魔法少女オレガ☆ヤンノ!?   作:かずwax

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きゃほおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!
ありがとうございます!!!


46話 お友達大作戦

「本当にやるの?」

 

「もちろん!今日逃したら後がないからな!」

 

 

ほむらと一緒に学校へ向かっている途中、こいつは何度も俺に念押しで本当に『お友達大作戦』を決行するのか確認してくる。この期に及んでまだ俺の悪ふざけだと思ってるのだろうか?失礼な奴だ。

 

 

「・・・分かったわ。優依の好きにすればいい。それで私は何をすればいいの?」

 

「お!理解が早い!じゃあまずは・・って何でそんなに不安そうな顔してんの?緊張する事もないのに」

 

「・・貴女は幸せね」

 

 

ため息ついて意味深な事言ってるけど友達作るのってそんなに緊張するもんなのか?確かに緊張するけど何もそんな今から戦場に行くみたいな緊迫した表情せんでもよくない?

 

 

「大丈夫だって!俺頑張ってフォローするから!シロべえだって・・まあ、いる事だし」

 

「それまで生きてればね」

 

 

実はシロべえも一緒にいるんだが今は仮死状態。

理由は家を出る前のほむらのすっきりした表情でお察しください。

・・やり過ぎたとは思ってるよ。

 

 

今は学生鞄とは別に持ってきているバッグの中に遺棄、じゃなくて待機してもらってる。いざとなったら生き返って何とかしてくれるさ。多分。

 

 

「・・ところでほむら、それ気に入ってくれたのは嬉しいけどわざわざ学校までしていかなくていいんだぞ?」

 

 

遠慮がちにほむらの頭に目を向ける。

そこには学校にしていくには少々派手なカチューシャがあった。俺が昨日あげた赤い蝶のやつだ。

学校までしてくるなんて実はコイツ目立ちたがり屋なのだろうか?

 

 

「これをつけていくのは私の勝手でしょう?いくら貴女でも文句は言わせないわよ」

 

「はーい・・」

 

 

有無を言わせない迫力に渋々頷くしかないようだ。

ここまでほむらを駆り立てる何かがこのカチューシャにあるのだろうか?

聞いてみたいが今はほかにやる事があるからスルーするか。

 

 

「よし!気を取り直して最初のターゲットから初めてみるか!序盤だから気楽な所から行こう!」

 

「待ちなさい!手を引っ張らないで!」

 

 

気分を入れ替えるために明るい声を出してほむらの真っ白な手を握り通学路を走る。

後ろから抗議の声が聞こえるがそんなの気にしない!

 

いざ決戦の学び舎へ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・彼女からいくの?」

 

「そう、あいつからいくの」

 

 

今俺達は遠目から教室にいるターゲットを観察している。

 

外から丸見えのガラス張りの教室ってこういう時は役に立つな。

さてさて中には何人かのクラスメイト達がいるようだが、どうやらターゲットも既に教室にいるみたいだ。

 

 

俺たちの最初の狙いは青髪のあいつ。

 

 

「手始めに『美樹さやか』から始めようと思います!」

 

「何故彼女なの?」

 

「ぶっちゃけほむらと一番仲悪いのさやかじゃん?もし失敗してもダメージ少なそうだし」

 

「へタレな理由ね」

 

「いきなり本命よりは良くない?」

 

 

ターゲットその一「美樹さやか」!!

 

ご存じ「魔女化皆勤賞」な青!ほむらとは原作でも別の時間軸でも仲が悪い。

ほむら曰く友達だった時期もあるそうなのだが全く想像がつかない。仲が良かった時間軸があるなんてある意味奇跡だと思う。

和解できそうだった劇場版でも結局最後は決裂してしまう二人だ。かなり手ごわい。

 

個人的にはこの二人って似たもの同士だと思うんだけどなー。いがみ合うのも同族嫌悪ってやつじゃないの?

 

さやかはかなり厄介だけど(ほむらにとって)本命のまどかやハードル高そうなマミちゃんよりは難易度低いと思う。仮に失敗してもそこまで落ち込まないだろうし。

 

 

「それじゃほむら。いってくるよ!」

 

「いってらっしゃい。大して期待してないから気楽にやりなさい」

 

 

微妙な応援をもらって俺は一人で教室まで歩く。まず俺がさやかと話して大丈夫そうならほむらを呼ぶ作戦だ。それまでは廊下で待機してもらってる。

 

ほむらに敵対心持ってるさやかがいきなり本人と会うと噛み付かんばかりの勢いになるのは目に見えてるからな。まずは様子見だ。

 

少し緊張しながら教室に入って一目散にさやかを見ると一人携帯をいじりながら席に座っていた。どうやら今日はまどかや緑お嬢様と一緒に登校しなかったらしい。

 

これはチャンス!早速話しかけてみよう!

席も近いから話しやすいし。

 

 

「おはようさやか、ひ!」

 

 

俺が自分の席に着いてさやかに挨拶したらいきなり奴は顔を勢いよく上げてこっちを向くから小さく悲鳴をあげてしまった。

 

どうしたっていうんだ?

俺が挨拶するのがそんなに珍しいって言いたいのか?

いつもなら気楽に挨拶返してくれんのにどうした?

 

 

「優依!あんた大丈夫!?」

 

「何が?」

 

 

血相変えたさやかが俺の挨拶無視して放った第一声がそれか?

何があったんだよ?

 

 

「魔法少女体験コースの次の日の学校休んだでしょ!?優依が学校休んだのってひょっとしてあたし達のせいじゃないかってまどかと話してたんだ!だってあんたは参加すんの嫌がってたし危ない目に遭ったからそれであたし達に腹が立って休んだのかもって話し合ってたんだよ!そういやその夜に魔法少女体験コースに行かないって電話来た時の優依の声、なんだか元気なかったしさ。ホントにごめん!もう絶対あんな事しないから絶交しないで!あたしもまどかも優依を困らせたかった訳じゃないんだ!魔法少女を体験出来るって浮かれてておかしなテンションになっちゃっててそれで・・」

 

「え?あ、うん。大丈夫、気にしてないから!学校休んだのも(マミちゃんに会いたくなかったからで)さやか達のせいじゃないよ!」

 

 

まさか挨拶しただけでこんなマシンガン謝罪が来ると思わなかった。

美樹さやか恐るべし。

そっか、俺が杏子の所に行ってる間にそんな事があったのか。

正直に言うと俺の知らない所で勝手にやってろっていうのが本音で、不参加の電話した時点でもう終わった話だからそんな深刻そうな顔せんでもいいのに。

 

さやかがこれじゃあ、優しすぎるまどかはこの比じゃないかも。

うわ・・めんどくs、大変だな。

 

 

近い将来起こるであろう謝罪の嵐に軽く憂鬱になりそうだ。

 

 

 

「怒ってない・・・?」

 

 

不安そうに俺を見てるさやかを安心せるためめんどくさいけどニコッと微笑んでおく。

 

 

「怒ってないよ。むしろ心配してくれてありがとう」

 

「! そう言ってくれるなんて優依ってさホント優しいね!しかも超美人だし同じ女のあたしでも惚れちゃいそうだもん!いっその事あたしの嫁になる?」

 

 

それは冗談でも勘弁してください。

お前の嫁とか苦労しかしなさそうだし。

てか、やめてくんない?冗談めかして言ってるのに目がマジっぽく見えるんですけど?

 

まどかはどうした?嫁じゃないのか?

いやむしろお前、杏子の嫁じゃん。

 

 

「冗談は程ほどにしときなよ?さやかはヴァ、上条君のお嫁さんになるんでしょ?」

 

「ちょ!?やめてよ優依!誰が聞いてるか分かんないじゃん!!」

 

 

話題逸らしのために上条の名前出したけどついうっかりいつもの癖でヴァイオリン馬鹿と言ってしまいそうになって危なかった。顔を真っ赤にして必死に俺の口を塞いでいるさやかは聞いてないみたいで助かったわ。

 

そんなに慌てなくても皆知ってるのに。青春だなあ。

 

 

「あ、そうだ」

 

「ん?」

 

 

何かを思い出したのかさやかは俺の口を塞ぐのを止めて鞄の中を漁っている。取り出したのは一冊のノートでそれを俺に突き出してる。

 

 

「はいこれ。あんたが休んでた時の授業内容のノート。まどかと一緒に作ったんだ。ホントは休みの時に渡そうかと思って家に行ったけど留守だったから」

 

 

まじか!?よっしゃ!

休んでた時の授業内容のノート誰かから借りなきゃと思ってたけどこれは思わぬラッキーだ!

 

 

「いいの?ありがとう!助かるよ!」

 

「いいのいいの!これくらいさやかちゃんにとっては朝飯前なんだから!・・ほとんどまどかがやったんだけどね」

 

「その気遣いが嬉しいの!ホントにありがとね!」

 

「そ、そっか・・」

 

 

受け取ったノートを胸に抱えて満面の笑みでお礼を言うも何故かさやかに目を逸らされてしまった。

熱でもあんのか?顔あおいでるし。

 

 

さやかは欠点ばかり目につきやすいけどちゃんと良い所もある。

こういう友達思いな所はさやかの長所だ。

どうしてか今は凄く機嫌が良いみたいだからひょっとしたらこれはすんなり成功するかも?

 

よし!試してみるか!

 

 

「さやか、相談があるんだけど」

 

「ん?何の相談?恋の相談ならこのさやかちゃんが喜んで聞いてあげるよ!」

 

 

ノリノリで調子良い事言ってるが君の場合、相談される側じゃなくて相談する側だよ。はよ成就させろや。

 

 

「恋の相談じゃないよ。えっと・・ほむらの事なんだけど?」

 

「ほむら?誰それ?・・まさか転校生の事言ってる?」

 

「そ、そうそう!転校生の事なんだけど!」

 

 

怖っ!さっきまで人懐っこい笑顔だったのに今じゃ能面みたいに表情が消えてる!

心なしかプレッシャーも感じるよ!

さやかさん貴女そんな顔出来たんですね!知りたくなかったよ!

 

 

「あいつに何かされたの?」

 

「違うよ!えっと、その相談ってのはね」

 

「ひょっとして優依が学校休んでたのってあいつのせいなの!?だってあの時あいつが去った後、優依すぐに『用事がある』って言ってあいつが去った方角と同じ方に走って行ったじゃん!脅されたんでしょ!?」

 

 

バンッと机を叩いて立ち上がるさやかは声を荒げている。

もしここにほむらがいれば間違いなく喧嘩吹っ掛けてたかもしれない程の荒々しさだ。幸いクラスメイト達はこっちを気にしていないけど時間の問題かも。

 

何とかさやかを落ち着かせなきゃヤバい!

 

 

「だから違うって!あれは」

 

「やっぱり転校生は悪い魔法少女なんだ!キュゥべえを襲ったし危険な奴だし!優依!もうあんな奴に近づいちゃ駄目だからね!」

 

「お願いさやか!話を聞いて!」

 

「この事マミさんに相談しなきゃ!じゃないとあいつ今度はもっと悪い事するかもしれない!」

 

「おいこら人の話聞けや!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・はあ」

 

 

昼休み、俺は屋上の景色を一人黄昏ながら見ている。

 

あの後は大変だった。

 

ヒートアップしたさやかは「転校生にガツンと言ってやる!」と鼻息荒くして他人のふりして席に座ってるほむらに抗議しようとするから止めるのに必死で話すどころじゃなかった。途中で教室に入って来たまどかと緑お嬢様が暴走する青を宥めてくれたから事なきを得たけど凄く疲れた。

 

あの様子じゃ何言っても聞かなさそうだ。さやかは諦めた方が良いのかもしれない。分かっていたけど凹むな。

 

俺達の様子を傍観していたほむらの表情はやっぱりねと書いてあった。落ち込む俺に彼女が励ましのつもりで

 

『どの時間軸の美樹さやかも思い込みが激しくて頑固よ。一度思い込んだらそのまま真っ直ぐ突き進んで止まる事を知らない厄介な性格なの』

 

と、さやかの辛口コメントを言ってたけど正直超特大ブーメランにしかなってないと思うのは俺だけか?

 

 

そんな似た者同士疑惑のほむらはここにはいない。

 

一緒にお弁当食べるつもりだったけど先生に呼ばれたとかで先に屋上に行っててと言われたから俺一人だ。本当はまどか達と合流したかったけどさやかが暴走するからやめておいた。

 

意気揚々と『お友達大作戦』を実行してみたが序盤から出鼻を挫かれてからずっと意気消沈を抜け出せていない。さやかの様子からいけそうだと思っていたから余計にダメージを受けてる。

 

 

こんなんでこの先、大丈夫なのだろうか・・?

 

 

 

 

 

 

 

 

「はあ・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「優依ちゃん」

 

 

 

 

「!?」

 

 

 

 

 

背後から俺の呼ぶ声が聞こえて振り向いたら今日いるはずのない人物が立っていて目を見開いた。

 

 

「マ、マミちゃん?どうしてここにいんの?今日は学校休んでるって聞いたんだけど・・?」

 

 

そうなのだ。『お友達大作戦』を実行するにあたって当然マミちゃんもターゲットに含まれてるから接触する必要がある。

 

長い話になりそうだから昼休みか放課後に時間取れないかマミちゃん本人に確認しようと三年生の教室に行ったんだけど「巴さん今日は休んでるよ」と言われてしまったのだ。

 

休んでるなら仕方ない。放課後にお見舞いがてら会いに行こうと思ってたんだが、何で休んでるはずのマミちゃんは制服着てここにいるのだろうか?

 

あのクラスメイトが嘘ついたのか?多分それは無いと思うけど。

だって「巴さんにも友達がいたのね」と少し涙ぐまれたから。

その様子に逆に俺が泣きそうになったわ。

 

不審に思いながらマミちゃんを見ると彼女は俺を安心させるように優しく微笑んでる。

 

 

「ええ、今日はお休みなんだけど優依ちゃんに会いたくなって来ちゃったの。貴女が一人になるこの時を待ってたわ」

 

「へ、へえ、そうなんだ・・」

 

 

どうしてだろうか?マミちゃんの笑顔にゾクッとする。

 

昼休みだというのに屋上には俺とマミちゃん以外の生徒はおらず助けを求められない。校舎の中に逃げたくても出入り口を遮るようにマミちゃんが立っているから逃げ込めない。

 

ここにいるのは俺とマミちゃんの二人だけ。

 

いや、俺は屋上にバッグを持って来てる。

中にはシロべえ(死体)が入ってるから一応一人じゃないが、どうしたものか?

アイツは動けないだろうし、万事休すだ。

 

それにしてもどうしてマミちゃんは俺に会いに来たんだ?

 

・・・ひょっとして怒ってるのだろうか?思い当たる節は沢山ある。

俺が魔法少女体験コースを断ったり、無断で学校休んだり、最低限の連絡しかしなかった事しな。

 

でもそれには理由がある。

 

だってマミちゃんがむっちゃ怖かったんだもん!

最後に会った時なんて泣き叫ばれたからな!

最後に連絡とった時なんて狂気に満ちたホラーなメールと留守電だったもの!

 

 

俺の新たなトラウマとして刻まれるのは当然じゃないか!

 

 

マミちゃんを目の前にしてトラウマ再発してる今の俺には彼女と一対一で会話するなんて無理!

誰か挟まないとまともに受け答え出来ない!でもシロべえは瀕死。

 

となると希望が残ってるのはほむらだ。

もうすぐここに着くとテレパシーがあったからすぐ来てくれるだろう。

元々『お友達大作戦』の一環で二人でマミちゃんの所に行くつもりだったから都合が良いかもれしない(ほむらは会うの反対だったけど)。

 

 

頼むほむら!早く来てくれ!

具体的に言うと一秒でも早く来てくれると嬉しいです!

じゃないと俺は恐怖で発狂しそうです!

 

 

 

 

「優依ちゃん会いたかったわ・・」

 

「わー・・たった数日会ってなかっただけなのに大袈裟だよマミちゃん」

 

 

ゆっくり近づいてくるマミちゃんがとっても怖いので後ろに後ずさる。触れられる距離まで近づかれたらOUTな気がするんですけど。

 

何でやっと再会出来た人みたいな嬉しさをかみ殺した声色してんだよ?怖いわ!

 

 

 

「大袈裟じゃないわ。優依ちゃんに会えない日が続いたでしょ?寂しくて寂しくておかしくなりそうだったのよ?」

 

「あれ?俺のいない間もまどかとさやか連れて魔法少女体験コースしてたんでしょ?だったら寂しくないじゃん」

 

「してないわ」

 

「え?」

 

 

耳を疑うもダメ押しのようにマミちゃんは首を横に振っている。

どうやらさっきのは俺の幻聴ではないらしい。

 

つまり・・?

 

 

「優依ちゃんから電話があった後、二人からも連絡があってしばらく参加は保留にして欲しいと言われたの。きっと貴女の事で何か思う所があったんでしょうね。私も負い目があったから了承したわ」

 

「・・・そうなんだ」

 

 

まどか、さやか成長したな。

これなら俺も危機に瀕した甲斐があるというものだ。

出来る事なら魔法少女体験コースに参加する前に成長して欲しかったけど。

 

と言う事は二人から相手にされなくなったマミちゃんは再びぼっちを拗らせていると?

 

 

うわあ・・そういう事か。

まどさやの魔法少女の問題が解決した途端、別の問題が発生してしまった!?

 

 

「・・でもね、その事は別に良いの」

 

「ん?」

 

 

急に暗いトーンで話すマミちゃんに違和感を覚える。

マジでどうしちゃったんだ?顔も陰がある表情してるしさ。

 

 

「魔法少女体験コースをしなくたって二人は仲良くしましょうって言ってくれたわ。実際、優依ちゃんがいなかった日は昼休みにお弁当を一緒に食べたり、電話したりしたもの」

 

「へ?楽しく過ごしたように聞こえるのに何で?」

 

 

そんな病んでるっぽい状態になってんですか?

 

 

さすがにそこまで言えなかったから心の中で聞いてみる。

答えてくれないだろうけど。

 

何故だ?君にとって最大の悩みであるぼっちは解放されたのに嬉しくなさそうに見えるぞ?

 

どうやらシロべえから聞いた以上にマミちゃんの様子がおかしいように見える。

例えるなら薬でもやってんのかと疑いたくなるくらい病んでそう。

・・病んでないよね?

 

 

「!」

 

 

さっきから後ろに後退してるとふいに背中に固いものが当たった。横目で見るとそれはフェンスだった。

 

まずい!もう本当に逃げ場がない!

 

 

「ふふふ、これでもう私から逃げられないわね」

 

「っ」

 

 

嬉しそうに笑っているマミちゃんが不気味に見えて仕方ない!

まだですかほむらさん!?何故か俺ピンチです!

味方であるはずのマミちゃんに襲われそうになってます!

 

縋るような目でマミちゃんの後ろにある校舎の出入り口を見るもほむらどころか誰も来ない。

 

 

「ねえ優依ちゃん」

 

「な、なに・・?」

 

 

名前を呼ばれたので恐る恐る出入り口から視線を外しマミちゃんを見る。

俺から一定の距離を保ってマミちゃんは立ち止まっていた。

それ以上は近づいてくるつもりはないのかそこから一歩も動く様子がない。

 

 

「私ね優依ちゃんの事・・大好き」

 

 

なぜにここでそんな事言う!?

やめて!そんなうっとりした表情で俺を見ないで!

告白みたいで恥ずかしいし何より怖いわ!

 

 

「優依ちゃんは私の事どう思ってる?好き?嫌い?」

 

 

不安そうに俺を見るがどう答えろと?

分からない。どう答えれば正解だ?

 

 

焦りながらも必死に頭をふる回転させる。

 

 

(嘘でも)嫌いだなんて言ったら間違いなく魔女化する!

逆に好きだなんて言ったら言ったで面倒そう・・。

 

だってあの豆腐メンタルな黄色だしな・・。

 

 

 

何だこのすごく難しい選択。究極の選択じゃん!

 

 

 

「・・・答えてくれないの?」

 

 

ああああああああああああああああ!!

まずい!本格的にマミちゃんが泣きだしそう!

つべこべ悩んでる場合じゃないぞ俺!

一刻も早く何か言わなきゃ魔女化待ったなし!!

 

 

ならばここは第三の選択肢だ!

 

 

 

「俺はマミちゃんの事(友達として)愛してる!」

 

 

 

ヤケクソになって屋上のど真ん中で愛を叫ぶ俺。

・・テンパってヤバい事叫んじゃったかもしれない。

 

 

「・・本当?」

 

「うん、本当だよ!」

 

 

少しの沈黙の後、マミちゃんは恐る恐る確かめるように聞いてくる。俺はそれに冷や汗をダラダラ流しながら首を縦に振る。

 

嘘は言ってない。友達としては大事に思ってるから。

 

 

 

「嬉しい!だって優依ちゃんが私のこと愛してるって言ってくれたんだもん!」

 

 

俺の言った事が本当だと分かったのかマミちゃんは両手をそろえて無邪気に喜んでいる。一先ず一難は去ったようだ。

 

 

「それって暁美さんや佐倉さんよりも私のことが大事って事だもの!」

 

「!」

 

 

マミちゃんの口から意外な人物の名が出てきて目を見開く。

気を抜いてたから心臓がそのまま口から出てきそうなくらい暴れている。

 

 

「何でそこに杏子が出てくるのかな・・?」

 

 

俺が杏子と知り合いって事知ってたのか?いつの間に?

じわりじわりと背中に汗が流れだす。

 

 

「・・優依ちゃんが学校を休んだ日にね風見野行きのバスに乗り込む貴女を見たって聞いたの。ひょっとして佐倉さんの事知ってるかもって思ってカマかけてみたけどその様子だと知り合いみたいね?」

 

「・・っ。誰がそんな事言ったの?」

 

「誰だっていいじゃない。ねえ、お見舞いに家に行ったら留守だったのも何度も連絡したのに返事がなかったのも全部佐倉さんに会ってたからなの?」

 

「そ、それは・・」

 

 

事実なんで思わず口ごもってしまう。

 

それにしてもまるで俺を責めてるみたいな棘のある言い方だ。

いや、実際俺の事責めてるのだろう。

俺を見るマミちゃんの目つきは厳しい。空気もピリピリしているし怒っているのは明白だ。

 

 

なんて答えればいいんだ?

 

 

「その髪飾り、まるで佐倉さんを思い出させるわね。彼女からもらったの?」

 

「!」

 

 

答えかねてる俺にマミちゃんは容赦してくれない。

鋭い視線が俺の頭に向けられたので無意識に手で遮る。

意外と使い勝手の良い杏子からもらった髪飾りは今日もしてて、何も考えてなかった。まさかマミちゃんに追及されるとは思わなかったわ。

 

 

「酷いわ・・。私も優依ちゃんに髪飾りをプレゼントしようと思ってたのに断ったじゃない。それなのに佐倉さんのは受け取ったの?」

 

「いや、その・・」

 

 

そういや前にそんな事あったな。

マミちゃんが俺にお揃いの髪飾りプレゼントしたいって。

はっきり言っていらなかったから断ったけど今更蒸し返されるとは。

女って執念深いっていうけどマジだわこれ。

 

 

「いつの間にか暁美さんとも仲良くなってるのね?魔法少女体験コースの後、彼女と会ってたんでしょ?暁美さんから聞いてるわ」

 

「ほむらと会ったの!?」

 

「”ほむら”?もう呼び捨てで呼び合う仲になってるなんて随分と仲が良いわね。彼女の家に泊まってるみたいだし、今日もそこから一緒に登校してたものね?」

 

「えっと・・」

 

 

俺が”ほむら”の名を口にした瞬間、マミちゃんの目が鋭くなった。

どうやら俺の知らない所でひと悶着あったらしい。

道理でほむらはマミちゃんに会うの反対するわけだ。

しかしどうして俺が泊ってる事から一緒に登校した事まで知ってるんだ?まさか見てたんじゃないよね?

 

 

 

「どうしてよ!?」

 

「!?」

 

 

マミちゃんの質問に何も答えないでいると突然大声で叫ばれて思わずビクッと身体を震わせてしまった。驚いてマミちゃんを見ると瞳に涙をいっぱい溜め込んでギッと俺を睨んでいる。

 

 

「私のこと愛してるって言うならどうしてあの二人と会ったの!?どうして私を放って仲良くするの!?」

 

「お、落ち着いて!」

 

 

冷静になるように声を張り上げて呼びかけてみるも今のマミちゃんに効果はなくそれどころかますますヒステリック気味になっていく。

 

 

「私を見て!ずっと傍にいて!他の娘たちと仲良くしないで!私だけを愛して!そうじゃないとおかしくなりそうよ・・」

 

「何言ってんの・・?」

 

 

何だろう?こんな緊迫した雰囲気なのに、俺の頭の中では彼女に浮気を言及されてる彼氏みたいな構図しか思いつかないんだけど?やばいな俺。

 

 

「優依ちゃんさえいれば他に何もいらないわ!貴方さえいれば私は幸せなの!そのためならどんな敵からも貴女を守ってみせる!一生大事にお世話してあげる!」

 

 

狂ったようにひたすら喋りまくって止まらない。

 

 

 

ほむらああああああああああああああああああああああ!!

マジで早く来て!

俺じゃマミちゃんを抑えられそうにないよ!

 

すっごい情緒不安定だもの!

さっきまで喜んでたのに今は涙を流しながら叫んでる!

 

とてもじゃないが一般人の俺が対処できるものじゃない!

マミちゃんよ!おかしくなりそうじゃなくて既におかしくなってるように見えるぞ!?

 

 

 

 

「・・・だから」

 

 

「?」

 

 

必死に目を瞑って心の中でほむらに助ける俺のすぐ近くでマミちゃんの声がする。

震えながら目を開けると至近距離にマミちゃんの顔が見えた。優し気な印象だったその瞳は暗く濁っていてとても同一人物とは思えない。

 

その目を見て今すぐ逃げなきゃと本能が囁いてるが足が震えて動かない。

 

 

 

 

 

 

ほむら様助けてえええええええええええええええええ!!

マミちゃんが怖いよおおおおおおおおおおおおおおお!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これからはずっと一緒よ優依ちゃん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「!?」

 

 

 

 

 

 

 

マミちゃんが見惚れるほど綺麗に笑った後、俺の視界は黄色一色に覆われて何も見えなくなった。




優依ちゃんピーンチ!!
このままマミさんに捕まってしまうのか!?

どうなったかは次回をお楽しみに!

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