本当にありがとうございました。
こういった指摘は本当に助かります。
気になったら言っていただけるとありがたいです。
さて今回は友希那との出会いです。
導入部分で長いですがどうぞよしなに
情けは人の為ならずという言葉がある。
向上心を秘めた人材に「次があるよ」とか「どんまい」とかの半端な言葉で終わらせるのは次の段階へ進む要因を
阻害する。
人によって育成速度は変わるため、その人に合わせて
厳しくも可能性を強める助言をすることで次のステップを踏むことの出来るのだと思う。
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日は飛んで、2日後 リハーサル当日。
俺はcircleの地下にあるライブ会場の音響設備の前で機材チェックを行っていた。
ライブハウスということもあり、入念にメンテナンスがされてるのだろう。特に問題はなかったが
過去に使った時との使用方法に変わりはないかの
復習を込めて行っていた。
「うん、特に問題は無いな。後は出演者との打ち合わせとリハーサルの実施かな」
俺は時計を見る。今が13時で打ち合わせまで1時間程ある。
リハーサルでは休めないので、circle前のテラスで休憩することにした。
外に出ると、地下の暗さに慣れた眼が陽の眩い光で
俺を襲う。
外は快晴でそこまで暑くはなく、程よい風が過ごしやすい
環境を彩っている。
circleに併設されたカフェでアイスコーヒーを頼み
風当たりがいい席に座った。
まったり涼んでいると
「彩斗、こんな所でなにしてるの?」
と後ろから声をかけられる。
振り向くと、黒髪のショートヘアに赤いメッシュが目立つ
女の子が俺と同じコーヒーのカップを持って立っていた。
「蘭か。そういうお前はリハーサルできたのか?」
そう言うと、蘭は成程と言った様子で
「つぐが言ってた音響スタッフの件本当だったんだ。
聞いた時はなんかの間違いかと思った。」
「まあ、例の件知ってるお前なら、訝しむのも当然だよな。」
俺が音楽を捨てたになった原因を知ってる1人なので
この反応は当然なのである。
「ひとまず、音響スタッフやるならちゃんとやってよね。大事な部分を担当するんだから」
蘭は、目を鋭くして俺に言い放つ。
「勿論、やるからには全力でやらせてもらうさ。
今回だけだけどな。」
「チーズケーキと女の子の迫真のお願いで引き受けた彩斗に何処までやれるのかな」
「流石にお世話になってる人にお願いされたら断れねえよ…チーズケーキは…あくまで交渉材料のひとつだから!!」
俺はたじろいで言い訳をする。…自分でもチーズケーキに心が揺れたのは今思えば安直すぎた。
それを見た蘭がフフッと笑って
「後でリハーサルの打ち合わせ参加するんでしょ?
じゃあまたその時にね」
そう言って、蘭は手を振り、circleに戻って行った。
「あいつも頑張るならそれに応えるか…今回だけだし」
俺はコーヒーを飲みながら、今回だけの決意を固めた。
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打ち合わせの時間となり、ホールで各バンドメンバーとの打ち合わせが始まる。
各バンドに個性があり、それに適した音響設定を提案し書面にまとめていく。
そんな中で『ハロー、ハッピーワールド!』との打ち合わせは正直大変だった。
「みんなが笑顔になる音響にしてほしいわ!!」
金髪ロングヘアの女の子が高らかに俺に言う。
流石に俺は苦笑せざるを得ない。
「えっと…1曲目がえがおのオーケストラとのことで
事前に聞かせていただきましたが、とても明るい雰囲気の曲でしたね。高音な部分は、更に響きを効かせた方がいいのでしょうか…?」
すると黒髪の女の子が手を挙げ
「えっと、秋月さんでしたよね。その解釈で問題ないと思います。」
「あらそういえばミッシェルがいないわね。ミッシェルー!!」
「こころちゃん、ミッシェルは今準備で忙しいんだって」
弱気な水色の髪の女の子が金髪の女の子もといこころちゃんに言い聞かす。
それを見た黒髪の女の子が
「えっと…自己紹介まだでしたね。私、奥沢美咲って言います。うちのこころがすいません…」
すごい申し訳なさそうな表情で俺に言う
「いや…気にしないでください。ひとまず導入はそれで行きましょう…はは」
なんだろう、すごい疲れそう。
そして…ミッシェルって誰…
ハロー、ハッピーワールド!通称ハロハピとの
打ち合わせを終え、次のバンドは俺が書面で気にしてた
Roseliaとの話し合いだ。ホールで待っていると
銀髪の髪の女の子を先頭に5人の女の子がやってきた。
「Roseliaです。よろしくお願いします。」
「circle音響の秋月です。今回はよろしくお願いします。」
俺は軽く会釈をすると
「湊友希那です。早速だけど、打ち合わせいいかしら?」
Roseliaとの打ち合わせは他のライブに比べて、内容が細かくも的確な提案で話がトントン拍子に進んだ。
しかし、2曲目のblackshoutという曲で話し合いに変化が起こる。
「湊さん、この曲ですが事前に聞いたところ、サビの部分はいつもより強い設定に音響を実施した方がいいかもしれません」
それを言うと、湊さんは少し驚いた様子になり直ぐに無表情に戻ると
「あなた、随分意外な所に視点を置いたわね。サビに関しては、今までの経験で固定概念を抱いていたのだけど、さらに音を強くすると?」
「ええ。貴方方の曲はある程度聞かせてもらいました。完璧を目指す音楽ということで、素晴らしいものを感じました。しかしここで既存の曲に新たな要素を付け加えるのも向上の手かと」
俺は、湊さんにそう説明する。
すると湊さんは、隣に座っていた真面目そうな子に問いかける。
「どう思う紗夜?」
紗夜と呼ばれた子は少し考えた様子を見せて
「今日が本番というわけではありませんし、リハーサルで試してみるのはどうでしょうか?皆さんもどうでしょう?」
すると「いいんじゃないかな」、「さんせーい!!りんりんも良いよね?」 「いいと思うよあこちゃん」と賛同の声が上がる。
「なら、ひとまず試しに秋月さんの提案を試してみましょう。いいかしら?」
「はい、そのように調整します。ではRoseliaの番になりましたら、お呼びしますので控え室でお待ちください。
では改めて、今回はよろしくお願いします。」
俺は5人に頭を軽く下げて、「では、失礼します。」
と言いその場から離れた。
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リハーサルが始まり、各バンドがそれぞれの曲を演奏していく。本番ではないが、皆真剣でこっちも熱が入る。
真面目に何かをこなしていく様子は、心が動かされるのだ。そうした中、Roseliaの番となる。
「Roseliaです。最初はこの曲から
魂のルフラン」
1曲目はカバーソングから始まった。曲の雰囲気とあっているからだろうか、それに加えてレベルの高い演奏力、良いメロディだった。だが…一見良いように見えるのに所々、気になる部分があった。しかし今は、リハーサルなので口は出さないでおく。そうしてる内に1曲目が終わる。
「では次はこの曲を blackshout!!」
2曲目のblackshoutが始まる。
Roseliaの音楽ということで彼女達の思いが歌、演奏に込められている、魂のルフランも熱が入っていたが、これには更に込められた思いを感じる。しかし、これにも所々気になる箇所があり、少し気になってしまう。
サビの部分に入ろうとしており、俺は設定をいじっていく。湊さんも他のメンバーにアイコンタクトで合図を出していた。
サビに入り、設定を変える。CDで事前に聞いた時よりも
サビの強さが上がり、良い仕上げになったと思う。
これなら客の見方も更に良い方向になると思った。
「(だが…やっぱ細かい部分が気になってしまう。)」
俺は心のうちに引っかかるものを感じた。
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演奏が終わり、俺は
「お疲れ様でした。よかったと思います。Roseliaの皆さんはいかがでしたか?」
俺は彼女たちに聞いてみる。心のうちに引っかかるものはあったが、俺は音楽を捨てた身で今は臨時要員
そこまでするギリはないと踏んだのだ。
湊さんは、俺を見て
「音響や照明に問題はなかったわ。ただ秋月さん
何か気になっている様子ね。良かったら教えていただけないかしら?」
表情に出てしまっていたのか、それとも彼女の観察眼が強いのか。ただ察しづかれている以上、俺は彼女に聞く。
「気になる部分がない訳では無いですが、僕はただの臨時音響要員。大した助言じゃないかもしれません。それでも聞きますか?」
「ええ、聞かせてもらうわ。」
そういうなら、と思い俺は全ての気になった点を伝えた。
「えっと、まずキーボードが1曲のAメロでズレが目立っています。少し慎重すぎるのでしょうか?もう少し気持ち早くしてもいいと思います。ギターは2曲目の前奏部分で力が入りすぎかと、ドラムは1曲目と2曲目のサビが早いかなって思いました。熱が入るのはいいことですが要所要所では的確な動きがもうちょっとできますね、ベースは1曲目サビ前に入りの準備が遅かったです。まだ早く出来ると思います。んでボーカルは…ん?どうされましたか?」
俺はつい熱が入り、多弁になって周りに気づいていなかったが、Roseliaの全員、他のスタッフが唖然としている様子だった。
あれ、ブランクがあってお門違いな指摘をしてしまったか。そう思い、少したじろいでしまう。
「すいません、やっぱ見当違いだったのかもしれません。「いえ…的確だわ」…え?」
俺は湊さんの顔を見ると、驚いた表情になっていた。
「ただの音響スタッフと最初は思ったけど、ここまで細かい部分を指摘できることが凄いわそれも全て言い当ててる。…貴方、過去にバンドの経験でもあるのかしら。それも相当な腕前だと思うわ」
俺は、ビクッとしたが
「いえ、ただのしがない音響スタッフですよ。」
と言葉を返した。
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リハーサルが終わり、俺は1人明日の本番に向けて
設備のチェックを昼と同じように行っていた。
今日の勤務時間は18:00までなのだが
まりな姉にお願いして、残らせてもらっているのだ。
各機材のモニターチェックをしていると、客の入退場のドアからコンコンと叩く音がする。俺は
「あいてますよー」と声をかけると
ドアが開き、誰かすぐに分かった。
「湊さん。どうしたんですか?もうお帰りになってるかと」
リハーサル自体は16時に終わったのでもう2時間も経っている。何か忘れ物でもしたのだろうか?
「仕事中だったのかしら。ごめんなさいね。ちょっといいかしら?」
湊さんは俺に少し申し訳なさそうな様子で聞いてきた。
「いや、もう勤務は終わってますから。ただ明日のために少しメンテナンスをしておこうかと。」
「真面目なのね。そういう姿勢はいいと思うわ。」
「それはありがとうございます。それでなんの御用ですか?」
そして今に至るわけだ。
「私達のバンドでその力を貸してもらえないかしら」
「お断りします。もう僕は音楽にかかわるものは捨てたんです。今更戻る気はないですから」
目の前にいる銀髪の女の子は、それでも引く様子がないといった決意のある表情をしていた。
僕はそんな様子を見て、大きな溜息をつくのだった。
「まさか、すぐ断られるとは思わなかったわ。
そして音楽に関するものは捨てた?何か訳ありなのかしら。」
つい、口に出てしまったことに対し、自責の念
を抱く。あまり追求されるのも野暮なので
「まあ、過去に色々あったんです。ひとまずその話はお受けできません。明日はcircleとの契約上、合同ライブの音響は責任持ちますが、それが終わればもう音楽に関わることはしません。」
俺は、言い放つように強く言った。
キツめな口調だったので少し申し訳ないとは思うが
それを聞いた湊さんは俺の目を強く見つめ
「なら、明日の私達の音楽を聴いて、それで判断してちょうだい。それでもダメだったら、この話は無しにするわ。それに私たちが聞いたからだけど、あそこまで指摘を出したんだから、改善されてるかどうかを言ってもらう。その責任を持ってもらうわ。」
「……わかりました。ひとまず明日の貴方達の演奏、ちゃんと聞かせていただきます。力を貸すかどうかは別ですがね。」
俺はそう答えると
「じゃあ、私は行くわ。秋月さん明日は、よろしくお願いします。」
湊さんは後ろを振り向き、そのまま部屋をあとにした。
「まさか…こんなことになるなんて…」
俺は深い溜息をつきながら、メンテナンスを再開するのだった。
いかがでしたか?
結構都合がいい展開だと思う方もいるでしょうが
理想の世界ですのであしからず( ̄▽ ̄;)ハハ……
次回は合同ライブ本番から話が始まります。
3話で導入部分は終えたいですねw
ではまたよしなに。