやれるだけの事をやるしかない!
明日ほむらにも協力してもらおう!
うん、そうしよう!頑張れ俺!
一人寂しく気合を入れ、ほむらを待たずにそのままベッドに入った。
ほむほむとのデート回その二でした!
次回はそのほむほむの視点と学校編を少し入れようと思います!
ほむほむ編も次回で終わりです!そろそろマミさんの出番ですな・・。