環いろはちゃんの登場です!
優依ちゃんの設定は大体本編と同様ですが一部変更&補足で、
・優依ちゃんは見滝原に引っ越しておらず前の住所のまま
・マギレコは未プレイ
(これは本編も同様。理由は作中にて)
となっております!
時系列はメインストーリー第一部第一章です!
「やべ、迷った」
夕暮れ時の閑静な住宅街の中、俺、神原優依は呆然と立ち尽くしかなかった。
俺には前世の記憶がある。それも男としての記憶だ。
森羅万象全ての悪意を寄せ集めたような邪神的な少年のせいで死んでしまい、お詫び(笑)にとこの世界で女(超美少女)として生を受けた。
転生系であるようなアニメやファンタジーな世界ではないのはちょっと残念だが命の危機がない分、平穏に生きていけるのはありがたいものだ(性転換は除く)。
前世は不運だった分、今世は頑張って長生きしようと思う。
そんなこんなで十四年の月日が経ち俺は今とある街に遊びに来ている。
新興都市「神浜市」。俺が今いる街の名前だ。
最近都市開発が進んでいるらしくテレビや雑誌でもよく取り上げられている。
何でか知らないが「神浜市」の名前に既視感を覚えて気になっていたのだ。
俺の住んでいる街からはそこまで遠くないし、せっかくだから行ってみようと思い立ったのが今日。
そのため放課後、家に帰らず電車を乗り継いできたのだ。
いざ神浜に足を踏み入れてみると目を見張った。
テレビで見るよりもずっと都市開発が進んでいてまさに近代的といった街並みに大興奮。
その浮かれた気分でふらふら歩いて気づけば右も左も分からない住宅街に絶望。
こんな時はスマホの地図アプリだと自身のスマホを取り出すもまさかの電池切れで絶望。
慌てて周囲を見渡すも周りには人っ子一人いないから道も聞くことすら出来ない。
まさに絶望!
誕生して十四年、俺は今世で初めて迷子になってしまったのだ・・。
ポツンと佇む俺を夕焼けが優しく照らしてくれるが哀愁が増していく。
うがああああああああああああああああああ!!
どうしよう!?このままじゃマジで帰れねえ!
誰かいないのか?誰でもいい!誰か助けてくれ!
「・・・あっ!」
ほとんど涙目になりつつもう一度周囲を見渡すとはるか前方に人影を発見!
神(邪神以外)は俺を見捨てていなかった!
見つけた瞬間、俺は駈け出していた。
ここで逃がせば次はいつ人に出会えるか分からない!
何としても捕まえて道を聞かねば!!
恥とかそんなもんどうでもいい!
迷子から抜け出すことが最優先!
「おーい!そこの人―!!」
「え!?」
追いつく前に見失うのを阻止するため大声で前方にいる人を呼び止める。
俺の声に気付いたのかその人はビクッと肩を上げて俺の方を見ている。
最初は遠くて分からなかったけど、近づくにつれ姿がはっきりしてくる。
どうやら俺が見つけたのは女の子らしい。
制服を着てる事からも学生なのは明らかだ。
中学生か分からないけど女の子なら聞きやすい。
しかもここの学生ならここら辺の地理もお手のものだ!
これはツイてるぞ俺!
女の子はオロオロしながら俺が来るのを不安そうに待っている。
その際、手に持っているピンクに光る何かをサッと隠したけどそれは気にしないでおこう。
俺には関係ない事だ。
てか、それ所じゃない!やば・・しんどぃ・・!
息が続かない・・!
「はあ、はあ、良かった。追いついた・・」
どうにか無事女の子の所に辿り着き彼女の前で前かがみで息を整える。
やっぱり走ったらダメだ俺。体力ないもんな俺。
「あの・・大丈夫ですか?」
「はあ、はあ、うん、大丈夫。・・ちょっといいかな?」
頭上から心配そうな声が聞こえてくる。
ようやく息が整ってきたので心配かけないように顔を上げた。
「えっと・・何ですか? っ」
女の子が途中で口ごもってじっと俺の顔を見ているがどうしたのだろうか?
俺の顔に何かついてる?
近くで見ると女の子は歳が近そうだ。
素朴で可愛らしい顔立ちで真面目そうな雰囲気で俺としては好印象。
・・・ピンクの髪さえ除けばだが。
ぶっちゃけその髪色はやめてほしい。
どこぞのダーク魔法少女アニメのツインテール主人公を思い出すから!
不吉としか思えないその派手な色の髪はとても長くて腰まで届き一つに束ねている。
・・・あれ?この娘どっかで見たことあるような・・?
記憶のどこかで引っかかる気がするが思い出せない。
どうせどこかですれ違ったとかそんなもんだろう。
それよりさっきから黙って俺を見てる女の子の方が心配だ。
もう一度声かけてみよう。
「あの、大丈夫ですか?」
「あ!ごめんなさい!とっても綺麗な人だなぁと思って・・っ、ごめんなさい!変な事言って!」
「いえ、大丈夫ですけど」
何も聞いてないのに勝手に顔赤くさせて自爆してる。
可愛いなこの娘。きっと嘘つけないんだろうな。
今世の俺の姿は美人だと自負しているが可愛い女の子に褒められると満更でもないもんだ。
・・・でもどうせならイケメンの男に転生して褒められたかったな・・
「え、えっとそれで、私に何か用ですか?」
オロオロしながら女の子は俺が声をかけた要件を聞いてくる。
話を逸らすためなのがバレバレだったがそれでハッとして声かけた理由を思い出し慌てて口を開く。
「あの!実は神浜に来るの初めてでお恥ずかしながら迷子になっちゃって・・それで良かったら道を教えてくれませんか?」
凄く取り繕った感じだと思うが何とか無事迷子脱却出来るだろう。
この女の子は誠実そうな印象だからきちんと答えてくれると期待出来るし。
しかし俺の期待とは裏腹に女の子は申し訳なさそうな顔でシュンとしていた。
「・・・ごめんなさい。私、神浜の事あまり詳しくなくて、その、ここがどこなのかも分かってないんです」
「え!?」
女の子もまさかの迷子だった。
そういえば見つけた時やたら周りをキョロキョロしていたし、立ち止まってた気がする。
マ、マジかよおおおおおおおおおお・・・。
これただの無駄足じゃん!希望を持っていた分絶望感半端ない!
はあ・・どうしよう。ここら辺詳しくないなら道を教えてもらうの期待出来ない。
また人を探すしかないがこの閑静な場所で新しく人を見つけられるだろうか?
首をガックリ落として落ち込む俺に女の子が遠慮がちに「あの、」と話しかけてくるので顔を上げると女の子が優しく微笑んでいる。
「良かったら、その、一緒に近くの駅まで行きませんか?私、スマホの地図の読み方分からないけど闇雲に歩き回るよりはいいと思うんです」
「え?良いんですか!?」
暗闇に一筋の光が射し込んだような感覚が俺の中に起こる。
視界が開けるとはまさにこの事!
迷子でも二人一緒なら怖くない!
俺の期待を裏付けるように女の子は安心させるように優しく微笑んでいる。
「はい、大丈夫です。あまり頼りにならないかもしれないけど困った時はお互い様ですよ」
「! ありがとうございます!」
良い子だ!この娘めっちゃ良い子だ!
一瞬だけピンク髪だから不良かもとか思っちゃってごめんね!
今時ここまで親切な人なんてそうはいないぞ!
さながら現代に蘇ったマザーテレサ並みの慈悲深さだ!
ありがとう神様(邪神除く)!
俺は今日この娘に会えた事を感謝します!
現代の若者よ!この娘を見習え!
世界中がこんな優しい娘なら戦争なんてなくなるぞ!
「あ、そういえば貴女は中学生ですか?」
「? そうですけど」
「だったら敬語なんていらないよ。何だか変な感じだし」
「え?う、うん。分かった」
ピンクさんは戸惑いながらも素直に頷いている。
こんな親切な娘が中学生だなんて思えない。
俺のイメージする女子中学生は小生意気なマセマセガールだ。
実際、俺が通ってる中学生の女子はそんな感じだからこの娘の方が珍しいのかもしれない。
少しだけ上を見上げて空の様子を確認すると既に日が傾き始めている。
もうすぐ夕暮れが終わるだろう。
無駄な事考えてる暇があったらさっさと帰るに限る。
思わぬハプニングがあったが概ね観光出来たしそろそろ帰ろう。
「私、地図見れるから貸してもらえる?私のスマホ今電池切れてて使えないんだ」
「本当?良かった。私まだスマホの使い方あんまり分からなくて困ってたの。じゃあ日が暮れない内に行こう」
ピンクさんからスマホを受け取って地図アプリを起動する。
お。ここから駅近い。ラッキー!
そのまま二人して地図に沿って歩きだす。
あ、そういやこの女の子の名前聞いてない。
今のうちに聞いてみようかな?
「そういや名前聞いてなかったね」
「あ、そうだね。えっと私は・・。! ごめんね!」
「へ?わ!?」
いきなり血相を変えた女の子に腕を引っ張られいきなり走らされてつまずきそうになる。
訳が分からず立ち止まろうとするも俺の腕を引っ張る女の子の力が信じられないくらい強くそのまま引っ張れる。
こんな細腕のどこにこんな力が?
ひょっとしてこの娘の前世キ○グコングなのか!?
引っ張られながら馬鹿な妄想してて気づかなかったがようやく周りに異変が起きている事に気付く。
空間が歪んで住宅街が消え、代わりにファンタジーな光景に変わりつつあった。女の子はまだ空間が歪んでいない場所を目指して走っているみたいだ。
「お願い間に合って!」
しかし結局俺たちがいる場所は砂場が広がる異様な空間になってしまい女の子は悲痛な表情を浮かべて走るのをやめた。
「どうしよう・・間に合わなかった」
俺の腕を握りしめたまま女の子は困ったようにそう呟く。
その様子から察するにこの娘はこの状況がどういう事なのか理解しているようだ。
突然ファンタジーな世界に巻き込まれるという異常事態が起きてるのにパニックにならず落ち着いている。
ならばここはこの女の子に説明してもらうのが妥当だろう。
正直俺はパニック通り越して頭に?がいっぱい飛んで思考放棄中だから。
「あの、この砂場は何?」
「え?」
さっそく質問したら女の子が驚いたように目を見開いてこっちを見ている。
何で?俺はそんな驚くような事を聞いたっけ?
単純に「ここどこだ?」としか聞いてないんだけど。
「魔女の結界が見えてる?ひょっとして貴女は魔法少女なの・・?」
「???」
言ってることがよく分からない。
「魔女の結界」?「魔法少女」?
まだ頭が混乱してて理解が追い付かないがなんかとても不吉なワードを言われた気がする。
てか、俺は何て答えればいいんだこれ?
「U▽☆※◎◇#ポー!」
考えあぐねいてる内に俺たちの会話を遮るように機関車みたいな音が耳に届く。
「げ!?」
「! もう見つかっちゃった!」
音が聞こえた方を見るとカラフルな球が寄り集まった蟻もどきがいる。
見た目は可愛いが複数体いるし心なしか殺気立っている気がするから友好的じゃないのは明白だ。
これは逃げた方が良いかもしれない。
「とにかくここから出ないと!着いてきてくれる?」
「う、うん」
再び女の子に腕を引っ張られて走る。
チラッと背後を見ると蟻モドキたちはゆっくりだがこっちに向かっているみたいだ。
女の子は遊具らしきものに向かって走っている。
体力が持つかどうか心配だったが息切れする寸前に辿り着いて遊具の後ろに押し込められる。
「ここに隠れてて!ここは私が何とかするから」
「へ?え?ちょ、ちょっとどこ行くの!?危ないよ!」
「大丈夫だよ!私戦えるから!」
それだけ言って女の子は俺が止めるのも聞かずに蟻モドキの方に走って行った。
連れ戻さなきゃあの娘殺される!
でも悲しいかな!
ヘタレな俺の足は全く動かないんです!
それに仮に今から助けに行っても絶対間に合わない!
ごめんねピンクさん!
ヘタレな俺は君を助けられそうにない!
一人そう言い訳しつつじっと遊具の物陰から女の子の様子を見守る。
蟻モドキに正面から対峙する女の子はいつの間にかピンクの宝石を手に持っている。
・・・・・・・・・あれ?え?ちょっと待って?
あの宝石みたいなの心なしか「ソウルジェム」に似てないか?
じゃあここ、実は「まどマギ」の世界?
いやいやいや!アニメ観てたけどあんな娘見たことないぞ!?
見間違いじゃないのか?
そう!きっと俺の見間違いさ!
あれがソウルジェムな訳ない!
なんかどんどんあの女の子の顔に見覚えある気がしてきたけどきっとそれは俺の気のせいさ!
そうでしょ!?気のせいでしょ!?
お願いそうだって言って!!
とんでもない疑惑の渦から解放されるため再び女の子を見る。
宝石から出た光に包まれて彼女の服装はいつの間にか変わっていた。
全身を覆う程の白いケープを羽織り、黒インナーをまとった露出度半端ない衣装を身に纏っている。
真面目そうな見た目と性格の割にかなり大胆だ。
うわぁ・・すっごいエロ衣装だなぁ。
これを見たプレイヤーはのちに彼女の事を「えろは」ちゃんだと・・・え?
彼女をもう一度まじまじと見る。
そして再度記憶を辿っていく。
どこかで見た事あるあの女の子の顔。
見たのは今世じゃない。
きっと前世だ。それもスマホの画面で。
「・・・・。っ」
! 思い出した!
あの娘の名前は「環いろは」だ!
確か「魔法少女まどか☆マギカ」の外伝にあたる「マギアレコード」の主人公!
え!?という事はここは「マギレコ」の世界なのか!?
だって目の前には魔女の使い魔らしき奴がいるし、そいつ等と魔法少女「環いろは」が戦っているし・・?
だとしたら最悪だあああああああああああああああああああああ!!
どうしよう!?知らない!
「マギレコ」のストーリーなんて知らない!話の頭くらいしか知らない!
冗談抜きで顔と名前一致するの「環いろは」くらいだぞ!?
レギュラー陣で知ってるのぶっちゃけあと「七海やちよ」くらいだ!
だって「マギレコ」プレイする前に俺死んじゃったんだもん!
ゲームアプリインストールする直前で邪神に殺されたからな!
そこから十四年も経ってるしゲームプレイもしてないからほとんど覚えてない!
まさかの突発的な死亡フラグ!
あ、そういえば・・・。
「マギレコ」の舞台は「神浜市」だった気がする!
道理で聞いたことある名前だと思ったわチクショウ!
どういうストーリーかは知らないけどあの「まどマギ」の外伝だから絶対ロクでもない展開が待っているのは予想がつく。
くそ!せめてストーリーを知ってれば死亡フラグを避ける事は簡単に出来るのに!
あの邪神、なんて性質の悪い事してくれたんだ!
「やあ!」
俺が脳内で邪神を罵倒する怨嗟の声を上げてる間に環いろはの方は使い魔らしき蟻モドキ達に腕に装着しているクロスボウ的なもので攻撃している。どうやら彼女も鹿目まどかと同じく遠距離タイプらしい。
「△○☆ポー・・・」
環いろはの攻撃が効いたのか動きが明らかに鈍くなっている。
そのままトドメを刺すのかと思いきや、何故かこちらに向かって走ってきて・・え?
何でこっちに来てんの!?
「今の内にここから出よう!」
「え?ちょ!?」
呆けてる間に俺に「環いろは」はすぐ近くまで来ておりそのまま腕をグイッと引っ張られ再び走りだす。
訳も分からず走っている内に空間が歪み、元の住宅街に戻っていた。
どう無事結界から抜け出せたらしい。
「はあ・・何とか無事に出られて良かった・・」
ポカンと周りの景色を見ている俺の横でほっとしたような声が聞こえる。
振り向くと「環いろは」はいつの間にか元の制服に戻って一息ついていた。
「あ、いきなりの事で驚いちゃったのよね?実は私、魔法少女なんだ。さっきのは魔女の使い魔で人を襲う危険な存在なの。魔法少女はそういう魔女や使い魔と戦ってるの」
俺の視線に気づいた「環いろは」は聞いてもいないのに勝手に説明を始めている。
それは俺の信じたくない現実を裏付けするものなので勘弁してほしい。
こんなに短い説明で絶望感を感じる事ってあるんだね。初めて知ったよ・・。
「それでね魔法少女っていうのは・・」
「あ!これ以上は大丈夫!無理に話さなくて良いよ!!」
「え!?あ、えーと、その・・ごめんなさい・・」
これ以上話を聞いていたくなくて話を中断させてもらったが何を勘違いしたのか申し訳なさそうに頭を下げている。
ただでさえ自分のいる世界が死亡フラグだらけな事にショックなのに今はその主人公と一緒にいる。
俺の精神ダメージは瀕死レベルのものだと言ってもいいかもれしれない。
「あ!そういえばまだ自己紹介してなかったね」
ペコペコ謝っていたが使い魔に遭遇する前のやり取りを思い出したようだ。
「環いろは」疑惑の人が勢いよく頭を上げる。
いいです!知りたくないです!
知っちゃったらあと戻り出来ないから!
いや待て!
実は他人空似でここは「マギレコ」の世界じゃなくてそういうパラレル的な世界なのかもれしれない!
希望は捨てちゃだめだ俺!
「私は『環いろは』です。よろしくね」
主人公はとってもはにかんだ笑顔で今の俺にとって絶望の代名詞を告げる。
Noooooooooooooooooooooooooooooo!!
やっぱりそうか!
同姓同名とかそんなんじゃなくてモノホンの方なんですね!?
これで決定的!
俺が転生した世界は間違いなく「マギレコ」の世界だ!
チクショウ!呪ってやるぞ邪神があああああああああああああああああ!!
ニコニコ笑う「環いろは」の前で本日二回目の怨嗟の声が俺の脳内で響く。
どうしよう!?
「よろしく」って言ってたけどすっごくよろしくしたくない!
俺は今この瞬間「環いろは」に出会った事を物凄く後悔してます!
「えっと、貴女の名前聞いてもいいかな?」
「!?」
「環いろは」がダメ押しとばかりに追撃してくる。
相手が名乗ったら自分も名乗り返す。それは常識でありマナーだ。
それは俺も分かっている。分かっているが・・。
教えなきゃだめ?死亡フラグに俺の名前教えなきゃだめ?
・・・教えないとダメだよなぁ。助けてもらったし・・はあ。
「・・・神原優依です。よろしくね『環さん』」
渋々教えるも死亡フラグであろう人物と仲良くなるつもりはないという意味を込めて苗字呼び。
当然だろ?下手に仲良くなって死亡フラグに巻き込まれたらたまったもんじゃない!
「・・うん・・よろしくね、神原さん・・」
「環さん」と言った直後に何故か落ち込んでる「環いろは」の事はこの際置いておこう。
名前で呼びたかったとかそんな事で落ち込んでるとか俺の思い上がりだきっと。
「あ、そう言えば、駅に向かう途中だったよね?そろそろ行こう」
「!?」
冗談じゃない!誰が死亡フラグなんかと一緒に歩くかよ!
「いいよ!大丈夫だよ!環さんは魔法少女なんでしょ!?きっと物凄く忙しいはずだよ!そんな人に甘える訳にはいかないから!」
反射的に拒否した俺に拍手を送りたい。
主人公と一緒にいたら嫌でも巻き込まれるのは確定してるようなものだ。
魔女のオンパレードなんて御免被る!
こいつから離れるに限る!
迷子とかそんなん二の次!
この後一人で彷徨う事になっても死ぬ事はないだろう。
幸いさっきの駅までの地図は覚えてる。
あの距離ならすぐに辿り着けるはずだ!
とにかく今すぐに環いろはと別れなきゃ!
「スマホ返すね!じゃあ私は帰るよ!さっきは助けてくれてありがとうね環さん!」
「え?一人で帰っちゃうの?それは危ないよ。この辺りだけでも結構な数の魔女の反応が「一緒に帰りましょう!お願いします!」あ、うん。じゃあ巻き込まれない内に行こっか」
速攻で掌返して頭下げる俺を蔑んでくれても構わない。
危険を承知で生存率が高い方を選ぶに限るから!
非力な俺には選択肢なんてないんですね・・。
「そうなんだ。神原さんは神浜に観光に来てたんだね」
「うん、よくメディアに取り上げられてて前から気になってたんだ」
駅に向かう間は暇なので仕方なく環さんとの会話に花を咲かせるしかない。
そこで分かったのが環さんは実は俺より一つ年上で出身は神浜ではないらしく俺と一緒で別の街から来たらしい。
何で主人公が舞台になる街の事知らないんだよとさっき思ったが納得。
別の地域出身なら知らなくて当然だ。
じゃあこれからこの娘はここに通うのだろうか?
もしくは後に引っ越すのか?
まあ、それは俺が気にすることではない。
それよりも何でこの娘「神浜」に来たのか気になる。話を聞いてる限り観光じゃなさそうだ。
「環さんはどうしてここに?」
ちょっとした好奇心で聞いてみるも環さんは少し眉を下げて真剣な表情になる。え?結構深刻な話?
「私・・神浜に来てから胸がざわめくようになって不思議な女の子の夢を見るようになったの」
ごめん。何の話それ?なんで神浜に来たかの理由聞いてんのにいきなりホラーな身の上話かい。
怪談話なら俺お断りよ?
「何だか大切な事を忘れてる気がするの。それを見つけなきゃいけない。神浜に来てから不思議な事が起こるようになったからきっと手掛かりはここにあると思うの。だから来たの」
「・・・・。大切な事って何?」
「さあ・・。それが何なのか分からないの」
「そっか」
どうやら環いろはさんは迷子のようだ。
それも人生という道に迷った出口が見えないヤバい方の迷子。
冗談はともかくどうやらその大切なものが「マギレコ」のキーパーソンになりそうだ。
なんか深みにはまった気がする。好奇心で聞かなきゃ良かった。
これ以上その話が広がらないように逸らした方が良さそうだ。
「そういえば神原さんは小さいキュゥべえを見たことある?」
俺が話を振る前に環さんが先に口を開いた。内容は広げたくない方の話だが。
よりにもよってキュゥべえ!一番聞きたく名前出しやがって!
なんだよ小さいキュゥべえって!?ん?
「小さいキュゥべえ?」
気になって思わず口に出す。
キュゥべえってみんな小さい気がするがそれよりも小さいのが存在するのか?
俺の疑問が通じたのか環さんは頷いている。
「うん、えっとキュゥべえって言うのはね白い猫みたいというかマスコットみたいな可愛い姿してるんだ。小さいキュゥべえはそれより更に小さいし可愛い感じかな。魔女が見えるならキュゥべえも見えると思うんだけど・・どう?」
覗き込むような動作で俺を見てくる。結構かわいいね。
可愛い女の子の質問には例え嫌な事でも喜んで答えよう。
でもその前にキュゥべえの説明に関して一つ訂正させてほしい。
あいつら可愛いのは見た目だけで性格は可愛さの欠片もないから!
しかも本性を知れば知るほど見た目すら可愛くなくなっていくから!
よし言えた!心の中でだけど。
それじゃあ質問に答えないと。
「んー・・見た事ないな」
記憶を辿ってみるも出会った覚えはない。
ていうか出会ってたら絶対忘れねえよ!
白いGが目の前に現れた日には殺虫剤と厄払いの塩をばらまいてるわ!
「そっか・・」
俺の正直な答えに環さんは落胆を隠せないようだ。
何でそのキュゥべえなんて探してるんだ?
会ってもロクでもない目にしか遭わないのに。
ズーンと顔が地面に向かって下がっている。
めっちゃ落ち込んでるみたいだけど大丈夫か?
「あー・・参考までに聞くけどあそこにいるみたいな感じ?」
あまりにも環さんが気落ちするので気を紛らわせるつもりで環さんの背後の塀でちょこんと座っているデフォルメキュゥべえの方を指さす。
魔女の結界から抜け出した瞬間から塀にいる事に気づいていたが意図的に無視していた。
無視した理由?関わりたくないからですが?
「え・・?うん、そうだよ。あんな感じの小さいキュゥべえで・・って、え!?小さいキュゥべえ!?」
俺の何気ない指摘に環さんも何気ない感じで頷いたと思ったのにいきなりギョッとして食い入るようにデフォルメキュゥべえを見て叫ぶ。
「え?あの子なの?」
「あの子だよ!」
まさかのお尋ね宇宙人が目の前に現れたみたいだ。これはツイてる!
いやツイてない?
これひょっとして俺、ストーリーに巻き込まれてるんじゃないの!?
ここはどうすれば正解だ!?
キュゥべえを逃がす?捕獲を手伝う?
俺が悩んでる隙に環さんは忍び足で小さいキュゥべえに近づいている。
幸い奴はこちらに気づいていないみたいだ。
「モキュ?」
環さんがもう少しで触れられそうな距離で突然小さいキュゥべえが環さんに気づく。
すぐ逃げられると思ったが小さいキュゥべえはじっと環さんを見てその後に俺の方を見る。おい、こっち見んな。
「プイ!」
「あ、待って!」
抱き込もうとした瞬間、小さいキュゥべえは環さんの腕をすり抜けて華麗に地面に着地する。
お見事!十点!
「止まって!」
慌てて地面に身体を傾けさせて捕まえようとする環さんを難なく躱し、小さいキュゥべえはそのまま駆けていく。
・・・俺の方に。
「モキュ!」
そしてそのまま勢いよく飛び掛かって俺のバッグにしがみつく。
「ぎゃああああああああああああああああああ!!触んなああああああああああああああああああああ!!」
俺のバッグにしがみ付いてる白い悪魔を振り払うべくがむしゃらにバッグを振り回す。
なりふりなんて構っていられない!
一刻も早くコイツを引き剥がさなくては!
関わってたら命がいくつあっても足りねえ!!
「神原さん落ち着いて!もうキュゥべえはくっついてないよ!」
暴れる俺を落ち着かせるように環さんが腕にしがみついて大声を張り上げる。
それで我に返ってバッグを見ると白い物体がくっついておらず、少し離れた場所で奴は背中を向けていた。
良かった。何にもなかったみたい。
しかし結局はあいつは何がしたかったんだ?
・・いやそれよりも腕に感じる柔らかい触感をどうにかしないと。
「・・ごめん環さん。落ち着いたからもう離しても大丈夫だよ?」
未だに俺の腕にしがみついている環さんを見下ろしながら遠慮がちに告げる。早く引き剥がさないと色々まずい。
「え!?ごめんね!止めるのに必死になっちゃって!」
慌てて俺から離れた環さんは真っ赤な顔でアワアワしながら弁解しているが可愛いので無罪確定。
「え、えっともうすぐ駅だから安心して?それまでちゃんと守るから」
「? キュゥべえは?探してたんじゃないの?」
環さんは探していたらしい小さいキュゥべえに一瞥しただけで再び駅までの道を歩きだそうとしている。
目の前にはお目当ての奴がいるというのに華麗にスルーを決めているのは何故だ?
疑問を投げかけると環さんは立ち止まった。
「これは私個人の問題だもん。後でまた探すから大丈夫だよ。今は神原さんを無事に駅まで送り届ける方が大事だから。私もちゃんと駅までの道覚えておかなくちゃだめだからね」
「た、環さん・・!」
くるりと振り返った環さんは慈悲深い笑顔で俺に惜しみなく向けている。
心なしか彼女から後光が差している気がする!
良い子!「環いろは」マジで天使レベルの良い子!
自分の目的よりも俺の安全を優先してくるなんて!
ありがとう!
俺の前世含めて生きた時間の中で優しい人ランキング上位に食い込んでくるレベルだ!
俺は一生君の事忘れない!この先辛いことがあっても君のような優しい人間がいる事を心に留めておくよ!
ヤバい。感動で泣きそう・・。
「モキュキュ!」
じーんと感動しつつ歩き出そうとした途端、俺の前に小さいキュゥべえが立ち塞がる。
「げっ、一体何だよ?」
小さいキュゥべえは顔を上げて俺を見る。
その小さい口には夕日の光を反射させている長方形のガラスのようなものを咥えていた。
「モキュ!」
「! 待てええええええええええええええ!!」
それを目にした瞬間、俺は走りだした。
それに合わせてキュゥべえは俺から逃げるためか全速力で走る。
「神原さん!?」
背後で環さんの驚く声が聞こえるが構っていられない。
取り返さなければならない!だって、奴は・・!
「俺のスマホ返せええええええええええええええええええええ!!」
路地裏に逃げ込んだキュゥべえに俺の絶叫が響く。
そう、小さいキュゥべえが咥えているのは俺のスマホ。
おそらくしがみつかれた時にくすねたのだろう。
普段であればキュゥべえと関わりたくないからスマホは諦めるだろうが今回はだめだ!
なんてたって今スマホのデータの中には俺の幼馴染トモっちから無理やり送られてきた百合データ(十八禁)が大量に入っているのだから!
速攻で消したかったがデータ量が多すぎて消去に時間かかるから後にするかと放置したのがまずかったらしい。
中のデータを見られたら俺は社会的に死ぬ!
あの悪魔の事だ!誰かに見せびらかすなんてそれくらいの事、平然とやらかしてもおかしくない!
「逃がすかこの悪魔があああああああああああああああああ!!」
「待って神原さん!はぐれたら危ないよ!」
後ろで環さんの声が聞こえたと同時にタタタと足音が聞こえる。
どうやら俺を後ろから追いかけてきているようだ。
こうしてスマホを奪った白い悪魔VS俺&「マギレコ」主人公「環いろは」による謎の追いかけっこが始まるのであった。
「しょせん俺なんて役立たずのゴミなんだよ」
「そんな事ないよ。元気だして神原さん」
打ちひしがれた今の俺には慰めですら落ち込む要素だ。
あれからずっと小さいキュゥべえを追ってはみたが追跡はかなり難航しており、一向に捕まらない。
奴がすばしっこいってのもあるが一番は魔女や使い魔との遭遇だ。
因縁をつけられたのかあのカラフルな蟻に何度も見かける。
それもキュゥべえを捕まえられそうだったり追い詰めたりした時に限って結界に取り囲まれその度に環さんが戦ってくれた。
結局結界から抜けだして逃げるけど追いかけっこの間だけで既に二桁は使い魔と戦ってると思う。
戦闘が重なるにつれ、環さんは疲労感が拭えないのか顔色が悪くなっていった。
おそらく戦闘で魔力を酷使しソウルジェムを濁らせているためと思われる。
魔女化の恐れはあるが流石に主人公がこんな時に死なないだろうと謎の自信があるためそんなにビビっていない。
で、さっきようやくキュゥべえを捕まえられる寸前までいったのに俺が足を滑らせて環さんを巻き込んでこけてしまい結局逃げられた。
その事に落ち込んだ俺を見かねて休憩という形で今は公園のベンチに座っている。
休憩は今回だけじゃなく追いかけっこの最中、俺が何度もバテるのでその度に休憩のため何度も寄り道してもらっている。
・・・足手まといとかそういう比じゃねえぞ俺。
正直環さんだけだったらすぐ捕まえられてたかも・・。
「俺ってホント役立たずだぁ!!」
「そんな事ないよ!今回たまたま運が悪かっただけだよ!」
「え、でも俺のせいで・・」
「失敗は誰にでもあるからそんなに自分を責めちゃだめだよ。少し休んだらまた探しにいこう?」
「環さん・・・!」
ぐわああああああああああああ!
良い子過ぎる!
俺のあまりの役立たずぶりで上手くいかないのに怒ってないし気を遣ってくれてる!
主人公じゃなければ一生友達でいたかった!
いやむしろ拝みたい!いろは神として拝みたい!
「ありがたやーありがたやー」
俺は涙を流しながらこの慈悲深い女神さまの手を取ってひたすら拝みまくった。
ちなみに環さんの前で素が出てるのはキュゥべえを追っかけてる最中に素で喋ってしまったから。
最初は焦ったけどどうせもう会うこともないし別にいいやと開き直ったともいえる。
「え、えっと・・あれ神原さん、指怪我してるみたいだよ?」
「え?あれ?本当だ」
環さんが向ける視線の先に目を向けると彼女の手を覆う俺の小指に小さな切り傷が出来ており血が滲んでいる。
大方どこかでひっかけたのだろう。全く気付かなかった。
「ちょっと良いかな?」
俺は返事をするよりも前に環さんは怪我をしてる方の手に触れる。
環さんの掌から淡いピンクの光が輝きだす。すると俺の怪我はみるみる内に治っていきやがて跡形もなく消えた。
「はい、これで大丈夫だよ」
「ありがとう環さん」
「ううん、私の魔法が役に立てて良かった」
照れたように笑っている。
なんちゅう面倒見の良さだろうか。
今まで培われてきた環境というやつなのか?
これは下に弟か妹がいるとみた!
「思ったんだけど環さんって面倒見良いね。お姉ちゃんみたい。弟か妹でもいるの?」
興味がないがちょっとした疑問が湧いたため聞いてみることにした。
もし俺が元の男だったら不審者と疑われるが今は女。別に家族構成聞いても不思議に思われないしね。
「え?私は一人っ子だよ?そんなにお姉ちゃんに見えた?」
「違うの?」
キョトンとする環さんに俺もキョトンとしてしまう。
てっきりいると思ったのに俺の思い過ごしか?
思えばキュゥべえと追いかけっこしてる間、環さんの面倒見の良さはかなり際立っていた。
例えば喉が渇いた俺に飲み物を買ってきてくれたり、息が上がり過呼吸気味の俺の背中を擦ってくれたり、またある時は結界に閉じ込められて怖がる俺を慰めてくれたりしてくれた。
これがバブみを感じておぎゃるという奴だろうか?
凄まじいほどのお姉ちゃん力を痛感した。
それに比べて俺の情けなさが浮き彫りになるのはこの際、忘れよう。
しかし一人っ子でここまで世話焼きというのは本来の性格なのだろう。
さすが「まどマギ」外伝。
本家と同様、主人公の性格が大変よろしいようだ。
「じゃあ元々の性格かな?俺も一人っ子だからこんなお姉ちゃん欲しかったな。いっその事俺、環さんの妹に立候補してもいい?」
「え!?」
いたずら心で意地の悪い笑顔を浮かべてそう言うと信じられないくらい顔を真っ赤にして驚く環さん。これはとてもからかい甲斐がありそうだ。俺の隠れたS心に火が付きそう。
「冗談だよ。本気にした?」
「もう、あんまりからかわないでよ・・」
からかわれたと気づいたのか環さんは少しむっとしているが未だに照れてるのか顔が赤い。その表情を見るとニヤニヤが止まらない。
まあ、少しだけこんな(俺より年下だけど)お姉ちゃんがいればなぁとは思ったけどいかんせんこの娘は死亡フラグな主人公。お断り案件です!
ちなみに環さんの反応が面白いのは少し前から分かってたので実はほかにもやらかしている。
例えばキュゥべえ捜索中、休憩がてら寄り道したゲームセンターでの事。
何故か環さんはゲーセンを怖いとか言ってたので友達と行った事はないのかもしれない。
俺の中で環いろはにぼっち疑惑が浮上した瞬間だった。
ゲーセンで何をしてたかというとプリクラを撮りました!
どうせ神浜で別れたらもう会う事もないので今の内に主人公と出会えた記念を残しておかなければと思い提案。
最初は「恥ずかしいよ」とかほざいていた環さんだが、
『あんな「えろは」な魔法少女の恰好で戦っておいて今更恥もクソもあるか!』
と一喝し、無理やりプリクラに連れ込んだ。
無理に抵抗しない様子を見るとどうやら本人も自分の魔法少女姿がかなり際どい自覚はあるらしい。
プリクラは初めてなのか環さんは撮影中はずっと緊張しっぱなしで顔真っ赤にしてた。俺としては激レアだと思っている。
もちろん撮ったプリクラはもちろん半分こ。
多分環さんは捨てるだろうが俺は大事に持っておくつもりだ。
他にもエピソードがあるが今回はこれで終わらせておく。
「もう夕日が沈むね。遅くなりそうだから今日はご飯作るのやめとこう」
「神原さんは料理するの?」
ほとんど傾いている夕日を眺めながらそんな事呟くと環さんが食いついてきて内心驚く。
おれを見る目が少しキラキラしてるからひょっとしたら料理作るの好きなのかもれしれない。
「まあね。母さんは料理できないからね。いつも俺が作ってる。環さんも料理するの?」
「うん、私も料理するよ。趣味だから。得意なのは豆腐ハンバーグ」
「へぇ、食べたことないから興味あるなー」
「え?そうなの?美味しいよ」
料理が趣味なのは本当らしく少し早口になりながら答えている。
それにしても豆腐ハンバーグとはまたヘルシーな。
わざわざ豆腐をハンバーグにするなんて凝り性っぽい。絶対料理作るの上手いだろ。
俺は作ったことないけどどんな味がするんだろう。今度作ってみようかな?
・・・いや、豆腐でハンバーグするくらいなら普通にひき肉で食べたいわ
「・・あの、神原さん」
「ん?何?」
どうでもいい考え事していたら環さんに声をかけられた。
何か恥ずかしがってるのか顔を赤らめてモジモジしている。
「その、良かったら今度「モキュ!」キュ、キュゥべえ!?」
「テメエエエエエエエエエエエエエエエ!!見つけたぞコラアアアアアアアアアアアア!」
「モキュ!?」
俺たちが座る間にいつの間にかキュゥべえが座っていたのですぐに奴の背中をバッグで押さえつけ逃げないように体重をかける。
「モギュゥゥゥゥゥ!」
「何が『モギュゥゥゥゥゥ!』だ!こっちはお前の首をムギュゥゥゥゥゥ!したいんだよ!よくも人のスマホ盗みやがって!」
ジタバタと暴れる白い悪魔を体重をかけて押しつぶし咥えていたスマホを引きはがす。
よし無事戻ってきた!あとは盗人に制裁するだけ!
しばらく押しつぶしていたが我に返ったらしい環さんが慌てて俺の腕を握って止めようとしてきて思うように制裁が進まない。
「何してるの!?神原さんはスマホを取り戻す事が目的だったんだよね?キュゥべえを苦しめる事じゃないよ!目的を忘れちゃったの!?」
何言ってんだこいつ!?
お前さっき「あ、忘れてた・・」ってキュゥべえの存在すら忘れてたっぽい事、呟いたの聞き逃さなかったぞ俺は!
意外と抜けてる環さんはスルーしつつ再度白い悪魔を潰す事に専念する。
こいつのせいで今日は散々な目に遭ったのだ!この報いは死で償ってもらう!
「やめて!この子死んじゃうよ!」
「大丈夫!俺の勘がコイツは殺しても死なないと言ってるから!(嘘)」
咎める環さんに適当に言い訳して続行。
どうせ見た目多少違ってもこのキュゥべえも性能は一緒だろ!
「だめだよ神原さん!」
「あ!」
俺の行動を見かねた環さんは押しつぶす俺の横からとうとうキュゥべえを救出してしまった。
取り返したいが相手は魔法少女。おそらく不可能だろう。
キュゥべえを俺から隠す庇うようにギュッと胸の位置で抱きしめている。
「もういいでしょ?この子だってきっと悪気があってした訳じゃないだろうから許してあげて!」
「悪気がなくてやらかすのはこの世で最も性質の悪い事だと思うぞ俺は」
「でも・・っ!?」
「え?環さん?」
突然環さんが小さく呻いてそのまま俺の方に倒れ込んできた。
咄嗟の事で反応できず一緒に倒れ込んでしまう。
「いててて・・いったい何が?」
鈍い痛みを感じつつ起き上がろうとするが環さんが邪魔で身体を起こせない。
「ちょ、環さん!?」
どいてもらうように声をかけるも気を失っているのか環さんは目を閉じたまま。
何度も揺すってみるも反応はなかった。
「モキュ!」
「!」
いつの間にか環さんの腕から抜け出したらしい白いが悪魔がちょこんと座ってじっと俺を見上げていた。今も環さんは俺の上で気を失っている。
えええ!?なにこの展開!?
俺どうすればいいのおおおおおおおおおお!?
いろはちゃん第一話でした!
いきなりゲームと内容違いますがご了承ください!
ちなみに本来登場するはずだったかえでちゃんは別のところで魔女と遭遇してももこさんに救助されました。
やちよさんは急遽モデルの仕事が入っていろはちゃんを見張ってません!
いるのは優依ちゃんといろはちゃんだけ
果たしてこの後どうなるのかお楽しみに!