梟(偽)のあらすじに違わず、経緯は全て捏造。
さあ。大忍び刺しを取りましょう。あ、でも私は一文字が最強だと思ってます()
梟。彼はそう名乗ったが、しかし自分が梟でないと分かっていた。
いや、正確には違う。彼は恐らく梟だ、だが『大忍び』ではなかった。
彼はゲームの中の登場人物になったらしいことに気づいていた。それは一度はかの鬼畜フロム・ソフトウェアの送り出した新たなる地獄――――というほどではないが結構難しいと言われたゲーム。「SEKIRO」。
残念なことに、彼は主人公たる狼にはなれなかった。多分飢えている方向性が間違っていたのだろう、酒を飲んで素面になった彼は一度ぼやいた。
――ああ。しかし、それが何だ。
男は気づいた。忍は悟った。梟は目覚めた。
「では――――――我が奥義、知らしめる時ではないか」
これが、いやコレ以前から。梟は全てを間違えていた。
「…………本当に、それだけと?」
しゃがれた声が私に問う。火を纏わない平田屋敷は星空が眩しく、こんな宵に刀がきらめけばさぞ絵になる。
尋ねた女、お蝶は俺の言葉があまり信じられないようだった。まあ分かる、だけどこの計画にはちゃんと意味がある。インパクトだけじゃない。
「ああ」
「梟、始まった計画にとやかく言うのは忍の恥晒しだが――――――――いささか、冗談にしてはつまらないね」
「お蝶、儂の持ち味は突きだ。上段ではない」
「そんな話はしてないよ。突きから離れな、梟」
ツキから離れた梟に何が残る、夜目を利かせるだけの鳥になりさがる。
――平田屋敷から御子を奪い去る。俺の計画は完璧、頓挫することすら計算内と来た。
何故、俺がそんな事をするかと言えば単純で。
嗚呼。笑うこと無かれ、此れ誤字に非ず。此れ見間違いに非ず。また此れ、無意味に非ず。
俺はこの世界を「SEKIRO」として味わっていた頃から梟の奥義、「大忍び刺し」が好きだった。アホみたいに打っていた記憶だけがちゃんと残っている。
――――そう。梟。彼は不幸な男だった。
俺は梟を騙る偽物だが同情する。正直、可哀想だ。
彼は田舎の忍と笑われた。その実力は確かであるはずだが、なのに確か過ぎる故に「忍び過ぎた」。誰も、彼の正体を見切れなかった。
そしてそれに甘んじる高潔さは歳月で錆びた。嘆かわしく、また何と哀れだ。きっと嘲笑った盲目共の猛毒ゆえだ。彼はそれを許し続けてきたというのに、もう後戻りできぬ老体で目覚めた。
『今こそ名を轟かせん』
等と。
正しいと思う。何者にも属さぬ彼はきっと思い立ったのだ、「それでもこの歩みは正しいはずだ、報われないことなど有り得ようか」と。何にも濡れなかった自由な翼であるからと、朽ちゆく身体で飛ぼうと跳ねた。がむしゃらに、遅まきな権利の主張を精一杯。
だから俺は代わりに成し遂げようと思えた。決意は固く、そして日を追う毎に鋭くなった。
こうして梟を騙り、梟を装い、ただあのきらめきの真髄だけを追い続けた俺の出来上がり。きっと梟が俺を見れば、この歪んだ野望に首は一回りするかも。だって間抜けに見えるもん。
しかし成し遂げる。俺はこの突きのきらめきをこの戦国の常識とする。
きっと以前の俺も馬鹿と笑うんじゃないだろうか。それでも今回ばかりは、一度くらい、笑わず何かに打ち込もうと思えた。
「…………いつもの事だけど、真っ直ぐな眼をするよ。とても大忍びには見えないが」
それは目利きがなっていない。
「逆だ、真っ直ぐ突かねば生きて行けぬ。儂は所詮凡人だ」
「そのためになら砂もかけるし、背後を取るのも手の内かい?」
「分かっておるな。その通り、儂は刀の天才ではない。忍だ」
「突きで梟に敵う忍など、居ないと思うがねえ」
思わず笑う。それが一体何の役に立つんだろう。
まずは天下を取る。例え剣聖に刃を向けようとだ。例え倅を手に掛けようとだ。御子などどうでも良い。問題は俺がその混乱で、大忍びと乱世に轟くことである。
高尚な理由を語っておこう。俺が大忍び刺しを広める理由とは3つ。
いかなる生まれであれど才能は認められる証明。
狂ってしまった梟への俺なりの手向け。
そして――――――一文字ごときに大忍び刺しが破れないと再認識する為である。
まあ要してしまうと、この御子を奪う壮大な計画。俺と梟の乱世への挑戦状という、何とも下らない真相なわけだ。
どれだけ卑怯でどれだけ迷ってどれだけ酷くても、最後に真っ直ぐなら――――鬼も仏も許してくれるだろう。
【奥義・大忍び刺し】
大忍びが編み出した流派技。これは、忍び技の奥義である。
遠距離から届く鋭い突きを繰り出し、刺さった相手を敵を踏み台にして高く飛び上がる。
敵を穿ち再び舞い上がる様は、梟の狩りの如し。
飛びあがるときに、形代を消費する。
――――それが大忍び刺しであるが、この奥義にはまだ先があるのだと語られている。
ある狼は梟の魅せた不可解なこの奥義に惑い、そして仄かな光の糸を見た。