歌姫と思い紡ぐデュエット   作:mintear

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まさか前話の感想でチーズケーキのツッコミをされるとは
今回で伏線回収しようと執筆中に読んだので
心読まれた!?と謎の錯覚を覚えました。
さて第5話です!!どうぞ!!


第5話 隠せなかったもの隠したいもの

壮士凌雲と言う言葉がある。

高い志をもって、積極的に高みを目指すという意味だ。

高みを目指す時、ただ呆然とやるのと意識を持つのでは

だいぶ進展は変わると思う。

それでも、意識を持つだけでがむしゃらにやるのではなく

何がおかしくて、どう修正すればいいのか

飽くなき探求と改善が必要なのだ。

 

さて、俺の目の前でその壮士凌雲の如く

練習をしているRoseliaの皆だが、やはりレベルが高く

雑把なミスは少ない。

今聞いているのは、Re_birthdayという曲で

率直に思ったのは、どんな結末になろうが未来に進むこと、その過程では知らないうちに溜まっていた苦しみが他人の優しさで放出され、更に救われたということ

自分を見つめ直し、他人の愛情を知ったこと

伝えたいことが曲のメロディーと相まって伝わってきた。

さて、この曲を更に高みに目指すため、指摘ポイントを

持参していたメモに書き留める。

 

曲が終わり、全員が俺を見てくる。

先陣を切って、湊さんが問いかけてきた。

 

「どうだったしら、何か気になる部分は?」

 

俺は、膝の上に載せてたメモを手に取り口を開く

 

「そうだな。大きなミスは感じなかった。ただ本当に細かい部分なら幾つか見つかったって感じだな。言ってもいいのか?」

 

「ええ、勿論だわ。」

 

許可を得たので、俺はまず今井さんの方に目を向ける。

今井さんはハッとしたような表情で俺の言葉を待つ様子になる。

 

「今井さんはサビの部分で力を入れてたね。伝えたい気持ちが感じられたよ。ただベースが強すぎて、もうちょっと抑えた方がいいところもあったかな?ちょっとベース貸して貰えるかな?」

 

「え?うん、いいよ。」

 

今井さんは戸惑いながらも俺にベースを渡してくる。

俺は受け取り、久しぶりにベースを触る。

懐かしい気分に浸りながらも、ストラップを肩にかけて

ネックを握り、サビの部分を耳コピで引いてみる。

久しぶりだったので周りを見ながら演奏ができず

手元を見ながら演奏したが、特に衰えてる様子もなく

引き切る。演奏を終えて、「こんな感じかな。ありがとう今井さん」と言い、彼女にベースを返そうとすると

周りのみんなが固まっていた。

「あれ…そんなに酷かったか…ごめんね。」

 

俺は、衰えてないと思ったが周りが聞いたらひどい音だったのかと思った。だが

 

「彩斗、貴方何処でそんな技術つけてたの。」

 

湊さんは、有り得ない言う表情で俺に聞く。

 

「秋月さん、ちょーすごかったよ!!」

「音楽経験者だとは思いましたが、一回聞いただけであそこまでできるなんて。」

「すごい…です。」

「彩斗さんすごいね。ただの音響スタッフじゃなかったんだね。」

 

「まあ、昔得た杵柄ってやつだよ…」

 

昔とか言ってるけどまだ、高校3年の17歳なんだけどね。

そしてみんなからこう言われて悪い気はしなかった。

 

「ひとまず、今井さんは、今聞いた感じでもうちょっと落とせる部分は落としていいと思うよ。」

 

と仕切り直すように今井さんに説明しながら、改めてベースを返す。

 

「じゃあ…次は氷川さんに」

 

俺は、冷静に考えて楽器にまで触って出しゃばりすぎたな

と思いつつ、氷川さんにの指摘ポイントを伝えることから

再開した。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

全員の指導を終え、もう一度合わせて演奏する所までやって、本日の練習が終わった。

 

全員で撤収準備をしていると今井さんが近づいてきた。

 

「ねえ、彩斗さん。今日1日通して思ったけど

堅苦しいのなしにして、私のこと呼び捨てでいいんだよ」

 

え?堅苦しいの?と思いつつ

 

「いやー、確かに年下だから、呼び捨てでもいいんだろうけどなんか躊躇うというか。まだ会って間もないからかな。」

 

そう言うと、今井さんは大きな声で笑いながら

 

「別に気にしなくてもいいのにー

じゃあお願いにしよう。私は年下だからさん付けにするけど彩斗さんはリサって呼ぶこと。OK?」

 

なんだろう、すごい圧を感じる。

そうしてると宇田川さんも近づいてきて

 

「秋月さん!!私もあこでいいからね!!」

 

とテンションが高い様子で俺に下の名前で呼ぶ

圧力を加えてくる。

 

「分かった。これからはリサさん、あこちゃんって

呼ばせてもらうよ。」

 

俺がそう言うと、あこちゃんは目を輝かせながら喜ぶ様子を見せる反面、リサさんは不服そうな様子だった。

 

「別にさん付けなんていいのに」

 

「そこは慣れていったらで…」

 

俺は苦笑しながら言う。

そして、リサさんは改まった様子を見せて、俺に

聞いてくる。

 

「そういえば、彩斗さん。あった時からずっと気になってるんだけど、そこに置いてある奴って黒猫堂の入れ物だよね。毎日列があって手に入り辛いって有名な」

 

俺は、ギクリと目をパチパチさせる。

保冷バックなこともあり、circleのスタッフ用冷蔵庫に預けず、あのまま自分が持ち歩いていたものだ。

それを聞いた、あこちゃんがまたしても目を輝かせ

 

「もしかして、持ってきてくれたの!?」

 

と俺にとってクリティカルヒットとも言える

言葉を繰り出してきた。

ここで自分が食べるように貰ったものと言ってもいいのだが…

 

「い…いやー、これからのお近付きの印にと思って

持ってきたんだー。よ…良かったら食べます?」

 

と本音と全く違う言葉を口から絞り出していた。

 

「本当に!?やったー!!」

「彩斗さんやるねー。ポイント高いよこれは。

みんなー彩斗さんが黒猫堂のおやつ差し入れで持ってきたんだってー!!」

 

黒猫堂という店は、本当に有名なので他の3人も

反応を示す。その中でも湊さんはいつも見せないような

高揚とした表情を一瞬浮かべていた。

お菓子好きなのかな?

 

そして俺は、頭に中に書き留めていた

「夜のチーズケーキホール実食選手権」に赤線を引き

延期(未定)と記載した。さらば、1人食い。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

まりな姉に頼みカフェのお皿を借り、

各自飲み物をを注文して、circleのテラス席で食べることになった。

夕方の5時で夕焼けがちらつき始めてる中で

ケーキを食べる。結構、ロケーションが良いなと思う。

俺は全員が注目する中、保冷バックからホールケーキの箱を取り出し、箱からチーズケーキを取り出す。

 

ここで唐突だが黒猫堂のベイクドチーズケーキ講座を始めよう。

この黒猫堂では名前にある黒猫をモチーフにした焼印やデコレーションした板チョコ、具材を猫の形に切るなど

猫を思わせる要素を必ずどっかに盛り込んでくる。

そして、味もそこらの味とは比較にならないほど絶品だ。

このベイクドチーズケーキは、表面に漫画のような三日月に寝そべっている黒猫の焼印が施された代物で

口にすればチーズのまろやかなかつ濃厚な甘みがリピーターを増やす決め手だ。

チーズケーキ好きなら絶対抑えておきたいものなのだ。

 

そんな、ホールのチーズケーキが箱から姿を現し

全員「おおっ」とうなる。

無理もない、このホールverは1日15個限定なのだから。

よくもまあ、まりな姉抑えることが出来たな。

 

「これが黒猫堂のチーズケーキ…本当に拝める日が来るなんて。写真撮らなくちゃ!!」

「すごく…可愛らしいです。食べる前から満足してます。」

「確かにこれは,人気なのも頷けますね。」

「あこ、今日まで生きててよかった。」

 

各人思い思いの感想を言ったり写真を撮る中、湊さんは

チーズケーキと言うよりは、黒猫の焼印に目がいってる様子だった。

 

「ぁぁ…にゃーんちゃん…すごく可愛いわ…」

 

俺は、今すごい光景を見てるのかもしれない。

湊さんがにゃーんちゃん…だと

俺は、チーズケーキのことよりこの発言に

驚きを隠せなかった。

俺は、驚きを振り切りつつ、カフェで借りた

デザートナイフを手に取り

 

「じゃあ、切るねー。」

 

と言うと湊さんは俺がベースを引いた時の

10倍は驚愕の顔を見せ

 

「え!?…切るの?」

 

「え!?いや…写真撮りたかった?なら待つけど」

 

「いえ…そういう訳じゃないけど、まあ別に切ってもいいわ」

 

「お…おう」

 

俺は動揺しつつ、周りを見ると

ケーキを早く食べたいあこちゃんと白金さん

撮ったケーキの写真をリサさんとそれに付き合っている氷川さんが見て、話している。

俺は、覚悟を決めて包丁をチーズケーキに入れた。

 

これから、忘れることは無いだろう。

黒猫が半分になっていく様子を見た、湊さんの

絶望した悲しげな表情を。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

そんなこんなあって、絶品のチーズケーキに舌鼓を打った

俺達は、食器等を洗って返したあと、帰路についていた。

俺も同じ方向だったので同伴させてもらっている。

 

各々、話しながら帰ってる最中、リサさんが近寄ってくる。

 

「いやー、さっきはとんだ重荷を背負わせたね。ごめんね彩斗さん。」

 

「重荷?もしかして、あの時の湊さんの悲痛な顔と関係することか」

 

「そそ。友希那って猫がすごい好きなんだ。本人は隠してるつもりなんだろうけど。」

 

「成程、猫が分断される様子が悲しかったと。ていうか知ってたならその時教えてくれよ…。」

 

俺は、湊さんの認識を改める必要がありそうだ。

クールで音楽のことのみ追求する子だと心の中で

思っていたが、そういう1面もあるんだ。

あの時、あの話を断っていたら知ることがなかったことと思うと不思議な気分になる。

人との交流は常に発見に充ちていると感じた。

 

夕陽は落ち、月夜が照らし始めようとする街中を

バンドに関わる人達と久しぶりに帰った帰り道。

これが、Roseliaの皆と過ごした最初の一日だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




チーズケーキいいですよね。
甘くて、濃厚でクリーミー、種類もベイクドチーズやレアチーズ、各店で製法にこだわりがあるので止められないのです。自分でも作るのですが中々見た目がよく作れません。想像で作った黒猫堂の絶品チーズケーキ、食べてえです…。
以上宣伝でした。(なんの宣伝!?)

またよしなにー!!

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