大忍び刺しは流派技にて最強   作:杜甫kuresu

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先に謝ります、道玄ファンの皆さんごめんなさい。
私は「よくわからないから盛っちゃおう☆」の精神で何だかとんでもないものを作ってしまったようです。

避けれるように言っておくと属性は男装ちゃらちゃら研究ぽんち女。ヒロインっぽいけど全然そういうつもりがなかったです。


道玄「どーして刺すけど落とさない?」

 聞いてみよう、やってみよう、知ってみよう。道玄はこれの女である。出来る女だった。

 

「おいフクロー殿~! 教えてく・だ・さ・ら・んかっ! 刺せども落とさぬその訳を!」

「くどいぞ道玄。そんな事だから女一人口説けないんだ」

 

 そして女、とてもウザい。そこはかとなくウザく、しかし煙たがれぬ懐っこさが有る。

 梟は見切っているが、というより同輩だからこそ煙に巻けぬと言うか――――――――それは演技である。完全純正偽の道玄、古めかしく振る舞い続けた梟にはその剥がれかけの鍍金が痛いほどに目につく。

 

 ただ人の役に立とうとはするが、取り入り方の分からぬ。そういう不器用な女なのだろうと彼は常々傷んでは居る。ウザキャラを容認しているわけではない。

 ちなみに男として扱われており、故あって男として生きている、故は語られていないし多分本当は意味もない。道玄はそういう人物であった。

 

「忍用の絡繰りもしごくとうぜん!とばかりに”きょひった”のは酷くありませんか!? その上あからさまな秘密もこのドーゲンに話せぬと!?」

「まあそうだな。あのクソ猿ならギリギリ喋ってた」

「まことぉ!? ”ぎりぎり”なのでドーゲン嬉しい!」

 

 エマも尊敬しつつもその軽すぎる様子にはやや引いている。何せいつもこの調子だ、酒を飲むと素が出るが尚更気味悪がられた経験もあるらしい。

 

 その才気はまこと尊ぶべきもので、奇っ怪な絡繰りも、薬学も修めた。一心がすぐ多くの仕事を押し付けて過労死するので隠しているようだが、実際には更に多く。

 が、この軽すぎる空気が全て台無しにしていた。女遊びもいつも失敗に終わる、酒に明け暮れぬだけが褒めどころの研究者であり、出来る駄目な女である。というより何故女が女遊びに明け暮れるのか、コレガフクローニハワカラナイ。

 

 その手広い範囲の印象に違わず、梟の零す難解な言葉にも柔軟に適応している。どころか同類だからか彼の正体を見破り、妙な意味で彼の気を抜く事すら叶ったある意味化生。

 

 勝手に肩を組んで払われたのが気になったのか、突然腕を組み考え込む道玄。唸る様も何処か芝居臭い。

 

「しかしフクロー殿は少しばかり新しいものを嫌い過ぎではとドーゲン感じますね。せっかく手軽に爆薬を持ち歩く絡繰りも差し上げたのに、まるでお使いにならない!」

「いやいや、爆薬をあんな量持ち歩く忍いねーよ」

「”さんはい”にございますか、アレ」

「産廃にございますな、アレ」

 

 その量たるや、少なくとも梟の片腕第一関節までの容積は有った。脚から飛び出す面妖な設計は寄鷹衆の遊び道具であるが、しかし逆に言えば”殺しに使おう”と見たのは梟ぐらいである。

 

 見る目は有るためそうして道玄もうきうきと渡すのだが、結局使っていないようだ。

 意外な意見に道玄の目が丸くなる。切り替わったように袖から筆を取り出す。

 

「成る程…………ではどれくらいなら?」

「半分で良い。後、足から扱おうという発想は悪くないが、だからと普段使いが辛い」

 

 忍は必ず見つからずに全てを済ませきれぬことが有る。梟は大忍びたる故にそれを知っている、人は完璧にはなれない。

 だから道具は必ず癖のないものを選びたくなるのが人情だ。

 

「片足を振らないと出ないってのがやや困る。お前、殺し合いでいきなり上段蹴り噛ます余裕がいっつも有るとは思えないだろ? 困った時に使う爆薬って事」

「そうですか…………他には?」

「後は、まあそうだな。多くは求めない。ただ、手慣れた扱いから乗り換える強みはまだ持ててないという所だ」

「――――――はぁ~! フクロー殿の意見には助かりますな」

 

 気づけばいつもの道玄だ。ウザい、声だけでもう。

 

 

 

 

 

 

 

「…………それで、俺が大忍び刺ししかしない理由? だったか」

「おや。お話しする気になったのですか」

 

 気分だよ、とゆらゆらと揺れながら歩く梟。酒など入ってはいないが、普段はあまりしない歩き方。

 梟――――――『彼』の、以前の歩き方である。

 

「大忍び落とし、お前は気づいていたか」

「一心様を脅して聞き及びました」

「お前、あの一心を脅すとはとんでもないやつだな…………」

 

 剣聖に轟く稀代の薬師とはこの意味だったのか、と唸りながら梟は横の女に恐怖する。恐らくそういう事ではないが、実際に居合わせた寄鷹衆づてに「剣聖殺しの道玄」と笑い混じりに語られていたのは事実である。

 

 大忍び落とし。大忍び刺しの先の技。また、葦名無心流の秘伝の一つ。

 刺し穿ち、踏み翔けり、後打ち落とす。三つ目の終わりを生み出した一心の発案であった。

 

「あれは一心様曰く、”あれが見る先にあるべき技”と。梟殿が使わぬことをいつも嘆いておられます」

「――――――はぁ、またあの剣馬鹿は世迷言を抜かしてたか」

「ええ。何処か、楽しそうに」

 

 梟は空を見上げて顔を手で覆う。

 

「…………アレはな、何と言えば良いんだ――――――――俺の技じゃない」

「といいますと?」

「一心の技だ。忍の技ではないし、何より俺は二撃目を考えちゃならない」

 

 二撃目を考えれば一撃目が鈍る。まるで論理計算のようなそれが事実であると気づいたのは、一心自身にその技を振るった在りし日のことである。

 

 本当に鈍ったのだ。あの日確かに梟の突きは破られた、他ならぬ一心の手によって。

 それは彼の油断だったのか、一心の剣気故だったのか、それとも何らかの大きな力なのか。仔細はともかく大忍び落としに目を向けた一撃だけは、たった一度破られた。

 

「アイツは俺の新しい形と言ったが…………俺は先が見えない」

「見えない?」

「そう、見えない。全く、俺はあの奥義を使う時だけ暗闇に落ちていく」

 

 梟は不思議な男で、一撃を放つときには「きらめき」を見るのだと常に語る。

 

 いや、正確には梟は全ての殺意が光として見えている。少なくとも一心はそう語っていた。何故一心と言うかと言えば、梟自身はそれにあまり自覚を持たず、関心がなく、故にそうとは形容しないからである。

 もっと言えば、心の動きが瞬きに見えているのかもしれないとも言うが、何しろ梟は深く考えない。一心ですら「完璧なる謎其れその物のような言葉よ」と言ったそれに興味はないのだ。

 

「俺は刀を持って何をしても駄目で、まあ諦めそうにもなったが――――――――何とか突きだけは光ってる事に気がついた」

「その光を見る極意だけが俺の大忍び刺し。落としからは、それが真っ暗闇になる」

 

 突きだけは、己の太刀筋にきらめきが有るらしい。それもかの剣聖は道玄に語っていた。

 

”今思えば、あれも一心様の思慮の内でしょうか”

 

 道玄は少しだけ、一心が語ったあの顔を思い出す。根負けした故のものでもなければ、何か後ろめたさが滲むものでもなかった。

 恐らく、こうなる事を承知で故を語ったのではないか。道玄は何となく、今の梟の横顔を見てそんな風に思う。

 

 あまりに遠い。見えぬ光に何かを諦めてしまったような、なのにそれを叱咤しようとも思えない。昏いというより、何か知ってしまった顔をしている。

 

「まあよく考えたら突きじゃないし、俺が出来なくて当然なんだがな」

 

 だから、何というか。

 そんな言い方で梟は言葉を濁して、何かを飲み干すようにぽつりと階段に足を踏み出しながら締めた。

 

「アレは俺を止める為の技だ。大忍び落とし、”大忍びが落とす”技じゃなくて、アレは”大忍びを落とす”技なんだと思うよ」

「本当は使えてた気がするんだが、どうやら俺にとってはとどめでしかない技らしいな」

 

 本当は。その本当とは、一体どういう意味なのか。道玄は言葉の多くを知ったと思うが、そればかりはやはり分からない。

 梟はたった一度だけ、道玄には己の核を話したことが有る。

 

 己は梟などではなく、梟を知る傍観者。

 傍観者が何かの悪戯で梟を任され、そして怖気づきながら梟の真似事を続けているだけの、そういう臆病者なのだ。と。

 

 梟は性分柄、嘘など多くついた。

 それも最後には「嘘かもしれんがな」等と酒に任せて誤魔化そうとしていたが、道玄は己が皮を被った者であるからよく分かる。

 

 結局嘘などではない。嘘をつき続けると、時々真の吐き方を忘れてしまうのだ。嘘めいたつもりでも、本当の言葉には色が灯ると梟はもう思い出せない。

 

「だから取っておけって言った。お前が、俺を止めるに値する阿呆を見つけたら、その過程の為に使わせてやれってな」

「という訳で、アレは俺の奥義じゃない。今はアイツだけの、しょうもない小細工だ」

 

 突然笑って誤魔化した梟であるが、それは忍故だろうか。誇り故だろうか。それはともかく。

 

 冗談めかした「とどめの奥義」であるが、確かにアレに梟は一度敗れたことが有る。

 確かに”芯”は外した。相手は一心であった。それは論理的に当然であるはずだ。

 

 だがかの梟の啄みは落とされた。一心は梟と肩を並べる、もしくは上にすら在る男であったが、突きばかりは勝てなかった。それが大忍び落としに限り、勝利した。

 

 梟は正式に負けたわけではなく、勿論その打ち合いでは当然のごとく「二度目の突き」を見せつけた訳ではあるのだが、しかし梟は驚いた。

 

”俺を正面から止める奥義など、驕りかもしれないが初めてだ”

 

 とどめの奥義という言葉は、あながち嘘とは言い切れぬ。

 

「そうだったのですか。いえ、私も出過ぎた問いをしてしまったようで」

「喋り方を戻せ、お前の素は気色悪い」

 

 くすくす笑った道玄は瞬く間に手を広げた。

 

「とはいえドーゲンは納得しましたよ! なるほどなるほど、現れると良いですねその葦名傾きの大阿呆!」

「いいや、出てくるさ…………必ず。ああ必ずだ、出るぞ」

 

 眉間に皺の寄った楽しげな、しかしやはり少しさみしい横顔に、道玄が小さく

 

「…………その眉間の皺、取って差し上げられれば楽なのでしょうに」

 

 とだけ呟いた。




道玄、途中から口調がエマそっくりになっていたのはお気づきになりましたか?

この作品は一位が大忍び刺しだーとかは宣いません。ケースバイケース、獅子猿は寄鷹斬りで追い回しましょう最高です。
彼の大忍び刺しは恐らく一位、何せ見切りと弾きが不可能。止めるには技が必要です。

原作の梟的には「儂の奥義全部教えるわけないっしょwこちとら忍ぞw」ぐらいだと思ってます。一心さんがいじわるで教えた…………。

【大忍び落とし】
かつてかの剣聖が閃いた”刺し穿ち”、”踏み翔けり”、そして次。”打ち落とす”。
歴史に残る筈であった怪鳥の秘技の最終型であるが、とうとうその死の日まで用いることはなかったという。

その技に教えは要らぬ。語らいが全てであるが故。
その技に形は非ず。ただ朧げ幻、夢の中のみにて。
その技の意味は知らず。唯二人だけが真を見た。

梟はその二度目のきらめきに己を知り、奴を知り、何かを見た。
結果、それは受け継がれ得ぬ剣聖の秘術。己の技は、己だけの極みとするべき。梟の幽かな矜持でもある。
大忍びの奥義は「大忍び刺し」である。これは変わらないが――――――その先を以て対すれば、もしくは。
その突きを斬り殺せるやも知れない。鳥を落とす、鳥が落とす筈の技だった。剣聖はその最期を託せる者にのみ、鍵を授けるだろう。

「忍の奥義とは必殺。一心の図らいは、儂を止める技足りうるのみ。我ら忍の技に非ず」
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