魔法少女オレガ☆ヤンノ!?   作:かずwax

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あと半月で今年も終わり・・。
あと何話更新出来るのだろうか・・?


70話 日頃の行いが裏目に出る事もある

「はあ・・昨日は散々な目に遭ったわ」

 

「軽く二時間は拘束されてマミさんから魔法少女の心得を叩き込まれたもんね」

 

「うわぁ・・ご愁傷様」

 

 

翌日の昼休み、俺はまどかとさやかの二人とランチタイムをエンジョイしていた。

 

ちなみに今談笑してる内容は昨夜のさやかがマミちゃんとほむらに連行された時の出来事についてだ。

ほむらからも聞いていた通り、マミちゃんによるスパルタ魔法少女指導が決行されていたようだ。

 

 

しかも徹夜。可哀想に。

 

 

え、俺?俺は昨夜の幽霊騒動の恐怖のせいでほとんど眠れず恐れ多くもほむらにあやしてもらうという別の意味で恐怖の一夜だった。

また新たな黒歴史の量産に気が滅入りそうだ。

 

 

「マミさんはともかくあの転校生よ。あたしが契約したのが分かった途端、難癖つけてきちゃってさ!何様のつもり!?」

 

 

昨日のほむらの失言を思い出したのか、さやかは拳をふるふる震わせて憤慨している。

 

よっぽど腹が立っているらしい。

だって、持ってた紙パックのジュースが原型留めないくらい潰れてるもん。

中身が零れてさやかの手がジュースまみれ。ポタポタ雫を落としてるのに気にする様子もない。

 

まあ、確かにあれは最初から喧嘩ふっかけたほむらが悪い。

 

どこの世界にいきなり喧嘩ふっかける奴があるか。

おかげで更にほむらに対するさやかの印象が下がって今や急降下。フォローする俺の立場を考えてほしいものだ。

 

 

ちなみに渦中のほむらとマミちゃんはここにはいない。

 

 

マミちゃんは職員室に用があると言ってそのままだし、ほむらも用事があるとかぬかしてバックレ。

協調性のない魔法少女ばっかでこの先物凄く不安でしかないよ俺?

 

 

ここは俺がしっかりフォローしないとダメなのは分かってるがぶっちゃけもう放置したい。ゴールに向かってるはずがいつの間にかどんどん谷底に落ちていってる気がするもん。

 

 

「今度言いがかりつけてきたら物理的に黙らせてやるんだから!」

 

「さやかちゃん・・」

 

「! まどかその・・」

 

 

さやかの憤慨にほむらと良好な関係を築きつつあるまどかはとても悲しそうに目を伏せている。

 

そのまどかの様子にさやかはハッとして我に返りバタバタ手を横に振って何とか弁解しようと必死だ。

 

 

「いや、えっとね。転校生にあまり良い印象を持ってないのは本当なんだ。正義の魔法少女って感じじゃないし。契約した事に文句言ってくるし。でもね、まどかには昨日も言ったけどあたしは後悔してないの!恭介の腕を治す事も出来たし何よりあんた達を助けられて本当に良かったって思ってる!」

 

「・・・うん」

 

「だからこれからはこの魔法少女さやかちゃんがマミさんと一緒に見滝原の平和を守っちゃいますよー!」

 

 

拳を突き上げて高らかに宣言しているさやか。

 

魔法少女の真相とこれから先さやかが辿るであろう未来を知る立場としては痛々しい強がりにしか思えない。

五人の中で一番救いようのない末路を考えると悲壮感もプラスされてそうだ。

 

ていうか見滝原の平和守る中にほむらは入ってないけどあくまで敵認定なんですね?

 

 

「・・・・」

 

 

まどかお願い。複雑な表情でこっちに顔を向けないで!

どうしようって戸惑った目で俺を見ないで!

 

俺だって対応に困ってるから!

 

 

でもさやかをこのまま放っておくのはまずい!何もしなければ暴走は不可避!

 

 

ここで何とかしなければ!

 

 

 

くっ!こうなったら自棄だ!

 

 

「うわ!ちょっと優依!?」

 

 

さやかがバランスを崩したらしく俺の方に倒れ込んでくる。

俺がさやかの手を引っ張ったのが原因だから当然だ。

体格の良いさやかの体重+重力は俺の身体に深刻なダメージを与えたが今はそれ所じゃない。

 

 

「そっかー。さやかもついに正義の魔法少女デビューか!偉い偉い!そんな偉い子にはこうだ!」

 

 

痛みに歯を食いしばりながら倒れ込んできたさやかを抱き寄せて頭を撫でる。

 

秘技「甘やかし倒し」!

 

 

何故これなのかというとちゃんとした理由はもちろん存在する。

 

 

ふざけているように見えるがこれは魔女化防止の歴とした作戦だ。

 

さやかはガサツなムードメーカーに見えて実態は繊細な完璧主義者な面がある。

実際そのせいか原作では魔法少女の理想と現実に思い悩んでソウルジェムを濁らせていたほどだ。

 

誰かに相談すれば良かったのに肝心な時に助けを求められない甘え下手が災いして魔女化なんていう最悪の結末を迎えてしまう。それだけは阻止したい。

 

 

 

そこで俺は考えた。

 

魔女化を阻止するためにさやかを甘えさせればいいじゃない!と。

 

今からそういった環境を作っておけば追いつめられたさやかの心の拠り所となりストレス激減でソウルジェムの濁りも減るかもしれない!

 

人間誰でもストレスの捌き口は必要だ。

 

なれるかどうか分からない。

ぶっちゃけなりたくもないけど俺がさやかの癒しの拠り所になろうと決めたのだ!

 

超嫌だがやるしかない!どうせあと二週間程度の辛抱だ!

 

全てはハッピーエンドのために!

何より俺のバッドエンド回避のために!

 

 

そのためにはまず目の前にいる青を思いっきり甘やかすのだ!

 

 

「優依ちょっと・・いきなり何・・?」

 

「さやかは正義感が強くて友達思いなの知ってるからさ、きっと魔法少女としてこの街を(ワルプルギスの夜から)守ってくれるって信じてる。俺(死亡フラグなくなるまで)応援するよ」

 

「え・・?」

 

「辛くなったらいつでも俺を頼ってね?(俺の死亡フラグが消えるその時まで)めちゃくちゃ甘やかしてあげよう」

 

 

保身を丹念に練り込んだ極上の笑顔でさやかに笑いかける。

その中にはもちろん面倒事を起こすなよこのヤロウというメッセージも含めてある。

 

俺のこの笑顔をどう受け取ったのかさやかは何故か頬を染めて頷いた。

 

 

「え、えっと・・うん、じゃあ今から甘えさせてもらうね」

 

「え?」

 

 

頭が理解する前に事件は起こった。

さやかがいきなり俺の肩に頭を乗せてもたれかかっている。

そのまま「えへへ」と照れ笑いを浮かべながら目を閉じている。

 

 

おいおい、案外さやかが可愛いぞチクショウ!

 

意外だ。コイツの事だからきっと遠慮するだろうと思っていたんだが魔法少女になった事は内心不安なのかもしれない。

 

 

さやか、中身はともかく見た目は可愛いんだからヴァイオリン野郎の前でも普段から今みたいな甘えを見せればイチコロなんじゃないの?

 

 

 

と、半分冗談はともかく今のさやかの甘えモードならあれもいけんじゃね?

 

 

そう思った俺はさやかを引き剥がし地面に向けて身体を伸ばす。

引きはがした時のさやかはとても寂しそうな表情をしているように見えたがきっと気のせいだ。

 

 

「さやか良かったらから揚げ食べる?自信作なんだ」

 

「へ?」

 

 

すっと自分のお弁当箱に入っていたから揚げを箸につまんでさやかの方に差し出す。

ちなみに持っている箸はこんな事もあろうかと用意しておいた割り箸なので間接キスのご心配はありません。

 

 

「・・・・・」

 

「あ、ひょっとしていらなかった・・?」

 

「え!?ううん!もらう!いただきます!」

 

 

最初は無言でから揚げを見ているだけだったがそこはノリの良いさやか。

すぐさま笑顔になってそのままあーんの体勢でから揚げにパクついた。

 

 

「んー美味しい!」

 

 

嬉しそうにモグモグしてる姿は結構可愛い。

 

味付けもさやかの口に合ってたみたいで良かった。

ほむらに感謝しろよ?だって紫がリクエストして朝から揚げてきたんだからな。

 

 

「やっぱ優依って料理上手いわ!このままあたしの嫁にならない?」

 

「はあ?浮気は良くないよさやか。君にはまどかという嫁がいるじゃないか」

 

 

ついでに君は杏子の嫁じゃないか。

浮気したら殺されるぞ君。あんまり調子に乗らない方が良いんじゃないの?

 

 

熱心に嫁になれと迫るさやかと冷めた目の俺。

そんな俺達をまどかは寂しそうな目で眺めている。

 

 

「さやかちゃんいいなー・・。 ! そうだ!」

 

「? どうしたのまどか?」

 

 

何かを思い出したのかまどかは突然パチンと手を叩いて屋上に持参していたバッグをゴソゴソと弄っている。

やがて目当てのものが見つかったのか布に包まれた小さい箱を取り出した。

 

 

「えっとね、優依ちゃん」

 

「うん?」

 

 

両手で抱えている小さな箱と俺を交互に見ながらもじもじしているまどか。

少しだけ待っていると意を決したのか持っていた箱をズイッと俺に差し出してくる。

 

 

「これ食べて!」

 

「へ?」

 

「中に野菜サンドが入ってるの。パパと一緒に作ったから味は保証するよ」

 

 

早口でそう捲し立ててパカッと蓋を開けて俺に中身を見せてくる。

 

彩り鮮やかな瑞々しい野菜がパンに挟まれていてとても美味しいそうだ。

改めて、まどかパパの主夫力の高さを思い知る。今度ご教示いただこうかな?

 

 

てか、急にどうしたんだまどかは?

 

 

「えっと何で俺に?」

 

「昨日わたしの事危険を顧みずに助けようとしてくれたでしょ?そのお礼にと思って」

 

「あ、そうなんだ」

 

 

思ったよりまともな理由だ。

 

良かった。てっきり俺、毒見させられるものとばかり思ってたよ。

でもごめんね。まどか勘違いしてるよ?

俺昨日何もしてないから。ただの厄日だっただけだから。

 

あった事と言えば、さやかの契約と魔女の遭遇とぐで〇まストラップ消失と幽霊に恐怖体験ぐらいなロクでもない日だっただけだから。

 

 

「ほっほーまどか。女子力アピールですかぁ?さては優依の嫁になるつもり?許せん!まどかも優依もあたしの嫁でしょー!」

 

 

ここで黙っていないのがさやかだ。

俺の腕から逃れてここぞとばかり下卑た笑顔で下世話な事を口に出してくる。

 

何で俺まで嫁認定?

マジで勘弁してくれ。俺が杏子に殺されるわ。

 

 

「さてはまどか!お礼とか言ってるけど本当はそれにこじつけて優依にアタックするつもりでしょ!?」

 

「そ、そんな事!・・えっと・・」

 

「え?ちょっとまどか?そこは『そんな事ないよ』って言う所でしょ?何で口ごもってんの?あんたまさか・・!」

 

「ふえぇ・・」

 

「あー・・さやかその辺にしてあげて。まどかをからかうとあとが怖いぞ」

 

「うひゃあ!?」

 

 

放っておくといつまでもからかいまくりそうなさやかを再び抱き込んで黙らせる。

これ以上やったらまどかが可哀想だ。だって顔真っ赤にしてプルプル震えてるもん。

その内泣き出して紫のセコム飛んできそうだから洒落にならんわ。

 

 

「まどか大丈夫か?」

 

「え?あ、うん!大丈夫だよ!それより野菜サンドどうぞ!優依ちゃん今は手が塞がってるみたいだからわたしが食べさせてあげるね!はい、あーん!」

 

「え・・?」

 

 

照れ笑いを浮かべつつ野菜サンドを俺の口元に持ってくるまどかさんは紛れもなくドSの笑顔だ。

さやかが目の前にいるのに何してんだこのピンク!?青が驚いたまま固まってんじゃん!

 

 

てか、こんな場面ほむらに見られてみろ。

間違いなく八つ裂きにされる!絶対食べられるか!

 

 

「あ・・ごめんね。野菜サンド嫌だったかな?それともわたしに食べさせてもらうのが嫌だった?」

 

「そんな事ないです!謹んで頂きます!」

 

 

どうしようか悩んでいたら再び泣き出しそうな顔。

これはもう腹を括って食べるしかない!

 

ほむらが見ていない事を祈りつつ俺は勢いよくかぶりついた。

 

 

「どうかな・・?」

 

「・・・・うん、美味しいよ」

 

「本当!?良かった―!」

 

 

天使のような微笑みで笑うまどかはマジ癒しだ。

喜んでるとこ申し訳ないが緊張のあまり味なんて全く分からなかったんだけどな!

 

 

これマジで悪魔に見られてないよね!?

 

 

 

 

 

 

 

「―--!?」

 

 

 

 

 

 

その時、どこからか背筋が凍りそうな殺気のようなものを感じ無意識に鳥肌が立つ。

慌てて周囲を見渡してみるも屋上には俺たち以外誰もいない。

 

 

殺気のような鋭い視線的なものを感じたけどひょっとしてほむらか?どこかで見張ってる?

だとしたらヤバい。間違いなく俺殺される。

 

だ、大丈夫だよね?

こっちには新米とはいえ魔法少女がいるんだし、きっと神経が過敏になり過ぎただけさ。

その証拠にさやかは何も感じてないみたいだ。きっと気のせい気のせい。

 

念のために周りを警戒しつつお弁当を食べる。

 

 

・・それにしてもおかしい。

さっきのヤバい気配がほむらなら時間を止めるなりなんなりして俺を牽制もしくは殺害してきてもおかしくないはずなのに何もしてこない。

 

あれはほむらじゃないのか・・?

 

 

「どうしたの優依ちゃん?」

 

「いや何でもない気のせいだったみたい」

 

「あんたは臆病だからね。敏感になり過ぎてんじゃないの?」

 

「はは・・そうかも」

 

 

挙動不審なのをなんとか誤魔化したがその間もずっと何となく誰かに見られているような錯覚を拭えなかった。

 

 

一応何度か横目で周りを伺ってたけど人っ子一人見つからない。

得体の知れない不気味さを感じ、結局その後二人の話はほとんど頭に入ってこなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「全っ然!見つからないんですけど!」

 

 

公園のベンチに座りながら俺は夕日を見て黄昏れていた。

 

理由は簡単だ。放課後からずっと続いている杏子捜索が難航して俺はとっても疲弊していたからだ。

それと言うのも昼休みの終わりくらいに突如としてやって来たシロべえの言った事が原因だ。

 

 

『優依大変だよ。まずい事が起きた!』

 

『?』

 

『佐倉杏子の反応が消えた!』

 

『はあ!?』

 

『彼女につけていた発信機が電源でも切れたように反応しなくなっちゃったんだよ!』

 

『き、緊急会議!』

 

 

シロべえからの連絡を受けた後、俺はマミちゃんとほむらをすぐさま呼び出して井戸端緊急会議を開くことになった。結論を言うと手分けして杏子を捜索する事が決定した。

 

マミちゃんはさやかの指導についてもらうので実質俺とほむらの二人が杏子捜索担当だ。

 

放課後からずっとお互い手分けして杏子を探す。

魔法少女ではない俺は一人では危険なので(役に立つかどうかはともかく)シロべえがお供についている。

 

 

「はあ・・シロべえがもっとシャンとしてればなぁ・・」

 

「失礼な事言わないでよ。これでも僕は昨夜から張り込みの必須アイテムあんぱんと牛乳を片手にインキュベーターを見張りながらも佐倉杏子の足取りを観察していたんだよ!・・寝落ちするまでは」

 

「つまり昨日は俺にインキュベーターを見張るとか言ってあんなホラーな夜道に放置したくせに寝落ちしていたって事か」

 

「しょ、しょうがないでしょ!昨日は美樹さやかの事もあって疲れてたんだから!」

 

「俺の方が疲れてるわ!」

 

 

必死の言い訳に軽く反論したらどっと疲れが出てきたのでベンチに沈み込む。

今はこんなアホな言い争いしてる場合じゃない。他に大事な話題を話さないと。

 

 

「ところでさ杏子を探すのはいいけど、どうやって協力を頼むんだ?無償でやってくれるようなタマじゃないだろあいつ」

 

「それだったら問題ないよ!僕に秘策があるからね!」

 

「・・・・」

 

 

 

自信満々なシロべえの声に嫌な予感を覚える。

 

これはきっとデジャブという奴だ!

 

 

シロべえは基本優秀だが時々ポンコツな作戦を打ち出してくる。

それで何度ひどい目に遭ったか数えるのも億劫になるほどだが・・。

 

 

 

「・・・取りあえず聞くだけ聞こうか」

 

 

正直無視したいがこれまでシロべえの奇策は危機を乗り越えてきた実績があるので無下にする事も出来ない。

採用するかはともかく耳に入れておいた方が良いだろう。

 

 

「今回は自信があるよ!まずは目薬を用意するでしょ?」

 

「は?」

 

 

目薬?何故に目薬?

 

 

「・・それで?」

 

「佐倉杏子に会う直前に君が目薬をさすんだ。そして彼女に向かって目薬入りの上目使いでこうお願いするんだ!『杏子お願いがあるんだ。杏子しか頼る人がいないから俺の一生のお願い聞いてくれる?』と泣きつけばいい!まずこれでノックアウトだね!」

 

「・・・・・・・・」

 

「そしてそのまま杏子の首に腕を回して耳元で囁いてやるのさ『お願い聞いてくれたら俺を好きにしていいよ』って、そうすれば一発OKさ!」

 

「・・シロべえ、今からお前を地面に叩き付けて顔を踏み潰していいかな?いいよね?」

 

「え?ちょ・・いたたたた!優依ストップ!ホントにストップ!顔潰れそうだから!」

 

 

俺の手元付近に都合よく座っているシロべえ。

丁度良いので俺はそのままシロべえの顔を鷲掴みして宙に持ち上げる。

イメージはリンゴを握りつぶすプロレスラーだ。

そのイメージのおかげか奴の白い顔にミシミシと俺の指圧が強まってシワを作っていく。

 

 

何がOKだ!何一つOKだせねえから!

ドヤ顔で何て事ほざいてやがんだこいつは!

 

 

渾身の力で地面に叩き付けようと腕を大きく振り上げながら立ち上がる。

 

そのまま地面に還ってしまえ!

 

 

「待って!ごめん!ごめんなさい!謝るから!今のは悪ふざけが過ぎたよ!もうこんな事しないから取りあえず離して!」

 

 

叩き付ける直前、シロべえからガチな謝罪が飛び出したので腕の動きを止める。

 

最初はマジで叩き付けてやろうかと思ったけど冷静になってみれば一応今は緊急事態だ。

コイツが気絶するのは大変よろしくないと思い改め「二度とすんな」と念を押して俺の慈悲深き心で解放してやる。

 

 

「ふう・・全く冗談が通じないんだから。・・まあ確かにこの作戦はリスクがあるからね。実行した後、君は杏子にホテルか路地裏に高確率で連れ込まれるだろうし」

 

「何が冗談だ!半分本気だっただろうが!てか何それ!?俺サンドバックにされんの!?実は杏子に恨まれてた!?」

 

「大丈夫、死にはしないよ。ただ大人の階段をのぼるだけさ。その時大切な何かをなくすかもしれないけど、死ななければ基本OKだよ!」

 

「何が!?」

 

 

全くあてにならないシロべえの慰めが妙に腹立たしい。

 

もう杏子の話題はやめよう。なんか不毛な気がするし疲れる。

もう一つの問題に話題を変えていこう。うん、そうしよう。

 

 

「とにかく杏子は大丈夫じゃないか?何だかんだで協力してくれそうだし。・・問題はさやかだな。どうやって魔女化を回避させればいいんだ?やっぱりあの上条とくっつけさせるしかないか?」

 

 

ほぼ投げやりな気持ちで話題を変えたがぶっちゃけ杏子よりこっちの方が深刻だ。

さやかの魔女化で滅びの運命が決まると言っても過言ではないかもしれない。

 

ここは上条を脅してでもさやかとくっつけさせるか?

 

 

「その考えもありだけど可能性低いんじゃないかな?だってあのヴァイオリン君は恋人はヴァイオリン!って感じでどう見ても仕事人間て感じだよ」

 

「そうなんだよな・・」

 

見事くっついてもその先にも問題があるのが上条恭介という男。

原作でも劇場版でも上条って基本ヴァイオリン関係しか出てこない。

仁美お嬢様の時もそうだったけど最優先はヴァイオリン。典型的な仕事人間だ。

 

そんな奴とさやかが仮に付き合ったとしても果たしてさやかは幸せになれるのだろうか?

上条恭介、どこまでも厄介で腹立たしい男だ。

 

 

「まあ、僕の方で美樹さやかの魔女化回避について既に手は打ってあるよ」

 

「え!?そうなの!?」

 

 

まさかの吉報に思わず顔が面白いくらいパアと輝いていく。

 

 

「さすがシロべえ!一体何をしたんだ?」

 

「悪いけどこれは伏せさせてもらうよ。出来れば使いたくないものだしね」

 

「あ、そっか。なら仕方ないや」

 

 

シロべえが何か手を打ってくれているなら安心だ。

内容が分からないのは多少不安だがこいつの言う事なら悪いようにはならないだろう。

 

 

「僕個人としては最も確実で簡単な魔女化回避方法があるんだけどなー」

 

「え?何?」

 

 

さっきまでの調子と打って変わって楽しそうな声で俺の近くに寄ってきた。

なんかその様子にまたまたデジャヴを感じる。

 

正直もう聞きたくない。

しかしふざけた事例は多々あるがたまに名案を思い付くのでそこが憎たらしい。

 

ひとまず聞いといてあげよう。もう悪ふざけはしないだろうし。

話の続きを促して俺は再びベンチに座る。

 

 

「で?その確実で簡単なさやかの魔女化回避方法は何なんだよ?」

 

「簡単さ!優依が美樹さやかを堕とせばいいんだよ!」

 

「は!?俺がさやかを落とす!?お前ひょっとしてさやかが魔女化する前に息の根を止めろって言ってんのか!?マジ外道じゃねえか!」

 

 

速攻で立ち上がって目の前の白い悪魔に抗議を入れる。

 

コイツ俺に殺人を犯せって言ってきた!

ここは常識ある人間として断固反対しなければならない!

 

 

「まあ、話は最後まで聞いてよ。美樹さやかはその内、精神崩壊起こす程追いつめられるんでしょ?」

 

「苦しみから解放させるために介錯しろってか!?」

 

「だから最後まで話を聞いてって!その精神崩壊を起こしてる最中に君が依存性の高い甘い毒を誑し込んであげるんだ。そうすればあっという間に毒が全身に広がって中毒症状を起こすよ。そうなればもう安心だ。後は適当に構ってあげれば魔女化しなくなるし戦力の駒が増えるから一石二鳥だよ」

 

 

俺は一体何の説明を聞いてるんだ?

さやかを薬漬けにして廃人にしろって聞こえるんだけど?

 

抹殺より酷くないか?

 

 

「どうせ末期の中毒者三人と重度に進行しつつある軽度中毒者が一人いるんだ。今更もう一人増えようが問題ないよ」

 

 

不満そうな俺の表情に気付いたのか更なる説明がされたが全く理解不能。

コイツは何語を喋ってるんだ?え?日本語?頭が理解を拒んでるんだけど。

 

 

「僕が最高のタイミングを見計らって合図するから躊躇わずに実行するんだよ!いいね?」

 

「何が“いいね?”だ!ふざけんな!やっぱりお前の考えなんて聞かなきゃ良かった!」

 

「いだだだだだだ!本日二回目だよそれ!」

 

 

本日二回目の顔の鷲掴みを決行する。

今度は一回目よりも握力強め、工場で物を潰す機械的なイメージだ。

 

ペシャンコになってしまえ!

 

 

「ごめんよ優依!僕が悪かったよ!」

 

「やかましい!上辺だけの謝罪など聞き飽きたわ!」

 

 

コイツ全く反省してない。

 

だって口では謝罪の言葉を述べてるけど現在進行形で頭には、

 

 

≪目指せ!百合ハーレム!≫

 

 

なんてアホなテレパシー送ってきてるんだもん!

 

謝罪なんて信じられるか!

 

 

くそ!こんな事言いだすなんて絶対トモっちの影響だろう。

 

だってシロべえの奴、「社会勉強だ」とかほざいてトモっちから送られてくる百合漫画、百合アニメを一通り目を通してる。

 

女の子がイチャイチャしてる映像を見るインキュベーター、傍から見たらシュール以外の何物でもない。

 

やっぱりあれは危険だ。もっと早くに規制をかけるべきだったな。

これからは廃止にしないと。

注意したって止めないだろうしどこかに隠しておこう。

 

 

 

 

 

「優依」

 

 

 

「!? ビックリした!ほむら何でこんな所に!?」

 

 

 

シロべえの顔を握りつぶす俺の背後にほむらが音もなく立っているのでベンチから飛び跳ねる。

 

悲鳴をあげなかっただけマシだ。

人気がないとはいえまだ夕方。誰か来ては大変だ。

 

それにしてもほむらよ、長年のまどかストーキングのせいで隠密行動うますぎだろ!?

さっきの気配消して背後に立つなんてプロの殺し屋みたいだったよ!?

 

 

「私がどこにいようとそんな事はどうでもいいわ。それより大変なの。佐倉杏子が現れた」

 

「え・・!?」

 

「どうやら使い魔を倒そうとした美樹さやかを背後から襲ったみたいなの。一方的に攻撃してるみたいだからひょっとしたら美樹さやかを嬲り殺しにするつもりかもしれないわ」

 

「は・・!?」

 

 

ほむらからの報告に俺の口は引き攣っていく。

 

 

何それ!?どういう状況だよ!?

なんか原作より酷い展開になってませんか!?




次回から杏子ちゃんの登場です!

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