魔法少女オレガ☆ヤンノ!?   作:かずwax

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何故だ?

何故Twitterのリンクが上手く張れないんだああああああああああああ!?


65話 知り合いにバッタリ出会う 人はそれをフラグと呼ぶ

「まずいぞ!さやかが全然見つからない!マジでどこ行ったんだよあいつ!?」

 

 

夜の闇に輝くネオンの光が眩しい繁華街。

俺はその煌びやかな街中でひたすら突撃馬鹿な青を見つけるため奔走していた。

しかし病院を出てからずっと探しているのに肝心のさやかが見つからない。

 

おそらく契約したであろう青は俺に出くわさないように隠れているとしか思えない。そう思う程、さやかの足取りを追う手がかりが全くなかった。

 

 

「うわあ・・ほむらに見つかる前にさやかに会いたかったけどもう粗方探したからなぁ。もう心当たりないぞ」

 

 

夜、半泣きで繁華街をウロウロする女子中学生がいる。まあそれは俺なんだが。

 

これからどうしよう?帰れないよマジで俺。

 

 

 

 

「うぅ・・」

 

 

 

「あ、シロべえ!大丈夫か!?」

 

 

うめき声が聞こえたので俺の肩に乗っている白いマフラーっぽいものに視線をうつす。

さやかの全体重がかかった足で踏まれ仮死状態だったシロべえがようやく意識を取り戻したらしくしきりと呻いている。

 

こいつは口を開くとうるさいが内心これからどうすれば・・と心細かったので復活してくれるのはありがたい。

奴の知恵を借りれば打開策(=ほむらによる折檻回避)が思いつくかもしれない!

 

 

「喋れそうか?」

 

「何とかね。酷い目に遭った・・。滅茶苦茶だよ美樹さやか。よくも僕のキューティクルな背中を思いっきり踏んづけてくれたね。危うく中身が潰れる所だったよ・・」

 

 

シロべえの背中にはくっきりと足跡が残っている。

前回杏子(?)に蹴られた時以上にくっきり。よほど思い切り良く踏まれたらしい。

踏まれた時は俺から見ても凄まじい身体の凹み具合だったのにむしろ死んでない方が驚きだ。

 

インキュベーターって身体自体はひ弱なイメージだけど精神疾患は例外で頑丈なのか?

 

 

「足元でふざけるからだろ。それにあのさやかが自分の足元見る訳ないじゃん。だから足元掬われるんだろうなぁ。あ、俺上手い事言った」

 

 

我ながら中々うまい事言えたとほくそ笑んでると八つ当たりの如く後頭部を尻尾でバシバシ叩いてくるので結構痛い。

 

 

「うっざいなぁ。全然上手くないよそれ。まあ、僕はまだ良いよ。自分に非があるわけじゃないし、ただミステリアスキャラを披露しようとしてただけだから。・・むしろ優依の方だよね?非があるの」

 

「な、何の事ですか・・?」

 

 

シロべえの指摘に一瞬ビクッとなった。

尋問じみた話し方のせいで額に一筋を汗が流れ落ちる。

 

 

まさか・・奴は見ていたのか俺の失態を?

 

てかミステリアスキャラって何だ?お前それと真逆の立場なコミカルキャラだろ!

そもそも気絶していたはずじゃ・・?

 

 

だがそんな俺の甘い期待など大昔から大勢の少女たちを絶望させてきた悪魔には通用しなかった。

テンパる俺の顔を奴の赤い瞳の中でマヌケに映しながらゆっくり語りかける。

 

 

 

「・・君が階段ですっ転んで悶絶してる姿ばっちり撮ってるよ?ほむらに見せようか?」

 

「やめて!!」

 

 

 

賑わう繁華街の街に俺の泣きそうな声が響き渡る。

周りにはいた人は俺を奇異な目で見ているがそんな事は気にならないくらい低頭平謝り。

 

シロべえが目を覚ましたのはありがたいと言ったのは撤回しよう。

二度と目覚めなきゃ良かった。

やっぱり悪魔はどんな時でも悪魔なんだと思い知らされたよ・・。

 

 

「で?優依は今何をしてるの?」

 

 

俺の謝罪をしばらく堪能したシロべえは俺の今の行動を意味を聞いてきた。

ぶっちゃけ答えなくないけど完全に俺の負け。

軍配は向こうに上がっているからどうしようもない。

シロべえに聞かれるまま俺は素直質問に答えるしか生存の道はないのだろうか。世辞辛い。

 

 

「えっと、契約したであろう美樹さやかさんを追ってます」

 

「はあ?さやかはもう契約しちゃったのなら探す必要はないんじゃないの?」

 

「いやー・・それは」

 

「・・・ふーん」

 

 

口ごもる俺にシロべえは何か察したようで一人納得顔。

そしてそのまま冷ややかな声で俺に話しかけてくる。

 

 

「まさか・・ほむらに報告するのが怖いからさやかを探すふりして逃げ回ってるんじゃ?」

 

「そ、そんな事ないよ!」

 

 

 

 

やっべえ、バレてる!

 

 

相変わらず鋭い奴だ。はい、シロべえの言う通りです。

 

 

実は俺、真剣にさやかの事を探していない。

だって見つけたところであいつは既に契約済みだから手遅れだろう。

 

 

さやかを探している理由は所詮時間稼ぎだ。

 

何のと言われればそれはもちろんほむらにどう言い訳しようかと考えていたとしか言いようがない。今の所、まともな案はないが。

 

連絡なんてしようものならさやかが契約した事が速攻でバレるから未だにほむらとマミちゃんには伝えていない。

実質放置状態が続いている。

 

 

「あのさ、いずれバレるんだから早いとこ素直に謝ったらどう?その方が傷は浅いよ?」

 

「い、いや!まだ希望はある!だって俺が見たのはもぬけの殻の屋上でこの目でさやかが契約してる所を見たわけじゃない!ひょっとしたら俺の思い込みなのかも!」

 

 

そう!人間というのは見たことを勝手に解釈して事実を捻じ曲げる事が多々ある!

俺が見たのは誰もいない屋上!さやかじゃない!

つまりさやかが契約していない可能性もなきにしもあらず!

 

おお!咄嗟の言い訳だったけど何だか希望が湧いてきた!うかうかしていられない!

シロべえはもう俺が逃げ回ってるって確信してるみたいだけどそんな事関係ない!

俺が間違ってないと証明するためにもさやかを見つけなくちゃ!

 

 

「よし!他場所も探してみよう!」

 

「・・別にいいけどさ。もう、遅いよ?明日も学校なのに大丈夫かい?」

 

 

ハイテンションで走り出そうとする俺にシロべえが呆れの声で話しかけてきて出鼻を挫かれる。

試しに携帯の画面を見ると時刻は中学生はとっくにお帰りの時間帯になっていた。

 

正直もう帰りたいが今帰ったら確実にほむらに捕まるからだめだ!

避難する意味も込めてもう少し時間を稼がなくちゃ!

 

 

「大丈夫だ。まだ帰らない。とにかくほむら・・じゃなくてさやかを見つけるまでは!て、あれ?」

 

 

もう一度スタートダッシュを決めようとした俺の目にあるものが視界に入り足を止める。

俺の目線の先、遥か前方にある噴水の近くでとても見たことがある人物がトボトボ歩いている。

よく目を凝らしてじっと観察すると次第にそれが誰なのか理解出来た。

 

 

俺の見間違いじゃなければ前方を歩いているのは奴だ!

 

 

「よっしゃ!帰るか!」

 

 

速攻で帰宅を決定した俺は来た道を回れ右して再び走る。

その速度はさっき走ってた時よりも遥かにスピードアップしている。

そしてまだまだ加速段階に入っているといっても過言ではないかもしれない。

 

 

一刻でも奴から離れなければ!

 

 

「優依どうしたの?誰かいたのかい?」

 

「別に誰も!とにかく今日はもう帰った方が良さそうだ!」

 

 

どうやらシロべえは後ろに誰がいるのか気づいていないようだ。

それは好都合。ないと思うがコイツから絡んでいったら厄介な事になるし今の内に避難しておこう!

 

さやかを探していた時など比にならない程、俺は渾身の力を足に込めてコンクリートの道に叩き付ける。

一定の距離を走ってチラッと後ろを盗み見みたが追ってくるどろこか気づいている気配はない。

 

 

よし!この調子なら逃げられそうだ!

 

フハハハハハ!俺は無事死亡フラグから脱出したぞ!

 

無事フラグ回避出来た事に人目も憚らず高笑いしそうだ!

いっその事してしまうのもありか?ありだな!

 

 

 

 

「優依」

 

 

 

 

いざ高笑い!と思った矢先、俺の肩に乗っている白い奴が邪魔をしてきた。

コイツ本当にタイミング悪すぎだろうが!

 

 

 

 

「・・何かなシロべえ?」

 

 

 

「誰かが君の事追いかけて来てるみたいだよ?」

 

 

「え?」

 

 

 

 

 

 

 

「――ちゃん!」

 

 

 

 

 

 

「!?」

 

 

 

 

シロべえの言った通り走る俺の背後から誰かの声が聞こえる。

 

一瞬ヒヤッとしたが微かに聞こえる程度だから気にしないでおこう。

きっとここにいる人たちの話し声だ。シロべえは過敏になり過ぎてるだけさ!

決して彼女の声ではない!

 

 

 

 

 

「優依ちゃん!」

 

 

 

「! ひぃ!」

 

 

 

 

き、気のせいじゃない!明らかに聞き覚えのある声が俺の名前を呼んでいる!

この声、俺がここから逃げる理由になった奴の声じゃん!

しかもさっきよりもはっきり声が聞こえるんですけど!?

 

 

 

 

 

 

まさか・・?

 

 

 

 

恐る恐る背後を確認する。

 

 

 

 

「!?」

 

 

 

 

 

すぐさま顔を元に戻し全力疾走を開始!

 

 

 

 

ヤバいヤバいヤバいヤバい!!

 

奴が笑顔で手を振りながら俺を追いかけてきている!

何故追いかけてくるんだ!?何故俺の存在に気付いた!?

 

 

 

 

 

「優依ちゃん待って!」

 

 

 

 

来るなああああああああああああああ!!

 

 

 

 

「ねえ優依、あの声って・・」

 

「言うな!」

 

 

シロべえを黙らせた後は最早喋る余裕なんてなかった。

 

 

走る事だけに集中しなくてはならない!なんとかして奴をまかなければ!

うおおおおお!思ったよりもアイツ足早い!

 

 

怖ええええええええええええええええええええ!!

 

 

 

段々足音が大きくなってくる。近づいてきてるのは明白だ!

確か運動は普通だって言ってたくせに追いつくの早くないか!?

 

 

 

まずいこのままじゃ・・!

 

 

 

 

「止まって!」

 

 

 

「っ!」

 

 

グッ腕を掴まれ足がそれ以上前に進まない。

振りほどこうとしてもガッチリ掴まれていて脱出不可能。

 

 

どうやら俺はここまでのようだ・・・。

 

 

絶望が心を支配しガックリと頭を項垂れる。

 

 

「はあ、はあ・・良かった。追いつけた・・」

 

 

俺を捕まえた鬼は息を切らしながら安堵の表情を浮かべている。

どうやら全力疾走で走ってきたらしい。

それは分かるが盗み見した時は手を振って楽しそうな笑顔だったからかなり余裕そうに見えたのは気のせいか?

 

渋々頭を上げて俺を捕まえた鬼を死んだ目で見つめる。

 

 

 

「優依ちゃん」

 

 

「・・まどか」

 

 

鬼もとい鹿目まどかはにっこり笑って俺を見上げていた。

 

そうです。俺が見つけたのはまどか。

前方を横切るように歩いていたのを確認し関わりたくなかったので回れ右して逃げようとしたのだ。無残な結果に終わったがな。

 

 

「うん、わたしだよ。驚かせちゃってごめんね。優依ちゃん声かけても全然気づいてくれなかったからこうするしかなかったの」

 

「そ、そうなんだ。ランニングしてて気づかなかったなー。こちらこそごめんねー」

 

 

どこの世界に制服でランニングする女子中学生がいるんだと思うがこうなったら誤魔化すしかないのでこのまま押し通そう!

 

 

「ホントだよ。全然気づいてくれないから一瞬無視されたのかと思って泣きそうになったけどわたしの気のせいで良かった!」

 

「そうだよー。まどかのき、気のせいだよー、ははは・・」

 

 

すみません気のせいじゃないです!

君の仰る通りわざと無視しようとしましたごめんなさい!

 

 

周囲に俺の乾いた笑顔が響く。

誤魔化してきれてる気がしなくて背中の汗はダラダラと流れている。

 

一瞬まどかがマジで泣きそうな顔していたから余計バレるわけにはいかない!

この事がもしほむらにバレたら“私のまどかを無視するなんて!”とか難癖つけられて俺は殺される!

何としてでも誤魔化すんだ!

 

 

それにしてもまさかここでまどかと出会うとは思わなかった。

てっきりあのまま家に帰ったかもしくはほむらと一緒かと思ったんだけどどうなってんだ?

 

それも気になるが今はまどかと話をするの気まずい!

さやかの契約阻止の後ろめたさもあるからどんな顔していいか分からない!

 

 

そしてまずいぞ!

 

 

ここにまどかが現れたという事は状況は原作通りに進んでいるという事だ。

もし俺の推測が当たっているならばこの流れは、

 

 

 

さやかが契約する

   ↓

まどかが繁華街を歩く

   ↓

魔女の口づけをくらった夢遊病な緑に遭遇

   ↓

集団自殺の現場に突撃

   ↓

あ、野生の魔女が飛び出してきた!

 

 

 

ていう展開が待っている。冗談じゃない!

 

 

 

いくら今回は誰も死なない展開だったとしてもわざわざ危険な目に遭うなんて馬鹿げてる!

というか邪神に目を付けられてる俺が関わればどんなヤバい展開が待っているか考えただけでも恐ろしい!

 

どうせ魔女はさやかがやっつけるだろうし。もしくはマミちゃんかほむらが来るはずだ。

現に二人にはさやかが契約した後どうなるか伝えてある。まどかが危ない目に遭うのも勿論伝え済み。

まどかだって二人の携帯番号知ってるし助けを呼ぶくらい造作もないはず。

 

 

俺は関係ない!一刻も早くまどかから離れたい!

よし帰ろう!最近帰れていない愛しきマイホームに!

ここんとこずっと寝不足気味だから今日はぐっすり眠ろう!

 

 

「ごめんね!俺ちょっと急いでるんだ!すぐに行かなきゃいけないからもう行っていいかな!?」

 

「あ・・」

 

 

バっとまどかが掴んでる腕を引き剥がすとすぐに踵を返す。

 

 

じゃあ頑張れよまどか!

俺は巻き込まれない内に逃げるから!

 

 

そのまま駆け出して徐々にまどかから離れていく。

 

 

 

しかし逃げるなんて選択肢は俺には用意されていなかったみたいだ。

 

 

 

 

「優依ちゃん、さやかちゃんは?」

 

 

 

まどかが禁断の一言を発してしまい俺はピタリと止まりただ立ち尽くす。

ギギギと油を差し忘れた機械のような鈍い動きでまどかの方に振り向いた。

その時見たまどかの表情はとても泣きそうに見えたのはきっと気のせいではない。

 

 

「えっと・・」

 

 

思わず口ごもる。

 

どう言い訳しよう?

ちゃんと現場を見た訳ではないがさやかが契約したのはほぼ確実だ。

俺を信じて任せてくれたまどかに失敗しましたなんてどの口が言えるんだ?

 

ほむらより難易度高いんですけど。

 

 

「さやかちゃん一緒じゃないの?」

 

「・・・・はい」

 

 

最後聞いてくるまどかに観念して正直に答えるしかないので素直にうなずく。

 

 

「どうして一緒じゃないの?」

 

「う・・」

 

 

「やあ、初めまして鹿目まどか。僕がシロべえさ」

 

 

口ごもっていると思わぬ所で助けが来た。

 

いきなり俺の顔の前にぬっと白い何かが現れまさかの自己紹介。

突然の出来事にまどかは驚いていてシロべえをまじまじと見ている。どうやら今存在に気付いたらしい。

 

 

「え?えっと初めましてシロべえ・・だよね?わたし鹿目まどか。ほむらちゃん達から話は聞いてるけどキュゥべえのはぐれなんだよね?」

 

「その言い方はあまり歓迎しないな。どうせなら他のアンドロイドキュゥべえたちなんかよりもよっぽど上位な存在だと言って欲しいね!明らかに僕の方が優れてるんだから!」

 

 

明らかに他のキュゥべえたちよりもポンコツなシロべえがきっぱりそう言い切ってしまってまどかは少し困り顔になっているが場の空気は多少良くなったみたいだ。

でもまどかが可哀想なのでここは助け船を出した方が良さそうだ。

そもないとシロべえの僕凄いんだよ自慢が止まらくなるだろう。

 

 

「まどか、話しかけてきたって事は何か用があったんだよね?」

 

 

話題逸らしのために俺はまどかに話しかける。逃げる俺をわざわざ捕まえた理由が気になるし。

その際耳元で「ちょっと!無視しないでよ!」と聞こえた気がするが無視だ。

 

 

「うん・・優依ちゃん、ちょっといいかな?」

 

 

しゅんと元気がなさそうな、というか落ち込んだ様子でまどかは若干俯きながら俺を見ている。

 

 

どう見てもちょっとどころではなさそうだ。

 

そういえばまどかを見つけた時その足取りはとても重く表情もどこか浮かない感じだった。

これは絶対何かあったな?うん、絶対関わりたくない。

 

うわぁ・・どうしよう。

早くも話振ったことを後悔してるんですけど。

今からでも断った方がいいかもれしない!

 

 

 

「・・・ほむらちゃんとマミさんから聞いたの」

 

 

一言もいいよなんて言ってないのにまどかは勝手に話し始めた。

 

 

 

「えっと・・何を?」

 

 

今更いやだなんて言えるわけがないので仕方なく話を聞く事にし、まどかに先を話すように促す。

少し迷った素振りを見せていたがようやく決心がついたのかまどかは躊躇いながらもそう口を開いた。

 

 

 

「魔法少女の真相とキュゥべえの正体」

 

 

 

「!? そ、そうなんだ・・」

 

 

どうやら俺がさやかを止めにいってる間、二人は超重要な秘密をまどかに話したらしい。

まあ、当初の予定ではさやかも交えて話すつもりだったからそこまで驚きはしない。

俺が驚いてるのはあの二人が殺し合いもとい喧嘩をやめてまともに説明出来た事だ。

 

 

「あれだけいがみ合ってた二人だから説明は無理かもと思ってたけどちゃんと出来たんだ。ひょっとしてまどかが仲裁してくれたの?」

 

「うん、何とか二人の喧嘩を止める事が出来たんだ。本当はわたしもさやかちゃんの所に行くつもりだったけど、ほむらちゃんに話があるって言われたからマミさんの部屋で話を聞いてたの」

 

 

まどかはたどたどしく当時の説明をしていく。

その時の事を思い出しているのか表情はとても固く顔色もとても悪い。

 

まだ魔法少女ではないとはいえ憧れてたものの正体に多少なりともショックを受けてるようだ。

 

 

「本当なんだよね?魔女は魔法少女だったって。今まで現れた魔女って全部・・?」

 

「間違いないよ。君の目の前に現れた魔女は全員魔法少女たちの成れの果てさ。それを証明するのは出来ないけどね。どうしても納得出来ないなら知り合いの魔法少女を絶望させてしまえば証明出来るよ?」

 

「・・わたしたちは消耗品なの?」

 

「はっきり言ってしまえばそうなるね」

 

「そんな・・!あんまりだよ!酷過ぎるよ!」

 

 

シロべえは自慢大会をするのを諦めたらしくいつの間にか俺たちの会話に参加してきた。

 

 

別にそれはいい。

ただもう少し言い方ってもんがあるでしょうが!

傷心中の女の子に言うセリフじゃないぞそれ!

 

まどか泣きそうになってんじゃん!

 

 

「優依ちゃん」

 

「ん?」

 

「・・さやかちゃんひょっとして契約しちゃったの?」

 

「うん、情けない事にこのポンコツがすねぶつけて悶絶してる間にしてやられたよ」

 

 

しれっとシロべえの告げ口でまどかは驚きとショックで目を見開き、俺は裏切りと羞恥で目を見開いた。

 

 

「な!?お前だってさやかに踏まれて瀕死だっただろうが!というか俺本当は説得成功してたんだよ!それなのにあいつが急に契約するって言い出したのが悪いんだろうが!」

 

「・・・・そうなんだ」

 

「! すみませんでしたあああああああああ!!俺のポンコツが招いた結果がこれです!どうぞ煮るなり焼くなり・・はやめて欲しいですけど怒るのは当然なので罰は受けます!」

 

 

静かに言葉を発するまどか言いようのない迫力を感じ、すぐさま腰を直角に曲げ頭を下げる。

 

俺の中でまどかは「怒らちゃいけない女子№1」だ!その逆鱗には触れたくない!

ちなみに2位はマミちゃんだったりします。残りのメンバーは大体いつも怒ってる気がするので省略。

 

 

「ううん、謝る必要なんてないよ。わたし何もしてないから。大事な友達が大変な時にわたし・・何も出来なかった」

 

 

怒らせたら絶対怖いだろうけど普段は神の如く優しいまどかは罪深き俺を許してくれてほっとするが心なしか後半になるにつれ声の調子が下がってる気がする。

 

 

言葉では許すとか言ってるけど内心怒ってたりして・・?

 

 

「ほんとにわたしは何にも知らなかったんだね・・情けないよ」

 

「? まどか?」

 

 

震える声が頭上から聞こえ不審に思った俺は顔を上げる。

すると暗い表情のまどかが視界に入った。

 

 

「ほむらちゃんの話を聞いてわたし怖いって思っちゃった。話を聞いてて契約しなくて良かったって思ったの。契約する前に知れて良かったって・・」

 

 

震えは次第に声から身体全体に伝わっていき小刻みに震えだしてやがて大きくなっていく。

それでもまどかの独白は終わらない。

 

 

「さやかちゃんは何も知らないまま魔法少女になっちゃったのに、魔女になっちゃうかもしれないのにわたし自分の事しか考えてない・・!」

 

 

ああああああああああ!まずい!

まどかの目に急速に涙が溜まっていく!

 

 

「ごめんなさい・・わたし弱い子で・・」

 

 

口に手をあててポロポロと涙を流すまどか。

嗚咽も交じっているので完全に泣きモードに突入してしまったらしい。

 

 

ヤバい!こんな場面紫にでも目撃されてみろ!殺されるわ!

だって端から見たらこれどう見ても俺がまどかを泣かせたようにしか見えないもん!

 

 

「やーい優依が泣かせたー」

 

「違うわ!俺何もやってないぞ!お前のせいだろうが!」

 

 

いじめっこの白いのはこの際無視するとしてとにかくまどかを今すぐにでも泣き止ませなきゃ!

具体的に言うとほむらに見つかる前に!

 

 

 

「大丈夫だよまどか」

 

 

「ふえ・・?」

 

 

咄嗟に思い着いたのがこれ。

 

伝家の宝刀「頭なでなで」

他にも「ハグ」という案も思いついたけど紫に見られたら俺の命の保障がないので却下。

 

 

突然の俺の行動に驚いたのかまどかはぽかーんとして表情で俺を見上げている。どうやらその拍子に涙も止まったみたいだ。

 

 

それにしてもまどかの頭の撫で心地めっちゃいいな。

 

俺よりも背が低いし見た目と雰囲気が小動物感あるからとても撫でたくなってしまう。

例えるならハムスターかウサギと言った感じだ。

これが愛され主人公というやつか。ほむらが守りたくなるわけだ。

 

守りたいこの癒し。

 

 

あ、撫でるのに夢中で慰めるの忘れてた!

 

 

「まどかが気にする事じゃないよ」

 

 

とってつけたような感じで申し訳ないが慰めにかかる。

 

 

「そんな!だってわたし自分の事しか・・!」

 

「むしろそうやってさやかの事や罪悪感で泣くなんてとっても優しいと思うぞ?」

 

「・・・」

 

「本当に自分の事しか考えてない人は泣いたりなんてしないよ。むしろ関係ないしって思ってる。それに比べてまどかは思いやりがあって良い子だ。俺が保障するよ」

 

「優依ちゃん・・」

 

 

自分の事しか考えていない。つまり俺の事なんですけどね!

いやー我ながらホント最低だと思うわ。

 

だからまどか、そんなキラキラした表情で俺を見るのやめてくれないかな!?

俺はそんな目で見つめてもらえるような立派な人間じゃないから!

 

 

 

「ほ、ほらそんなに泣いてたらせっかくの可愛い顔が台無しになるよ?」

 

 

耐えきれなくなった俺はまどかの目じりに指を持っていき涙を拭うついでにキラキラ視線を中断させる。これ以上の視線攻撃は毒だ。

 

 

「優依ちゃん・・!」

 

「わぁ!?」

 

 

何故かまどかが俺にガバっと抱き着いてきて危うくバランスを崩しそうになってしまう。見た目の割には意外と力があるから抱きついた時の腹の衝撃は一瞬内臓が心配になるレベルだった。

 

 

「ありがとう優依ちゃん」

 

「ど・・どういたしまして」

 

 

結構な力で締め付けてくるので実はこれ抱き付いてるんじゃなくてベアハッグしてる気がする。

 

 

いやそれよりも今の様子をほむらに見られたら洒落にならん!

間違いなく狙撃されるわ。見ていませんように!というかここに来ませんように!

 

 

あとシロべえ、お前さっきから何言ってんだ?

「これは決まったね」って何のことよ?

 

 

 

 

「あの、優依ちゃんこんな時に言う事じゃないんだけど・・」

 

 

 

いつの間にか泣き止んだまどかはケロッとした表情で聞いてくる。

抱き着いたままだから必然的に上目使いになっていて庇護欲がくすぐられる。

 

 

「この後、時間あいてる?」

 

「・・へ?」

 

「良かったらウチに寄って行かない?パパの料理すっごく美味しいんだよ!・・だめかな?」

 

「え・・!?」

 

 

勘弁してくれよ!

これで解放されると思ったら第二ラウンド突入!?

ホントに今の状況で言う事じゃないだろ!何考えてんだ!?

 

 

速攻で断ろうとした俺だがここでふとある考え浮かぶ。

 

 

いや・・待てよ?

ここで俺がまどかの注意を引けば徘徊中の仁美お嬢様を声を掛ける事もましてや見つける事も無くなるんじゃないだろうか?

 

それならまどかは危険な目に遭わなくてすむし何より俺がピンクの傍にいれば紫は迂闊に手が出せない!

おお!一石二鳥!

 

 

「じゃあ、お邪魔させてもらおうかな?」

 

「ホントに!?やったー!」

 

 

中学生にもなって跳び上がって喜びを表現するなんてガキっぽいと思うがまどかのその可憐な容姿ですると中々サマになってる。あざとい。

 

 

「じゃあ、(緑を見かける前に)行こっか」

 

「うん、あのね・・手繋いでもいい・・かな?」

 

「・・・え!?」

 

 

ホントに何言ってんのこの娘!?

 

魔法少女の真実知って幼児退行?

それとも俺をほむらに暗殺させるための遠回しな工作?

 

取り敢えず却下しよう。

 

 

「あ、だめだよね!ごめんね!変な事言ってその・・」

 

「あああああああ!大丈夫!手汗大丈夫か気になっただけだから!嫌とかじゃないから!さあ手を繋ごう!」

 

「え・・?うん!」

 

 

再び泣きそうな表情になったので慌てて手をとってみたがこれで良かったのだろうか?

 

繋いだまどかの手は予想通りとても小さくて力加減を間違えたら握り潰してしまいそうなくらい柔らかくて女の子だなと何となく思った。

 

 

 

ほむらにだけは見つかりませんように!

 

 

 

俺の不安をよそにまどかは照れたように「優依ちゃんの手ってあったかいんだね」と呑気な感想を述べているが気にしない。

 

俺は保護者、俺は保護者。

迷える幼いピンクを家に導くために付き添うただの保護者だ。

 

 

「彼女」が来る前に一刻も早くここから離れなくては!

 

 

 

 

 

 

 

「あら鹿目さん、神原さん。ご機嫌よう」

 

 

 

「!」

 

 

まどかと手を繋ぎ一刻も早くここから離れよう歩き出した俺の背後に再び聞き覚えのある声がする。

今度は少しのんびりとした調子の可憐な声だ。その声に戦慄を覚える。

 

 

 

「・・・・っ!」

 

 

恐る恐る振り返った先には「彼女」がいました。

 

 

な、何で話しかけてくんのおおおおおおおおおおおおおおお!!?




保身に走るほど優依ちゃんはピンチに陥っていく

これこそが世の理である

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