魔法少女オレガ☆ヤンノ!?   作:かずwax

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GWの目標:週二投稿頑張るぜ!



そのためにここ最近下書き作業頑張った!
・・あれ?それで普段の投稿サボったら本末転倒じゃね?


90話 発言には気を付けましょう(手遅れ)

終わったー・・・。

 

 

始まってすらいないのに終わったよ。

いや、自分でも何言ってんのか分かんないけどきっとこの表現が正解だ。

てかこれしか言いようがないわ。

 

 

でもこれ俺は悪くないよね。

悪いのは全部、現在進行形で銃刀法違反してる赤だ。

 

 

どうしてこんな状況になっているのか冷静になるためにも今の状況を整理してみる必要がある。

 

 

俺が今いる場所は夢に見る程帰りを待ち望んだ愛しき自室。

念願がかない涙を流しそうになったが感動に打ち震えている状況でない。

 

なぜならここにいるのは俺だけじゃないからだ。俺の他に二人の少女がいる。

かつての師弟コンビ、そして現在は険悪な関係であるマミちゃんと杏子だ。

てかもう険悪を通り越して顔を合わせれば殺し合いを始めるからある意味最恐の仲好しだと言えるかもしれないが。

 

 

正直この二人が再び鉢合わせしてしまった時点で諦めに近い形でそれを覚悟していた。

 

しかしそんな中、半ば奇跡に近い形で穏便に話し合いに持っていく事に成功した。俺にとってはある種の偉業だ。

これで穏やかに解決すれば対ワルプルギスの夜の協力関係という悲願達成に出来ればいう事なし。

そのためなら許可してないけど俺の部屋に上がり込んだ事を許せるし、一万歩譲って部屋が破壊されても最終的に事が丸く収まるなら血の涙を流しつつも許すつもりだった。

 

しかし現実はどこまでも残酷だ。

むしろよく殺し合いが起こらずどちらも死んでいない事が最高に運が良かっただけだったんだ。

 

 

・・もうその運は枯渇したみたいだけど。

 

 

 

俺の目に前には話し合いと称してマミちゃんに槍を向ける杏子が映る。

取り出した槍がいつもより数倍鋭さを増している気がするが気のせいだと思いたい。

 

 

第一声が宣戦布告とかこいつは俺をどれだけストレスを与える気だろうか?

 

 

「あのー・・杏子さん?今から話し合いするって言ってんの。誰が殺し合いするって言ったんだ?」

 

 

口が引き攣るのが抑えられない。

なるべく穏便に話しかけようと微笑んでみたが正直笑えてないと思う。

 

 

「これがアタシの話し合いだ。文句ねえだろ?」

 

「ふざけんな!文句しか出てこねえわ!何だその理屈!?それは何か?魔法少女のコミュニケーションは攻撃から始まるのか!?」

 

「そうだ。間違ってるか?」

 

「ですよね!あながち間違いじゃなさそうなのが辛い!」

 

 

魔法少女の事情を考えると杏子の言ってる事は事実だろう。

アニメでは描写はなかったがグリーフシードと縄張りを巡って魔法少女同士争ってるのは明白だ。

 

くそ!言い返せない。

 

 

ぐぬぬと悔しがる俺を見て勝ち誇ったように見下ろす杏子はそのままマミちゃんの方に目を向ける。杏子を映す黄色い瞳は底冷えしそうなくらい冷たく顔は無表情だ。

 

 

「・・随分な挨拶ね。話し合いなんてこじれるだけだって分かってたけど、まさかいきなりこんな事しでかすなんてね。ここまで乱暴だといっその事清々しいわ。・・でもね」

 

「!」

 

「調子に乗るのはもう終わりよ」

 

 

杏子を取り囲むように無数の銃が出現する。

包囲網のように部屋中に散らばるそれは全て杏子に銃口が向けられ隙がない。

 

 

俺の部屋が一気に戦場へと変わり緊張感が走る。

 

 

オメエも殺る気じゃねえかああああああああああ!!

 

 

ベクトルが違うだけで本質は赤と大差ないよこのクルクル!

むしろなまじ火力がある分赤よりタチが悪い!

 

 

「槍を下げなさい佐倉さん。大人しくしてくれれば私だって下手な事しないわ」

 

「嘘付け。部屋全体に銃を出しておいてよく言うぜ。アタシが少しでも動いたら撃つつもりだろ?殺気駄々漏れのくせに」

 

「あら、気づいてたの?ならしょうがないわね。はっきり言うわ。二度と優依ちゃんに近づかないで。さもないと・・撃つわよ?」

 

「二人とも冷静に!話し合いだって言ってるだろ!」

 

 

慌てて制止を呼びかけるもまるで聞いてない馬鹿二人はお互いを睨み合ったままで泣きそうだ。

 

 

このままでは杏子とマミちゃんに俺の部屋は意味もなく無残に破壊される。

いや部屋だけじゃない。間違いなく家が壊れる。

それも爆弾でも落とされたかのように跡形もなく更地に早変わりするだろう。

 

 

頭に血が上っているだろうこいつ等が周囲に気を遣って戦うとかそんな配慮あるはずない。

 

ワルプルギスの夜が来る前に家がなくなって路頭に迷うとか絶対イヤ!

ふざけんな!こいつ等の事情で家壊されるとかあってたまるか!

 

 

「おいお前ら!俺の部屋で武器を使用するのは厳禁だぞ!もしそのまま暴れて何かが壊れた時点で即刻ここから出て行ってもらうからな!そして二度と俺の視界に現れるなボケェ!」

 

「「!?」」

 

「うお!?」

 

 

凄い勢いでこっちに振り向いている。

合図したのか息ぴったりだな。流石元師弟関係。

 

これから訪れるであろう凄惨な未来に堪らなくなって叫んだら予想外に反応があって逆に驚いてる。

 

 

 

「「・・・・・・」」

 

 

あれ?何でそんな絶句してんの二人とも?え?

俺がこの状況に絶句したいんだけど。え?舐めてんの?

 

 

しばらく沈黙が続くも杏子の手からポロリと槍が滑り落ち、ガシャンと金属が奏でる音が響き渡り、それが合図のように事態がようやく動いた。

 

 

「ご、ごめんなさい優依ちゃん!私が悪かったわ!だからそんな事言わないで・・!」

 

「え、うん・・」

 

 

最初に反応があったのはマミちゃんだった。

瞳に涙をためて俺に縋りつきながら謝罪の嵐で軽くドン引きしそうだ。

部屋中に散りばめられた銃がいつの間にか消えており空間が広くなったように感じる。

突然の状況に付いて行けず若干放心している間もマミちゃんは壊れたラジオのようにひたすら俺に謝りまくっていて怖かった。

 

咄嗟だったとはいえマミちゃんの方は戦う気はなくなったようで良かった。

ほっとしつつ縋りついてくる黄色を引き剥がしもう一つの問題の方に目を向ける。

 

そう、杏子である。

片方だけ矛を収めて肝心のけしかけた側を何とかしなければどうにも・・。

 

 

「・・・・・っ」

 

「・・何て顔してんの?」

 

 

見慣れた杏子の顔は初めて見ると思えるくらい顔色が悪かった。

心なしか身体が小刻みに震えていて寒いのかと勘ぐってしまう。

 

ヘソ出しスタイルがここに来て副作用でも生じ始めたのかもしれない。

女の子は冷えが天敵なのに無謀な事するから・・。

 

 

「・・杏子、大丈夫か?」

 

「・・視界に現れるなって・・優依に会ったらダメって事か?それも二度と・・」

 

「あ、あー・・話し合いしようか?杏子、取り敢えず早く座ってくれ」

 

 

杏子の様子はおかしいがこれはあえて触れない方が良さそうだったから大人しくなった今のうちに話を勧めた方が良い。そう思って座るように促してみたがこれで良かったのだろうか?

 

無言のままぎこちない動作で再び座り直す杏子は未だに顔色は悪いので少し心配になる。

こちらも出していた槍はいつの間にか消えているようだ。

 

 

そういえば床に槍落としてたけど大丈夫だよね?

床傷ついてなきゃ良いけど。

 

 

それにしても話し合いの序盤でいきなりこれってキツイな。

既にストレスのダメージが胃にキテルってのに。

俺話し合いの途中で血管ブチ切れないか心配になってきたわ。

 

 

 

はあ・・・・。

 

 

 

 

 

 

マミside

 

 

 

「・・じゃあ話し合い始めるよ。言っとくけど出すのは言葉だから間違っても武器なんて出すんじゃねえぞ馬鹿二人」

 

 

未だ怒りがおさまらないのか優依ちゃんはこめかみを押えながらかなり素っ気ない口調でそう吐き捨てた。

 

流石にこれはまずいと分かる。

いくら佐倉さんは危険だと言ってもここで戦ったりなんてしたら優依ちゃんが怒るのは明白。

さっきの激怒ぶりから考えればここから追い出されるかもしれない。

 

 

佐倉さんもそれを理解したみたい。だから顔色を悪くしてる。

優依ちゃんは本気だ。もしこの場で戦ったりすれば二度と口すらきいてもらえなくなる。

 

 

それだけは絶対にイヤ!

そんな事になったら私は生きていけなくなる!

優依ちゃんに嫌われたくない!

 

 

こうなったら優依ちゃんの望み通り、佐倉さんと話をするしか選択肢はない。

・・認めたくはないけど出来る事ならもう一度彼女と落ち着いて話をしたかったのは本当の事だもの。

 

 

気づかれないように向かい側に座る佐倉さんを盗み見ると優依ちゃんに言われた事が余程ショックなのか未だに顔色が悪いまま茫然としていた。

 

 

良い気味ね、なんて思うのは性格が悪いかしら?

 

 

佐倉さんをこんな状態にした当の本人はその事について一切気にした素振りを見せないままお茶を啜っている。どうやら傍観に徹するつもりらしく口を開く素振りがない。

 

 

・・佐倉さんもこんな状態だし、ここは私から話かけるしかなさそうね。

 

 

小さくため息を吐いた後、「佐倉さん」と呼べば赤い瞳がこちらを向いた。

心なしか瞳が虚ろに見えるけど気にしてはいられない。私はゆっくりと口を開く。

 

 

「ここへ何しに来たの?もうこの街には来ないって言わなかったかしら?」

 

 

慎重に話しかけたつもりだったけど思ったよりも少し口調がきつかったみたい。

虚ろだった佐倉さんの目がみるみる内に吊り上がらせていくのが目に見えて分かる。

 

 

この様子だとまた衝動的になってもおかしくないけど、もう後には退けない。

 

私は優依ちゃんの事を愛してるの。

佐倉さんなんて足元にも及ばないくらい。

 

 

それなのに一度ならず二度までも私から優依ちゃんを奪おうとするなんて絶対に許せない!

 

 

昨日もそうだけど今回の事だってそう。

優依ちゃんを抱きしめる佐倉さんを殺してしまいたいと何度思ったと思ってるの!?

あの娘の隣にいるのは私よ!貴女じゃない!

 

 

憎しみを込めてじっと睨んでいたら、その視線に少し気圧されたのか佐倉さんはハアとため息をついて面倒臭そうに口を開いた。

 

 

「誰が好き好んでここに来ると思ってんだ?最近風見野に魔女がシケてるから新しい狩り場を探してたんだよ。獲物が少なくなれば狩りの場所も変えるだろ?すぐ近くに絶好の狩り場があるんだ。狙わない理由はないね」

 

「・・・・」

 

「やっぱここは良いよねえ。ちょっと歩いてるだけですぐ魔女と出会えるんだ。ホント絶好の狩り場だよ」

 

「ふふ・・」

 

「あ?何が可笑しいんだよ?」

 

 

耐えきれなくなって思わず口を押えて笑ってしまった私を佐倉さんは苛立ったように睨んでいる。そんな彼女を見て余計笑いが込み上げてきそう。

 

 

「嘘ばっかり、そんな建前聞きたいんじゃないわ。本当の目的を言ってちょうだい」

 

「・・・・」

 

「優依ちゃんでしょう」

 

 

確信をもってそう告げる。

佐倉さんがこの街に来た理由なんてそれ以外ありえない。

 

何か言おうと佐倉さんは口を開きかけたけどほんの少しチラりと優依ちゃんの方を盗み見てこちらに向き直った。その顔には挑発的な笑みが張り付いている。

 

 

「・・そうだって言ったら何だ?アタシは優依が欲しい。そのためだったら手段なんて選ばない」

 

「やけにあっさり白状したわね」

 

「バレてるなら隠しても仕方ないじゃん。で、それを知ったアンタはどうする?アタシを潰すか?優依の目の前で」

 

 

明らかな表面所の建前でさえあっさり捨てた彼女はどこまでも憎たらしい態度で挑発してくる。

よく本人の前でそんな事出来るわね。呆れて言葉も出ないとはこういう事を言うのかもしれない。

 

 

佐倉さんはここ最近生意気な態度が助長してる気がする。さっきだってそう。

わざと私を絶望させるために目の前で優依ちゃんとイチャイチャしていたもの。

 

 

・・許せない。少しお仕置きが必要だわ。

 

 

そう考えていた私はふと思い出した事を口に出す。

 

 

「聞いたわよ佐倉さん。貴女、優依ちゃんが魔法少女と関わりがある事を知らされてなかったんですってね?」

 

「!」

 

 

反応を伺うつもりで口にしてみただけなのに佐倉さんは面白いくらい表情を強張らせている。

それはまるで聞きたくなかった忌まわしい事であるようで彼女の纏う雰囲気が一気に剣呑なものになっていく。

 

シロべえから聞いてまさかとは思ったけどどうやら本当みたいね。

これはひょっとして佐倉さんに釘をさすチャンスかもしれない。

ここで私の方が特別だと思いしらせれば二度と優依ちゃんにちょっかいを出す事もなくなる可能性だってある。

 

ああ、そうね。それがいいわ!

ここで佐倉さんの心をへし折ってしまいしょう!

 

私と優依ちゃんの仲に割り込もうとする泥棒猫なんて消えてしまえばいいんだわ!

 

 

内心ほくそ笑んだ私は心底同情したような憐れんだ顔で佐倉さんを見やる。

 

 

「貴女は私より早く優依ちゃんと出会ったらしいじゃない。つまり私よりも付き合いが長い。それなのに何も知らされていなかったのね。・・可哀想に」

 

「黙れ!一般人を巻き込むアンタとは違う!」

 

「確かにそうね。でも優依ちゃんは私が魔法少女だって事、私と関わる事がどんなに危険な事だって理解しても離れていかなかった。ずっと傍にいてくれた。佐倉さん、貴女と違ってね」

 

「・・・・・・」

 

 

言葉に込められた皮肉で気づいたらしい。

佐倉さんは不愉快そうに顔を顰めていた。

 

過ぎた事だと思っていたけど私の元を去った事を未だに怒っていたみたい。それが優依ちゃんの事で争っている際に不意に表に出てきた。

 

・・ここまで拗れてしまってもやっぱり佐倉さんに未練があったのね私。

気づいたところで今更、もう遅いけど。

 

 

一度憎しみを抱いてしまえばもう戻れない。

私は佐倉さんが憎い。優依ちゃんを奪おうとする人はみんな憎い!

 

 

「前に言ってたわよね?優依ちゃんは貴女が大好きなんだって。じゃあどうしてこの娘は魔法少女の事を隠してたのかしら?」

 

「・・れ」

 

「実は優依ちゃんは佐倉さんの事何とも思ってないんじゃないの?どうでもいいから何も言わなかった。そう思わない?」

 

「黙れ!」

 

「どうでもいいと思われてたのを知らなかった貴女は愚かにも自分が一番だと信じ込んで今日までぼんやり生きてきたんでしょう」

 

「黙れぇ!!!」

 

 

佐倉さんが叫んだ振動によって窓がガタリと震えた。

いや、部屋全体が彼女の怒りによって震えている気がする。

それくらい今の彼女は殺気を漂わせている。

 

 

「うるさいうるさいうるさいうるさいうるさい!!」

 

 

思った以上にこれは佐倉さんにとって触れてはいけない事だったらしい。

叫ぶ彼女のその目には激しい怒りの炎がともっているけど、「これ以上聞きたくない」そんな彼女の悲壮さが見え隠れしている。

 

少し言いすぎたかもしれない。多少反省はしても後悔はない。

むしろこのまま壊れてくれればとさえ思っている私は既に狂っているけどそれは優依ちゃんへの愛。

誇るべきものだもの。

 

 

「・・・・・」

 

 

この異様な状況の中、優依ちゃんは身じろぎ一つしないばかりか何かを熱心に考えているようで目を閉じ手を組んでじっとしたまま。よっぽど真剣に考えているのかこちらを気にする素振りすらない。

 

気づいてないなら好都合。

佐倉さんのおかしな様子を優依ちゃんの綺麗な瞳に映すなんて事したくないもの。

 

 

ダァン!

 

 

何かを叩きつける音が響き、何だろうと視線を向けると机に両手を乗せた佐倉さんがこちらを睨んでいた。手が置かれた机の周りにはヒビが入ってるからどうやら怒りのあまり叩きつけたらしい。

 

優依ちゃんがこれを知ったらどうなるのかしら?

 

 

「調子に乗ってんじゃねえぞマミ!その生意気な口をズタズタにされてえのか!」

 

「あらごめんなさい。冗談のつもりだったけど・・もしかして図星だったかしら?」

 

「! テメエ・・! ・・・・」

 

 

口に手をかざして上品に微笑めばすぐさま思った通りの反応を返してくれてすごく面白い。

そのまま私に攻撃してくれれば思惑通り、佐倉さんは優依ちゃんに絶交される。

 

そうなったら万々歳だったけどそうはならなかった。

 

今にも私に跳びかかっていきそうだったのにチラッと優依ちゃんの方を見たと思うと何故かいたずらっ子のような笑みを浮かべてそっと優依ちゃんの傍に近寄った。

 

 

「なあ優依、アンタと会う度にいつもソレ付けてるけどそんなに気に入ってるのかい?」

 

「!」

 

 

耳元に口を寄せた佐倉さんは小さな声でそう呟いた。

 

普通の人では聞こえない程の小さな声だったけど残念ながら私は魔法少女。

魔力で強化された聴力ならどんなに小さな声だって拾ってしまう。

それを分かっていてわざとそうする佐倉さんはとても酷い。さっきの仕返しとしか思えない。

 

佐倉さんが嬉しそうに目を細めて優依ちゃんの髪を見つめるから嫌でも視線がそちらに向いてしまう。

 

優依ちゃんの綺麗な髪に彩られた一つの髪飾り。

大きな黒いリボンが付いた赤が基調のバンズクリップ。

佐倉さんが優依ちゃんに贈ったもの。それは色合いは佐倉さんそのものに見える。

 

 

それはまるで優依ちゃんに佐倉さんのものだという証がついているようで・・。

 

 

「アンタによく似合ってるそれ。一生懸命作った甲斐があるってもんさ」

 

「ん?ああ、これね。結構気に入ってるよ。髪まとめる時とか便利だし」

 

 

そっと後ろから抱きしめてくる佐倉さんに流石の優依ちゃんも気づいたようで目を開けて話しかけている。傍から見ればそれは仲睦まじい恋人に見えてしまって酷く胸が痛んでギュっと服を掴む。

 

 

「ホントに良いもんくれたよね杏子。ありがとう」

 

「ふーん、感謝してるならお礼にキスの一つくらいくれてもいいんだぜ?」

 

「!」

 

「え?キス?」

 

「ああ、別にいいだろ?減るもんじゃねえし」

 

 

調子に乗った佐倉さんは大胆な提案を出してきて絶句する。

キスって・・恋人がするあのキス?

 

まさかいくら何でも優依ちゃんがそんな事するわけ・・。

 

 

「うーん、分かった。いいよ」

 

「! 優依ちゃん!?」

 

 

とんでもない提案をあっさりOKしたから思わず声を上げて咎めるも優依ちゃんは聞いていないのか私の方に振り向いてもくれなかった。そのせいで余計胸が痛くなる。

なにより佐倉さんが勝ち誇ったような笑顔でこっちに一瞥を向けているのが堪らなく辛い。

 

 

「だったら今くれよ・・」

 

 

優依ちゃんの顔にゆっくり近づく佐倉さんが嫌でも目に映る。

どう見てもこれはキスするつもりにしか見えない。

やめてほしいのに優依ちゃんはじっと佐倉さんを見つめているだけで拒む素振りは一切なかった。

 

 

私が優依ちゃんに触れればあの娘は抵抗する事が多いのに佐倉さんが触れればあっさり受け入れている。

 

 

つまり優依ちゃんは佐倉さんとそういう仲だっていう証明。

魔法少女について佐倉さんに話さなかったのも危険な事に巻き込みたくなかったからだとしたら?

それって優依ちゃんにとって私より佐倉さんの方が特別って事じゃない!

 

 

「っ!」

 

 

佐倉さんが今にも優依ちゃんの唇に触れそうになっているのが見えて大きく目を見開く。

 

 

 

あともう少しで・・そんなの、私は・・・!

 

 

 

 

「・・何しやがるマミ」

 

 

 

「佐倉さんこそ何してるの?優依ちゃんに触らないで!」

 

 

 

そこからは早かった。

素早く二人の間に割り込み、優依ちゃんから佐倉さんを引き剥がす。

優依ちゃんを守るようにギュっと抱きしめ、その周りに銃を出現させる。

狙いはもちろん佐倉さん。

 

 

「ハッ上等じゃねえか」

 

 

向けられた銃口を鬱陶しそうに振り払い、憎憎しげに私を睨みつけている。

気づけばその姿は赤を基調とした魔法少女の格好だった。

それに対して私もすぐさま変身していつでも対応出来るように身構える。

 

 

「話し合いなんて堅苦しくてやってらんねえんだよ!元々コイツがはっきりしないでなあなあにするのが悪いんじゃん!アタシはずっと我慢してたんだ!優依が他の奴と仲良くしてても!アタシに会いに来なくなっても!ずっと!ずーっとだ!」

 

 

堰を切ったように叫ぶ佐倉さんはまるで癇癪を起した子供のよう。

今まで溜め込んでいたものを一気に爆発させたみたい。

今にも泣き出しそうな表情はとても痛々しく見ている方が胸が痛んできそう。

 

うっすら涙を滲ませながらもギッと睨んでくるその瞳はとても迫力があるけど、そんな佐倉さんをどこ吹く風のごとく優依ちゃんは再び目を閉じて何か考え事をしている。そんな優依ちゃんに苛立ったのか佐倉さんはドスドスと足音を立てて近寄った。

 

 

「・・おい優依!いい加減はっきりしろ!お前は誰が好きなんだよ!もう前みたいにどっちもとかはナシだ!今ここで正直に言え!」

 

「佐倉さん!」

 

「黙ってろよマミ!お前だって本当は知りたいんだろ?優依の本命は誰なのか」

 

「・・・それは」

 

 

思わず口ごもる私などお構いなしに佐倉さんは尚も無言のままの優依ちゃんに詰め寄っている。遠慮なしに制服を掴まれているのにそれでも優依ちゃんはじっと何かを考え込んだままで佐倉さんの事なんてまるで気にしていないみたい。

 

本当ならここは佐倉さんを止めるべきなんだけど、彼女の言う事に一理ある。

嘘。本当はずっと知りたかった。優依ちゃんは誰を愛しているのか。

私だって信じたいけど優依ちゃんは他の女の子にも思わせぶりな態度をとるから不安だった。私とはあの娘にとってただのお遊びだったんじゃないかって。

 

証明して欲しい。

優依ちゃんの口から私だけを愛してるという証明が欲しい。

 

 

「優依ちゃん、流石にもう分かったでしょう?私と佐倉さんは話し合いなんて出来ない。ましてやお互いを理解するなんて夢のまた夢よ。ここまで来たらもう敵対するしかないの。・・私からもお願い。ここではっきりさせてちょうだい。貴女は誰を一番愛してるのかを」

 

 

じっと優依ちゃんを見つめる。

佐倉さんに便乗にするような形になってしまったのは残念だけど知りたいと思ったのは紛れもない本心。

もし、優依ちゃんの愛する人が私じゃなかったら、と考えるのは怖いけど曖昧なままじゃ先へは進めない。

 

だからここではっきりさせなくちゃ。

 

 

「優依・・・」

 

「優依ちゃん・・」

 

 

不安げに見つめる私と佐倉さんを前に優依ちゃんはずっと目を閉じて俯いたまま。永遠とも思える沈黙が部屋を支配している。

 

 

 

「二人とも・・」

 

 

「「!」」

 

 

 

目を開け、ようやく口を開いた優依ちゃんに無意識に身体に緊張が走った。

佐倉さんも同じだったみたいで緊張した面持ちで優依ちゃんを見つめている。

 

 

とうとう分かる!

優依ちゃんの愛する人が・・!

 

 

どちらかは分からないがゴクンと喉を鳴らす音がした。

そんな事をお構いなしに優依ちゃんは真剣な表情で口を動かす。

 

 

 

「チーズタッカルビ作っていいですか?」

 

 

「「・・・・・・は?」」

 

 

 

時が止まった。




人というのは予想外の事されたら思わず呆気に取られるものです。
怖い修羅場の中、優依ちゃんが何を考えてたのかは次回のお楽しみw
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