魔法少女オレガ☆ヤンノ!?   作:かずwax

69 / 98
最近Twitter始めました!

始めたのはいいんですけどひっそり呟いてたらひっそりとしか人が来てくれなくて寂しいので思い切って報告しました!

プロフ画面にも載せてます!

「かずwax」の名前でアカウント作ってるので検索したらきっとhitしますw

呟きはだいたいこのSSについて呟いてます!
寂しいんで覗きに来てください!(あんまりツイートしてませんけど!)


本編さやかちゃん編いきます!


63話 Mission「美樹さやかの契約を阻止せよ!」①

「あああああああああ!チクショウ!結局こうなるのね!俺の今日の苦労は一体何だったんだよホント!」

 

「ただの苦労で済めばいいけど君の場合、無駄を通り越して余計な事やらかしてるから自業自得としか言いようがないね」

 

「結果はともかく俺だってやれるだけの事はやったんだからもう少し優しい言葉をかけてくれてもいいんじゃない!?」

 

 

 

病院までの道を俺はシロべえと二人ひたすら走っている。

目的はもちろんさやかの契約を阻止するため。

 

 

 

まどかからさやかが病院に向かったと聞いて(制服に着替えた後)慌てて飛び出したのだ。

 

 

あれ?昨日テレポートしてたじゃん?何で使わないんだよと思うかもしれない。

 

 

実際、俺も時間短縮のため使おうと提案した。

 

 

しかし開発者シロべえ曰く「作るの大変」な上に、一枚しかなかったテレポートシールを昨日の「マミる」時に使ってしまったので在庫がないそうだ。

 

 

つまり楽する事は許されず親からもらった足で頑張るしかない。

 

 

第三者から見たら必死に頑張ってる感が出てカッコいいかもしれないがぶっちゃけ俺、体力が園児以下なので無事病院まで辿りつけるかどうかとても心配だ。

 

 

ちなみに今病院に向かっているのは俺とシロべえだけ。

残りのメンバーは待機だ。

 

 

どうして向かっているのが俺ら二人だけなのかと言うと理由は一応あるが深い考えではない。

単純にあの待機してるメンバーじゃさやかの説得は難しいと判断したからだ。

 

 

契約に限らずあの青猪を止めるのは難易度高すぎて笑えない。

 

 

強いていうなら一番有力候補なのはまどかだ。

ただし高確率でさやかに押し切られる可能性が否めない。

 

更に自棄を起こした上条のために契約しようと気が立ってる青の逆鱗にふれる可能性も否めない。

そうなったら今後の関係にヒビが入りそうだし長い間一緒に過ごした俺としてもそれは避けたい。

まどかはその慈悲深き心で気にもしないだろうが意外と繊細なさやかはめっちゃ気にしてまどかを避けるのが目に浮かぶ。

 

何より止めようとするまどかは魔法少女じゃない。

そんな娘が契約するデメリットを伝えてもさやかに響かない可能性が高いだろう。

 

 

 

ならば魔法少女であるマミちゃんとほむらはどうか?

 

この二人は現役だし生々しい魔法少女の実像の数々を教える事が出来るだろう。

 

 

 

ただ・・問題なのはこの二人がとんでもない曲者だという事だ。

 

 

 

 

前から崩れかかってた絹豆腐メンタルが現在進行形で絶賛崩壊中のマミちゃんに説得を頼むか

 

 

交渉事の成功率が毛根死滅した人に毛が生える奇跡と同じ勝率しかないほむらに説得を頼むか

 

 

 

Q:貴方はどっちを選んだら説得成功すると思いますか?

A(俺の答え):どっちも無理です。

 

まどかと比べるまでもない。

どちらも限りなく成功率は低いだろう。

 

 

 

だったら魔法少女二人とも連れて行くという選択肢もあるじゃないかと言うかもしれない。

しかし俺は昨夜から二人の仲の悪さは嫌という程思い知らされているので二人を連れていったらどう考えても更に悪くなる未来にしかたどり着かないだろう。

 

特にほむらはさやかに敵認定されてる。

顔を合わせたら色々ヒートアップするのはほぼ確定してるから洒落にならん。

 

 

なら一緒にまどかも連れていけばいいじゃない?と思うだろう?

ところがこれはこれで上手くいかない。

 

 

実はさっきマミホームでいがみ合ってたマミちゃんとほむらをまどかと一緒に宥めてたが一向に収まらなかった。しかも俺が宥めると奴らは更にキレる始末。放置しようにも放っておいたらまた殺し合いでもはじめそうな雰囲気だからスルーも出来ない。

 

時間がないのにどうしようかと頭を抱えたがまどかが「わたしに任せて!」と珍しく頼もしい事を言ってくれた。

それに甘える形でまどかに奴らを任せて(押し付けて)何とか脱出出来たところなのだ。

 

もし三人を無理に連れて来ても紫と黄色は喧嘩をおっぱじめ、ストッパーになってくれるだろうまどかは二人のイザコザに巻き込まれて説得の暇もないだろう。そしてその間にさやかは契約してる未来しか見えない。

 

 

なんだこの詰んだ未来は?

俺には(まどかを除いて)足の引っ張り合いしかしない奴しかいないのか?

 

あ、だめだ、これ以上考えたら泣きそう。

 

 

ちなみに三人が来ないもう一つの理由を挙げるとすれば、現在二人は魔女退治してるからというのもある。

 

俺がマミちゃんのマンションから出ると近くに魔女の気配が複数あったらしい(シロべえ談)。

シロべえの口添えもあってマミちゃんとほむらはそれらの退治に駆り出されている。

まどかは二人の見張りと安全のためにお留守番という側面もあるのだ。

 

 

 

だから(本当はめちゃくちゃ嫌だけど)俺が行くしかないんだ!

 

 

あのメンバーの中では最も適任だと思う!

 

なぜならさやかと俺の仲は(ほむらが転校してくるまでは)良好といっても過言ではないからだ!

 

俺はさやかにとって上条この野郎に関する恋の相談相手でもある。

さやかからの相談の大半は惚気と愚痴ばかりだが伊達に一年の時から相談(ノロケモドキ)に乗ってるから一応信頼はされてるはず!

 

それにあいつは魔法少女体験コースに俺を無理やり巻き込んだ事を負い目に感じているようだったし、俺の姿を見れば現在熱々になっているであろう頭を多少冷やしてくれるかもしれない!

 

頭が冷えればいくらあの猪でも多少聞く耳があるなら何とかなるはずだ!

 

そう信じたい!よし希望が見えてきた!

 

 

 

微かに胸に躍る希望が俺に活力を与え本来なら既に足が棒のようになっているのに今はどんどん加速している気がする。うん、気のせいだった。ランドセル背負ったぽっちゃり小学生に今追い抜かれたわ。

 

 

さり気なく凹みつつも思考を切り替え、走りながらさやかをどうするか考える。

 

 

 

・・・たらればで言えばもしここに杏子がいれば展開は全く違ったかもしれない。

 

 

 

二人が先に出会っていて仲が良好なら、さやかが一時の気の迷いで契約しそうになっても杏子が全力で阻止してくれただろう。似た者同士だから絶大な説得力があるに違いない。

 

 

ついでに杏子も弱点ともいえる自身の過去にきちんと向き合えて吹っ切る事が出来るはずだから一石二鳥!

 

 

あー・・そう考えればやっぱり二人を先に会わせておいた方が良かったかも・・。

 

 

 

今更ながらに胸に後悔が過る。

 

 

こんな事を考えても仕方がない。

気持ちを切り替えて契約阻止に尽力するしかない!

 

 

その後の事はまたその時に考えればいい!

 

 

よし決めた!

 

 

さやかの契約を阻止出来たら杏子に紹介しよう!

 

 

 

すぐに意気投合するだろうし、あわよくばリアル百合を見れるかもしれない!

 

 

そうなったらトモっちに自慢しまくらなければ!

 

 

いやー、今から期待が膨らむね!

 

 

 

 

 

 

「ニヤニヤして気持ち悪いよ。何考えてんの?」

 

 

 

 

走る俺の足元近くに相変わらず毒を吐く白い物体が一つ。

ちょうど良い位置にいるので憂さ晴らしも兼ねて蹴っ飛ばしてやるのもありかもしれない。

 

 

ニヤニヤではない!ニコニコと言え!

 

 

普段ならカチンとくるが今の俺は気分が良い。

 

 

なんていったって素晴らしい作戦を思いついたからな!

いつも通りの毒舌宇宙人の挑発に乗ってやるものか!

 

 

「何とでも言え!こんな状況だからこそ明るい未来を想像してるのさ!」

 

 

シロべえの無機質な(=冷ややかな)目がハイテンションな俺を映す。

そこには過分に蔑みの念が含まれてる気がしないでもないが気にしないようにしよう。

 

 

だって今の俺はそんなもので怖気づくほどビビりではないからな!

 

 

 

「はいはい。で?一体どんな明るい未来を想像してたのさ?どうせ下らないんだろうなー・・」

 

 

「やかましい!・・ゴホン。・・なあ、シロべえ」

 

 

危ない危ない。危うく奴のペースに嵌る所だった。

何とか咳払いして仕切り直したらシロべえから「何?」と返ってきた。

下らないと言いつつも一応話だけは聞くらしい。

 

そこはインキュベータ―と言ったところか。

精神疾患の状態でも使えそうなものがないか常にアンテナを張っているようだ。恐るべし。

 

ならば俺も全力それに答えなくては!

 

 

「思ったんだけどいっその事さやかを杏子の友、いや嫁にしちゃうのはどうだろうか!?」

 

 

思った以上に興奮していたのか俺はズイッと足元を走るシロべえに顔を近づけて早口でまくし立てる。

 

 

 

『さやかを杏子の嫁にしちゃおう作戦』

 

 

 

咄嗟に思いついた事だが我ながらナイスアイデアではないだろうか!?

 

 

リアル杏さや

 

ファンにはたまらない展開だ!

 

 

この作戦さえ成功すれば、さやかと杏子の確執が解決しめでたくゴールインを迎える。

その様を俺がニヤニヤしながら観察する。

 

 

これぞ誰も傷つかないまさに平和なハッピーエンドではないか!

 

 

 

これが昨夜は黄色と紫のせいで寝不足気味な頭が導きだした俺の答えだ!

 

 

 

若干ドヤ顔しつつ自信満々に走りながら杏さやの尊さをシロべえに語る俺。

 

しかしその肝心のシロべえはというと、絶対的自信のある俺の杏さや計画に懐疑的らしくさっきからずっと首を捻っている。

 

おかしい。どうしてシロべえは納得しない?

 

これは犠牲者もなく円満解決できる作戦のはずなのに!

 

 

・・俺の説明のどこかに綻びがあったのだろうか?

 

 

 

 

「それで?絶対上手くいかないだろうけど具体的にどうするのさ?」

 

 

 

ひとしきり俺からの説明が終わった後、シロべえは半ば投げやりっぽい言い方でそう質問してきた。

 

 

どうやら奴はこの作戦失敗すると踏んでいるらしい。何故だ?

 

 

しかしここで諦めてはいけない!

困難な状況ほど人は燃え上がるというものだ!

 

特にご褒美があるなら尚更だ!

全国の杏さやファンがこの展開を待っているんだ!

 

 

 

「えっと、そうだなー。まずは杏子とさやかを引き合わせようと思うんだ。お互い初対面な訳だし俺が仲介人として仲良くね?とそういう雰囲気を出せばきっと上手くいくさ!元々気の合う二人だし」

 

 

俺は頭を捻ってまだ全容を考えていない杏さやプランを口にする。

 

この作戦はさやかと杏子を会わせない事には始まらない。

出会うシチュエーションも考えておいた方がいいかもしれない。

 

 

しかしシロべえから「待った」がかかった。

 

 

「そもそも会う気がないって言ったらどうするのさ?」

 

 

「え?なら興味を持ってもらえるように俺が相手の長所を褒めまくるとかどうだ?例えば杏子の場合、本人の前でさやかの事をとっても明るく可愛いんだよーとか、俺が男なら嫁になって欲しい女の子だよーって言ってみるのもいいかも」

 

「うん、それ絶対やめた方がいいよ。佐倉杏子にそんな事言った次の日あたりに河原で美樹さやかの惨殺死体が発見されそうだから」

 

「え!?」

 

 

平和的解決策のはずなのにシロべえはとんでもなく物騒な事を吐いてきて思わず仰天しながら足元にいる白い奴を見る。

 

 

杏子の前でさやかを褒めると何でそんなおっかない展開になるんだ!?

ただ単に俺のバカバカしい計画に反対なだけなんじゃねえのこいつ!?

 

 

「不満そうな顔してるけどこれは僕が真面目に考えて導き出した確実に起こりうる最悪な未来の結末さ。というかちょっと考えれば誰でも分かることだから」

 

 

不満たらたらな俺の表情は背中からでも分かったらしくうんざりした声でそう告げられてしまった。

 

簡単に言いやがって!

まどマギファン達がどれだけ二次創作で杏さやIF展開を作ってきたと思ってんだこいつは!

つうかシロべえは忠告してんのかダメ出ししてんのかどっちなんだよ!?

 

 

「はあ!?何でそんな事になんの!?出会い方が違えばあの二人は絶対仲良くなれるはずだ!アニメ観てた俺が言うんだから絶対そうに違いない!」

 

 

絶対そうだ!そうに決まってる!

さやかと杏子はこの時間軸でも仲良くなれるはず!・・きっと

 

 

 

 

 

「優依」

 

 

 

 

その時だった。不意に名前を呼ばれたのは。

 

 

 

 

不貞腐れながら「何?」と下を見るとシロべえが立ち止って俺を見上げている。表情は無表情なのに雰囲気はとても真剣に思えた。

 

 

 

 

「ちゃんと向き合わないとだめだよ」

 

 

 

 

シロべえは静かにそう言った。

そんなに大きな声で言ったわけじゃないのにやけにはっきり聞こえた気がする。

 

 

 

どれくらい時間が経ったのか分からない。

長いような短い時間お互いの顔を見ていた気がする。

 

 

 

 

「・・まあ、向き合ったら向き合ったで優依はただ絶望するだけだしなー。ホント詰みゲー」

 

 

 

急にいつもの雰囲気に戻ってシレっと気になる事を呟いていた。

 

 

 

 

「え?シロべえそれって? おい!急に走るな!置いてかないでよ!」

 

 

 

どういう意味か問いただす前にシロべえはすぐに前を走り出したので慌てて後を追う。

何度もさっきの意味を聞いてみるもシロべえは「自分で気づかなきゃだめだよ」と返すばかりで何も答えてくれなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぜぇぜぇ・・つ、着いた」

 

 

 

病院に到着する頃には虫の息だった。

走りながら喋っていたから当然の結果だ。

 

 

たまたま用がある人物が病院にいるから会いに来ただけなのに一歩間違えればこの場所の本来の用途通り俺は病院に担ぎ込まれそうな状態だ。

さっきなんて人の顔色を見た通りすがりの医師が俺を担架で運ぼうとしていたからな。かなり具合悪そうに見えてるらしい。

 

 

 

≪ほら、さっさと行くよポンコツ。休んでる暇ないから≫

 

≪分かってるよ!≫

 

 

今尚ゼエゼエいってる俺に対してシロべえは全く息が切れていない。

 

そりゃそうだろう!

途中で疲れたとかぬかしてどこからか取り出した風船みたいなものに乗り込んで俺にしがみ付いてたからな!

 

 

浮いてるからか重さは全く感じなくて疲れはしなかったけど精神的な苛立ちと殺意で凄く疲れを感じた。こんな事なら風船を割るか遠くに放り投げるかすれば良かった!

 

 

今は怒る時間もないため、あまり体力が戻っていないまま気力を振り絞りヴァイオリン馬鹿のいる病室まで走・・れないので小走りで目指す。

 

 

奴の病室はさやかの付き添いで何度かお見舞いには来ているため場所は知ってる。

エレベーターに乗り込み上条アンチクショウが入院してる階までついて部屋プレートに書かれている名前を目で追う。

 

 

えーと、あった!

 

「上条」と書いてある。ここだ。

 

 

 

扉を開けようと取っ手に触れる瞬間、勢いよく扉がガラッと音を立てて自動で開く。

 

 

 

「わ!」

 

 

「優依!?」

 

 

目の前にいるのは目的の人物さやか。

取っ手を持っていることからどうやら彼女が扉を開けたらしい。

 

 

「・・・っ」

 

 

咄嗟の事でお互いどういう反応をすればいいか分からず少しの間、固まっているとさやかの方から先に気まずそうに「ごめん」と目を逸らされ逃げるように廊下を走っていく。

 

 

 

「あ、さやか待って!廊下は走っちゃだめだよ!」

 

 

 

咄嗟に出たセリフがこれって情けない。もっと他になかったのだろうか?

 

 

一瞬こんなセリフでも止まってくれないかな?と思ったがそんな事は一切なかった。

さやかは「廊下は走っちゃダメでしょ!」と怒鳴る看護師さんの声を無視してひたすら駆けて行く。

 

 

急いでる感じといい、さっきの態度といい、間違いない!

 

 

 

 

さやかは今から契約する気だ!!

 

 

 

 

急いで追いかけて契約を思いとどまるように説得しなきゃ!!

 

 

 

「神原さん・・何しにきたの?」

 

 

 

ダッシュを決める直前、病室の中から色ボケ野郎が不機嫌さを隠さない声で話しかけてる気がする。

スタートダッシュを邪魔された上にこの事態を招いた奴の声を聞いた俺の怒りのボルテージは上がっていく。

 

 

 

 

「うるさい!爆発しろリア充がぁぁぁぁ!!」

 

 

 

 

 

「え!?」

 

 

 

 

 

リア充野郎に渾身の捨て台詞を吐いて反応を確認しないまま、さやかを追うため俺は足に力を込めてダッシュを決める。

 

 

だがそれは失敗に終わった。

 

さっきさやかに注意してた看護師さん(オバちゃん)に首根っこを掴まれ説教を受ける羽目になった俺は大幅な時間ロスをくらうという痛恨のミス。

 

 

 

世の中理不尽だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さやかside

 

 

 

 

 

「もう聴きたくないんだよ!自分で弾けもしない曲なんて!」

 

 

ガシャンとガラスが割れる音が夕暮れの病室に響く。

恭介の手はCDプレイヤーを叩き壊した際の傷で血が流れている。

 

あたしは呆気にとられてしばらくは声を掛けることも動く事も出来なかった。

 

 

 

放課後、異様なメールを送った優依が心配になったあたしは病院でカウンセリングの先生に相談して今度その友達を連れてきて言われてそこで別れた。

 

その後、ついでと言っちゃなんだけど恭介の探してはCDが見つかったしお見舞いに行ったんだけど、どこか様子がおかしかった。あたしに向かって「いじめてるの?」って聞いてきたから。

 

そしたら突然、叫んでCDプレイヤーを叩き壊した。

 

 

一体恭介に何が起きたのか分からないあたしはただ茫然とするしかなかった。

 

 

 

 

 

「こんな腕・・!」

 

 

「や、やめて!」

 

 

 

恭介が再び腕を振り下ろそうとするからようやく我に返り急いで身を乗り出して腕にしがみつく。無理にでも止めないと今の恭介ならずっと手を傷つける事をやめないかもしれない。それくらい荒れてるように感じる。

 

 

「大丈夫だよ!きっと治るよ!諦めなければきっといつか・・!」

 

 

腕に必死にしがみつきながら何とか励ましてみるも効果があると思えない。

けどそれでもないもしないよりはマシよ!

 

 

 

「・・・んだ」

 

 

腕を抑えるのに必死なのと恭介の声が小さかったから何を言ってるのか理解できなかった。

だけど酷く沈んだ恭介の声はやけにあたしの耳に響いた。

 

 

 

「諦めろって言われたんだ」

 

 

 

恭介が涙声で今度はそうはっきり言った。

 

 

 

「え・・・?」

 

 

 

諦めろって・・何を?

 

 

 

あたしが何も答えられないでいると涙ながらに恭介は語った。

 

今の医学では恭介の腕は治らない事。

ヴァイオリンは諦めろと医者に言われた事。

今も手から血が流れてるのにその痛みすら感じないらしい。

 

 

「そんな・・」

 

 

残酷な現実にあたしは恭介の腕にしがみついたままで口を開くことが出来なかった。

 

 

 

「奇跡か魔法でもない限り・・」

 

 

”この腕は治らないんだ・・!”

 

 

 

苦しそうに呟く恭介の声が病室に響く。

 

 

 

これ以上苦しむ恭介の声を聞きたくない・・!

 

 

 

 

「あるよ!」

 

 

 

気が付いたらあたしはそう叫んでた。

 

 

 

「奇跡も魔法もあるんだよ!」

 

 

恭介をじっと見つめながらそう口にしたのに声の響きはまるで自分に言い聞かてるみたいに思う。

 

 

 

そっと視線を窓に移す。

 

 

風でなびくカーテンの先に映る影をとらえた。

そこにはいつからいたのかキュゥべえがいて、赤く光る目があたしを見ている。

 

窓の外にいるキュゥべえはテレパシーであたしに話しかけてきた。

 

 

≪願い事を決めたみたいだね?≫

 

≪うん、決めたよ!あたし魔法少女になる!≫

 

≪分かった。ここは人目につくから屋上で契約しよう。待ってるからね≫

 

 

 

それだけ告げてキュゥべえは瞬きする間に消えていた。

 

 

 

「さやか・・?外に何かあるの?」

 

「え?ううん、何でもないよ!」

 

 

 

窓をじっと見ていたあたしを恭介は不思議そうに見上げているから苦笑いをして曖昧に誤魔化す。

 

 

「あたし用事を思い出しから今日は帰るね!またお見舞いに来るよ!」

 

 

早口でまくしたてて急いで病室の扉を開ける。

 

 

 

急いで屋上にいって契約しなくちゃ!

 

 

 

でもそれはすぐに出鼻をくじかれる。

 

 

 

 

 

「優依!?・・・っ」

 

 

 

 

 

勢いのまま扉を開けた先に優依が立っていて一瞬動けなかったから。

優依の方も驚いてたみたいで大きく目を見開いている。

 

そのままお互いどういう反応をすればいいのか分からず立ち尽くす。

 

 

あたしはじっと優依を見ながら昨日の出来事が鮮明に思い出していた。

 

マミさんが魔女に頭を齧られてる光景

地面に叩き付けられる瞬間に見えた頭部がない身体

魔女から聞こえる生々しい咀嚼の音

 

 

あれは偽物でマミさん本人は無事だったけどあたしが恐怖を覚えるには十分で今思い出しても身体が震えてきそう。

 

 

 

”この腕は治らないんだ・・!”

 

 

頭の中で苦しげに叫ぶ恭介の声が響く。

 

 

 

 

死にそうな目に遭うから何だっていうの?命を懸けてまで叶えたい願いが見つかったんだ!

 

 

 

あたしが契約して恭介の腕を治す!

 

 

 

マミさんはきちんと考えてから願いごとを決めないとダメって言ってけど、あたしはこの願いに後悔はない!

 

 

 

でもそれは絶対優依に知られちゃいけない。

 

優依は最初から魔法少女に懐疑的だった。

 

今からあたしが契約するなんて言ったら絶対反対するに決まってる。

それに優依の顔見てたら決意が揺らいじゃうかもしれない。

 

だから直接顔を見ないように視線を逸らしてあたしは廊下を走る。

背後から「さやか!」とあたしを呼ぶ優依の声が響いて立ち止まりそうになったけど構わず走った。

 

 

次第に優依の声は遠ざかっていく事に何故か寂しさを覚えたけど何でだろう?

 

 

 

 

 

「何でエレベーター動かないの!?」

 

 

 

 

優依を振り切ったのはいいけど屋上に行くためのエレベーターが一向にくる気配がない。

動いていないのか何度もボタンを押してもだめ。

 

まさかよりにもよってこんな時に故障!?

恭介がまたヤケを起こさない内に契約しなきゃいけない!

こんな所で無駄な時間を過ごしてる暇なんてないのに!

 

「ああもう!」

 

 

痺れを切らしたあたしはエレベーターを後にして階段に向かった。

恭介の病室がある階から屋上まではそこまで距離は離れていないけど階段でとなると少し負担が大きい。

 

 

「はあ、はあ」

 

 

息を切らしながらも優依が追ってくるかもしれないから休んでなんていられない。

 

それに早く恭介の腕治したい!

 

 

踊り場に到着し残す階段で最後。

 

 

あと少し、あと少しで屋上まで辿り着く!

そしたらキュゥべえと契約して恭介の腕を治してもらおう!

 

 

一気に階段を駆け上がる。

 

 

はやる気持ちを押さえつつ屋上の出入り口を見た。

 

 

「っ!」

 

 

息が止まりそうになる。

それにつられて足も止まってしまい屋上に到達する寸前であたしは立ち往生している。

 

 

 

え?どうして?何でこんな所に?

 

 

 

頭が混乱してどうしようか迷っているのに向こうはそんなあたしを見てにっこり微笑んでる。

どういう表情をすればいいのか分からない。ただ戸惑うだけ。

 

 

 

「さやか」

 

 

 

「優依・・」

 

 

 

 

さっき恭介の病室前で偶然鉢合わせした優依が屋上を背景に階段に座ってあたしを見下ろしてる。




さやかちゃん編始まりました!
優依ちゃんは契約を阻止できるのか!?
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。