「お~い、チャック~!」
青年1の声に本から顔を上げる青年2。顔を上げた青年の名はチャック・アナトリア。頭がよく、スポーツ万能。しかし、授業態度が少し悪いために先生たちからの評判は悪い。
声を掛けた青年はオッツ・ダルヴィダン。勉学はそこまでいいとは言えないが、スポーツはいつも1番、みんなを引っ張る素質もあり、すっかりリーダーである。
そんなオッツは今日もチャックに話しかける。今日は少し別の要件もあるが。
「どうしたオッツ。何か用か」
「おうさ!インターミドル・チャンピオンシップ行こうぜ!」
不愛想に返事をしたチャックを誘うオッツ。周りの婦女子たちがちょっと興奮してるのが目に毒だろう。
インターミドル・チャンピオンシップ。10代の魔導士が頂上を目指す魔法戦競技会。これに出れるだけで名誉ものだが、これに優勝すれば全世界の10代の中では最強という称号を持つ。何を隠そう、オッツもこの競技会で上位に入るほどの強さを持つ。
そんな彼がチャックを一緒に出場しようと誘う。
しかし、周りの同級生たちは首をかしげる。確かにスポーツは上手だが、オッツほどの力があるとは思えない。いつも本を読んでいるのだ。戦い慣れしているとは思わない。だが、オッツは必ずと言っていいほどチャックを誘う。去年も断られたのに飽きないやつだなと苦笑しながらことの顛末を見守る。
そんなチャックから衝撃の一言が出た。
「……今回だけだ。」
「え!?マジで!?よおしゃぁ!」
なんと出場するといったのだ。オッツも断れわれると思っていたのだろう。雄たけびを上げる。周りの同級生も唖然としている。それほど彼の誘うのは難しいのだ。
「でもまたなんで急に?」
皆の心の中をオッツが言ってくれた。チャックの返事は
「本当は出る気がないのだがシスターがな…」
『ああぁ~』
同級生は一斉に納得した。彼が孤児であるということはもう知っている。育ててくれたシスターには頭が上がらないことも知っている。そんなシスターからのお願い事は、彼にとっては命令に近いそれ。
「とういうわけで俺も参加することになる。当たれば敵同士だが、正々堂々闘おう。」
「チャックなら予選も突破できるだろうな!本選で待ってるぜ!」
『きゃあああああ!』
誓いを立てた二人、それに続く黄色い悲鳴。この二人イケメンに部類されるのだ。チャックはクール系。オッツは熱血系。これは薄い本が厚くなる展開予感がする婦女子たち。その光景を見たチャックはため息をついた。
(本当に俺が行ってもいいものなのか)
帰り道、チャックはインターミドル・チャンピオンシップに参加するのがいいのかどうか悩んでいた。それは弱さからくるものではなく、ただ、子供たちを心配するだけ。他人がその内情を聞くことができたのなら慢心だ傲慢だと思われるだろうが、彼の力はそれほどに異常なのだ。
(“あれ”を使うことがないとは思うがそれでは俺がきつすぎる。)
客観的に見ても彼の本当の力を知ったらそう思うだろう。例えるならばハンドガンで壁抜き選手権を行う競技でアンチマテリアルライフルの使用を許可されたようなもの。あまりにもフェアではない。だからと言ってバリアジャケット無しはきつすぎる。
(予選負けはしたくない。シスターとの約束もオッツとの約束もある)
思い出されるのは彼を育ててくれたシスターの笑顔とオッツと笑顔。彼が守りたいと思ったものがそこにはあった。わざと負けるとかは彼のプライドもあってする予定はない。
ならば、
「明日から修行だな」
生身で魔導士に勝つしかないのだ。
オッツもオッツで心躍らされていた。チャックのインターミドル・チャンピオンシップの参加。なぜにここまでチャックを誘っていたのかというとちゃんと理由が存在する。
とある放課後、忘れ物をしたオッツが聞いた謎の駆動音。その音が鳴る部屋を恐る恐る見てみると自分でも見たことがないフルフェイスのバリアジャケットらしきものを来ていた一人の男子の高速機動。かの機動六課のフェイト執務官を超えうるその機動性にオッツは心を奪われた。
急に止まったと思えば急に進む。それも連続でだ。障害物も所狭しと並んでいる中でその機動性を殺すわけではなく後ろ限界を超えさせるかのような動き出し、オッツは思った。こんなやつがインターミドルチャンピオンシップにいたらどうなっていたのだろう。
オッツは思う。こんなすごい奴と戦いたい。それも真正面から戦いたい。その正体を知るものからしたら自殺ものだろう。ただ、その姿に魅了されたのだ。
それを感じた後、彼はすぐ逃げ出した。忘れ物を忘れて。
その次の日、学校に行ってみると彼がいた。体格は似ても似つかないが、がっちりしている同級生。なぜか彼があの純白の持ち主だと確信した。何故なのかはオッツも知らない。だが、感じるものがあったのだ。
それからだ。オッツが彼の本気を見てみたいと思ったのは。それから何回も誘った。だが、断られる。でもオッツは見たかった。本物を。粘ったのだ。粘り続けた。
そして今回である。彼の本気と戦えるのなら本望だ。あいつなら、チャック・アナトリアなら本選までなんも心配なく来れる。だから言えるのだ。
「見せてみろよ。お前の力をさ」