魔法少女オレガ☆ヤンノ!?   作:かずwax

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マミさんのお話はこれで最後になります!


62話 一途と狂気は紙一重

「ケーキの味はどうかしら?少し優依ちゃんの好みにアレンジしてみたんだけど」

 

「うん。美味しいよ・・」

 

 

午後の一幕、というかもうすぐ夕方。

 

 

俺はマミちゃんと二人彼女の部屋でティータイムと洒落込んでいる。

ケーキの味は俺好みにしてくれているらしく本当に美味しい。

 

美味しいんだけど・・。

 

 

「ほむらたち、まだかな・・?」

 

「あ、また暁美さんの名前出したわね?だめよ?私と二人の時はほかの人の名前を出さないでって言ったのに」

 

「・・ごめんなさい」

 

「もう、今回は無意識みたいだし仕方ないけど次は許さないわよ?」

 

「・・・はあ」

 

 

昨日からずっとマミちゃんはこんな調子で正直疲れる。

 

 

少しでも他の人の名前を出そうものならすぐに不機嫌になってしまい機嫌を直すのに時間がかかる。

 

 

 

どうしてこうなったんだ?

 

 

 

昨日は最初の懸念だった「マミる」日。

 

 

俺たちの頑張り一割、思わぬ助け九割で見事「マミる」回避に成功した。

 

 

 

まさに歴史的偉業ともいえるだろう!

希望はあると思えたほどだ!

 

俺の未来は明るいぜ!

 

 

 

・・まあ、俺の個人的な感想はともかくマミる回避で済めば良かったんだけどほむら&シロべえの外道コンビが魔法少女の真相をマミちゃんにバラしやがった。

そのせいでマミちゃん精神が不安定になってしまい一歩間違えてたら魔女化&自殺コンボが発動と紙一重の所まで追い詰められた。

 

俺の咄嗟の機転で「Ribbon」を愛する同士たちの熱すぎる激励メッセージがマミちゃんに届き、何とか彼女を立ち直らせて最悪の結末を食い止める事に成功。

チームプレーとはまさにこの事。

おかげでマミちゃんは生きる希望を見い出してくれた。

 

 

 

更になんとほむらと一緒に「ワルプルギスの夜」と戦うとまで約束してくれたのだ!

そのため今後はほむらとともに魔女退治をするそうだ!

 

まさに奇跡の共同戦線!

 

 

全てが上手くいっている!俺にしては珍しい!

 

 

・・しかし順調だったのはそこまで。

 

 

色々話していると気づけば夜になり無事円満に終わった。

様子を見るにマミちゃんの精神の容体も落ち着いていたので今日は家に帰れると意気揚々と部屋を出ようとしたが、

 

 

「寂しいから今日は一緒に寝て!」

 

 

とマミちゃんが俺の腰に抱き着いてきて動けない。

 

 

それを目撃したほむらがブチ切れ銃を突き付けてきたのであわや速攻で協力関係が破綻しそうになる大惨事。

一時は二人とも魔法少女に変身して再び殺し合いに発展までしそうになって俺涙目。

 

 

このままではまずいと危険を承知で二人の間に入ってどうにか落ち着かせる事に成功したがあの時は本気で死を覚悟したものだ。

(ちなみにこの時シロべえは別の部屋に避難してやがったので後で殴っておいた)

 

 

殺し合いはどうにか収まるも涙目で泊まって欲しいと何度も懇願するマミちゃんにさすがに困り果てたが真相を知ったばかりで放置するのはまずいと判断。

 

 

泣く泣く俺のお泊りが決定した。

 

 

諦めの心境で俺がマミちゃんの所に泊まると宣言したらマミちゃんはパァと顔を輝かせ、ほむらは般若顔でマジ怖かった。

しかも何故かほむらまでここに泊まると言い張ってマミちゃんに追い出されそうになるも無理やり居座り深夜、二人に挟まれ間近に聞こえるネチネチした口論をBGMに夢現状態だったのが遠い昔のようだ。

 

 

 

 

 

・・・俺はいつになったら自分のベッドで寝れるんだろう?

 

 

これが昨日の話。

 

 

 

 

続いて今日の話をするとマミちゃんは昨日のことで心身ともに疲労してるので学校を休んでる。

ここ最近休みがちだった気がするけど彼女は三年生だ。

受験は大丈夫なのかな?

 

 

ちなみに俺も今日学校を休んでる。

 

 

本当は俺もほむらとともに学校へ行くつもりだったのだが、今朝出かける直前に「行かないで」とマミちゃんに背中にしがみつかれました。

 

ほむらはキレていたけど「一緒にいてちょうだい」とマミちゃんに泣かれてしまい渋々折れた俺です。

 

 

あの時のほむらの表情が忘れられない・・!

 

 

一人学校へ向かうため扉を開けた時に振り返り朝の見送りをする俺に「すぐ帰ってくるわ」と能面のような表情で一言告げて出て行った。

あの表情は夢に出てきそうだ。それも悪夢の方な気がする。

 

 

ほむらが帰ってくるのは怖いが今は出来るだけ早く帰ってきて欲しい。

 

 

だって今のマミちゃんと二人きりなのは結構キツイから!

 

 

邪魔者(ほむら)がいなくなったからかマミちゃんはどこから取り出してきた可愛らしい服で俺を着せ替え人形にして遊んだり、ぬいぐるみを愛でるように俺をギュッと抱きしめて全然離してくれなかったり、俺をリボンでぐるぐる巻きの緊縛プレイもどきとやりたい放題。

 

 

断りたかったがマミちゃんは絶賛傷心中。

強く断って下手に刺激してはいけない。魔女化の可能性大だから。

 

 

限度を越さない程度に好きにさせてやるしかどうしようもなさそうだ。

何より俺で遊んでる時、マミちゃんの顔は最高に幸せそうで何も言えない。

 

今だってマミちゃんに着てほしいと言われた服を着てるし。

 

 

 

「優依ちゃんおかわりは?」

 

「いや、大丈夫・・」

 

 

今は俺の好きなチョコレートケーキを食べられるのが救いだ。

この甘さが荒んだ俺の心を癒してくれる。

食べさせられることに目を瞑れば癒しの時間だ。

 

 

やっぱり「あーん」はきついよ・・。

 

 

自力でご飯を食べる事も服を着替える事も許されず、俺の身の回り全てはマミちゃんが世話している。

どんなプレイだこれ?もはや一種の介護状態に近いかもしれない。

 

 

マミちゃんの過剰な世話焼きは俺にとって心身共に来る拷問のような時間だ。

 

救いを求めるように俺はSOSメールを作り順次送信している。

 

こうしてまだ正気でいられるのはこれをしているおかげだ。

SOSメールが今の俺の心の安定を保っていると言っても過言ではない!

 

 

ちなみにさっき送ったのがこれ。

 

 

『至急救助求む!

巴マミさんが現在進行形で精神をマミらせていて大変危険な状態!

最優先で巴マミさんの元へ来られたし!』

 

 

これをほむら、まどか、さやかに送った。

 

ちなみにさやかには通算数十通の送信に及び、もはや迷惑メールと化している。

だってそうでもしなきゃアイツ上条の所に行っちゃいそうなんだもん。

 

ほむらの話によれば今日あたりに契約する可能性大だって言うし。ほぼ上条のせいで。

原作でも確かマミちゃんがマミった後の次の日あたりに契約していた気がする。

 

そうなったら魔女化一択の未来しか見えない!

 

今回みんなにマミちゃんの家に集まってもらおうと連絡したのは、さやかの契約を阻止する事とほむらを交えてちゃんと話し合おうという趣旨で放課後ここに来てもらる予定だ。

 

 

話す内容はズバリ「魔法少女の真実」!

 

 

これさえ話せばいくらあの猪でも契約なんて考えないだろう!

 

最初は信じてもらえないかもしれないがほむらだけじゃなくマミちゃんもいる。

さやかはマミちゃんに憧れているから彼女がいう事なら嘘だとは思わないはずだ。

 

 

上手くいけばさやかの契約、ひいてはまどかの阻止出来るし、ほむらとの仲も良好に出来る。

 

 

そうなれば巡り巡ってさやかと杏子の対立も死亡もなくなるはずだ!

何よりこれから俺に降りかかる死亡フラグが減る!これ大事!

 

 

 

そのためにはここに来てもらう必要があるのだが今のところ、ほむらとまどかからは放課後向かうと連絡があったが肝心のさやかから連絡はなし。

まあ、送ったのほぼ迷惑メールだったから返したくないわな・・。

 

仕方ない。ピンクあたりに連行してきてもらうおうか。

 

 

 

これ完璧なはず!ふふふ、意外と俺って策士じゃね?

 

 

 

 

 

 

 

「優依ちゃんこれ見て」

 

 

「?」

 

 

一人悦になっていた俺にマミちゃんがニコニコ嬉しそうな様子で膝に乗せた物を見せてくる。

 

 

「えっと、これは?」

 

 

マミちゃんの膝に乗っているのはぬいぐるみ。

それも女の子の形をしたぬいぐるみなんて珍しい。

全体的にデフォルメ化されていて普通に売ってそうな完成度だ。

 

 

 

「これ私が作ったの。可愛いでしょう?」

 

「・・・・・そうだね」

 

 

少し口ごもりながら肯定する。

 

確かに可愛い。可愛いよ・・・。

 

 

「・・・・・・」

 

 

じっとそのぬいぐるみを眺めるも疑惑が拭えない。

 

 

すみません。なんかこれ心なしか俺に似てませんか?

てか、俺じゃね?

 

だって見た目俺そっくりだし来てる服も見滝原中学校の制服だし。

他人の空似とは到底思えない。

 

 

そういや前にマミちゃんは俺にそっくりなぬいぐるみを持ってるってシロべえが言ってた気がする。あの時は冗談だと思ってたけど実物あるしマジな話だった。

 

照れ笑いしながら俺そっくりなぬいぐるみを抱きしめるマミちゃん。

 

うん。可愛さ余って怖さ百倍だ。

 

 

ぬいぐるみだけじゃない。

さっきだって悪寒が走った。

 

マミちゃんが紅茶の準備で席を外していた時に見つけた謎のノート。

所々に赤黒い絵の具の塊のような何かがこびりついておりオシャレなマミちゃんには似つかわしくない程ボロボロだった。

 

悪いと思いつつ好奇心で中を開いてみると乱雑に文字が並べられていてよっぽど焦りながら書いたと思われるほどの走り書きで埋めつくされていた。

 

何を書いているのか分からなかったが所々に「標的H」「標的K」と記されており、ゲームをしている背後が無防備とかガラス張りだから学校の方が狙いやすいとか不穏な事が記されていた。

 

 

結局俺は最後までそのノートを読まずそっと元の位置に戻しておいた。

 

 

その後SOSメールラッシュ(主にさやかに)をしたのは言うまでもない。

 

 

うぅ・・思い出したら怖くなってきた。

 

 

誰か早く来てくれえええええええええええええ!!

 

 

 

 

 

「やあ、盛り上がってるみたいだね」

 

 

思わぬ所で救いの手が!

 

 

俺はにこにこ笑いながらすり寄ってくるマミちゃんから速攻で離れて救世主の所までダッシュを決める。

 

 

「お待ちしておりましたシロべえさん!!」

 

 

窓から入ってきたのはシロべえ。

 

コイツに少しお使いを頼んであったのでさっきまでいなかったのだ。

お使いを頼んだ事は後悔していないがタイミングは悪かったかもしれない。

今思えばここにほむらたちが来てからでも遅くなかったかも・・。

 

 

「お帰りなさいキュゥべえ。早かったわね」

 

「マミ、何度も言うけど僕はシロべえだよ。あいつ等とは違うんだから!」

 

「ごめんなさい。次からは気をつけるわシロべえ」

 

 

ちょっとムッとした声のシロべえにマミちゃんが申し訳なさそうに謝っている。

 

昨日の内にマミちゃんには出来るだけ情報を開示している。シロべえの事もその一つだ。

魔法少女の真相を知った以上は隠す事なんてあまりないからな。

 

ただし俺の秘密の事は話していない。

ほむらとそう約束したし、何より話したらまた拗れそうで面倒だからが一番の理由だ。

この事はマミちゃんが知らなくても別に困る事じゃない。

ついでに話したのがほむらにバレたら後が怖そうなのもあるし。

 

 

「優依、頼まれた物を持ってきたよ」

 

「ん?あぁ、ありがとうシロべえ」

 

 

怒れるバーサーカー状態のほむらを想像していたらいつの間にか俺を見上げていたシロべえに気づかなかった。

慌てて家から持ってきてもらったものを受け取り状態を確認する。

 

本当にこれで良いのだろうか?

 

 

「マミちゃん・・あの、これなんだけど本当にこれで良かったの・・?」

 

 

恐る恐るシロべえから受け取ったものをマミちゃんに差し出す。

俺の手の中にあるものを見たマミちゃんは笑顔をはじけさせて目をキラキラしている。

 

 

「ええ、これよ!これが欲しかったの!」

 

 

俺から受け取ったマミちゃんは嬉しそうにそれを眺めている。

 

マミちゃんが手に持っているものそれは、

 

俺が今も使っている銀色の花のフレームがついたヘアゴムだ。

 

今日マミちゃんと話している中で突如話題になったほむらのカチューシャ(ちなみにほむらは今日も飽きずに学校に着けていった)。

 

 

あれは俺がプレゼントしたと暁美さんから聞いたけど本当か?

と真顔で問い詰められ怖かった俺は正直にそうだと答えた。

 

 

それを聞いたマミちゃんは暁美さんだけズルい!私も欲しい!と半泣きで強請られてしまった。

 

今度買いに行こうと宥める俺の言葉を聞き入れず、嫌々と首を振られて途方に暮れる。

 

 

 

 

以下、会話はこんな感じ。

 

 

 

 

「買ってもらうんじゃ暁美さんの二の次じゃない!そんなの嫌!」

 

「えー・・じゃあどうしろと?」

 

「! そうだわ!そう言えば優依ちゃんは今も大事に使っているヘアゴムがあるって言ってたじゃない?あれが欲しいわ!」

 

「え?でも・・」

 

「ダメなの?私も証が欲しいわ。暁美さんとはまた違った証が優依ちゃんからの証が欲しいの。それをくれるなら暁美さんにプレゼントした事、許してあげる」

 

「はあ・・・」

 

 

 

 

 

ガチな表情でそう言ってきたのでこれは本気と悟り、渋々近くで寝ていたシロべえを叩き起こして家までそのヘアゴムを取ってきてもらえるように頼んだのだ。

(本当は家に帰りたかったから俺が行こうとしたんだけどマミちゃんにダメと言われてしまった)

 

昼寝の邪魔されてぶつくさ文句を言っていたシロべえだがちゃんと持ってきてくれたみたいだ。

だから俺が隠していたチョコ菓子をまた無断拝借して現在進行形で食べてるけど許してあげよう。

 

 

 

ふぅ、世辞辛いぜ・・・。

 

 

 

「優依ちゃん、似合うかしら?」

 

 

早くね?受け取ってまだほんの数分しか経ってないのに。

てか、あんなクルクル髪なのにどうやってヘアゴム通すんだ?

 

 

「・・・・・」

 

 

マミちゃんの方に顔を向けるといつもの髪飾りから俺愛用の銀のヘアゴムが装着されていた。

似合うかって言われたら普通に似合う。ただし可もなく不可もなくが正直なところだが。

 

似合うかどうかよりも俺的にはどうやってこのクルクルを維持しながら髪を維持するのかとても知りたいんだが。

 

 

「どう・・?」

 

俺が何の反応もしないからかマミちゃんが再度聞いてくる。

今度はさっきの照れたような感じではなく不安そうな表情だ。

 

手に入ったアクセサリーをつけて感想を求めるのはどの年代の女の子と変わらないみたい。

ここは機嫌を直してもらうために褒めた方が良いだろう。

 

 

「うん、素敵だよー。似合う似合う」

 

「・・本当に?」

 

 

あまりの棒読みだったからか疑わしそうに俺を見ている。

これはまずい。急いで軌道修正しなければ!

 

 

「本当だよ!この世でこんなに似合う人がいるなんて初めて見た!マミちゃんって本当に何でも似合うね!」

 

「そ、そうかしら?似合ってるなら良かった・・」

 

 

大袈裟に褒めると顔を赤らめて俯いている。どうやら誤魔化せたようだ。

実にチョロいものである。

 

でもごめんマミちゃん。チョロ過ぎて逆に君の将来心配になってきた。

悪い虫に引っかかりそうで俺怖いよ。

 

 

ちなみに何でほとんど髪飾りをしない俺がマミちゃんにあげたヘアゴムを大事にしていたからかというと俺にしては数少ない戦利品だからです。

 

勝負事には滅法弱い俺は勝利した記憶がほぼない。

このヘアゴムはそんな弱小な俺が珍しく勝利した時に手に入ったものだ。

 

ちなみに何の勝負かと言えば腕相撲勝負(最下位決定戦)

前の学校のイベントで幼稚園児と触れあう機会があってそのさい催されたものだ。

 

運動神経皆無の俺は全敗。

俺なら余裕で勝てると思ったのか生意気な園児のガキが俺に勝負を挑んできて僅差で勝利した時に景品として手に入れたのだ。

あの時の悔しそうな園児(五歳児)の顔は忘れない!

 

このヘアゴムを見るために俺でも出来るという慰めになるから大事にしていた。

 

 

まあ、まさかそれが別の女子、しかも年上の女の子の髪にくっつく日が来ると思わなかったよ。

優越感よりも命優先だから渋々あげたけどオシャレ女子代表のマミちゃんはこれで良かったのだろうか・・?

 

 

「ふふ・・」

 

 

やめて!鏡をじっと見つめながらうっとり微笑まないで!

 

何であんなに嬉しそうにしてんの!?

 

 

≪これが本当のマーキングだね優依≫

 

≪お前は黙ってろ≫

 

 

白い悪魔が横やりしてくるが切り捨てる。

 

 

本当にこれで良かったのだろうか?

黄色さんが悦に入って相手しなくていいのは楽だけどさ。

 

楽しそうに鏡を眺めるマミちゃんを見るのは複雑な気分だ。

 

 

 

 

 

 

―ピンポーン―

 

 

 

! 来た!?

 

 

 

「! はーい」

 

 

部屋に響くチャイムの音に手首の髪紐を見てニコニコしていたマミちゃんが慌てて玄関に向かってすぐに扉を開ける音がした。

 

 

 

「あら鹿目さん!・・と暁美さん。いらっしゃい待ってたわ」

 

「マミさんこんにちは!お邪魔します!」

 

 

 

耳に響くこの声。これは・・・まどかの声だ!

 

ついに、ついに来てくれた!!

 

 

「いらっしゃーい!待ってたよ!!」

 

 

ドタドタ足音を鳴らしてすぐに玄関まで駆けつけ、やって来た救世主たちを半泣きで出迎える。

 

 

ようこそお越しくださいました!

首を長くして待っていましたよ!

これで俺はマミちゃんとのワンツーマンを終わらせることが出来る!

 

俺は、自由だ!!

 

 

「あ、優依ちゃん!その服とっても可愛いね!」

 

 

まどかの満面の笑みで俺の今の現実を思い出す。

 

 

・・・忘れてた。

俺の今の恰好はマミちゃんに無理やり着せられたフリフリ服だった。

 

後で制服に着替えよう!これ絶対!

 

 

 

「ただいま優依。巴マミに何かされなかった?」

 

「・・・うん、何もなかったよ・・」

 

 

ほむらの何気ない詰問にさっと目を逸らしながら問題ないと嘘の報告をしておく。

昨日の一件でほむらとマミちゃんは些細なことですぐに殺し合いに発展する危険性を身を以て理解した。

元々仲が悪いからかもしれないが勘弁してほしい。

 

なるべく穏便に済ませるようにしなくてはいけない。

嘘も方便。どこに地雷があるか分からないから何もなかった事にしておいた方が良いだろう。

取り敢えず今日の事は念のために伏せておこう。

 

 

「ただ普通に(抱き付かれながら)お話して普通に(あーんされながら)ケーキ食べただけだから」

 

「・・本当に?」

 

 

すっごく疑わしそうな目で睨んでくる。

嘘は言ってないのでコクンと頷くと一応それで納得してくれた。

あくまで一応らしくジロッとまどかと話すマミちゃん、次に俺と交互に見ているけど。

 

 

ん?ほむら何見て・・?俺が着てる服?

 

見比べるのも飽きたのかじーっと真剣に俺の方を凝視している。

目線は若干下を向いているから服だと予想がつく。なんか「イマイチね」と辛口な事言ってるし。

 

 

「そんな服じゃ優依の魅力が半減するだけ。巴さんのセンスのなさが浮き彫りになるわね」

 

「あら、失礼ね。それなら暁美さんは優依ちゃんにどんな服が似合うと思うの?」

 

 

ほむらの物言いにカチンときたらしく今朝の続きでVS状態なのかバチバチと音を立ててにらみ合いが横行している。

 

無視だ無視。こんな厄介な修羅場は無視に限る。

 

 

・・・それにしてもさっきから妙に静かに感じる。

いつもならアイツが騒がしくしているというのに。

 

目当ての人物を見るため視線をキョロキョロ動かして周りを見る。

 

 

 

 

・・・・・ん?

 

 

 

くまなく目を動かしてもいる見つからないぞ?

 

 

「あれまどか?・・さやかは?」

 

 

殺気を纏っている二人を除いて玄関にいるのはまどかと俺だけでどこにも青髪ショートヘアーの姿が見当たらない。

 

 

・・・まさかアイツ!

 

 

「さやかちゃんならここにいないの。優依がヤバい!!って焦って飛び出しちゃった」

 

「ん?」

 

 

俺の視線の意味に気付いたらしいまどかが教えてくれるも引っかかる言い方だ。

 

ここにはいないとはどういう事だ?後で来るのか?

俺がヤバいってどういう事?

 

 

「優依ちゃん、今日メールくれたでしょ?特にさやかちゃんにはたくさん送ってたよね?私もちょっと見せてもらったけど一体どうしたの?」

 

「・・・・・」

 

 

きっとそれは呪いのノートを見つけた時に送ったやつだろう。

恐怖のあまり精神がおかしくなったのは認める。

 

 

「さやかちゃん、優依ちゃんのメール見て心が病んじゃってるかもって思っちゃったみたいなの。だから病院にカウンセリング相談あるか調べてくるって、ついでに上条君の所にお見舞いもしてくるって逃げられちゃった。一緒に行かないの?って言っても後でマミさんの所に向かうから先に行っててって・・・」

 

「!?」

 

 

まどかから段々不安になってくる内容を聞かされる。そこまではいい。

まどかじゃ暴走したさやかを抑えられないのは分かっている。

 

そのためにほむらに頼んであったはずなのに!

ほむらがいて何でさやかを捕まえられなかったんだ?

 

 

目線でそう訴えるとまどかがおどおどしながら答えてくれた。

 

 

「とにかくわたしじゃ追いつけないからほむらちゃんにどうにかしてもらおうと思って頼んだんだけどほむらちゃんに『既に見失ってしまったのだから仕方ないわ。それより優依のSOSの方が心配だから巴さんの所に行く方が優先よ!』て断られちゃったの」

 

 

俺のせい!?

まさかの俺のせいなの!?

ほむら優先してくれるのはありがたいけど今回は優先順位間違えてるぞ!!

 

 

 

 

職務放棄しやがった紫は俺の隣で黄色と今も口論している。

 

 

 

“どう暁美さん?これ優依ちゃんからもらったの”

 

“それがどうしたって言うの?見たところそれは新品じゃないみたいよ?”

 

“ふふ、見る目がないわね。これは優依ちゃんが大事に使っていたヘアゴムよ”

 

“!? 何ですって?”

 

“そんな思い入れのある大事なものを私にくれたのよ?ただの新品のカチューシャをもらった暁美さんと違ってね”

 

“く!”

 

 

 

聞こえてくる内容は耳に入れても頭が理解を拒んでいる。

きっと俺の精神衛生には良くないものだろう。

 

 

いやそれよりも!

 

 

「ま、まどかは・・?まどかにも頼んだよね?君が言えばほむらは言う事聞いてくれるはずだよ・・?」

 

 

そう、ほむらだけじゃ心許ないからと俺はまどかにも協力してくれと頼んでいたはずだが一体どうしてこんな事に?

 

 

「えっとわたしも優依ちゃんが心配だったからそれ以上強く言えなくて・・・。だって優依ちゃんとっても切羽詰まったメールだったでしょ?すごく心配したんだよ!?」

 

 

涙目で俺を見つめるまどかに罪悪感の嵐が巻き起こり、これ以上追及出来ない。

 

まどかさんも俺のトチ狂ったSOSメールを見て心配してくれてたんですね?

めっちゃええ娘や・・。

 

 

「ごめんなさい・・」

 

 

罪悪感に耐えられなくなった俺は蚊の鳴くような声で謝罪の言葉を口にする。

 

つまり簡単に言えばさやかはここには来ず病院に向かってしまったと?

しかも原因が俺の送ったメールにあると・・?

 

 

 

・・・・・・・・ガッデム!!

 

 

 

俺は人目も憚らず頭を抱えてうずくまる。

 

 

頭上から「優依ちゃん!?」と焦った声が聞こえてくるも返事をする余裕はない。

 

 

ここに来てまさかのSOSメールが思わぬ方向に!

こんな事なら最初からSOSなんて送らずに普通にマミちゃんの家に集合って言っとけば良かったよチクショウ!

 

 

何で俺はこうも墓穴を掘ってしまうんだ!?

これも邪神のせいじゃないだろうな!?

 

 

 

まどか達がここにいるって事はさやかは既に病院にいるだろう。

 

 

まずい!このままじゃ契約しちゃう!

そしたら魔女化まっしぐらじゃん!

ああもう!急いで病院に向かってさやかが魔法少女にならないように説得しなきゃ!

 

 

 

俺のせいだけど手間かけさせやがって!!

 

 

 

走り出したら止まらない!

 

本当にアイツはぶれないな!!




一難去ってまた一難!
優依ちゃんの受難はまだまだ続く!

次からさやかちゃんのお話になりますがここら辺で本編を少し休んで番外編投稿しようと思います!


次の話はマギレコ番外編トップバッター
「環いろは」ちゃんの登場です!


全部で三話構成の予定でメインストーリー第一部を基準にしています!

先に番外編を全部投稿し終わってから本編に戻るつもりですのでさやかちゃんはもう少し先になりますので少々お待ちください!

マギレコがアニメ化しようがメインストーリー第二部が始まろうが知った事じゃありません!

いろはちゃんカモーン!!

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