魔法少女オレガ☆ヤンノ!?   作:かずwax

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明けましておめでとうございます!
今年もよろしくお願いします!

今年の抱負はエタらないようにする事です!


75話 大至急、対魔法少女セキュリティ求む

「どうしたんだよ優依?そんなに震えて?寒いのか?」

 

「そそそそそそ、そうですね!ここなんだかとっても寒いんで身体が勝手に震えちゃうみたいなんです!」

 

 

我が家のリビングの床で直に正座する俺はガタガタ震えながら必死に目の前にいる赤いお人に弁解している。

 

 

そうしなければいつ怒りの鉄拳が飛んでくることか!

さっき会った時の怒り具合だとそうなっても全然おかしくない!

何とか怒りの矛先を俺から逸らさなければ!

 

というか何でコイツここにいんの!?

なに俺の家に不法侵入した挙句、堂々と寛いでんだこのヤロウ!

 

一つ文句を言いたいところだが杏子が怖いので無理、絶対言えない。

どれくらい怖いかと聞かれれば気を抜けばすぐにでも気絶しそうなくらい怖い。

 

 

 

怖いなら何故逃げないのかだと?

 

 

逃げられねえんだよ!出来るならとっくに逃げてるわ!

 

 

 

 

チラリと後ろを見る。

ビッシリ敷かれた赤い楔が目に入った。

 

そうです。

いつの間にか俺の背後に通せんぼのようにびっしり張り巡らされていて逃げ道を塞がれている状態です。

 

 

 

退路を断たれた俺の残る生存方法は杏子の機嫌を損ねない事だけ。

 

 

 

「・・・・・うぅ」

 

 

目の前でニコニコ笑って赤い悪魔の前で正座してる俺は弱音を吐きそうになりながらも何とか目線を合わせて奴と対峙する。

機嫌が良いように見えるけど全身から漏れ出る怒気が杏子の今の機嫌状態の全てを物語っていた。

 

いっその事このまま気絶してしまいたいがこの状態の杏子を放っておいたら物凄くまずい気がする。

具体的に言えば、取り返しのつかない事が起きそうなとても不吉な予感がひしひしと。

 

 

何かあってからでは駄目だ。そうなれば死亡フラグ直結間違いなし!

無謀だけど俺から話しかけて機嫌を直してもらいさっさとお帰り願おう!

 

今日こそは誰にも邪魔されず我が家でゆっくりしたいんだ!

何人たりとも邪魔はさせない!

 

 

 

背筋を伸ばしニコニコ笑っている杏子と向き合う。訂正。

目の前にいる赤い修羅の目は笑っておらず物凄くおっかないので、なるべく目線を合わせないように斜め下を見つめながら向き合う。

 

 

「えっと、杏子さん、いえ杏子様。本日は一体どのようなご用件でいらしたのでしょうか?」

 

「はあ?アタシ言ったろ?二人きりで話そうって。だから来たんだよ」

 

 

そう言えばそんな事言ってたな。

てっきりそれはまた日にちを改めてからだと思ってたけどまさか当日早々にやって来るとは俺もほむらも予想外だ。

 

 

ほむらの奴、今頃ゲーセンで無駄足喰らってるんだろうなぁ・・。

第六感的なものが働いて俺の家に来てくんないかな・・。

 

 

 

いやそれよりも、

 

 

「・・この家セキュリティ万全のはずだけど・・」

 

 

思わずそう呟いてしまう。

 

母さんの仕事である弁護士の職業柄、安全面を考慮して家の防犯対策は万全にしており、考えられるありとあらゆる防犯対策は装備されているのだ。

 

 

いくら魔法少女といえど無暗に我が家に侵入する事なんて・・。

 

いや・・よく考えればバンバン不法侵入されてるなこの家。

白い奴しかり、赤い奴しかり、紫の奴しかり。ポンコツセキュリティかよ。

 

・・何も盗まれてないよね?大丈夫だよね?

 

 

俺の心配のまなざしをよそに杏子はあっけらっかんとしている。

犯罪で生活を成り立たせてるこいつには俺の心配の意味は分からないのだろう。

 

腹立つから出入り禁止にしてやろうかな?

 

 

「まさか我が家のセキュリティ破壊して不法侵入したのか?」

 

「? セキュリティも何も玄関から入ったぞ」

 

「え?合鍵なんて渡してないよ俺」

 

「それなら気にすんな。アンタの母さんに開けてもらったよ」

 

「What?」

 

「たまたま玄関前で会ってさ、これから仕事だから留守番頼むって中に入れてもらった」

 

「はあ!?」

 

 

母さああああああああああああああああああん!!

 

何勝手に入れてんだよ!セキュリティ以前の問題じゃねえか!

じゃあ、今日は帰ってこいっていう連絡が杏子が一枚噛んでるって事じゃん!うわ、嵌められた!

 

 

すぐさま母さんに異議申し立てを行いたかったがこうなった原因は俺にもあるから責めるに責められない。

 

悲しいかな、杏子の入り浸りを俺が拒まなったからそのまま必然的に母さんと杏子は顔見知りになっている。

しかも母さんは何故かこのホームレス魔法少女の事をかなり気に入っているらしく、いつでも家に遊びに来いと太鼓判まで押してしまう信頼ぶりだ。

 

今回それが仇となったらしい。自業自得とはこの事を言うのだろうか?

一先ず杏子がここにいる謎は氷解したけど勘弁してくれ・・。

 

 

思わず頭を抱えてしまう。

 

こんな展開誰が予測出来たんだよ・・チクショウ。

 

 

 

「優依」

 

 

杏子がスッとこちらに手を伸ばしてくる。

その手の行先は俺の頭らしくゆっくり腕を上げている。

 

 

「!」

 

 

殴られると思った俺はすぐさま頭をガードし、防御の体制を整えた。

しかし想像していた痛みはなく、むしろ頭を優しく撫でられる感触を感じた。

 

恐る恐る目を開けると穏やかな表情で俺の頭を撫でる杏子の姿が目に入った。

 

 

「怖がるなよ。ひょっとしてアタシが優依を殴るとでも思ってたのか?」

 

 

うん。思ってました。だって杏子だし。

 

そんな事は口が裂けても言えないのでただ無言で頭を撫でられる事に甘んじていた。

そんな穏やかな時間が少し続いて若干眠気が襲ってきた頃、ピタリと頭を撫でていた手が止まったので顔を上げると赤い瞳と目が合った。

 

 

「少しは落ち着いたか?」

 

「・・まあ、なんとか」

 

「それじゃあ腹割って話そうじゃん。二人っきりでゆっくりしながらさ」

 

「・・・・・」

 

 

そう言えば杏子がここに来た理由を忘れてた!

忘れていた緊張感が一気に吹き返してきて心臓がバクバクとうるさく鳴る。

 

 

 

 

「・・何を話すんですか?」

 

 

時計の針が鳴るだけの静かなリビング(テレビは杏子が立ち上がった時に消されてた)でお互い地べたに座りながら一体何の話をするというのだろうか?

 

あんな劇的なさよならした後なら尚更だ。

どう考えても穏やかな話し合いじゃなさそうな気がする。

 

 

「先にアタシから質問だけどいいか?」

 

「いいよ。何?」

 

「優依はアタシを騙してたのか?」

 

「いきなり本題に入る感じ!?」

 

 

ドストレード過ぎてむせそうだよ!

回りくどいのは苦手だと知っていたがもう少しオブラートに包んでくれても良くない?

 

 

「ひょっとしてアタシに近づくためにわざと魔法少女を知らないふりして騙してたのか?」

 

 

顔が引き攣る俺をよそにさっさと次の質問を投げかけてくる。

杏子の言い方にトゲを感じる。

 

その言い方がまるで俺が杏子を利用するために無垢を装って近づいてきた悪女みたいじゃん。

全然違うわ!むしろ本当は魔法少女だから近づきたくなかったんですよ!

 

遠ざけようとしたのに何故かお前から近づいてきたじゃん!

出来る事ならお近づきになりたくなかったわ!

 

 

なに都合よく記憶改ざんしてんだチクショウ!

 

 

「・・騙すつもりはなかったよ。杏子と会った当初は魔法少女なんて知らなかったんだ。本当だって」

 

 

イラッとしたのでいっその事、本当の事をぶちまけてやろうかと思ったけど、ここには杏子以外の魔法少女がいない。俺の身の安全を保障出来ない以上、今ここで杏子を怒らせてはいけないなのだ。

 

イライラを抑えつつ何とか穏やかな口調で丁寧に説明していく。

 

 

あながち嘘じゃない。魔法少女を知ってる事を黙っていたのは本当だが騙すつもりは更々なかったんだから。

まあ、初めから知ってたから騙してるんだけどそこノーカウントだ。

それ話したら拗れるだけだし言う必要はないだろう。

 

 

あとついでに魔法少女に関わるようになった経緯(=マミちゃん{魔法少女ver}にでくわした出来事)についてを説明しておいた。

 

杏子の事だからきっとこれで魔法少女と関わる羽目になった経緯を分かってくれるはず!

 

 

「それは何か?魔女に襲われた所をマミに助けられたとかそんな感じか?」

 

「そうそう。そんな感じ」

 

 

うんうんと頷いて肯定する。

 

俺の予想通り杏子は物わかりが良くて非常に助かる。

他の連中もこれだけ理解が早かったらかなり楽だったのになぁ・・。

 

 

とはいえこれならすぐに誤解を解けそうだ。

ほむらより先にスカウトする事になりそうだが上手くいきそう。良かった良かった。

 

 

 

 

 

 

「・・ったら・・んで・・」

 

 

 

安堵していた俺は杏子が何かを呟きながら俯いているのに気付かなかった。

 

 

 

 

「杏、「だったら何で!?」え!?どうした!?」

 

 

 

 

遮るように顔を勢いよく上げて叫ぶ杏子。

 

至近距離からの大声に思わず飛び上がるもそれを抑え込むように杏子に肩をガッと掴まれ無理やり固定される。

その表情は怒りの形相ながらもどこか泣きそうになっていた。

 

 

油断していたのもあるがリビング全体に響き渡る声量はさすがにやり過ぎではなかろうか?

近所迷惑だし何より俺がビビるから。

 

 

・・それにしても最近思っていたがこの時間軸の杏子はどこか情緒不安定な気がする。

突然感情的になって小さな子供のような癇癪が起こる事がこれまでもしばしばあった。

 

理由は分からないが過去に負った心の傷が今更ながら噴出しているかもしれない。

数年経ってからトラウマが噴出することがあるって聞いた事があるし。

 

しかしそれとこれとは話は別。これじゃ埒が明かない。

 

 

一応試しに「落ち着け」と宥めにかかってみたが「うるさい!」と首を激しく振って話をまともに聞こうとしないので途方に暮れそう。

 

普段冷静なはずの杏子が聞く耳もたないなんてこれはとんでもない激高ぶりだ。

 

 

・・ひょっとして俺はどこかで杏子の地雷を踏んでしまったのだろうか?

 

 

「い!」

 

 

肩にかかる力が強まって嫌でも杏子に意識を向ける。

ほむらの時とはまた違う。肩に込められた力から杏子の激情が伝わってくるようだ。

 

切羽詰まった表情で俺を見つめる杏子。

その視線に何だか耐えられなくなってすっと目を逸らすも無理やり視線を戻される。

 

 

「魔法少女を知ってた事何で黙ってた!?」

 

「杏子、冷静になろう!な?」

 

「何でアタシに打ち明けなかったんだよ!?マミは良くてアタシはダメって事か!?」

 

「!? ぐふ!」

 

 

話を聞いてない上にヒステリックに叫んだ後、首近くに衝撃が走った。

 

息がしづらい。

苦しい中薄目を開けて見ると杏子が俺の胸倉を掴んで持ち上げていて、まさかの教会でのさやかと同じポーズになっている。

 

 

俺は食い物を粗末にした覚えはないのに何で!?

 

 

「優依を待ってる間アタシがどれだけ寂しかったか分かるか!?また会いに来るから待っててってアンタが言ったから待ってたのに・・それを裏切りやがって!」

 

「うぐ!きょ、杏子・・!」

 

「それだけじゃない!他の女に色目使いやがったな?アタシがいるのに、お前は・・!」

 

「ぐえぇ・・!」

 

 

し、死ぬ!窒息して死ぬ!

 

 

考えなしの馬鹿力で胸倉掴まれて苦しいのに更にダメ押しで前後に身体を揺さぶって来るから意識が飛びそうだ。

視界ブレブレで目が回って気持ち悪い。

そのせいで杏子が何言ってるのかほとんど分からない。

 

 

「大好きって言ったくせに!アタシはそれを信じてたのに!嘘だったのかよ!?」

 

 

言ってる事は分からないが声だけは何となく分かる。とても苦しそう。

物理的には俺の方が苦しいはずなのに杏子の声はその数十倍苦しそうな声だ。

 

 

ヤバ、意識が飛びそう・・!

 

 

それだけで済めばいいけど最悪このまま目覚めないなんて事もありうる。

 

 

「アタシとは遊びだったのか!?他の女、あのザコに乗り換えたから会いに来なかったのか!?何で!?何で何で何で何で何で何で何で!?」

 

 

今の杏子は俺の様子を気に掛ける余裕がないらしく、しきりに何かを叫んで俺を揺さぶってくるからこのまま白目向いても気づかないかもしれない。

 

 

幼児退行でも起こしてるかのような癇癪だ。

 

 

ふぐえ・・窒息する・・。

一体何が杏子をここまでキャラ崩壊させるに至ったのか見当がつかないぞ・・!?

 

 

「何でこんな苦しい思いしなくちゃいけねえんだよ!?」

 

 

苦しいのは俺の方だ!

現在進行形で首絞められてるようなもんだからな!

 

 

急いで杏子を宥めない事には俺は明日の朝日を拝めない気がする。

まさかの死亡フラグだ。

 

杏子を説得するしかない!

やらなきゃ俺が死んでしまう!

 

 

「ち、違う!杏子誤解だ!」

 

「何が誤解だ!今更取り繕ってんじゃねえ!」

 

「ぐへら!」

 

 

更にキツく締め付けられた。全く話聞く気なし!

息絶え絶えの中、なんとか言葉を発したのに一蹴されるなんてあんまりだ!

 

 

うぷ・・意識が遠のいていく・・。

 

 

! だめだ俺!ここで意識を手放したらアウトだ!

とにかくダメ元でもやるしかない!一か八かだ!

 

 

これが最後のチャンスだとばかりに自分に喝を入れ声を張り上げる。

 

 

「聞いてくれ杏子!」

 

「あぁ!?次は何の言い訳だ!?」

 

 

ギロリと人を殺せそうな鋭い目で俺を睨みつけてくるが何とか反応してくれた。

 

よし今だ俺!最後のチャンスを発揮する時だ!

 

 

「俺、杏子との今の関係が好きなんだ!」

 

 

「!」

 

 

余裕で杏子の耳に届くような大きな声を張り上げて叫ぶ。

 

それが功を成したのか先程の激しい揺れがピタリと止まり、心なしか胸倉を掴んでいる力も弱まって息苦しさが多少改善された。

 

 

「・・どういう事だ?」

 

 

訝しげな表情だが杏子は聞くつもりがあるらしく俺を床に降ろす。

これでようやく足が地について一安心。

 

こ、これはもしや最大のチャンスでは・・?

さっきの言葉だけで一体何が良かったのか分からないがこれで攻めていくと上手くいきそうだ!

 

 

よし!やれ俺!

 

 

「俺、杏子といると時間が忘れる事がよくあるんだ。辛い事があっても杏子といるとすぐ忘れちゃって、そのおかげで乗り越えられた事も何度もあるし」

 

 

恐怖の赤い鬼の前で必死に弁解を捲し立てる。

 

 

いやー、ホントに忘れちゃうんだよねー。

 

だってコイツは何かしらトラブルを抱えてやってきて、そっちの方が何かと泣きたくなる事だったりするからどうでもよくなるもんだよ。

 

その実情を嘘半分、真相半分で二枚舌の如くスラスラと言葉に変えていく。

俺は案外女の子限定で詐欺師が出来るかもしれない。絶対やらないけど。

 

 

「そうなのか・・?」

 

 

半信半疑の様子だが杏子の表情は満更でもないのか多少綻んでいる。

 

人間誰でも自分のおかげとか言われれば悪い気はしないものだ。

例えそれが悪い意味でも言い方によっては褒め言葉に聞こえるものだ。

 

 

取りあえず俺は肯定も否定もせずニコッと微笑んでぼかしておいた。

 

 

「杏子が魔法少女だって事何となく気づいてたよ。でも魔法少女の事を言えば疎遠になっちゃうかもと思って言い出せなかったんだ。だって杏子って優しいから俺を危険な目に遭わせないようにわざと遠ざけようとするかもしれないし」

 

「・・・・」

 

「だから、杏子との関係壊したくなくて・・っ」

 

 

俺はそのまま何も言わず俯いてしまった。

 

 

 

第三者から見ればきっと俺は泣いてるように見えるかもしれないが真相は違う。

 

 

やべ・・息持たなかった・・。

 

 

床に降ろしてくれたとはいえ実は未だに俺は胸倉を掴まれていて息苦しい。

そのせいで軽く気絶しかけて途中で言葉が途切れてしまっただけなのだ。

何とかそのまま気絶せず意識を保つ事が出来たが今更取り繕ってももう遅い。

 

 

俺たちの周りは重苦しい静けさに包まれていた。

 

 

次で最後だ。これで決めなきゃ間違いなく意識が飛ぶぞ!

 

 

精一杯息を吸って出来る限りの大声を張り上げる。

 

 

「杏子が大事なんだ!(友達として※ここ重要)大好きだって言った事に嘘偽りはない!」

 

「!」

 

言った・・。言い切った。俺はやり遂げたぞ・・!

 

 

目を見開いて驚く杏子は無意識からかパッと胸倉を掴んでいた手を離したので息苦しさから解放される。

しかしほとんど気絶にしそうになっていた俺はバランスを保てず崩れ落ちた。

 

 

倒れた際の衝撃がなく床に叩きつけられた痛みもない。

 

 

「杏子・・?」

 

 

恐る恐る目を開けると杏子に抱きしめられていた。

背中に手を回され密着度半端ない。

 

 

「・・・本当にお前は可愛いな」

 

「え?ひゃあ!?」

 

 

杏子が何かを呟いた後、いきなり担ぎ上げられソファに放り投げられる。

叩き付けられたがソファの上なので痛くない。

すぐに起き上がろうとするより先に杏子が俺の上に覆いかぶさってギュッと抱き締められた。

 

 

何これ!?ちょ!やめて俺を抱き枕の要領で抱き着いてくるの!

すっごく暑いから!離してくれ!

 

 

「暴れても無駄だ。アンタの力じゃアタシには敵わない。大人しく抱きしめられてろ」

 

 

俺のささやかな抵抗なぞこの赤い戦闘マニアには子猫の抵抗に等しいらしく、すぐに完封されそのまま抱き枕として使用される。

 

 

こら!頬ずりすな!猫かお前は!?

 

 

「えへへ」

 

「・・杏子?」

 

「そっかそっか。アタシの事そんなに好きで大事に思ってくれてたのかー!誤解してて悪かったな優依♪」

 

 

杏子は何故か鼻歌すら歌いだしそうなくらい上機嫌になっていた。

その様子に安堵の溜息が漏れそうになるが何とか堪える。

 

 

たまには本音を言う事も大事だな。半分くらい嘘も混じってるけど。

 

杏子の事が大好きで大事なのは本当だ。

貴重な常識人枠と戦闘力の高さ。これから俺の死亡フラグ回避のための大事な魔法少女だ。

一番味方になってくれそうだから好きです。

 

 

なんとか機嫌は直ったみたいだがまだ肝心の事を言ってない。

ワルプルギスの夜を倒す協力の申し出だ。

 

言い方を間違えてここで機嫌を損ねて風見野に帰られてしまっては意味がない。

何とかヨイショして心良く協力してもらわねば。

 

情緒不安定なのが少し不安要素だが機嫌を損ねるよりはマシだ。

 

 

いや・・それより先にしなければならない事がある。

 

 

「杏子さん、あの・・恥ずかしいんで出来ればもう少し離れてほしいんだけど」

 

 

遠慮がちに杏子に進言する。

 

なんかさっきよりも密着度が上がってる気がして恥ずかしい。

具体的に言えば足を絡めてきてそのままR-18に飛んでいきそうな体勢だ。

第三者が見れば色々誤解されかねない。

 

もしこの場面をトモッちが見たら鼻血出しながら拝んでいただろう。

 

今すぐにでも俺を解放していただきたい!

 

 

「何言ってんだよ?アタシと優依の仲だろ?」

 

「え」

 

 

俺と杏子ってどういう仲だ?友達じゃないの?

もしくはカツアゲされる側とする側とか?

 

てか、真顔で何言ってんのコイツ?

 

 

「これくらいで恥ずかしがってたら身が持たねえぞ?」

 

「うわ」

 

 

更にギュゥゥと抱きついてきて今度は違う意味で窒息しそう。

杏子の息が当たって恥ずかしい。

距離ゼロだからコイツ特有の甘い匂いがするし勘弁してくれ。

 

 

「許してくれたのは嬉しいけどこれはちょっと・・」

 

「はあ?まだ許してないんだけど?」

 

「え!?マジかよ!?」

 

 

そのまま身を任せるように杏子に抱きしめられていたがまさかの発言に思わず上体を起こして拘束から抜け出し杏子を見下ろす。

 

知ってはいたが杏子は怒ると意外に根にもつので意外と怒りがしつこい。

こうなるとかなり面倒臭いのでさっさと機嫌を直してほしいものだ。

 

 

 

 

「許してほしいか?」

 

 

 

見計らったようなタイミングで口を開く。

その表情には意地の悪い笑顔が張り付いていてムカつく。

 

 

「そりゃ・・まあ」

 

 

願ってもないがこういう場合の杏子は何かしら要求してくるのでとても嫌な予感がする。

というか怒りが静まるまで俺の視界圏外のどっかに行ってほしいというのが本音です。

 

 

「だったら・・」

 

 

勿体ぶったように杏子は間をおいて焦らしてくる。

いい加減話せと痺れを切らした俺が口を開くよりも先に杏子が口を開いた。

 

 

 

 

 

「アタシと一緒に来い。そしたらずっと優依を守ってやるよ」




不穏は杏子ちゃんの提案!
果たして優依ちゃんはどう答えるのだろうか!?
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