——————薄暗い部屋だ。その部屋には甲高い音が鳴り響い居ている。おそらく心電図が稼働している音だろう。
大きなモニターが置かれたデスクと数々の医療機器があるのみで、それ以外は何もない病的なまでに質素な部屋である。
その部屋にある人影は二つ。
一つはこの部屋の医療器具が体のいたるところに装着されている大男で、目と鼻はつぶれ、あるのは口と耳だけ。そしてスーツを身に着けている。
もう一つは、黒色の
「さてと、
不意にスーツの男が褐色肌の男に語りかける。
「あぁ、順調だとも。急な登録のあとに
「それはよかった。彼らに何かあれば彼の計画が狂ってしまうからね。そうしたら彼が激昂するのは免れないだろうからね。私もそれは避けたい。」
そう言いながらもスーツの男の口元は歪んでおり、その表情は何とも楽しげだ。一種の結果としてその状況になったとしても楽しんでいる男を容易に思い描くことができる。
「彼らのことを心配するのもいいが、そちらの方は大丈夫なのかね?」
「?こちらの方?」
「とぼけるなご老人。————
志村転孤と言う名を出すとスーツの男は納得した風に声出す。あまりに芝居がかった様子だったため褐色肌の男は、しばし渋い顔をしたが、諦めたようにいつもの仏頂面に戻した。この男はスーツの男と関係が深いようだ。
「彼のことなら心配いらないよ。順調に育っていってる。あと、2年ぐらいもすれば相当強くなってると思うよ。それから、彼をその名前で呼ぶのはやめてくれないかな?彼が嫌がっていてね。」
「では何というように呼べばいいのかね?」
「これは、彼がつけた名なんだけどね。—————————」
キィィ―――
ドアがきしみながら開く音がして話をしていた二人は、ドアの方に振り替える。
褐色肌の男は油断なくどこからか取り出したのか、白の黒の双剣を構え。
スーツの男は座りこけながら、常人が浴びればまず立って居れなくなるような殺気をドアの方へ向ける。
そしてその二人の行動は、
「あー遅れちゃってスイマセン。」
ドアが開き放った少年の声によって霧散する。
現れたのは普通の少年だった。黒色のジャージ着て、ぼろぼろのスニーカーを履いている。髪は黒髪で、前髪を褐色肌の男とはまた違うようにかき上げてる。この場にいる二人に比べて何とも平凡な少年だった。唯一目立った個所といえば、鋭い三白眼ぐらいなものだ。
「ホントにいっつも遅いよねー、君は。いくら君が主導とはいえ、どうなのかな?」
「いや、そりゃマジでスイマセンって。でもヒーローとかって遅れてくるものでしょう?なら、俺はそうじゃないといけないんじゃないですかねぇ?。It`s maybe.」
「今更どの口で言うかね?自分周りをかき乱しだうえに、それを死んで丸投げした君がヒーローだんて、君が心底嫌うあのキザな男でもここまでの皮肉は言うまいさ。」
軽々しく謝ってきた少年に対し、褐色肌の男は苛烈な物言いでその叱責を責め立てる。しかし少年は舌をペロッと出しを謝罪の意を表した。スーツの男とも違う軽薄な態度だ。まるで友達にでも接しているような態度である。
そしてこの二人にこんな態度を取れてしまうような人間は、決してまともな人間ではないのだろう。その証拠に彼は目が死んでおりながら顔には純粋無垢な笑みを浮かべるという、とてもまともな人間には出来ない芸当をしていた。
「さっ、アーチャーさんのツンデレもいただいたところで、提示報告をお願いします。お二人とも。」
「誰がツンデレだ!!というか、今の会話の中にツンデレ要素はどこにあったのだ!プラス志向にもほどがあるだろう、この戯け!」
そう言うことを言うから少年にツンデレと言われてしまうことを理解せず「アーチャー」と呼ばれた褐色の男が叫ぶ。その光景にスーツの男は低い声で笑い、実に楽しげにしている。
ここにいる全員が異常な存在であるにもかかわらずこんな平和な空間になっている原因である、スーツの男はやはり『元』英雄なだけはあると少年に感心した。
そうしている間に褐色肌の男は気を取り戻し、
「定期報告は前回と変わらず、これといった変化なしだ。おおよそ予想していたルートをたどっている。君の『
「こちらで育成している子についても順調だよ。一年後の襲撃用の対オールマイト用の兵器も仕上がっている。そんなところだね。」
と、スーツの男と褐色肌の男は報告を終える。つつがなく報告し、スーツの男と褐色肌の男は解散しようとしていたが、そこに少年が待ったを掛ける。
「そう言えば今日のはずなんだよな、爺さんの弟子が自分の名前決めるの。」
....
「ん?そんなことも毎回同じなのかい?本当に君の能力はすごいな。」
「でも、寸分たがわず毎回同じとは限らないんだ。違ってたら計画が狂う可能性がある。不安材料は払拭しておきたいんだよ。」
と、少年はいつになく真剣な表情で言った。
「そう言うことなら教えよう。」
(いや、もともと言おうしていたところに君が来たから、話を戻すのか。)
などとスーツの男は呟くが少年にも褐色肌の男にも聞こえていなかったらしい。
それから、スーツの男は、
「彼の名はね——————————————」
彼を継ぐ最強
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
————パァァン!
道場に、高い音が響き渡る。時刻は放課後。部活動に所属している生徒たちが汗を流して、様々な分野で自分を磨いている。
道場の中では、剣道部が試合を行っていた。そして、試合で「面」を取り先程の快音を叩きだした少年———
相手選手はこの剣道部の主将だった。剣の通う中学校の剣道部は実力で主将を決めている。つまり、剣は事実上この学校の剣道の最強を冠しているものを倒したということになる。
そしてこの徹底的実力主義であるこの学校の剣道部では、主将に勝利を納めた時点で誰だろうとその瞬間主将になれることになっている。よって彼、剣は今この瞬間この部の主将になったのだ。
「全く引退試合前だってのに、まさか主将交代するなんてな。」
そう言葉を漏らすのは先程剣に敗れ去った同学年の元主将だ。その顔からは悔しさが感じ取れる。しかし、そこにドロドロとした感情はなく、寧ろ清々しいといった感情が浮かんでいた。
なるほど、さすがこの実力主義の剣道部で主将をしていただけあって、そこいらの三下のような自分が勝てなかったからと感情を荒げるわけではなく、自分を倒した相手に敬意を称している。
「でも、ホント急にどうしたんだ?久留木?お前今まで、主将略奪戦やろうぜって誘っても参加してこなかったに、、、」
と、声の調子を元に戻し不思議がっていたことを元主将が剣に問う。
「————個人的に主将略奪戦に参加しなかったのは、剣道以外にも勉強とかをいろいろしたいと思っていたからです。でも、そろそろ肉体的にもっと負荷をかけたいと思いまして。」
「負荷?」
「はい。この剣道部には向上心に溢れた人たちが多く所属していますから、主将になればより多くの試合ができるではないかと。」
「ほーなるほどな。でも意外だな。お前ならもっと剣道に熱中してそうなのに、、、」
この質問は普段の剣の剣道部での振る舞いを見ていたからこそ出る質問だった。
剣は日頃さぼらずに剣道にいそしんでいる。この剣道部には朝早くから来て素振りをする者や、ランニングや筋トレといった体の基盤を強化したり、時間を合わせ試合を行う者も多くいる。かくいう元主将の彼もそのうちの一人だった。
しかし剣はその中でも逸脱しており、2・3時間早く来るなんてことはざらにある。しかも剣はその間、片時も休まず竹刀を振り続けている。
さらにその時の彼は相当感覚が鋭くなっているのか、扉を開けて道場に入る前から気付いていたような行動をとっていた。
そして当然のごとく剣は入部当初から相当強く、1年生の時から2年生や3年生を圧倒したりしていた。
そんな彼が、剣道よりも勉学を今まで優先していたというは誰が聞いても驚くだろう。
そして剣はそんな雰囲気があった場に一つ答えを落とした。
「まあ俺、
剣の落とした答えに剣道部員にざわめきが広がっていく。
一応にして全員が顔に大きな驚きを張り付け、見開いた眼を剣に向けていた。
彼の目指す進路は日本最高峰のヒーロー育成の場、先程言っていた「雄英高校」にヒーロー科で入学することである。
しかし、それにはいくつもの障害がある。
まず、偏差値の高さだ。雄英高校の偏差値は79であり、相当の頭脳を持ち合わせていなければヒーロー科どころか入学することができない。
そして次の障害は倍率の異様な高さだ。その倍率は何と300倍というトンデモな数値になっている。まず、受かることはないだろうという倍率である。
しかし、なぜここまでの人気を雄英高校が得ることができたのか。
それは一重にその学校の実績だ。
どこも右に並ぶことが出来っこないようなそんな実績。
雄英高校からは数多くのトップヒーローたちが輩出されている。
ヒーロービルドボード現在4位のベストジーニストや、2位のエンデヴァ―、さらには万年1位独占のオールマイトなんて大英雄までもが、雄英高校の卒業生なのだ。
その看板を掲げていれば、どれだけ困難だろうとチャレンジしようという者たちは出てくる。
まぁ、中には雄英を受験したという事実が欲しいだけの受験生——所謂、記念受験なるものを行うものもいるにはいるようだが。
別に目指すことは珍しくはない。
全国の公私含めた中学校には必ず一人、雄英高校を目指そうとする猛者がいる。
この学校では偶然にも剣がその『必ず一人君』だったというだけだ。
ならば先ほど広がったざわめきはそのことに驚いた故の驚きだったのか。
いや、そうではない。
彼らの顔に浮かんでいるのは紛れもない驚きという感情だ。
しかし、単なる驚きではない。
そこには僅かで確かな無理解が混じっていた。
「——剣、、、悪いことは言わんあきらめろ、だって、、、お前」
おもむろに、一人の生徒が口を開いた。
誰にでも分け隔てなく接し、この剣道部にしては珍しく少し人気のある男だ。
その剣道部員は言おうか少しためらった後、剣の目を見ていった。
「お前、`無個性`じゃないか、、、」
そう、剣はヒーローにとって最も重要ともいえる要素———個性がないのだった。
近年、中国の光る赤子から始まった人のみに宿る超常の力である個性は今や世界人口の約八割が持っている。
それに対し個性を所有していないものは2割程度。
その数は年々減ってきており、剣の世代ではほぼ皆無と言ってもいいだろう。
そんな不運中の不運に当たってしまったのが、剣なのだ。
剣道部員たちはもちろん教師もある程度仲良いクラスメイトでも知ってる事実。
きっと彼はその事実を無視できなかったのだろう。
彼の導き出した剣への親切心だったのだろう。
しかし、剣は————
「——それが何だ?別に無個性の奴がヒーローになれないなんて決まってはいないだろ?もしそんなふざけた決まりがあるとしたら、そんなもんは斬り捨てる、、、そんだけだ」
剣は与えられた優しさを切り捨てる
そこの中には少々殺気すら混ざっていそうだった。
「そ、そう、、、か、、、で、でも、、、!」
その剣幕に一瞬押されるが、それでも男は剣を止めようとしてくる。
「それに、、、」
「・・・それに?」
威勢の良かった剣の声が少し弱まった。
ことを少し不思議に思った部長は、話の続きを催促させる。
しかし、剣が答えるよりも前に、勢いよく扉が開かれる。そしてそこにいた人物は、この場に似つかわしくない可愛らしい声音と———————
「失礼します。茶華道部の
花のような微笑みを浮かべながら話題の渦中の人物の名を呼んだ。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「なぁ、なんで今日に限って迎えに来たんだ?いつもは校門前で待ち合わせしてただろ?」
「え~だって、今日は部活がお休みだったし、あと剣も今日は早く帰るって言ってたじゃない。なのに全然来ないから迎えに行ったのよ。」
「だとしても道場に顔を出すのはやめてくれ。明日どんな目にあわされるか、わかったもんじゃないからな。」
まだまだ、明るい時間。部活動終わりとは思えないような時間帯の中で剣と花は並んで歩く。ゆったりとした花の歩幅に剣が合わせる形で、二人は今日の出来事について話していた。
今日の出来事とは先も言った通り、花が剣を道場に迎えに来たことだ。
花は茶華道部の部長であり、優しさに満ちた心と名のごとく花を思わせる笑顔を持ち、なおかつ運動神経抜群で勉学にも秀でているという、まさに高嶺の`花`として認知度がある生徒だ。
そんな生徒が、実績はあるものの、むさ苦しい集団の代表格という不名誉な呼び声の剣道部の道場に、あろうことが男子生徒を迎えに来たのだ。それはそれは驚くだろう。そしてそのむさ苦しい者たちの中から見事幸運にも選ばれたの剣と言うわけである。
そしていくら剣道厨の集まりとはいえ、年頃の男子。花に密かに恋心を抱いてた者や興味本位で、事情を聴きにくること間違いなしだろう。詳しく話さなければ永遠に開放してもらえない、小袋地の出来上がりである。過去に一度味わったことのある————いや、二度味わったことのある経験だ。
一つ目は若き頃の隊の仲間たちに、もう一つは年老いたころ出会ったこちらで言うジャージに似たものを着ている少年によってもたらされたもだ。
しかし、今回は質問が少なくて済むかもしれない。なぜなら、剣と花が幼馴染だという話を知っているものがいるからだ。知っているのは先程剣が試合にて主将の座を奪った彼の存在だ。
「さっきの主将さんには助けてもらっちゃったわね。助けてくれなかったら、今質問攻めに会ってるでしょうね。」
「そら、主将はそうするしかないだろ。なんせ———————」
「私たちが`付き合っている`ことを知る条件だったもんね。」
そう先輩が知っているのは幼馴染ということだけではなく、二人が`付き合っている`ことを知っているのだ。
二人が付き合うことになったは、幼稚園の頃のことである。しかしその頃に付き合っていることを周りに知られたとしても、周りはそれをよく理解はできないし二人も説明しようとしない為、明かされることもなかったのだ。
そしてそのまま時は流れ、幼稚園を卒業し小学校に入学、低学年から高学年になり小学校も卒業し中学校入学を果たした時にはすでに、明かす時期を逃していたのだ。よって、二人関係は明かされることはなく今に至るということである。
また、二人の場合付き合った時期がとりあえず幼稚園の時とはなっているが、もともと二人は別の世界線からやってきた伝説の二人————————世界最強の剣の腕前を神から与えられた「
その出会いはもう数十年以上にも前にさかのぼる。そんな時の思い出がポロっと出てしまう可能性があるのでは、と二人は懸念しているのだ。現に元主将の彼に聞かれた時、相当気を遣ったことが教訓になっている。
ちなみに元主将の彼に関係がばれたきっかけは、あまりにも校門に来るのが遅い剣にしびれを切らせた花が「もうどうせ剣しかいないだろう」とたかをくくくり、勢いよく道場を開けなった所いたのは剣だけではなくその元主将もいたところで、その元主将に関係をうまい具合に聞きだされてしまったのだ。
そしてその時、関係を教える代わりに出した条件がもしほかの生徒にばれそうになったらうまいこと逃がすことだった。彼はなかなかに口が回るようで、その姿に剣は過去何度か助言をもらった獄中で出会ったオルフェという男のことを思い出し、「どこにでもこういった人はいるんだな。」と思ったという事はここだけの話である。
しかしながら、この条件も今回ばかりは守ることは難しいだろう。何人にも問い詰められたら、どれだけ口が回るとしても逃がすことはできないだろう。そのことを思い剣は一つため息をこぼす。それに花は、
「そんなため息つかないの。まあいい機会なんじゃない?いつまでも秘密にしておくは少し難しいと思うし。」
「そうは言ってもなぁ。正直面倒だろ、何かあるたび言われそうだ。現に今付き合ってるって言われてるやつらはそうだしな。」
「あー確かにね。あれはめんどくさそう。でも、私はヴィルヘルムと付き合ってるってわかってもらうの嬉しいわよ。」
そう、盛大な惚気を吐く花だが剣は修正を入れる。
「おい、癖が出てるぞ。今はヴィルヘルムじゃなくて剣って呼べ。どこで誰かに聞かれてるかわからんからな。」
「あっ!ごめんなさい。」
剣からの指摘に花はペロッと舌を出し手を合わせて謝意を示す。対して悪びれているように見えず、剣は花の額を指でぺシっとはじく。
急な痛みに可愛くにらんでくる花に少しばかしの笑みを浮かべた剣は、いつの間にか止まっていた歩を再び進めようとする。
しかし、その時少し先の道で何か騒がしくしているのに気付く。
「なんだ?」
「——————火の音がしてる。あと小さな爆発音。あと、悲鳴も聞こえてる。剣これ多分、、、」
少々緊迫した空気の中、二人は顔を見合わせ言った。
この作品の1話1話の長さ(文字数)について
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