魔法少女オレガ☆ヤンノ!?   作:かずwax

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百合ハーレムタグつけようか迷いましたがやめました。
だってこれハーレムじゃないもん。
死亡フラグに囲まれてるだけだもんW


77話 狂った愛の先

杏子side

 

 

「すぅ・・すぅ・・」

 

 

規則正しい呼吸音が優依から聞こえて来る。

どうやら飲ませた睡眠薬はよく効いてるみたいだ。

 

 

「ハハ、ハハハ・・!」

 

 

ようやく優依が手に入った!

 

 

押し寄せる歓喜に笑い声を漏らしながら優依を苦しめない程度の力で抱き締める。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねえ杏子、神原優依は魔法少女と関わりを持っているのは知っていたかい?」

 

 

 

「は?」

 

 

 

 

昨日ホテルにいきなり現れたキュゥべえがそんな事を言い出して、菓子を食べようと開いた口がそのまま素っ頓狂な声をあげる。

コイツが何を言ってるのか理解出来なくてしばらくその赤い目をじっとを見ていたアタシのその様子に「ハァ」と溜め息を吐かれた。

 

 

「その様子じゃ知らないみたいだね。君と神原優依は僕が見た限り良好な関係だと認識していたから、てっきり魔法少女の事も知ってると思ってたんだけど」

 

「! ちょ、ちょっと待て!何でお前が優依の事知ってるんだ!?いや、それよりもアイツが魔法少女に関わりを持ってるってどういう事だ!?嘘だったら承知しねえぞテメエ!」

 

 

さっさと話を進めようとするキュゥべえに槍を突き付ける。

持っていた菓子は槍を向ける際に放り投げてしまい、そのまま地面に散らかってしまったが気にする余裕は無い。

 

 

「言葉通りの意味だよ。神原優依は魔法少女を知っているし魔女も見えている。彼女自身に素質があるからさ」

 

「まさかテメエ!優依に契約を迫ったんじゃねえだろうな!?」

 

 

優依はひょっとして魔法少女だったのか?コイツと契約した?

 

 

怒りと混乱で殺気を隠さないアタシの様子にもキュゥべえは一切動揺せず、ただその無機質な目でアタシをじっと見つめてくる。

 

 

「落ち着いて杏子。確かに僕は神原優依に魔法少女にならないかと持ちかけたけど断られちゃったよ。だから彼女は今もただの一般人だ」

 

「・・・・そうか」

 

 

安堵の息が出て身体の力が抜けていく。

どうやら無意識の内に力んでしまっていたみたいだ。

 

 

それだけ優依が契約する事がアタシにとって大事な問題だという事か。

もし契約したなんて言ったら、迷わずキュゥべえの身体をバラバラにしていただろう。

 

まあ、冷静に考えて優依のヘタレな性格じゃすぐ魔女に殺されちまうだろうし、そもそも契約なんてする筈ない。

 

コイツから優依の名前が出て、少し動揺し過ぎたか?

暫くアイツに会えなかった寂しさから過剰に反応し過ぎたのかも。

 

 

・・いつ会えるのかな優依?

 

 

 

 

 

「あ、そうそう神原優依はマミが魔法少女だという事を知っているよ」

 

 

「え・・?」

 

 

だけど気が緩んだタイミングを見計らったようにキュゥべえは更なる爆弾を落としてくる。

 

 

しかも今度はマミ絡みの事だ。

 

『巴マミ』

かつてコンビを組んでいた魔法少女。アタシの憧れだった先輩。

自分の願いの所為で家族を無残に死なせてしまい、自棄を起こした時も去ろうとするアタシを引き留めてくれた。

結局、マミを叩きのめす形で決別してしまいそれ以来会っていない。

今はどうしてるのかさえ分からない。

 

マミの名前が出てきたときに感じたのは懐かしさと寂しさが入り混じった気持ち、そしてそれ以上に感じたのは怒りだった。

 

優依とマミは知り合い。

しかも優依はマミが魔法少女だという事を知っている。

それだけで身体中が煮えたぎるような怒りでおかしくなりそうだ。

 

 

「優依がマミと・・」

 

「しかもただ知ってるだけじゃない。神原優依は精力的にマミのサポートをしてるみたいだ。仲が良いみたいでね、よくマミの部屋に遊びに来る神原優依に何度か会った事があるよ。よく楽しそうに談笑している姿を見かけるね」

 

「・・・・・・」

 

 

頭の中ではマミの部屋で楽しそうにマミに話しかける優依の姿を思い浮かび、すぐさま頭から追い出す。

そうじゃなきゃ嫉妬に狂ってマミをメッタ刺しにしてしまいそうだ。

 

 

「実は・・最近二人の間に問題が起こったみたいなんだ」

 

「あ?」

 

 

嫉妬にかられて不機嫌なアタシに油を注ぐように続けるキュゥべえを睨む。

まるでアタシをわざと怒らせようしてるんじゃないかと疑いたくなるタイミングだ。

 

 

「マミは神原優依にとても執着してるみたいでね。嫌がる彼女を無理やり魔女の結界に連れ込んでるみたいなんだ。その所為で危険な目に遭ったのは一度や二度じゃない」

 

「・・へえ」

 

「しかも最近は執着心がとても強くなってるみたいでマミ自身が神原優依に危害を加えてしまったんだ。実際あったのが首にリボンを締め付けて窒息死させそうになったり、銃を向けて心中しようとしたりとかなり際どい」

 

「な・・!?」

 

 

マミが?

あの正義の魔法少女を不器用なくらい貫いてたような甘ちゃんが?

 

信じられない信じたくない。

 

でも前にアタシに会いに風見野にやって来た優依の首には痛々しい絞め跡が付いていた。

気になって聞いてみたけど優依は何でもないと誤魔化してた。

 

普通に生きてればあんな跡つくはずがないけどマミにやられたなら納得だ。

アタシに言えばマミと更に溝が深まるかもとか思ったんだろうな。

だから優依は誤魔化した。・・けどもう遅い。

 

 

アタシはマミを許さない!

可愛いアタシの優依を傷つけた罪を償ってもらわねえと・・!

 

 

そして優依、お前もだ!

マミにちょっかいだしやがって!

アタシの事、大好きとか調子の良い事言ってたくせに会いに来ないじゃねえか!

 

まさかマミに鞍替えしたから会いに来ないのか・・?

 

 

許さねえ!アタシがいながら・・!

 

 

怒りに燃えているとそれを見計らったようにキュゥべえが話しかけてくる。

怪しいと思う心の余裕もアタシにはなくなっていて、あるのはただ沸騰しそうな怒りだけ。

 

 

「それだけでも厄介なんだけどもう一つ問題がある。イレギュラーの存在だ」

 

「・・イレギュラー?」

 

 

キュゥべえの話によれば見滝原に契約した覚えのないイレギュラーな魔法少女が現れたらしい。

ソイツは出会い頭にいきなりキュゥべえに攻撃してきたんだとか。

 

 

「ふーん。興味ないね」

 

 

イレギュラーと呼ばれる謎の魔法少女に関しては特に興味は湧かなかった。

 

勝手にすればいい。用があるのは優依だけだ。

正直マミは二の次。優依がいればアイツなんてどうでもいい。

 

 

「おや随分と淡白だね。その例のイレギュラーは神原優依に危害を加えたのに」

 

「!」

 

 

再び出てくる「優依」の名前に反応してしまう。

コイツはいちいちアタシが食いついてくるような内容ばかり話してきてムカつく。

 

 

まるで誘導されてるみたいで気に入らねえ。

 

 

睨むアタシを気にせずキュゥべえは淡々とイレギュラーとやらが優依にどんな危害を加えたのかを説明してきてイライラしながらもそれに耳を傾ける。

 

 

だけど、聞いてる内にイレギュラーの優依に対する横暴さでついに怒りが限界点に来てしまった。

 

 

 

 

 

 

「どこに行くんだい?」

 

 

 

一通りの話を聞いた後、黙って部屋を出ようとするアタシをキュゥべえが呼び止める。

 

 

「決まってんだろ?優依を迎えにいくんだよ」

 

 

振り向かずに扉に手をかけながら言ってやった。今は立ち止まる時間さえ惜しい。

 

 

「見滝原に向かうんだね」

 

「ああ、アタシを放っておいて浮気する馬鹿にお仕置きしなくちゃいけねえしな」

 

 

見滝原に帰る時、優依は「会いに行くから待ってて」と言った。

アタシはその約束を信じてずっと待ってたのに裏切ったのは優依の方だ。

 

だったらもう約束を守る必要なんてない。

会いに来ないならアタシから会いに行くだけだ。

 

 

待ってろよ優依?

今から迎えに行くからな。

 

 

 

扉を開けて歩き出す。向かう先は見滝原だ。

 

 

 

 

 

見滝原に着いて真っ先に向かったのが優依の家だったがアイツはいる気配が感じられなかった。

 

まさかマミとか浮気相手の家に泊まってんじゃねえだろうな?

だとしたらお仕置きが更に増えるな。

 

 

家にいないとなると次は学校だ。

流石に学校には来るだろうと思って先回りして見張っていたのに優依の姿がどこにも見えなくて流石に焦りが出てきた。

 

 

まさか魔女に食われて・・?

 

 

最悪の事態が頭をよぎって不安で胸が押しつぶされそうになりながら見滝原中を駆け回って優依を探し続けた。

一日中探し回ってようやく優依を見つけたのは青髪の女に抱き着いてやがった場面だった。

 

 

 

 

「さやか可愛い!!」

 

 

「・・・・へぇ」

 

 

どうやら優依が抱き着いてるのは魔法少女らしい。

随分と興奮してるのか早口で衣装を褒めまくっている。

 

 

アタシと同じように・・!

優依がアタシ以外の奴に抱き付いて・・!

 

 

 

怒りに震えながら楽しそうな優依を見ていた。

 

 

些細な事だ。

 

この後、隙をついて優依を連れ去ればいいだけなんだから。

誰にも見つけられない所に閉じ込めてアタシだけしか見れなくなるようにしてしまえばいい。

 

 

そう自分に言い聞かせる。

 

 

でも優依を連れ去るにはマミを含めた魔法少女どもが邪魔だ。

それに近くにいるキュゥべえモドキも。

 

キュゥべえ曰はく、優依の傍にはいつも精神疾患のキュゥべえがいると聞いていたがおそらくアイツの事だろう。

口先八兆で優依を誑かしてるらしい。バラバラにしてしまいたい。

 

 

”僕に作戦があるよ”

 

 

いつの間にか傍にいたキュゥべえはアタシにある事を提案してきた。

 

 

自分が囮になってあのキュゥべえを引き剥がすから、その内に優依を連れ去れば良い・・と。

 

 

何でいつも傍観気味のコイツがここまでアタシに協力的なのか眉をひそめたけど他に良い方法がない以上乗っかる事にした。

 

運が良い事に優依は何故かキュゥべえモドキだけを連れてマミ達と別れた。

 

 

 

 

作戦決行だ。

 

 

 

 

「おい待て な!?」

 

 

上手くいったと思ってた。

 

何か目的があって向かった先にある鉄塔を眺めていた優依からキュゥべえモドキを引き離した。

アタシは後ろから声を掛けて背中から抱き着こうとしただけなのに突然叫ばれてしまい、その事に驚いた隙をついて優依は逃げ出し慌てて追おうとしたところに突如目の前に何かが立ちはだかった。

 

 

鋭い何かが地面に突き刺さり、遮るようにアタシの前にある。

 

 

そんな事はどうでもいい。

 

 

それよりも早く優依を捕まえないと見失ってしまう!それはダメだ!

もうこれ以上アタシから離れるのは許さない!

 

 

 

最悪、優依の足を切って・・!

 

 

 

 

「行かせねえよ」

 

 

「!」

 

 

邪魔したソイツはそれだけ告げて優依を追うとするアタシに何かの先端を首元に向けてきて動けない。

殆ど明かりが灯ってないからソイツがどんな姿をしてるのか分からないけど、形は人っぽい。

 

 

首につきつけられてんのは・・槍か?

心なしかアタシの槍と似てる気がするけど・・?

 

 

いや、それよりコイツをさっさと片付けないと優依に追いつけなくなる!

 

 

 

「どこの誰か知らねえけどよくも邪魔してくれたな?もう少しだったのにどうしてくれんだよ!」

 

 

目の前にいる奴は誰かよく分からないが同業者なのは間違いない。

だから攻撃する事に躊躇しなかった。

変身してすぐさま槍を邪魔した奴に向けて振り上げてソイツに先制攻撃をしかけた。

 

 

 

 

 

「く・・そ・・」

 

 

 

 

気づけばアタシは地面にうつ伏せで倒れて頭上を睨みつける。

 

 

何なんだコイツ・・!?

 

 

油断なんてしてなかったはずなのに、全く攻撃が当たらない。

 

 

まさか、アタシの攻撃が全部読まれてた・・?

コイツ一体何者だ?

 

 

「どうやら無事逃げ切れたみたいだな」

 

 

暗がりで姿が見えないソイツは優依が走っていった方向に顔を向けてるみたいでこっちを見ようともしなかった。

それがまた屈辱的でギリッと歯を噛みしめる。

 

 

「お前はちったあ、頭冷やせ」

 

 

ジャリっと足音が聞こえ、顔を上げるとソイツは優依が走って行った方向にゆっくり歩いているみたいだ。

このまま優依を追いかけて危害を加えるかもしれない。

 

 

それは駄目だ!ここで食い止めなきゃ!

 

 

「待っ・・! いない?」

 

 

上体を起こして立ち上がるも、何故かアイツはいなくなっていて辺りはシンと静まりかえっていた。

気配を探ってみても魔力を全く感じない。いるのはアタシ一人。

 

 

「チッ・・」

 

 

優依もとっくに遠くまで逃げられてて、すぐに追いつく事が出来ない。

追いついたとしてもまたさっきの奴が邪魔する可能性がある。

 

ムカつくけど次のチャンスを待つしかなさそうだ。なら明日決行だ。

流石の優依も学校がある以上いつまでも休むわけにはいかないはずなんだから。

 

 

 

今度は絶対逃がさない!

 

 

 

 

 

 

「優依ちゃん美味しい?」

 

「・・うん、とっても美味しいよ・・」

 

「ちょっと優依!あたしに食べさせるの忘れてるわよ!」

 

「・・はいはい。ほら、あーん」

 

「あーん♪」

 

 

 

 

「・・・・」

 

 

 

次の日、優依を見つけたのはあいつが通う学校の屋上でいつもの女友達二人と仲良くランチをしていた。

いや、仲良くじゃない。イチャイチャと言った方が良い。

 

近くの建物の屋上に隠れてその様子を見ていたアタシはイライラのあまり持っていた菓子を握り潰してしまう。

 

 

優依の交友関係はある程度把握している。

 

遠くからずっと優依を見守ってる時から思ってたけど優依とあの女二人はとても仲が良い。

実はどっちかと付き合ってるんじゃないかと思えるほどだ。

 

 

ピンクの髪の女は優依に媚びてる感じだし、青髪に至ってはウザいくらい優依に馴れ馴れしい。

 

 

「可愛いー!さすがは優依!あたしの嫁だー!」

 

「あー・・よしよし、さやか。今日は特別しっかり甘えていいぞ」

 

 

 

「・・・あぁ?」

 

 

嫁?ふざけんな!殺してしまいたい・・!

優依と付き合ってるのはアタシだ!お前じゃない!

 

 

あの青髪の女「美樹さやか」!アイツは絶対潰す!

 

 

魔法少女ってだけでも潰したいのに、美樹さやかは昔のアタシそっくりで見ていて腹が立ってくる。

キュゥべえの話じゃアイツは昨日契約したばかりのヒヨッコ。

しかも願いが好きな男の腕を治すなんて馬鹿な事を叶えやがった。

 

マミと同じで正義の魔法少女を騙る甘ちゃん。

他人のために願いを叶えるなんてまるで昔のアタシみたいじゃんか!

そんな亡霊みたいな奴が優依の傍にいて仲良くするのは許さない!

 

 

優依がアイツに靡く前に叩き潰さなきゃ!

 

 

 

だから襲った事を後悔していない。

 

アイツが無防備に使い魔に攻撃してる瞬間を狙って背後から槍を突き立てた。

 

狙うは心臓。

 

殺す気で攻撃したのに狙いが甘かったのか美樹さやかは思ったより致命傷を負っていない。

すぐさまアタシから受けた傷を癒して体勢を整えていたくらいだ。どうやら固有魔法は回復魔法のようだ。

 

 

それならそれで好都合。

 

 

 

ムシャクシャするこの苛立ちを発散させるためにも付き合ってもらおうじゃん!

 

 

 

「あたしに恨みでもあるの!?」

 

恨みしかねえよ!優依に気に入られやがって!

弱いくせに何で優依と仲良くしてんだよ!

優依にはアタシだけで十分だろうが!

 

 

「お願い!謝るからもうこんな事やめて!」

 

随分とお優しい事で。

きっと優依にもこうやって良い子ぶって近づいたんだろうな。

二度と優依に近づけさせない。

槍を突きつけて脅してやれば優依から離れていくだろう。

 

 

誰にも渡さない!奪おうとするなら叩き潰す!

 

例えそれが優依の友達だろうと同じだ。

気が変わって優依を奪おうとするかもしれない。

 

 

 

そんな事アタシが許すわけねえだろ!

ふざけんな!優依はアタシだけのモノだ!!

 

 

 

その思いだけで徹底的に痛めつけたが生意気にも美樹さやかは何度も立ち上がってアタシに向かってくる。

その事に怒りがピークに達してトドメをさそうとした瞬間、アタシの前には現れたのは恋焦がれてた優依だった。

 

 

でも・・・、

 

 

 

 

「何でソイツを庇うんだよ優依!?」

 

 

 

 

優依がアタシから庇うように美樹さやかを抱き寄せてこっちを睨んでいる。

まるでソイツを守ってるみたい。

 

 

何で?何でソイツを抱きしめてるの?

 

 

い、嫌だ・・!

 

やめてよ!何でアタシの目の前で仲良く抱き合ってんの!?

 

 

 

嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ!!

 

 

 

胸が抉れるような痛みを感じて苦しい・・。

このまま泣いて滅茶苦茶に暴れ出してしまいたい。

 

 

 

ただでさえ優依の予想外の登場に動揺していたのに、優依の口から出た言葉で更にアタシはボロボロになっていく。

 

 

”俺、さやかに傷ついてほしくない!”

 

 

 

その言葉を聞いた瞬間、目の前が真っ赤になっていた。

 

 

傷ついてほしくないって、アタシはいいのかよ?

優依のせいで心はズタズタに傷ついてるのに・・。

 

 

・・優依はソイツを選ぶのか?アタシじゃなくて・・?

 

 

頭の中で何かがガラガラと崩れる音がする。

 

 

美樹さやかを選んだ現実がアタシの中にあるのは怒りと絶望。

それがアタシを突き動かす原動力だった。

 

 

優依がアタシを裏切るはずがない。

きっと美樹さやかに誑かされてるんだ。

 

 

なら美樹さやかを殺して優依を取り戻す!

 

 

そう自分に言い聞かせて、槍を構えた時「そこまでよ」と周囲に響く凛とした冷たい声。

 

 

突如、例のイレギュラーらしい奴が割り込んできて結局勝負はつかなかった。

あの瞬間移動のような妙な魔法を何とかしなきゃアタシに勝ち目はない。

 

 

だから撤退を選んだ。

 

ただしそれはフェイク。退散するつもりなんてない。

アタシは優依と二人で話をしたい。

 

 

優依の家に先回りして待ち伏せしようかと思ったけど幸運にも優依の母さんがいて優依に会わせてほしいとお願いしたらすんなり承諾してもらえた。

 

 

呼び出してもらって待ってる時に優依が帰ってきて、内心ほくそ笑む。

 

 

「お帰り優依。・・待ってた」

 

 

家の中にアタシがいるのに酷く驚いてる間に結界を施して退路を断つ。

 

 

これで逃げられない。アタシと二人っきりだ。

 

 

何故か正座して弁解を始めた優依は魔法少女を知った経緯をポツリポツリと話し出す。

つっかえつっかえな説明だったからあまり要領を得なかったが、おそらく魔女からマミを助けてもらったのがきっかけらしい。

 

頭では理解したが納得できなかった。

 

 

・・最初に魔女から優依を助けたのはアタシだろ?

納得できない!アタシにどうして話してくれなかったんだよ!?

 

 

どうしてマミの方に行っちゃうんだよ・・!?

優依はアタシの彼女だろ!?

 

 

「何で!?」

 

 

言いようのない怒りが爆発し気づけば優依の胸倉を掴んでいた。

 

 

何で優依の傍にいる魔法少女がマミなんだ!?

何で優依はアタシじゃなくて美樹さやかを選んだんだ!?

 

アタシと付き合っておきながら他の女と浮気していた怒りと会いに来てくれなかった寂しさが濁流のように全身を駆け巡って優依を力の限り揺さぶる。

 

結局は誤解だったんだけど、やっぱり優依が悪いと思う。

こんなの一歩間違えたら誤解じゃ済まない。

アタシを裏切ったようなもんだ。

 

 

浮気疑惑そこそこに元々優依に会いに来た本題に入る。

 

 

内容はもちろんアタシと一緒に来いという事だ。

 

でも優依はすぐさまアタシの提案を断った。

何度も一緒に来るように訴えてみるも優依は首を縦に振らず頑なに拒んでる。

押しに弱いコイツには信じられない頑固さだ。

 

 

どうしてここまで拒むのかと思ったがふと脳裏に過るのは優依と仲の良い連中の顔だった。

 

 

ひょっとして優依はアタシじゃなくてソイツ等を選ぶのか?

アタシは優依の彼女じゃないのにどうしてアタシを選んでくれないの・・?

 

 

 

心が壊れそうな感覚を感じながら優依の肩にしがみつく。

 

 

 

 

アタシの持てる全てを使って優依を守る。

そうはっきり告げて優依に迫った。

 

 

 

 

”一緒に来てほしい”

 

 

 

 

そう掠れた声で呟いた。

 

 

 

 

ずっと傍にいたい

 

もうどこにも行かないでほしい

 

アタシだけをずっと見ていて

 

 

 

 

その想いを込めて訴えかける。

 

 

 

 

これで断れたらアタシは・・!

 

 

 

「ごめん杏子。俺は行かない」

 

 

 

でも現実はどこまでも残酷だった。

 

 

出てきたのは拒絶の言葉。

たったのそれだけで目の前が真っ黒になっていく。

 

 

 

 

どうすれば優依はアタシと一緒にいてくれる?

 

 

 

この街には大事な人がいるから行けないって言った。

 

 

 

このままじゃ、他の女に取られちゃう!そんなのやだ!

 

 

どうしたら・・・!

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・そうだ。

 

 

 

 

 

無理やり連れていけば良いだけじゃん

 

 

 

 

ソウスレバ、優依ハアタシダケノモノ・・!

 

 

 

 

アタシはそっとパーカーのポケットに手を入れる。

その手つきに迷いなんてなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

やり方は卑怯だ。でも、

 

 

 

ようやくこれで優依はアタシのものになった。

 

 

 

 

 

穏やかな表情で眠る優依の頬にキスをして髪を撫でる。

二人っきりの時間がとても愛しい。

 

 

 

「・・そろそろ行くか」

 

 

 

じっくり二人の時間を堪能した後、変身して眠っている優依を抱き寄せ近くにあった窓を開ける。

 

 

アタシを信頼してくれている優依の母さんを裏切るような形になるけど、これだけは譲れない。

 

 

可愛いアタシの優依。

誰にも渡さない。例えそれが優依の母親だったとしても!

 

 

迷いを振り払うように勢いよく床を蹴って暗い街並みの中を飛ぶ。

みるみる内に優依の家から遠のいていく。

 

 

もうこの街には用はない。

絶好の狩場だし多少未練はあるが魔法少女三人を相手にするのは流石にきつい。

 

気づかれる前にさっさと風見野に帰るか。

ほとぼりが冷めるまで優依をどこかに閉じ込めて可愛いがろう。

もちろんアタシだけを求めるようにきっちり調教しておかないとな。

 

 

これからの生活を想像して思わず口が綻ぶ。

 

 

優依とならどこに行ったって楽しいだろう。

だってずっと一緒なんだから!

 

 

 

 

 

 

「どこに行くつもりかしら?」

 

 

 

 

「!」

 

 

 

 

背後から聞こえる懐かしい声にすぐさま笑顔が引っ込み、思わず足が止まりかけるもすぐさま動かして建物を駆けていく。

 

 

「チッ」

 

 

アタシめがけて迫ってくる無数の黄色いリボン。

それは行く手を塞ぐように壁となって立ちはだかる。

こんな芸当出来るのは一人しかいない。気配を感じる方に顔を向けて睨みつける。

 

 

 

何でアイツがここに・・!?

 

 

 

 

「・・マミ」

 

 

 

「久しぶりね佐倉さん。優依ちゃんを抱えてどこに行くの?」

 

 

 

 

 

かつて一緒に戦っていた相棒、そしてアタシの師匠だった魔法少女「巴マミ」が立ちはだかるように佇んでいた。




杏子ちゃんに会った優依ママの内面:

あの馬鹿娘は次は何をやらかしたんだ?

優依ママは娘の女事情を把握しています。
殆ど娘が悪い事もW

次はマミちゃんと杏子ちゃんの対決です!

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