魔法少女オレガ☆ヤンノ!?   作:かずwax

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今年最後の投稿になります!


74話 ドキドキガクガクな帰り道

「ああもう!何なのよアイツ!すっごく腹立つ!」

 

「落ち着いてくれさやか。傷に障るよ?」

 

「そんなのもうとっくに治ってるわよ!」

 

 

夕暮れがほぼ沈みかけた暗い道に響く元気な声。

 

 

俺は超うるさい大声に耳をやられながらさやかと二人自宅を目指して歩いている。

 

 

それにしてもさやかさん、あれだけ杏子に痛めつけられたというのにそんなものを微塵も感じられない元気溌剌さですがどんな体力してるんですか?

 

ちょっとでもいいのでその元気爆発ぶりを俺に分けてくれないだろうか?

最近激動な日が続いてほとんど寝不足、疲労感ヤバいので。・・ハア。

 

 

カリカリ怒る青の隣で人知れずため息がもれる。

 

 

何で俺はこのうるさい青と一緒に帰ってるのかというと一応理由はあるんだ。ホントに一応だけど。

 

 

杏子襲来という修羅場がお開きになった後の路地裏、予想通りさやかはほむらに向かって

「何で邪魔したのよ!?」と噛みついてきた。

 

第二ラウンド開幕か!?と一瞬焦ったが、幸いな事にほむらはさやか限定スルースキルを駆使して相手にしなかった。

 

まどかはオロオロしながら(心なしか目はキラキラしてた気がするけど)二人の様子を見ていて蚊帳の外。

 

そんな状態がしばらく続き流石に埒があかないと判断した俺は、仕方なく青と紫の二人の間に入ってこの不毛なやり取りを中断させ路地裏から解散させたのだ。

 

ちなみにまどかは紫セコムと一緒に帰ってる。このペアは俺の提案だ。

まどかを頭に血が上って暴走状態な青に任せるのは非常に危険だし、何よりそんな事まどかガチ勢のほむらが許さない。この提案はもっとも無難なものになったと自負している。

 

ピンクに関しては紫に任せておけば大丈夫だろう。

なんせピンクセキュリティに特化したセコムなのだから。

 

 

もちろんさやかはめちゃくちゃ反対していたがそこは強引に決行。

暴れるさやかを宥めつつ先に二人を逃がしたのだ。

なので余り組の俺とさやかは流れで一緒に帰るはめになりました。

 

どのみち俺とさやかの家は同じ帰り道の先にあるので逃れられないので泣きたい。

最近の連泊が響いたのか流石に母さんから「今日は帰ってこい」というお達しが来てしまいどうする事も出来ないのが辛い。

 

さっきの出来事があれだったので俺一人で帰るよりはマシなのだがさっきからずっと青が不機嫌な状態で困る。

暴走寸前の青猪と戦々恐々な帰宅はある意味死亡フラグだ。

 

ここでまた杏子が現れたりなんてしたら間違いなくさやかは爆発する!

そうなったら物理的にも精神的にも俺は終わる!

助けも来ないだろうし絶望的だ!

 

 

どうか俺が家にたどり着くまで間違っても赤が出没したりしませんように!

 

お願いします!

 

 

 

 

 

「えっとさ・・優依」

 

 

 

「?」

 

 

心の中で必死に祈っている中、祈りは届いたのか、さやかはようやく怒りが治まり静かな声で話しかけてくる。

何だろうと隣で歩く青に顔を向けると夕日のせいなのか顔を赤くしたまま伏し目がちに俺を見ていた。

 

 

「・・その、ありがとね」

 

「え?何を?」

 

「その、身体張ってあたしを助けてくれたじゃん?しかも、あたしを大事な友達だって言ってくれて・・あの時は余裕なかったら態度に出さなかったけど正直、凄く嬉しかった」

 

「あ・・そんな大した事やってないよ・・」

 

 

ホントに大した事やってません。

気づけば戦いに渦中に巻き込まれ、何故か杏子からさやかを庇っていた事になってただけだから。

 

そのせいでどういう訳か杏子の逆鱗に触れちゃったし・・ツイテない。

昨日に引き続いて踏んだり蹴ったりだ。

 

 

俺、何も悪い事やってないのに・・。

 

 

 

 

「さやかが無事で本当に良かったよ・・」

 

「え・・?」

 

 

こうなったら自棄だ。せめてさやかの魔女化だけでも阻止してやる!

そうすれば今は負けてでも最後は俺の有終の美となるのだからな!

 

グッと手を掴んでさやかを魔女化回避に導く意味合いも込めて俺の近くに引き寄せる。

突然の俺の行動にさやかは驚いたのか目を丸くして俺を見ている。夕日がかなり強いせいか顔は真っ赤に見えて可愛い。

 

 

「言ったろ?応援してるって」

 

「優依・・」

 

「無理はしないでね?辛くなったら俺の所に甘えにおいで」

 

「・・・うん///」

 

 

目を逸らしがちに頷くさやかはいつもと違ってしおらしい。

 

 

これがギャップ萌えというやつか。

こういう可愛らしい反応を上条の前でも出せばいいのにもったいない。

ホント不器用な奴だ。

 

あ、ちなみに応援するのも甘やかすのもワルプルギスの夜討伐前限定だから。

その後は知らん。杏子にでも慰めてもらえ。

 

 

「あ、あはは・・なんて言うか照れますなー・・」

 

 

頭を掻きながら笑っているがどこかぎこちない。

夕日が強くなったせいかさやかの顔がますます赤くなっていく。

 

おい、何で歩みが遅くなってんだ?早く歩けよ。

俺は一刻も早く愛しい我が家に帰りたいんだよ!

 

いつもは歩くの早いさやかが今じゃ亀さん並のスローモーションだ。

何?実は帰りたくないとか?

 

却下!良い子は帰る時間だバカヤロウ!

例えそれが魔法少女でも許されません!

 

 

仕方なくさやかの手を引っ張って誘導しようとするも足が地面に縫い付けられたように動かず、じっと俺を見ている。その目はさっきと違って戸惑ったような感じだった。

 

 

 

「・・そういえばさ優依、あいつと知り合いだったの?」

 

 

さやかが遠慮がちにそう口を開く。

 

あいつとはどう考えても杏子の事だろう。

 

いつもは高いさやかの声が三トーンくらい下がった気がするもの。

握っている手も少しばかり握力強めになっているから怒っているのは明白だ。

 

 

杏子に関しては弁解の余地はないのでさやかが怒るのも当然だろう。

実際難癖つけてさやかを襲っていたからなあのバカ。

 

さて、どう答えた良いものか?

下手に誤魔化すよりはここは素直に話した方が良さそうだ。

 

 

「ひょっとして杏子の事か?」

 

「名前知ってるって事は前から知り合いなんだ?」

 

「うん、杏子とは・・「まさか優依、あの赤い奴に脅されてるんじゃないの!?」はあ!?」

 

「だってそうでしょ!?あいつ何だかガラ悪かったし、人を脅迫しててもおかしくない雰囲気だったじゃん!」

 

「また脅しの話か!ほむらの時もそう言ったよな!?」

 

 

何でさやかは俺が脅されてると思うんだ?

そりゃあの二人なら脅しそうだもんな。実際俺脅された事あるし。

 

 

あれ・・?さやかの言ってる事あながち間違ってなくね?

てか、さやかの中での杏子の印象も最悪なんですね。

そりゃそうか、いきなり攻撃されたわけだし。

 

 

「とにかく!もう二度とあいつに近づいちゃだめだよ!見た感じだと優依に危害加えようとしてたから」

 

「あー・・」

 

「絶対あいつと会わない事!さやかちゃんとの約束だからね!」

 

 

人差し指を俺の顔の前に立てて念を押してくる。

お前は俺の母さんかと言いたい所だが、純粋に俺の事を心配してくれているのは分かるのでここは素直に頷いた方が良いだろう。

 

 

「うん、分かった。会わない」

 

「よろしい!もしあいつに遭ったら、ちゃんとあたしに知らせるんだよ?」

 

 

俺が素直に従ったのが良かったのか、さやかは満足そうに笑いながら足を動かしている。

 

 

しかし俺は心の中でさやかに謝らなくてはいけない。

 

なぜなら杏子に関して言えば拒否しようがなんだろうが関係ない。

会わないも何も俺から会いに行った事は数えるくらいしかない上に杏子からやって来る始末だ。

 

安全なはずの家で待機してたって杏子は勝手に窓からやって来るものだから会わないなんてほぼ不可能だ。

そういや前もほむらに不法侵入されたし、仕事しろよマイホームセキュリティ。

 

 

「ああ!そういえば!」

 

「! びっくりした・・何だよさやか?」

 

 

何かを思い出したかのように大きな声を上げたから不意打ちでビビる。

それに文句を言いつつ何事かと尋ねるとさやかは不機嫌そうにこっちを見る、いや睨んできた。何事?

 

 

「あんたさっき、あたしの胸触ったのわざとじゃないでしょうね!?」

 

「!」

 

 

さっと自身の胸を手で覆い隠し真っ赤に叫ぶ。

 

これは絶対夕日のせいじゃない!

どうしよう!急いで弁解しなきゃ俺はセクハラで訴えられて先に社会的に抹殺されてしまう!

 

 

「違います!あれは事故ですうううううううう!」

 

「嘘!だってあんなに丹念に揉んでたじゃん!」

 

「ふぁ!?」

 

 

俺は知らない間にガチ揉みしてました!?

 

嘘だと信じたいがさやかの警戒の様子にこれは事実なんだと嫌でも告げている。

あの時は必死だったからあまり覚えていないが、いつの間にかやらかしてたなんて・・通りで杏子が激怒する訳だ。

 

 

アタシのさやかに何て事してやがんだ的な感じの怒りだったのだろうあれは。

そんな感じの激おこっぷりだったし。ヤバい、俺、杏子に会ったら殺される・・!?

 

 

「・・ホントに恥ずかしかったんだからね!人前であんな・・もう、あたしお嫁に行けないじゃん・・」

 

 

じわりと青い瞳に滲む透明な涙にぎょっとする。

胸を守っていた手は今度は顔を覆うポーズに移行してしまい、グスンと何かをすする音が漏れている。

 

 

これはひょっとして、いやひょっとしてなくても泣いてる?

 

 

「はわわわわ!大丈夫だよさやか!だって君はこんなに可愛いんだから絶対お嫁にもらってくれる人は現れるって!」

 

 

きっと赤い人が君を嫁にもらってくれるよ!

 

 

殺し合いの直後だけど根拠のない自信が俺を突き動かしていく。

 

 

「さやか!君は絶対愛される存在だ!俺が保障する!君の丸ごと全てを愛してくれる人とはもう出会っているさ!」

 

 

具体的に言えばさっき殺し合いしてた人だけどな!

 

 

大丈夫!最初は殺し合うくらい仲悪くても最後は心中しちゃうくらい仲良くなれるから喜んでもらってくれるよ!

 

 

だから泣かないで!ここで泣かれたら俺が泣かしたみたいに見えるじゃん!

 

 

・・いや、俺が泣かしてるのかこれ?

 

 

 

 

 

「責任とってくれる・・?」

 

 

 

「え?」

 

 

 

しばらく根拠のない励ましを続けていたらようやく少しだけ顔を覆っていた手をどけて見えた青い目が俺を捉えている。

 

 

「あたしにセクハラした責任とってくれないの?」

 

「え?それはちょっと・・」

 

「・・・とってくれないの?」

 

「・・・俺に出来る範囲なら・・・」

 

 

ジトッと涙目で睨まれた俺はその迫力に屈し要求を呑む事にするしか道はなかった。

 

 

まあ、さやかの事だ。

 

どうせご飯奢れとか宿題見せてとかそんなとこだろう。

どっかの厚顔無恥な赤と違ってぶっとんだ要求はしてこまい。

一応常識人枠だからな青は。

 

 

 

しかし俺の認識は甘かったと言わざるをえない。

 

 

「ほほう、言ったな?」

 

「・・さやかさん?」

 

 

さっきまで泣いていたと思っていたさやかは涙なんていつの間にか引っ込ませて意地の悪い笑顔で手をワキワキさせている。その様子に何となく悪寒がして思わず後ずさった。

 

 

「だったら優依!責任とってあたしの嫁になるのだー!」

 

「まだ言うんかいそれ!ちょ、どこ触ってんの!?」

 

 

懲りないアホな言動と俺の胸を鷲掴みにしてくるアホな行為をやらかしたアホな青を引き剥がそうと必死に力を込めるも素で力の強い奴な上に魔力の強化もあってビクともしない。

 

 

アホだけど力あるもんなコイツ!全然離れねえ!

 

おい、やめろ!

 

 

「思ったよりもでかい!優依って着やせするタイプだったんだ!」

 

 

って妙な事を道のど真ん中で叫ぶな!

 

 

こんな笑えない現場を同級生にでも見られでもしたら明日から俺たち不登校確定だぞ!

 

 

 

「く・・!」

 

「ふふん♪中々諦めが悪いね優依。潔くこのさやかちゃんの嫁になるのだー!」

 

 

 

 

 

「随分と元気そうね美樹さやか。あれだけボロボロにやられたはずなのに騒げる元気は残っているなんてね」

 

 

「「!?」」

 

 

道のど真ん中で取っ組み合いが勃発される中、そこまで大きな声じゃないのに響く氷のように冷たい声。

冷蔵庫にぶちこまれたような急激な気温の変化に身震いしてしまいそうだ。

 

不登校確定・・!と思ってビクビクしていたがどうやら免れる事が出来そう。

 

 

「あ、ほむら!」

 

「! 何よ転校生?あたしと戦いにきたわけ?」

 

 

急いで声のした方を見合わせると俺たちの行く手を阻むように佇むほむらの姿。

 

どうやらこの不毛な戦いは意外な結末で終わりを告げたようだ。

非常に冷ややかな紫の瞳で俺らを見つめているほむらの夕日をバックに立っている姿はなんとまあ迫力がある事で。

 

 

ほむらが現れた反応は見事に真っ二つに分かれた。

 

俺は安堵のため息をつき、さやかは毛を逆立てた猫のように警戒心MAXだ。

このままではまずい!青の宿敵が現れては間違いなく闘争本能が呼び起こされる!

 

そうなれば第二の修羅場確定だ!それはいかん!

 

ここは俺が先手を打つ!

 

 

「ほむら、まどかは無事送り届けたの?」

 

「ええ、ちゃんと家に入るまで確認したわ」

 

 

戦いが勃発する前に先手を打って話しかけてみたら思いの外、ちゃんと答えが返ってきた。

この紫セコムがピンクを傷つける訳ないのは分かっているのだがさやかは酷くまどかを心配していたから一応聞いてみたのだ。

 

これで少しはほむらへの敵対心が和らげばいいけど・・。

 

 

「本当よね?もしまどかを危ない目に遭わせたら承知しないんだから!」

 

「だから無事だと言っているでしょう。心配なら今からあの娘の様子でも見に行けばいいわ」

 

「! 分かったわよ」

 

「さやか、落ち着いて。ほむらがここまで言ってるんだし、まどかは絶対大丈夫だよ」

 

 

普段の行いのせいで全く信用出来ないが、まどかに関してだけは絶対の信頼を置いているので不本意ながらほむらを擁護しつつさやかを宥める。

 

俺が間に入ったからかさやかは「ぐぬぬ・・!」と悔しそうに歯噛みしつつもそれ以上は追及する気はないのか引き下がった。

 

 

「あたしはあんたを認めた訳じゃないわよ!この前だってわざと遅れてマミさんを見殺しにしようとした事許さないんだから!」

 

 

しかしこれで諦めないのがさやか。

 

悔し紛れに放った一言は青の思い込みの激しさを物語るには十分な威力を持っていた。

おかげで俺は立ちくらみがしそうだ。

 

どうやらさやかはお菓子の魔女の時あるある「ほむらがマミさんを見殺しにした」というとんでもない勘違いをしてるらしい。これはまずい。

 

この誤解を解かない限り、さやかはほむらを拒むだろう。

 

そうなれば必然的にソウルジェムの濁りが促進され、

やがて「人魚の魔女さんいらっしゃい」が開催されてしまう。それはダメ。絶対ダメ。

 

ここで何が何でもさやかの誤解を解いておきたいがこの聞く耳持たずの青猪に説得は無理。奴の契約問答で嫌という程味わった苦い経験があるからな。

 

そうなったら別のアプローチを考えなければ・・待てよ?

 

 

あれが使えるんじゃないか?

 

 

「さやか、ちょっと」

 

「え?うひゃぁ!?どうしたの!?」

 

 

冷めた目のほむらに未だに噛みついているさやかを腕を引っ張って近くにあった電柱まで連行する。

ほむらはその場で放置。この作戦はほむらがいると非常にやりづらいからだ。

 

一か八かこの作戦にかけるしかない!

 

 

「これを見てくれないか?」

 

 

俺はバッグからとある一枚の写真を取り出し、さやかの方に差し出した。

 

 

「? なになに?て、何これ!?」

 

 

俺がさやかに見せた一つの写真。

 

それは黄色のリボンに全身をぐるぐる巻きにされて拘束されたほむらが映った写真である。

 

ちなみにこれはお菓子の魔女の結界でマミちゃんに拘束されたときに撮ったものだ(シロべえ撮影)。

いつの間にか現像していたらしく何故か俺に「持っておきなよ」と言ってくれたのだ。

 

シロべえ曰わく「これでほむらを脅せるね」と、白い体毛してるくせに真っ黒な発言かましてきやがった。

流石にほむらが可哀想なので今日帰ったら処分しようと思っていたのだがまさか役に立つ時が来るとは!

 

 

「実はあの時、ほむらはマミちゃんにこんな感じで拘束されて身動きとれなかったんだ」

 

「え!?マミさんが!? こ、こんな趣味あったんだ・・」

 

 

俺から写真を受け取ってまじまじと見つめるさやか。

 

写真を掴む手は震えており顔に至っては俺のセクハラ言及した時と同じくらい真っ赤だ。

意外と初心な青には少しばかり刺激が強かったかもしれない。

 

 

しかしこれは好都合!

今の内にさやかに誤解だという事を説明しておかなくては!

 

 

「さやかを助けにいく途中、魔女の危険性を分かっていたほむらは親切でマミちゃんに忠告した後、代わりに自分が倒すといったんだけどマミちゃんは聞き入れなくてね。問答無用でほむらを拘束しちゃったんだよ。リボンの拘束を解除するのに思ったより時間がかかったみたいであんなタイミングになっただけ」

 

「そ・・そうなんだ・・」

 

「嘘だと思うならまどかに聞いてみて。実際見てたからね。もしくは拘束したマミちゃん本人に聞くのも良い。とにかくほむらがマミちゃんを見殺しにしようとしていたっていうのはさやかの勘違いなんだ」

 

「そうなんだ・・」

 

 

ここぞとばかりに怒涛の説明をしかける俺にさやかは若干引きながらもきちんと聞いてくれる。

やはり論より証拠。さっきまでビシビシ感じていた警戒心のトゲが目に見えるくらい萎んでいく。

 

 

これはもしや誤解が解けた・・?

よし!一気に畳み掛けよう!

 

 

「でしょ?それに見よ、このほむらの痛々しい姿を。これを見てるとあの澄まし顔がとっても愛おしくみえ、いだだだだだだだだだ!」

 

「何をやってるのかしら優依?」

 

 

肩に激痛が走り、慌てて振り返るとほむらが氷河期のような目で俺を睨みながら肩を万力のような力で掴んでいる。おかげさまで肩がミシミシと嫌な音が聞こえてきて不穏だ。

 

 

「あっ!」

 

 

さやかが持っていた写真を取り上げてすぐさま映っているものを確認したほむらはみるみる内に目を吊り上げていく。

 

 

いででででででででででで!

 

 

それに比例して肩を掴む握力も徐々に増していくその内外れてしまいそうだ。

 

 

「こんなもの・・!」

 

「ああ!」

 

 

ほむら拘束写真は写った本人によって真っ二つに引き裂かれる。それだけじゃない。

引き裂いた後も何度もビリビリに引き裂いて、もはや原型を留めない紙ふぶきと化してほむらの周りを弱々しく舞っていた。

 

相当力を込めて破いたのかハアハアと肩が上がっている。

 

気まずい沈黙に包まれ誰も言葉を発しない。

せっかく上手くいきそうだったので怒りたい気持ちはあるが、内容が内容なだけに後ろめたさもあって文句は言えない。

 

 

しかしここで奇跡は起きた。

 

 

 

「転校生ごめん。あんたの事誤解してたみたい」

 

 

なんとさやかからほむらの方に歩み寄ったのである。

 

これは奇跡だ!

さやかの目には憐憫の色が見え隠れしているがそれはこの際大目に見よう!

 

とんでもない進歩なのだから!

 

 

「あたしとんでもない勘違いで転校生に酷い態度とっちゃったかも・・」

 

「そうね美樹さやか、貴女はとんでもない誤解をしているわね。謝る必要はないわ。私も誤解されるような態度しかとっていないのだし。あとこの写真は忘れなさい。私にこんな趣味はないわ」

 

 

さっきの写真はなかった事にしたいらしい。

ほむらは何てことない風な様子で髪をかき上げているが動作はどこかぎこちない。

 

 

「そのフルネームで呼ぶのやめてくんない?なんか恥ずかしいからさ」

 

「なら貴方も転校生はやめてくれないかしら?」

 

「あ、それもそうだね。じゃあこれからはほむらって呼ぶから、あんたもあたしの事さやかちゃんでもさやか様でも好きに呼んでいいよ」

 

「分かったわ美樹さん」

 

 

さやか式コミュニケーションを軽く無視したほむらは安定の「姓+さん」呼び。

しかしコミュ力高いさやかは全く気にしておらずその後のほむらに遠慮なく話を振っていた。

 

どれくらいかと言われればほむらがテレパシーで「助けて」と送ってくるぐらいのしつこさだった。

 

 

俺はそのSOSを無視し、満足げに二人の様子を見守る。

 

良かった。これならもう二人は対立する事もきっともうないだろう。

 

 

 

 

 

 

 

「・・そろそろ行くわ」

 

 

 

「え?どこ行くのほむら?」

 

 

 

その後、しばらく経って、辺りがすっかり暗くなった頃、疲れた表情を見せつつくるりと後ろを振り返ったほむらの背中に声をかける。

 

 

「友達に会いにゲームセンターへ行くだけよ」

 

 

ああ、杏子に会いにいくのね。

あんな出来事があったばかりなのにチャレンジャーだなホント。

 

 

「今日はもう遅いから早く帰りなさい。また明日学校で会いましょう」

 

「うん、お疲れ様・・」

 

「じゃあねほむら」

 

 

若干足取りがふらついてるほむらをさやかと一緒に見送った。

 

さすがに止めるべきだったか?

まあ、あんだけ間髪入れずに話しかけられたらコミュ力皆無なほむらにはキツイだろう。

 

しかしこれも必要事項。

上手くいけばさやかとの共同戦線も実現するかもしれないから甘んじて受けろ。

 

 

 

「ほむらってとっつきにくいけど話したら案外そうでもないみたいだね」

 

 

俺達も自宅を急ぐ中、さやかがふいにそんな事言い出した。

あれだけマシンガントークを繰り広げていたのに息一つ乱れていないからえげつない。

 

ほむらはあれだけ疲れていたというのにどうなってんだ?

 

 

「ほむらと仲良くなれそう?」

 

「んー、まだ分かんないけど、あの赤い奴みたいに悪い奴じゃなさそう」

 

「はは・・そっか・・」

 

 

すまんなさやか。ほむらの犯罪行為は杏子が可愛く思えるレベルだ。

これは絶対知られたらアカンやつ。

 

とはいえ、さやかの誤解は解けたみたいだし悪くない結果になったと思う。

この調子でフォローしていけば良好な関係になれる未来も来るかもしれないな。

 

未来は明るい!頑張れ俺!

 

 

 

「送ってくれてありがとう!さやかも魔女退治の寄り道してないで早く帰るんだぞ?」

 

「あんたはあたしの親か!心配しなくても今日はもう帰るわよ。ほむらにもそう言われたし」

 

 

俺の家に着いたのでここでさやかとはお別れだ。

一応念押しで今日は魔女退治禁止を伝えたが大丈夫だろうか?

 

後で電話して家にいるか確認しておこうかな?

 

 

「じゃあね優依。また明日」

 

「あ、うん、また明日ね」

 

 

ボーっと考えている内にさやかは手を振って歩き出したので、慌てて手を振り返した。

 

 

さやかの背中が見えなくなるのを確認し、玄関に手をかける。

 

 

 

 

 

 

「ただいまー!」

 

 

 

久しぶりに帰ってきました愛しきマイホーム!

 

 

数日しか経ってないのに長く険しい旅から帰ってきたような感動に包まれる。

やっぱり我が家はいい!これでやっと自分のベッドでゆっくり眠れる。

 

当たり前の事なのになんと素晴らしい事か!

 

 

「ん・・?」

 

 

リビングの方から音と光が漏れている。テレビがついているのだろう。

どうやら母さんが先に帰ってきてるようだ。

 

ここ最近家事をサボリがちだったからたまには腕によりをかけて美味しいものでも作るか!

 

 

 

家に帰ってきたからか俺の機嫌はすこぶる絶好調だ。

何でもどんと来い!

 

 

 

「ただいま母さん、帰ってたの?珍しいね・・え?」

 

 

 

 

「よう遅かったな」

 

 

 

特に何も考えずリビングに入り、ソファに座っていた人物に話しかけるも振り返ったその顔に言葉が途切れてしまった。

 

 

 

「・・・杏子?」

 

 

リビングのソファに座っていたのは母さんじゃなくて先程さやかと熾烈な殺し合いをしていた赤いポニーテールだった。

 

 

そいつはふてぶてしくも足を組んで俺の方に顔を向けている。

 

 

 

何故!?何で!?どうして杏子がここにいるんだ!?

 

 

 

 

「おかえり優依。・・待ってた」

 

 

 

混乱する俺をじっと見つめる杏子はどこか不穏な雰囲気を漂わせながらにっこり笑っていた。




まさかの杏子ちゃんスタンバイ!
どうなる優依ちゃん!?



大晦日、皆さんどう過ごされますか?
自分はガキ使観ながら執筆でもしようかなと思ってます。


また来年お会いしましょう!
良いお年を!
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