魔法少女オレガ☆ヤンノ!?   作:かずwax

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GW何してますか?
自分は頑張って執筆に励んでます!

















・・・だったら良かったのになぁ。


91話 知ってるか?食事はコミュニケーションを円滑にする最強のツールなんだぜ

「・・そろそろ出来たかしら?」

 

「うおお!ウマそう!いっただきまーす!」

 

「あ、コラ!火傷するからそんなに勢いよくかきこんじゃいけません!」

 

「いいじゃんか、火傷したってどうせすぐ治せるんだし。相変わらず細けえな」

 

「・・・・・」

 

 

目の前で展開される会話に俺はただ茫然とするしかない。

 

場所は俺の部屋と打って変わって我が家のリビング。

ここに用があるとするならばただ一つ。食事をする事だ。

なので実際、食卓の上には料理が並んでいる。

 

皿がひしめく中で異彩を放つように鉄板プレートがあり、主役を勝ち取ったかのように我が家の食卓のど真ん中にドンと置かれ、それを俺と何故かマミちゃんと杏子が囲む形で見下ろしている。

 

ちなみに鉄板の中には涙が出てきそうな程、真っ赤にペイントされた物体とそれを覆うように黄色いドロドロした液体がジュゥゥと美味しそうな音を立てていた。

 

その料理の名はチーズタッカルビ。

最近流行りの本場韓国の料理である。

詳細は省くが鶏肉や野菜をコチュジャン等の辛味で真っ赤に染め上げ、トロトロのチーズで頂くという話を聞いただけで旨そうな料理。

 

とまあチーズタッカルビの説明はこのぐらいにしておこう。

問題はそれではない。この状況だ。

 

 

「かっら!でもうめえ!何だこれ!?初めて食うぞ!」

 

「佐倉さん、口の回りが凄い事になってるわよ。食べるのはいいけどちゃんと口をふかないと」

 

「やめろってマミ!口ぐらい自分でふけるっての!」

 

 

いや何これ?どういう状況なのこれ?

どうしてこうなったの?

こうなった経緯が全然分からない。

 

さっきまで殺し合いが始まりそうな程、険悪な空気でいがみ合ってた最悪な関係の魔法少女同士なのに、今じゃ普通の友達のようにわいわい騒ぎながらチーズタッカルビ食べてるって展開が早すぎて理解が追いつかない。

 

 

・・ホントにこれどういう状況?

どういう過程を踏んだらこうなるんだよ?

 

 

まさか・・チーズタッカルビには険悪な関係を良好にする効果でもあったのか?

分からない。何もかも分からない。

チーズタッカルビについては間違いなく俺が原因なんだけどさ。

 

 

どうやら少し今までの事を改めて振り返る必要がありそうだ。

 

 

 

事の発端はそう。

 

 

マミちゃんと杏子が話し合いを始めるときに遡る。

 

 

今は険悪な仲と言えど元はコンビを組んでた二人。

お互いに関して内心は複雑と言えども積る話もあるだろう。

 

そう思った俺は話し合いには参加せず傍観する事にした。

もちろんそんな重苦しい話の輪に入りたくなかったからではないのかと言われれば答えはYesとしか言いようがないが、出来るだけ二人で話をさせてあげたいと思ったのも紛れもない本心からである。(ちなみに俺の気持ち的なものは気遣い1・保身9の構成だったりする)

 

 

とはいえ話し合いをするにしても二人はまだ中学生で子供、そして女同士。

話が穏やかに進むとはどうしても思えない。

ただでさえ同じ空間にいるだけでも震え上げるほどのプレッシャーを発する二人が怖いのにその上、女同士の喧嘩名物、陰湿な言葉の殴り合いが始まるのは確実だった。

 

 

手が出ないだけマシとはいえ、そんな毒が過分に含まれた言葉を聞いてたらいくら傍観に徹していようと俺の精神は間違いなく崩壊する。

ではどうするか?そこで俺は閃いたのだ。

 

 

 

そうだ!現実逃避しよう!と。

 

 

 

身も蓋もない体で言えば、目の前で繰り広げられるであろうおどろおどろしい現実から目を逸らす事にしたのである。

 

その際、何を考えて現実逃避したかと言えばそりゃもちろん、今日の晩御飯の献立に決まってますが何が?これは俺にとってかなり大事な事なのだ。

 

 

だって久しぶりの我が家だよ!?

(※一度帰ってきた事があるがそれは赤の不法侵入でそれ所じゃなかったからノーカウントだ)

 

 

魔法少女共に関わっていく内にいつしか忘れていた我が家の温もりを五感全てで感じる。

状況はあれだけど安心する。そうなると欲が出て来るものだ。

 

かつて死亡フラグに悩まされてなかった時のように無心で料理を作りたい。

これは今の俺のささやかな願いだ。こんなささやかな願いでさえまともに叶わないと思うと涙が出そうになるが気にしては終わりな気がするが。

 

 

それはともかく、せっかく作るなら今まで一度も作った事ない料理に挑戦しようとその時は思ったわけ。

 

まさか俺が進んで自炊する日が、それも楽しんで献立を考える日がこようとは前世では夢にも思わなかった。前世の俺なら迷わず外食かコンビニ弁当を選んでいただろうが、そこは身体の奥底まで家事スキルが染みついた今世の俺。料理を作る楽しさを知り、自炊一択。

学生という身分でもある事から無駄な出費は控えたいという本音も見え隠れしているがそれは置いておこう。たたでさえ使いまくって財布カツカツなんだから(主に杏子に奢ったりして)。

 

 

献立を考えるのは正直楽しかった。

食べたい物を自分で作るのは案外楽しいものだ。それが久方ぶりとなれば猶更気合が入るというもの。

 

かなり真剣に考えていたから目を閉じていた。

きっと表面上はしかめっ面になっていただろうが、内心はルンルン気分で何作ろっかな♪なんて思っていた俺。

 

思考に沈んだ俺の耳に女同士の罵り合う声がどこか遠くで聞こえてきた気がするがそんな事は全く気にならなかった。むしろ少し騒がしいBGMの方が集中力を増すというものだ。

 

 

二、三品作ろう。一品は魚料理にするか。

たしか母さんがご近所からもらったキス(魚)が冷蔵庫にあったはず。

 

今家にある食材に思い馳せていると丁度、杏子が「キスしてくれ」って言うからそれを了承して一品目はキス(魚)のから揚げは決定した。

まさか冷蔵庫にキス(魚)があると分かっていたなんて流石食欲魔人。

食い物に関しては非常に目敏いといという事か。

 

 

それにしてもなんか杏子の顔がやけに近かった気がするが気のせいだろうか。

まあ、それを指摘するよりも先に何故か甘えたモードに入ったマミちゃんに抱きしめられ、うやむやになってしまったが俺にはどうでも良い事だ。

 

 

今は献立を考える方が忙しい。

杏子とマミちゃんが目の前で何か言い合っているが無視しよう。

 

 

俺は再び思考の底に沈んだ。

 

 

キスのから揚げは決まったがそれだけじゃ寂しい。もう一品欲しい所だ。

どうせなら肉料理が欲しい。それも変わったものなら尚良い。は!

 

 

そこで俺はふと思い出した。

前にテレビで見た「チーズタッカルビ」という存在を。

すっごく美味しそうで食べてみたいと切に思っていた。

 

一度思い出せばもう止まらない。

チーズタッカルビが食べたくて食べたくて仕方なくなった。

 

過去に食べてみたいと思ってネットでレシピを検索した事があるが作るのは難しくなかった気がする。

我が家にある調味料で可能だったはず。

 

 

よし!いっちょ作ってみるか!

 

 

思い立ったが即行動!これに限る。

面倒がらずに行動するにはこれが一番だ。

 

 

若干興奮気味に目を開けた俺の視界には何故か真剣そうな表情でこちらを見るマミちゃんと杏子の姿があった。

何故二人はここにいるのか、何故二人とも魔法少女の格好をしていたのか。

何か大切な事を忘れ、状況の理解が追いつかないのに、チーズタッカルビが食べたくて仕方ない俺は全てを忘却の彼方に押しやってしまっていたので気にもならなかった。

 

一人で食べるのもあれだし、コイツ等も誘ってやるか。

 

 

 

そう思った俺は早速二人に声を掛けた。

 

 

「二人とも、チーズタッカルビ作っていいですか?」

 

 

そう宣言した直後何故かマミちゃんと杏子は口を開けてポカンとして微妙な沈黙が漂うも未知なる料理の前に興奮した俺はそんな事など些事に過ぎず、戸惑う二人の手を引っ張ってキッチンへと強制的に誘ったのだ。

 

 

 

 

 

・・・俺何やってんだっけ?

 

 

 

チーズタッカルビを作り終えてようやく我に返った俺の視界には食卓を囲むマミちゃんと杏子が目に入ったという訳だ。そしてが全てを思い出しみるみる内に顔が青ざめていく。

 

 

馬鹿なの俺!?今まさにここが運命の分岐点だってのに何呑気に晩御飯の献立なんて考えてたの!?

ホント救いようがないんだけど!

これどうなんの!?この後の展開どうなっちゃうの!?

そもそもこの場をどう切り抜けたらいいの俺!?

どうせならおかしなテンションのまま二人を追い出せば良かったのに!

俺のハイテンションマジ役立たず。

 

 

「優依ちゃん、さっきからお箸が進んでないみたいだけどどうしたの?食欲ない?」

 

「え?いや・・そんな事ないけど・・」

 

「嘘はだめよ。さっきから顔色悪いわよ」

 

「だ、大丈夫だよ・・」

 

 

一人冷や汗ダラダラ流してたらマミちゃんが心配そうに顔を覗き込んでくるも後ろめたさしかない俺はつい目を逸らしてしまう。

 

ホントさっきまでの自分殴り倒したい。

話し合いするためだけに家に入れたはずなのに今じゃ親交を深めようとするがごとく食卓を囲んでいる。

これはちょっとでも間違えれば親交どころか溝が深まってしまう大事な場面だ。

全ては俺にかかっていると言っても過言ではない。

 

世の政治家の皆さん尊敬します。

国を背負って接待するなんて俺には出来ません。

プレッシャーのあまり食べたものが逆流しそうです。

 

 

 

「・・ごめんなさいね」

 

「え?」

 

 

自分で自分を追い込む俺の耳に謝罪の言葉が届く。

それはマミちゃんの口から出たものだった。申し訳なさそうに眉をハの字にして俺を見つめている。

 

 

「私たちがちゃんと話し合い出来なかったせいで優依ちゃんに苦労をかけちゃった上に辛い思いをさせてしまった。私たちのために心を砕いてくれてたのに・・あんな事。もう二度と強引に迫ったりはしないわ」

 

「はあ・・?」

 

「私待ってるわ。優依ちゃんが答えを出してくれる日を。だからいつかはちゃんと答えて欲しいわ」

 

 

ごめんなさい。一体何の話されてます?

何か良い事言ってるみたいだけど全然話が見えないんですけど。

 

え?俺が献立考えてる間君ら何話してたの?

ぶっちゃけ聞いてなかったから全く分かんない!

答えって何?あんな事って何!?

 

 

「食わねえなら全部アタシがもらうぞ」

 

 

混乱する俺にマミちゃんから反対に位置する俺の隣から呆れたような声が聞こえる。

振り返ると俺の小皿のチーズタッカルビがすっと杏子の方へ引き寄せられていく。

 

 

「おいこら!人の物を取るんじゃない!てか、お前がリクエストしたんだからちゃんとから揚げも食べろよ」

 

「は?何だそれ?」

 

「何ってキスのから揚げ。さっきキスしてくれって言ってたじゃん」

 

「・・おい、もしかしなくても勘違いしてないかお前?」

 

「勘違い?え?何その顔?まさかのキスがリクエストじゃなかった?」

 

 

目の前にキスのから揚げ差し出してやったら酷く引き攣った顔されたけど一体どうしたんだ?

まさかのキス嫌い?もしくは具合悪いとか?

こいつに限ってないそれはないと思うけど。風邪とか無縁だろうな。

むしろ菌が逃げていきそうだもん。

 

 

「あのさ、アタシが言ったのは・・「優依ちゃんほら」・・マミ!」

 

「・・・・」

 

 

杏子が何か言いかけていたが突如俺の目の前に差し出された赤い物体によって中断される。

それはチーズタッカルビだった。それは分かる。

 

しかし何でそれが俺の目の前に?

答えは簡単だ。素敵な笑顔を携えたマミちゃんが俺に向かってそれを差し出しているからだ。

 

 

「ほら優依ちゃん遠慮しないで?あーん」

 

「いや、あんた状況分かってないだろ。しないからね」

 

「あーん♪」

 

「ちょ、近づけんなって!杏子が見てるだろ!」

 

 

杏子の目などお構いなしにチーズタッカルビが刺さったフォークを近づけて来るマミちゃん。

笑顔三割増しで何故か背筋が凍りそうだ。

今まで何度かマミちゃんにあーんしてもらった事があるからあまり驚かないが何度やっても羞恥心は収まらない。ましてや今回は目の前に杏子がいるんだ。恥で爆死してしまいそうだ。

 

どうしよう?拒否してもこういう場面ではかなり強引なマミちゃんは無理矢理でも決行してくる。

無理に断れば後が怖い。けどここで折れて受け入れたとしたら杏子にあらぬ誤解を与えてしまう。

つまり杏子に強請られる格好のネタを提供してしまう事になる。

 

 

「優依ちゃん、口開けて」

 

 

どこか有無を言わせない響きを含んだマミちゃんの声に小さく「ひっ」と悲鳴を上げる。

笑顔だけど目がマジだ。何が何でも食わせるという気迫すら感じる程に。

何をそこまで彼女を駆り立ててるのか分からない。

 

どうしよう?このまま受け入れるしか道はないのか?

 

 

 

「はむ」

 

 

「「・・・・・・・」」

 

 

 

絶対絶命の危機は急変する。

目の前に突き付けられていたチーズタッカルビが消えたのだ。

正確に言えば、チーズタッカルビが突き刺さっていたフォークが今や杏子の口によってもぐもぐされている。

 

 

「んー、うめえ!」

 

 

沈黙が流れる中、杏子の弾んだ声がやけに響き渡った。

 

 

 

「・・何してるの佐倉さん?」

 

 

「・・は?見て分かんねえの?邪魔してるんだよ」

 

 

あ、元に戻った。先ほどまでの穏やかな時間が嘘のように睨み合う二人。

色が色だからか皿に盛られたチーズタッカルビがまるでこれから流れる予定の血に見えるのは俺の気のせいだろうか。気のせいであって欲しい。

 

 

少しは関係が穏やかになったかなって思ったら一瞬で終わったよ・・。

 

 

「杏子、何でも良いからマミちゃんの言う通りせめて口は拭いてくれ。汚い」

 

「え・・!」

 

「・・いや何その顔?」

 

 

諦めモードに移行した俺は半ば投げやりに告げれば杏子は絶句して俺の方を見つめてくる。

 

今の杏子の口回りは勢い込んでチーズタッカルビにがっついたからか赤く染まっている。それはまるで血がついているように見えて怖くてしょうがないのだ。

今の状況を考えると実際そうなってもおかしくないのが恐ろしいのでただ注意しただけなのに。

 

 

回答に困っていると思わぬところから救いの手が差しのべられた。

 

 

「優依ちゃんの言う通りよ。年頃の女の子なんだからちゃんと節度を守らないと。ほらこっちむいて」

 

「むが!」

 

 

理由は分からないけど固まってる杏子は隙だらけだ。

その隙をついてネチネチ説教しながら杏子の口を拭いていやるマミちゃん。

その光景はさながら幼い子の面倒を見る母親の姿だった。

 

 

しばらくはやられたい放題だった杏子もついに我慢の限界が来たのか押し付けられていた布巾を叩き落としてマミちゃんを睨んでいた。これは完全に怒っている。今にも口から憎まれ口を叩きそうな勢いだ。

 

俺の予想通り、杏子はマミちゃんに向かって売り言葉を吐こうと大きく口を開く。

 

 

 

 

「ああもう!何すんだよマミ”さん”!・・あ」

 

 

 

「「・・・・・」」

 

 

 

 

食卓に流れる沈黙。

 

しまったといった表情で目が泳ぎまくる杏子を黙って見守る俺とマミちゃん。

慌てて「違う」と言い訳する杏子に対してニヤリと気持ち悪い笑みを浮かべてしまうが仕方ない事だと思う。

 

 

「へー?マミ”さん”ねえ?そういえば杏子はマミちゃんの元弟子だからさん呼びでもおかしくないね!いくら取り繕った所で元々の素がそう簡単に抜けるわけないか。うん!いいね、マミ”さん”」

 

「ち、ちが、これは!」

 

「懐かしいわね。あの頃はマミさんマミさんってまるでヒヨコのように私の後ろをついて回っててとても可愛かったわ。まるで昔に戻ったみたいね佐倉さん?」

 

 

マミちゃんはどこか懐かしむような、そして微笑ましいものを見るような感じで杏子を生暖かい目で見ている。そんなマミちゃんの様子に杏子は動揺しまくりで「勘違いすんな!」と噛みついているが、ツンデレのテンプレ発言に他ならない。俺は更にニヤニヤが止まらなくなった。。

 

 

 

「だああああああああああ!いい加減にしろ!二人して気持ち悪い笑顔しやがって!」

 

 

 

ニヤニヤと二人して杏子を見ているとついに我慢の限界が来たらしい。

真っ赤な顔でダンと机を叩いて立ち上がって叫んでいる。

よっぽど余裕がなかったのか頬の赤みが収まらず、肩で激しく上下している。

それがかえって逆効果だというのは理解してないなこれ。

 

 

「ごめんごめん。杏子があんまりにも可愛くって」

 

「~~~~~っ////」

 

 

茹蛸にでもなったのかと思う程顔が真っ赤だ。

 

やべ、おもしれえ。更にからかいたくなってくるわ。

マミちゃんもどうやら俺と同じ気持ちらしく控えめながらも楽しそうに目を細めている。

そんな俺らに身の危険を察知したのか杏子は若干腰を引いているがそんな事はどうでもいい。

 

 

これは・・もしや二人の溝を埋めるチャンスでは?

 

 

 

 

「! はーい!」

 

 

 

そう思った矢先に玄関に響くインターホン。

正直無視してしまいたいが外から「宅急便です!」の元気な声が聞こえてくるから無視するわけにはいかない。

しかし少しの間とはいえ、この二人から目を離すのは気が引ける。

俺がいない間に乱闘なんて起こされたらそれこそ目も当てられない。

今はとても和やかな雰囲気だから大丈夫かもしれないがちょっと(ものすごく)不安だ。

 

どうしよう?やっぱり無視するか?

 

 

「・・・早く行けよ」

 

「え?」

 

「・・アンタがいないからって暴れたりしねえから」

 

 

さっきのからかいのせいだからかかなりぶっきらぼうな言い方だが俺の気持ちを察している様子の杏子。

ありがたいがなにも犬を追い払うようにシッシッと手を払わないでほしい。

 

 

「私も佐倉さんも大丈夫だから心配しないで。流石にこんな短時間で戦いにはならないわ。だから安心していいわ」

 

 

なかなか動かない俺に今度はマミちゃんが促してくる。

俺を安心させるために言ってくれているのだろうが、会ってすぐ殺し合いを始めた未遂があるので全然説得力がない。

 

 

しかし二人揃って大丈夫だというからそこは信用しても良いかもしれない。

何よりいつまでも玄関で待たせている宅配便さんが可哀想だ。

 

 

「じゃあいってくる。くれぐれも大人しくしててくれよ」

 

 

不安はあるが、二人にそう言い残し俺は玄関に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ご苦労さまですー」

 

 

宅配のお兄さんに労いの言葉をかけて荷物を受け取り玄関を閉める。

荷物の受け取り中、背後から爆発音とか銃声とかしないかヒヤヒヤしたが俺の思い過ごしだったらしい。

ともかく何事もなくて一安心だ。

 

 

「母さんの宛ての荷物か?え俺宛て?誰から? ・・げ」

 

 

荷物は俺宛てだった。

そして送り主の名前を何気に眺めて即後悔した。

 

 

 

何で“トモっち”の名前が・・・!?

 

 

よりにもよってこのタイミング!

せっかく平和に過ごしてたのに何故お前はこんな時に!

邪神程じゃないけどこいつも大概だ!

 

 

マミちゃんはともかく杏子の前でトモっちの名前出せばどうなるか考えただけでも身体が震えてくる。

ただでさえ杏子はトモっちの事毛嫌いしてるんだ。ここで奴の名前なんて出してみろ。

穏やかだった状況がすぐさま崩壊する事間違いなし!

 

マジでシャレにならん!

ここは事を穏便に済ませなければならない!

 

幸い二人はリビングにいるからまだ知らないはず。

急いで荷物をどこかに隠して何事もなかったように振る舞おう!

 

 

 

 

 

「どこかに隠そうかな・・」

 

 

「何を隠すんだ?」

 

 

「!? ・・ひっ」

 

 

背後から聞こえる冷え切った声に思わずビクリと身体が反応する。

 

この声は・・杏子?何故!?マミちゃんはどうした?

 

 

 

「荷物が届いたみたいね。誰からなの?」

 

 

「ひぃ・・!」

 

 

背後から杏子に続いて何故かマミちゃんの声も聞こえる。

こちらも氷を纏ったような背筋が凍りそうな声だ。

 

何故だろう?背中にぶつかる圧が凄まじい。

おかげで大量の冷や汗が流れている。

 

 

ひょっとしなくても・・お、怒ってる・・・?

 

 

ギギギと錆びついた機械のようなぎこちない動きで振り返る。

 

 

 

「ひ・・!」

 

 

 

そしてすぐさま後悔した。

 

 

 

鬼だ!美少女の皮被った赤い鬼と黄色い鬼がいらっしゃるうううううううううう!!

やべえ!すげえ怖い!二人とも無表情+仁王立ち&睨み+見下ろしコンボで超怖え!

 

 

何かした?俺何かした!?

全く見覚えないんだけど!この短時間で何があったの!?

 

 

「え・・えっと・・」

 

 

咄嗟に背中に荷物を隠すも意味なんてない。

むしろ状況が悪化したようだ。二人が放つプレッシャーが増した気がする。

 

 

「どうして隠すの?やましい事はないんでしょう。ねえ優依ちゃん?」

 

「え、えっと・・」

 

「まさかとは思うけどさ、その背中に隠した荷物・・・あの変態からじゃねえだろうな優依?」

 

「いや、その・・はは・・」

 

 

 

氷のような赤と黄色の追及に背中に流れる汗が止まらない。




天啓が降りたんだ!やるなら今だとな!
byトモっち



彼も邪神に劣らずトラブルメーカーですのでタイミングはある意味バッチリ!
これは波乱しか呼びませんねw








閑話~チーズダッカルビ調理~


「よし!今からチーズダッカルビ作るぞ!」

「はあ?お前この状況分かってんのか?アタシら変身までしてんだぞ?ふざけてる場合かよ」

「何を言ってる!ふざけてるのは杏子!お前だ!」

「・・何言ってんだお前?」

「何だその目は?お前はチーズダッカルビを冒涜する気か?」

「・・・は?」

「そもそもこれからチーズダッカルビを作るってのに何だその格好は!?冒涜しているとしか思えない!さあ早く変身を解くんだ!」

「お前頭大丈夫か?」

「優依ちゃん・・私たちの話聞いてた?貴女が本当に愛してる人は誰なのか聞いてるのよ」

「知るか!今はそれどころじゃないんだよ!俺は大至急チーズダッカルビが食べたい!さっきから俺を引き留めるなんて何がしたいんだよ?それは何か?そんなに俺がチーズダッカルビを作るのが嫌なのか?俺のチーズダッカルビが食べられないってか?ええ?」

「え!?えっと、そんなつもりじゃ・・」

「無駄話してる時間が惜しいんだ!いいから手伝え!最高に美味しいチーズダッカルビを食べさせてやるから!」

「あ!ちょっと!」

「おい!引っ張るんじゃねえ!」


こうして半ば強引に調理が開始され、本編で優依ちゃんは正気に戻り血の気が失せます。


変なテンションに支配された優依ちゃんは人の話は聞かないのである意味無敵です。
そして我に返り、新たな黒歴史が刻まれた事に絶望するのですw
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