魔法少女オレガ☆ヤンノ!?   作:かずwax

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60話 魔法少女たちの会合

「なぎさは激おこなのです!」

 

「え?」

 

 

俺の目の前にウェーブがかかった白い髪の女の子が頬を膨らませて俺を睨んでいる。

プンプンという形容詞がつきそうな雰囲気で怒っているのは明らかだがいかんせん見た目のせいで全く怖くない。むしろ可愛いくらいだ。

 

 

「誰?」

 

 

知っているような気がするがどうしても思い出せないので怒っている所、失礼だが名前を尋ねてみる。

 

 

「お詫びに毎日なぎさにチーズを献上するのです!」

 

 

俺の質問は無視され、まさかの慰謝料要求された。何故にチーズ?

てか、俺この娘になんかしたっけ?全く身に覚えがないんだけど。

 

 

「もし、チーズをくれないなら・・」

 

「え?どうしたの?」

 

 

一旦言葉を切って女の子は両手で顔を隠している。

ひょっとして泣いてるのかもしれない。

 

 

「えっと・・大丈夫?」

 

 

心配になったので女の子にそっと近づいて肩に手を置き慰める。

 

 

「頭を丸かじりなのです!」

 

「!」

 

 

両手をどけた女の子の顔が変化している。

真っ白な顔に何処かおどけた目がコロコロと動いておりギザギザになった口が俺飛び掛かって・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぎゃあああああああああああああああああ!!・・・あれ?」

 

 

 

 

 

 

勢いのまま身体を起こし、荒い呼吸を繰り返しながら周囲を見ると見慣れた部屋。

相変わらず生活感のない素敵インテリアだ。

 

 

「ここマミちゃんの部屋・・?」

 

「あら、ようやく起きたのね」

 

「え・・?ほむら・・?」

 

 

俺のすぐ傍でほむらが優雅に紅茶を飲んでいる。

どうやら俺はソファで寝ていたらしい。

 

それにしてもここはどう見てもマミちゃんの部屋なのにどうしてほむらがいるのだろう?

てか、マミる回避した後どうなった?どういう状況これ?

 

説明を求めてじっとほむらを見るもさっきのセリフ以外口を開かず目を閉じてひたすら紅茶を飲んでいる。

 

 

「優依、怪我はないかい?」

 

「シロべえ・・」

 

 

下から声がしたので目線を下げるとシロべえが俺のすぐ傍で尻尾を振って座っている。

俺はその様子にふっと笑って奴の頭を撫でる。

 

 

「見たところ大丈夫そうだね。良かっ、きゅぷうううううううう!」

 

 

そしてそのまま思いっきり奴の頭を鷲掴みにして床にめり込ませる。

 

 

「てめえよくも欠陥品持たせてくれたな!?あとちょっとで死ぬとこだったんだぞ!今度という今度は許さねえからな!!」

 

≪整備不良が出てしまったんだね!それは謝るよ!僕も結界の中で優依の事を心配していたんだ!≫

 

「結界が消えた後、口回りがクリームでべっとりしていたけどね」

 

≪ほむら!それは内緒だって、きゅぴい!≫

 

「人がピンチの時になにスイーツ満喫してんだ!俺だって満喫したかったわ!」

 

 

両手を使ってグッとシロべえの頭を押さえる。

床と一体化させるまでやめない!今日こそは絶対に許さん!

 

 

俺がそんな事してる間に遠くからドタドタと何かが走ってくる音が段々近づいてきていた。

 

 

「優依ちゃん身体は大丈夫!?悲鳴が聞こえてきたけど・・?」

 

「マミちゃん!うお!?」

 

 

やって来たのはこの部屋の主のマミちゃん。

泣きそうな表情で俺に抱き着いてくる。

 

 

「目が覚めて良かった!暁美さんとキュゥべえから聞いたわ!貴女が私を助けてくれたんですってね?本当にありがとう!それなのに私は貴女に酷い事を・・。ごめんなさい!」

 

「うん!別に構わないけど全然学習してないね!また気を失いそうなくらい苦しいんですけど!何でもいいから離れて!」

 

 

さっきよりもミシミシと俺を締め付けてくる。

おかしい!美少女に横から抱き着かれて最高なはずなのに生命の危機しか感じないぞ!?

あと誤解があるみたいだけど実質君を助けたの杏子(?)さんで俺は特に何もやってないから!

 

 

「! ごめんなさい!また私ったら!これで苦しくない?」

 

「うん、大丈夫。苦しくないけど贅沢言うなら離れてほしい」

 

 

前回と違って少しは冷静だったのが幸いしてすぐに力を緩めてくれたけど離れる素振りが全くない。それどころか膝に俺の頭をのせて膝枕に移行している!?

 

 

「ごめんなさい。優依ちゃんに触れていたいから今はこうさせてちょうだい」

 

「えっと・・」

 

 

うるうると涙目で見てくるマミちゃんに速攻でYESと言いそうになるもグッと堪える。

 

何故なら

 

 

「・・・・・・・・・・・」

 

 

マミちゃんに抱き着かれた辺りからほむらが尋常じゃない殺気を隠す気ゼロで醸し出しこっちを睨んでいるからだ!

おっかねえ!

今にでも銃を取り出してきそうな雰囲気だ!俺の考え過ぎだと信じたい!

 

 

「そ、それより、ほむらがここにいるって事はマミちゃんが招き入れたって事だよね!?」

 

 

この危険な空気から逃れるため咄嗟に思いついた事を振ってみる。

上手くいったのかマミちゃんが肯定のために首を縦に振った。

 

 

「えぇ、彼女が魔女を倒して鹿目さんと美樹さんを助けてくれたみたいだから」

 

「良かった。ここに連れてきたって事は話し合いしてくれるの?」

 

「そのつもりよ。鹿目さんともそう約束してるの。暁美さんと話し合ってみるって」

 

「まどかが!?」

 

 

驚きを隠さず表情に出た。

ほむらの方も意外な人物の名に目を見開いてマミちゃんを見ている。

 

まさかのまどかの暗躍!?マジで!?

暴走特急になりつつあったマミちゃんをどうやって説得したんだ!?

流石主人公だ!どうやったか参考がてらに聞いてみよう!

俺の中のまどかの好感度がウナギ昇り!

 

 

キョロキョロと周りを見渡す。

しかしいるのは黄色のひっつき虫と無愛想な紫。ついでにお菓子つまみ食いしてる白いのしかいない。

ピンクのツインテールどころか青色のショートヘアーもいないぞ?

 

 

「鹿目さんと美樹さんなら今日は帰ったわ。暁美さんが魔法少女同士で話したいっていうから」

 

 

俺の疑問に答えてくれたのはマミちゃん。

苦笑い気味で答えているから大方ほむらが無理やり帰らせたんだろうなぁ。

絶対さやかあたりが反発して結局まどかに連れられて帰る姿が目に浮かぶ。

 

 

「・・さて、役者も揃った事だし、そろそろ話し合いでも始めましょう」

 

 

ティーカップを置く時のカチャリという音を合図に全員がほむらの方に注目する。

 

 

「巴さん、まず貴女に話しておきたい事があるの」

 

「・・・何かしら?」

 

 

ほむらの視線を受けたマミちゃんは少し身構えていて警戒の色が強いのが抱きしめられてる俺には分かる。流石に最近まで殺し合いしてた者同士だから警戒するのは当然かもしれない。

むしろ話し合いの席に着く自体かなりの進歩だ。

 

この際、ピリピリした空気は甘んじて受けるしかなさそうだ。

 

それにしてもほむらは一体何を話すつもりなんだろう?

 

 

緊張の面持ちでじっとほむらを見つめる。

 

 

「話をする前にまず優依を離しなさい。目障りよ」

 

 

・・・・は?

 

 

第一声がまさかのことで目が点になる。

重々しい空気で何言ってんだこいつ!?

 

 

「嫌よ。暁美さんが邪魔をするからしばらく優依ちゃんに触れられなかったのよ。少しくらい良いじゃない」

 

 

それに対して何故かマミちゃんは反発してギュッと俺をほむらから隠すように身体をずらして更にキツく抱きしめてくる。

それを見てほむらの冷たい目はますます氷を纏ったように冷えていき俺を震えさせるには十分だった。

 

 

「だめよ。優依が嫌がってるわ。こんなに震えてるじゃない。可哀想にこんなに震えて・・。よっぽどさっき貴女に窒息させれそうになった記憶が怖いのね。そうでしょう優依?」

 

「それは違うわ。暁美さんがそんなに睨むから優依ちゃんが怖がってるだけよ。ね?優依ちゃん」

 

 

すみません。こっち向かないで下さい。俺に振らないで下さい。

正直どうでもいいし関わりたくない。どっちを選んでも地獄を見そうだ。

 

よし!目を閉じて寝たふりしよう!

 

 

「あ、優依ちゃん・・」

 

 

ギュッと目を瞑って視界を完全にシャットダウン。

演技じゃなくてマジで疲れてるからあながち嘘じゃない。

ここ最近は激動だったしさ。

 

 

≪逃げたね優依≫

 

 

傍観に徹してる白い奴がからかい気味でうっとうしいがそれさえも無視しよう。

 

 

 

「・・まあいいわ。話を戻しましょう」

 

 

ここ数日間ですっかり俺の扱いになれたほむらが諦めたのか仕切り直している。

それはいいけど≪後で覚えておきなさい≫とわざわざテレパシーで伝えないで欲しいんです。

 

 

「もうすぐ見滝原に『ワルプルギスの夜』がやって来る」

 

「それは本当なの!?」

 

 

疲れからかもしくは最初の懸念(マミる)が過ぎ去って安心したのか本格的に眠くなってきた。

二人の声が遠くでこだましているようだ・・・。

 

 

「ええ、本当よ。私一人じゃ勝てないから巴さんにも協力して欲しい」

 

「・・・嘘じゃないのね?それを示す根拠があるの?」

 

「私は未来・・正確には別の平行世界から来たの。まどかを救うために」

 

「鹿目さん?」

 

 

二人が何か話してる声をBGMに俺はまどろみつつ今後のことをぼんやりと考えていた。

 

マミるは終わった。次はさやかの契約を阻止することが目的だ。

正直助ければ何とかなるマミちゃんと違ってあの青猪は勝手に自滅していくからなー。

性格は思い込み激しいし、どこか潔癖症な面があるし。精神的に脆い所がある。

 

さやか超厄介過ぎる。

 

 

「そこで魔法少女の秘密を知った。ソウルジェムが私達の魂そのものだという事もその時知ったの」

 

「!? ただでさえ別の世界から来たという話だけでも信じられないのにソウルジェムが魔法少女の魂そのもですって!?デタラメ言わないで!」

 

「嘘じゃないわ。現にソウルジェムが砕けてしまえば私たちは死ぬ。そして肉体から100m離れると魂とのリンクが切れて肉体が活動しなくなってしまうの」

 

「そんな事信じるわけないでしょう!!」

 

 

なんか盛り上がってんなー・・。

マミちゃん死にそうになってたけど元気そうでなによりだ。

 

ホントさやかどうすっかなー?色々タイミングも悪いしさ。

 

まさかの三角関係だし、爆発してしまえ上条。

いっその事、上条に恥かかせて社会的に抹殺してしまえば全部解決じゃね?

 

 

 

 

 

「・・なら証明するまでよ。優依、起きなさい!」

 

 

 

「え!? はい!」

 

 

 

 

鋭い声に思わず飛び起きた。

ほむらが真剣な表情で俺を見て、いや睨んでいて怖い!

眠気なんて一瞬で吹き飛ぶくらいには目力がある。

 

 

俺なんかしましたっけ・・・?

 

 

「これを持って外に出なさい。合図するまでここから離れるのよ」

 

 

「え?え?」

 

 

訳が分からず何か小さいものを握らされ無理やり立たされる。

ちょっと背中押さないで。こけちゃうから。

 

 

「それは大事に持ちなさい。ほら、早く行って」

 

「あの、どういう事?」

 

「早く行きなさい!」

 

「はい!行ってきます!!」

 

 

有無を言わさない命令に大慌てで扉を開けて外に出る。

 

ヤクザほむらに逆らって何一つ良い事はないので言われた通りにしておこう。

大事に持てというので手の中にある物は両手を重ねて丁重に包むように持ちそのままマミちゃんの部屋から遠ざかっていく。

 

 

 

 

 

 

部屋から出て少し経つも一向に合図がない。

 

 

 

 

 

結構距離が離れたがいつまで歩けばいいのだろうか?

もうすぐマンションから出そうなんだけど。

てか、合図するって言ってたけど何の合図か聞いてないよ?戻っていいかな?

 

 

 

 

≪優依、その辺で大丈夫だから戻ってきて≫

 

 

≪シロべえ?≫

 

 

戻ろうとした矢先に何故かほむらじゃなくシロべえからテレパシーが送られてきた。

 

 

≪優依ちゃん!≫

 

≪あ、マミちゃんどうしたの?≫

 

 

そしてマミちゃんまで俺にテレパシーをしてくる始末。ほむらからの連絡はなし。

マジ何やってんだあいつ?人をこき使っておいて。

 

 

≪大変なの!暁美さんが急に倒れて息をしてない!≫

 

 

え・・・?どういう事?

 

 

≪優依ちゃんが外に出てから少し経った後、暁美さんが突然倒れたの!キュゥべえは大丈夫だって言ってるけど、とてもそうは見えないの!どうなってるの!?≫

 

 

焦ったようなマミちゃんの声はとても嘘をついてるように見えない。

 

すぐに戻ると告げて慌ててマミちゃんの部屋を目指す。

走りながらさっきのテレパシーの内容を整理する。

 

魔法少女はよっぽどの事がない限り死なない。

魔法少女が死ぬ時は何らかの要因でソウルジェムが砕けるか絶望して魔女化してしまうかだが、どのみちソウルジェムが関与してる。それは当然か。だって魔法少女の魂そのものだし。

 

 

それにしてもさっき聞いたほむらの症状、いつかの原作のさやかを思い出すな。

ソウルジェムが肉体から離された時は糸が切れたみたいに生命活動停止しちゃうもんねー。ホントそっくりだ!

 

 

 

・・・・・・・・・・。

 

マジでそっくりなんですけど?

 

 

まさか・・ほむらが俺に渡したものって・・・。

 

 

じっと両手で包んでいるものに視線が向ける。

 

ほむらから手渡されたものを確認するため震える手を恐る恐るゆっくりとどけていく。

 

 

 

「・・・!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺の掌には紫に輝く宝石が置かれている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あひゃああああああああああああああああああ!?

 

これほむらのソウルジェムじゃねえかああああああああああああああ!!

 

俺、今文字通りほむらの命握ってるようなもんじゃねえかああああああああああああ!!

 

 

 

 

そこからは無だった。

 

さっとほむらのソウルジェムを掌で包みひたすらマミちゃんの部屋まで駆ける。

体力はないはずなのに不思議と息が切れずただ一目散に走る。

 

 

 

 

どうにか無事に部屋に戻ると力なく倒れているほむらとその傍でオロオロしているマミちゃん。

そして、起こった出来事に興味を示さずお菓子をムシャムシャ食べている白い生命体が一匹。

 

カオス過ぎる光景がそこにはあった。

 

 

「あ、お帰り。思ったより早く帰ってきたね。顔が無表情になってるけど大丈夫かい?」

 

「早くこれをほむらに!」

 

 

お菓子泥棒は無視し、急いでほむらに駆け寄ってソウルジェムを近づけた。

 

 

「ん・・」

 

 

ソウルジャムをほむらの掌に乗せてから少し経つと意識を取り戻しゆっくりと上体を起こすのを見てようやく安堵の息が出た。このまま意識戻らないとかならなくてよかった。

 

 

「良かった!意識が戻った!」

 

 

「えぇ、無事に帰ってきてくれて良かったわ」

 

 

ほむらが嬉しそうに半泣きの俺を見つめているが正直俺は笑えない。

安心と同時に怒りが沸々で湧いてくる。

 

 

「ていうか何お小遣い渡す軽さで命そのもののソウルジェム渡してんの!?俺がうっかり手をすべらせて割っちゃったらお前死んでたんだぞ!?」

 

「説明だけじゃ納得してくれないなら実際に証明するしかないでしょう?」

 

「そうなんだけど!」

 

 

しれっと言っているが実際やってる事は他人に自分の命を預けるという事だ。

理屈は分かるが何も知らされず命を預けられた方はたまったもんじゃない。

 

 

「それに優依に殺されるなら構わないわ。一生私の事忘れられないでしょうから」

 

「死ぬ間際まで忘れられねえよ!毎日夢で魘されるわ!思い詰めて自殺しそうだよ!」

 

「その時は迎えに行くわ。一緒に地獄に堕ちましょう」

 

「堕ちるか!堕ちるなら一人で勝手に堕ちろ!」

 

 

何気に恐ろしい事を言ってくるほむらに突っ込みを入れるも俺の悪態など華麗にスルーされ戸惑い気味に俺たちを眺めていたマミちゃんに向き直る。

 

 

「これで証明出来たかしら?」

 

 

無表情なのにドヤ顔に見えるほむらはそう告げる。

 

説明ってソウルジェムの説明してたの!?

嘘だろ!?俺はてっきり「ワルプルギスの夜」が来るから共闘の話かと思ってたのに!

 

何で伏せた方が良いはずの残酷な事実突きつけてんの!?

フォロー出来んのこれ!?

 

 

こいつに任せてたらヤバそうだ!

ちゃんと起きて話聞いた方がいいかもしれない!

 

 

「・・どうしてキュゥべえはこんな大事な事を黙ってたの・・?」

 

 

ほむらの質問に答える代わりに泣きそうな表情でマミちゃんはポツリと呟く。

目には既に涙が溜まっていてすぐにでも流れてしまいそうだ。

 

 

「聞かれなくても別に不都合じゃないからね。どうして人間は魂の在り処なんて理解出来ないのにそんな事に拘るんだい?昔の僕も含めてあいつ等はそう答えるよ。今の僕なら理解出来るけど人間の価値観は合理性重視のインキュベーターには理解出来ないんだ」

 

 

まさかのシロべえが答えた。

マミちゃんのフォローする気全くないらしいが元インキュベーターだけあって説得力は絶大だ。

 

 

「それともう一つ。魔法少女の最後の秘密がある」

 

「!」

 

 

ここまでくれば流石の俺でもほむらが言いたいのか分かる。

 

こいつ!魔女化の事言うつもりだ!

さすがにそれは阻止しないと!

 

 

≪ほむら!それは流石にまずいって!!それ知ったらマミちゃん自殺するか魔女になっちゃうって!!≫

 

 

マミちゃんに気付かれないようにそっとテレパシーで伝えるも、ほむらがこっちを向いて頷いている。

≪大丈夫。分かっているわ≫と返ってきたのでそれを信じて押し黙る。

 

ほむらは何をするつもりだ?

 

 

「このソウルジェムが黒く濁りきった時、私達は魔女になる」

 

 

いや、全然分かってねえわこいつ!俺の忠告速攻で忘れやがった!!

 

ギッと睨むも澄まし顔で顔を背けられた。確信犯か!

 

 

 

 

「・・・え?」

 

 

 

何を言ってるのか理解出来なかったのかマミちゃんはポカンとした表情を浮かべている。

これはチャンス!今ならなかったことに出来る!ほむらの口さえ塞げば!

 

グッと身体を傾けてほむらに近づくためそっと移動を開始する。

 

 

「ほむっ!?」

 

「今まで魔女の存在は疑問に思わなかったのかいマミ?」

 

 

ほむらの口を塞ぐ前にシロべえが俺の口を塞いで何も言えない。

しかも何か罠を張っているのか身体が思うように動いてくれないし最悪だ!

野郎、器用に俺の肩に飛び乗って尻尾を覆うんじゃない!地面に叩きつけるぞ!

 

 

「それもそうか。普通は殺す相手の事なんて考えないもんね。希望の魔法少女である君たちがやがて絶望して魔女になる。これほどふさわしい名前はないよ」

 

 

まるでマミちゃんを絶望させるために敢えて悪意のある言い方をしてるみたいだ。

いつぞやのほむらを絶望させた時と雰囲気がそっくりに思える。

 

俺が動けないのを良い事に好きにしやがって!

 

 

「希望が絶望に変わるその瞬間、ソウルジェムはグリーフシードとなり、その際、発生する感情エネルギーを回収するのがインキュベーターの目的よ」

 

 

シロべえの補足のつもりなのか余計な情報をほむらが説明している。

打合せでもやったみたいに息ピッタリだ。

 

 

マミちゃんがみるみる内に顔が青ざめていき可哀そうになってくるぐらい震えている。

このままじゃまずい!冗談抜きでここで魔女化してしまいそうだ!

 

この外道共は一体何やってるんだ!?

 

 

 

 

「・・つまり魔女は・・私が今まで殺してきたのは・・」

 

 

 

マミちゃん聞いちゃだめだって!

 

 

 

 

「魔法少女たちの成れの果てよ」

 

 

 

 

 

無慈悲にもほむらの口から残酷な真実が告げられる。

 

 

「・・・・・・・」

 

 

 

マミちゃんは何も言わなかった。部屋に重たい沈黙が流れる。

俺の拘束はいつの間にか解けており急いでマミちゃんの傍に行った。

 

 

「マミちゃん!」

 

「・・・・・・」

 

 

 

マミちゃんは何も答えない。

むごんのままぶるぶると震える手で自身のソウルジェムを机に置いている。

 

 

「マミちゃん・・?」

 

 

 

 

そしてお馴染みの銃を取り出し

 

 

 

 

それをソウルジェムに向けた。

 

 

 

ガキィン!

 

 

「マミちゃん!?」

 

 

放たれた弾はマミちゃんのソウルジェムをまっすぐ狙うも当たる直前で弾き返された。

 

 

「? あ!マミちゃん!残酷だけど今は取りあえず落ち着いて!」

 

 

どうして弾かれたのか分からない。だけどこれはラッキーだ!

 

慌てて俺はマミちゃんを羽交い絞めにして自殺阻止を試みる。

 

 

「離して!離してよ!!」

 

 

 

ズガァン! ガキィン!

ズガァン! ガキィン!

 

 

 

正直非力な一般人の俺がベテラン魔法少女であるマミちゃんを力づくで抑えるのは不可能な話で必死に押さえつけてるけど泣きながら余裕で発砲し、その度にソウルジェムは球を弾き返している。

どうしてはじき返されているのか分からないがいつまでももたないかもしれない。

 

止めるのは俺一人じゃだめだ!

ここはほむらとシロべえにも協力してもらおう!三人ならマミちゃんを止められるはず!

 

俺はマミちゃんを押さえつつ協力要請のために二人がいる方向に顔を上げた。

 

 

 

「二人とも!マミちゃんを押さえるの手伝っ・・?」

 

 

 

 

 

 

 

「凄いだろう?僕が作った遮断装置は!これにソウルジェムを包めばあらゆる攻撃を弾き返す!これなら不意打ちの攻撃でソウルジェムが砕けることはないよ!」

 

「ええ、凄いわね。試作段階でこれなら今後は更に期待出来るわ」

 

「ただこれは少し欠点があってね。簡単な魔法は使用出来るんだけど肝心の変身が出来なくなってしまうのがデメリットなんだ」

 

「今回はそれが良い方に作用してるんだから構わないわ。これなら巴マミが血迷って死ぬ事もないでしょう」

 

 

 

 

 

「何やってんだてめえらああああああああああああ!目の前で自殺しようとしてる人がいるのに呑気に駄弁りながらティータイム洒落こんでんのおおおおおおおおおお!?」

 

 

 

 

俺が必死にマミちゃんを取りさえようと努めているのにコイツら紅茶とお菓子を嗜みながら楽しそうに話しこんでやがる!

ヤバい!すっごく殴りたい!

 

 

「おいほむら!いつまでも紅茶飲んでないで手伝ってよ!」

 

「その遮断装置がある限り巴マミは死ぬ事はないわ。気が済むまで勝手にやらせておけばいいのよ」

 

「鬼かお前は!?気が済む前に絶望して魔女化する可能性大なんですけど!?いいから止めてよ!」

 

「・・・・・・・・・」

 

「止めてくれないとほむらの事嫌いになりそうなんだけど!」

 

「! ・・・仕方ないわね」

 

 

半ばやけくそで叫んでいるとようやく止めてくれる気になったのか立ち上がろうとしている。

 

怠そうに身体を動かすほむらにイラッと来たが今はコイツしか頼れる人はいない。

シロべえなんて動く気がないのか寝転んで目を閉じてやがるから論外だし。

 

ほむらは変身し盾に手を突っ込んでいる。

 

そして出てきた黒光りの物を天井に掲げ、

 

 

――ドォン――

 

 

「!?」

 

「動かないで巴マミ。貴女は今、私達の話を聞く事以外許されていないわ」

 

 

取り出した銃を天井に向けて一発発砲。そしてマミちゃんの脳天に突き付けている。

完全なヤクザのやり方に俺もマミちゃんも閉口するしかない。

 

 

「あの・・近所迷惑です・・」

 

「それは大丈夫!僕がしっかり防音対策をしているからね!どんな音も閉じ込めてしまうよ!」

 

 

せめてもの抵抗で言った抗議がいつの間にか近くにいたシロべえによって完封されてしまう。

 

 

「そういう事。どうせ壊す事も不可能だし貴女の気が済むまで撃ち続けてくれて構わないわ。ただし弾かれた弾が間違って優依に当ててしまってもいいのならね。その時は許さないけど」

 

「・・・!」

 

 

今度は俺を人質にしている。

完全にヤクザですねありがとうございます。

 

マミちゃんは悔しそうに顔を歪めたがゆっくりと銃を降ろして静かに泣き出した。

 

 

えげつねええええええええええええええ!

 

こいつらタッグ組んだら大規模な犯罪なんて軽くやってのけそうだ。

どう見ても悪役にしか見えない!

 

なんかマミちゃんがとっても可哀想になってきた!

外道ばっかりのこの空間で今の俺の心の拠り所なのに!

 

てか、この後はどうすんだよ!

これよっぽど上手くフォローしないと速攻で魔女化だぞ!

 

 

 

≪優依、あとは頼むわ≫

 

≪え?何を?≫

 

 

内心オロオロ中の俺にほむらがテレパシーで話かけてくる。

 

 

≪巴マミを説得して自殺を思い留めるように仕向けてちょうだい≫

 

 

冷静な様子でトチ狂った事をほざいてきた。

 

こいつ・・・!

後は全部俺に丸投げするつもりだ!

ふざけんな!お前がやった事だろうが!!

 

 

≪無茶言うな!なんだその無理難題!≫

 

≪巴マミを説得するのは貴女にしか出来ない。・・今日だけは見逃してあげるから思いっきり口説くのよ。そうすれば全て上手くいくはず≫

 

≪そうだよ優依!君なら出来る!弱った女の子を慰めるのは君の十八番じゃないか!≫

 

≪えぇ、期待しているわ≫

 

≪張り倒すぞお前ら!おい聞けよ!無視すんな!!≫

 

 

自分の役割は終わったとばかりにくつろぎ始めた外道共に殺意を覚えるも今は最優先しなきゃいけない事がある。

 

 

 

「うぅ・・ひっぐ・・ぐすん」

 

 

ほむらの時みたいに発狂はしておらずただ静かに泣いているが油断出来ない。

 

だって机に置かれたソウルジェムが既に真っ黒に濁っているのだ。

 

魔女化まで時間はもうない!

 

 

焦りながらもどうするか必死に考える。

 

ただ慰めるだけじゃだめだ!

何か心の支えになるものがないと・・。

 

 

・・・仕方ないか。

 

 

こうなったらもう奥の手を使うしかない!




優依ちゃんの奥の手とは一体?
もうすぐマミさん編も終わりに近づいています!

さやかちゃん編に入る前に番外編出来るかな・・?

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