———町中の商店街。今の時刻は3時35分。大体この時間帯は、部活動に加入していない学生たちや、今晩の献立を考えながら自分の財布の中身とにらめっこをしている主婦たちでにぎわっている。現にこの商店街はいまにぎわいを見せている。
しかし、現在商店街を奏でているのは爆発音と悲鳴によって織りなされている。
その原因はその商店街の中央にいる。全身が深緑色の液体によって構成されている謎の物体——否、そういった個性を持った人間だろう。
この世界の個性には大まかに分けて3種類ある。
一つは発動型。任意のタイミング個性を使うことのできるタイプで、大体の人間がこれに当てはまる。
二つ目は変形型。自身の肉体を変えることのできる個性である。発動型と同じように任意で使うことができる。今日ネットニュースで新たに「Mt.レディ」がヒーローデビューをしていたが彼女の巨大化がいい例である。
三つ目は異形型。生まれてから常に個性を発動している個性である。シャチや犬、鳥など生物の特徴を持っていたり、その他の物質などの特徴を持っている。
と、以上が個性の大まかな種類である。今回の人物は恐らく異形型に当てはまるだろう。
「おいおい!ヒーローは何であんなとこで突っ立てんだ?!」
現場に到着した剣と花の耳に野次馬が上げた声が入ってくる。確かによく見るとヒーローはもう到着しているのにも関わらず一向に動こうとしない。不思議に思っていると別の野次馬が言った。
「なんでも、
その発言を確かめるため剣は悪の方を注視する。するとそこには、見知った顔があった。その顔は剣の通う中学校——
「—っ!
多くの問題行為その優秀な成績、そして強力な個性で有名な生徒だ。そしてその粗悪な行動からは考えられないが何でもヒーロー志望らしい。
彼の個性は「爆破」。手の平で爆発を起こすといったものだ。どうやらこの建物を破壊したり、あちこちから火が上がっている現状を見ると、先程の野次馬が言っていたことは正しいといえるだろう。
しかし、それが分かった所で何かが変えれるわけではない。現在の剣はただの学生である。ヒーローの証である「ヒーロー免許」を取得していないため、ヒーロー行為ができないのだ。
ヒーローも今攻撃すれば爆豪に攻撃が当たるかもしれない。つまり今この場で動けるものただ一人もいないということになる。
その状況に剣は歯噛みする。それはヒーローたちも同じなようで皆、苦虫を噛み潰したような顔をしている。
———このままでは、なにもできずヴィランによって破壊活動が行われ続けるだけだ。
誰もがそう思った。
ただ、一人を除いて——————
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
今日の
本日の学校の出来事は大まかにまとめるとこうだ。まず、1~6限目まで何の問題もなく終了しあと残すことはホームルームのみ。それだけ終われば学校から解放されるところまで進んでいたが、出久の人生中最高峰の悪運足らしめることが起こったのはホームルームでの出来事だった。
今回のホームルームでは通常とは異なる雰囲気を醸し出した先生が教卓につくことから始まった。普段は温厚で知られる我が3年4組の先生とは思えないような感じだ。そして彼がそんな雰囲気を纏っている理由は彼の口から告げられた。
「えぇー、お前らも2年ということで、本格的に将来を考えていく時期だ。今から進路希望のプリントを配る。」
と口にした。そこで先生の纏っていた雰囲気の理由が明かされたのだった。進路希望、それは世に生けとし生ける全ての学生に訪れるなんとも陰鬱な気分にさせるB5用紙のことだ。
近年は高校卒業が当たり前の時代。いや、もっというと大学卒が当たり前になってきているやも知れん高学歴社会である。当然学生たちにはプレッシャーがかかる。
何年も前から入学試験のために勉強をしなければならない生活。親からの多大なるプレッシャー。塾の講師からの重圧。少しでも息抜きをしようものならを後ろ指を刺される。
———なんてことはないにしても、それなりに苦しい生活を送っているだろう。
そんなところにより上記のことを意識させるような配布物だ。又、これに関しては生半可な記入は命取りになる。
そんなことをすれば貴重な放課後を親と教師と生徒の三人で、延々と質問攻めに会うのだ。そんなことは絶対にNOである。
それを先生は持ってきたのだった。それは先生も少々気を張っていてもおかしくはない。
これより、プリントは配られて生徒たちの間に暗い空気が流れ——
「でもみんな——大体ヒーロー科志望だよねぇ?」
先生が教師としてどうなのかといいたくなるようなことを言い放つ度同時に、プリントを宙に放り投げた。そして、
「「「「「は-ーーーい!!!!」」」」」
クラス全体から肯定の意を示す叫び声が上がった。
そして皆思い思いに立ち上がり己が個性を誇張するように発動させた。
その中にはろくろ首のように首を伸のばした少年や、髪の毛が逆立った少女、中学生にしては筋骨隆々すぎる体躯の少年、手から火を出す少女などまさに、百鬼夜行の状態になっていた。
先程まであった重々しい雰囲気は消えている。
「うん。みんないい個性だねぇ!でも、校内で個性発動は原則禁止な!」
とゆったりとした口調でクラスメイト達をなだめにかかったが、あまり効果は無いようだった。
「せんせ―!」
と本当に何気なく質問しそうな気軽さで先生に語りかけた少年がいた。
言い方としてはこのセリフの後に「バナナはおやつに入りますか?」と聞きそうな言い方だった。
しかし少年が口にしたのはそんなオーソドックスな言葉などでは決しなかった。
「`みんな`なんて一緒にすんなよ。俺はこんな没個性どもと仲良く底辺になんざ行かねぇよ。」
と傲岸不遜にも言い放つ。
同時にクラス中からブーイングの嵐。
仮にもヒーロー科志望の者たちがこんなことを言われて黙っていられるはずもない。「そりゃねーだろ!勝己!!」やらなんやらがクラス中を飛び回る。
「あ~確か爆豪は、、、雄英校だったな。」
と、先生が一年生時の進路希望のプリントを見て先の発言に付け加えるように言った。
その発言にまたもやクラスがざわめいた。「雄英ってあの国立の?」やら「なんか倍率すごいらしいぜ、、、」などといった声が飛び交う。
「—そのざわざわがモブたる所以だ。」
と、クラスメイトの逆鱗に触れるようなことをわざわざ言い放ち、器用にも座った状態から机の上に飛び乗るという妙技を繰り出した彼は、天井に指をさし言い放つ。
「模試じゃA判定!俺は
そうこの彼こそが、いい意味でも悪い意味でもこの学校で名高い「爆豪
「俺はトップヒーローとなり!必ずや、高額納税者ランキングに名を刻むのだ!!!」
「そういやぁ、緑谷も雄英志望だったな。」
「——」
真っ白になった爆豪を置き去りにして、本日のミスターアンラッキー——緑谷出久に話の鉢が回ってきたのだった。
———静寂。
———痛いほどの静寂。
———重い、重い、静寂。
そしてこの静寂を突き破ったのは、ここまでの話の渦中にいた爆豪勝己—ではない。そう破ったの先生—でもなく、緑谷出久—は皆から向けられた視線に縮こまっているため無理である。ならば何が破ったのだろか?言うまでもあるまい。
この沈黙を破り捨てたのはクラスメイトの、圧倒的な声量による——————
「「「「「「「「「ブッ!ハハハっっっ!!!」」」」」」」」
爆笑だった。それも特大が付きそうなほどの。そして、いろんな声が上がる。
「緑谷?ムリっしょ!!w」
「勉強出来るだけじゃ、ヒーロー科には入ることはできないんですよ~~?www」
と、様々なヤジが飛ぶ。そんなヤジに緑谷はしどろもどろに反論する。
「そそ、そんな決まりはないよ。前例がないだけで————」
ババババン!!!
と緑谷が話していると彼の机が渇いた音と共に爆発する。
その爆発に驚くのと同時に爆発の威力によって緑谷が吹っ飛ばされる。
そして、吹っ飛ばされた彼を見下ろす影が一つ。
それは、彼の胸倉をつかみ上げ怒声を浴びせた。
その陰の正体は、
「なんで没個性どころか、無個性のてめぇがなんで俺とおんなじステージに立てるんだぁ?!あぁ!?」
言うまでもなく爆豪勝己である。
とんでもない圧迫感で爆豪は緑谷に詰め寄る。そんな爆豪に緑谷はクラスメイトに弁明していた時よりもオドオドした態度で言葉を紡ぐ。
「まっ、待って、かっちゃん!別に同じステージとか全然、、、!本当だよ、、、」
そう言いながら、ちびちびちびと後ろに下がっていき、教室の壁にぶつかる。そして彼は下を向き、
「ただ、小さい頃からの目標なんだ。それに、その、やってみないとわからないし、、、」
「—何がやってみないとだぁ!?リベンジ系かぁ!!てめぇが何をやれるんだ?!`無個性`のくせによぉ!!」
緑谷が言った言葉に爆豪がぶち切れ、両の掌を小さく爆発させながら、緑谷を問い詰めこの時間は終わった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
放課後、生徒たちが教室からばらばらと出ていく。そんな中緑谷は一人自分の席でニュースサイトを見て、
「今朝の事件ニュースのトップだ。—早く帰ってノートにまとめないと。」
と一人呟く。今朝の事件というのは、無類のヒーローオタクである緑谷が趣味であるヴィランが起こした事件をヒーローが対処する現場に野次馬しに行っていたときのことだ。
その事件ではとある個性を持て余した子悪党が、ひったくりをした。という内容だった。この程度なら警察に任せそうな事案なのだがそうもいかない。なぜならひったくり犯の持つ個性が攻撃的なものだったのだ。
そのため、複数人のヒーローが駆り出されることになった。その中でも期待の新人ヒーローの「シンリンカムイ」が自身の個性「樹木」を利用した必殺技「ウルシ鎖牢」でひったくり犯を捕縛しシンリンカムイはより一層の人気を集める——はずだっただが、、、
その日にヒーローとして活動することになったという「Mt.レディ」というヒーローが横から飛び蹴りをかましたことにより活躍の場を奪われた。といった内容の事件である。
緑谷は机に一冊だけ置いてあったノートを取り鞄に入れようとした。しかし、彼の視界からはそのノートは消え失せていた。どうしたことかと顔を上げるとそこには——
「『将来のためのヒーロー分析』??んだこれ?」
爆豪勝己が緑谷から取り上げたノートを訝しげに見ていた。
彼が取り上げたノートの名前は「将来のためのヒーロー分析#18」と銘うたれているものだった。このノートは緑谷が幼少のころからまとめ上げてきた数々のヒーローたちの分析表を書いたものである。緑谷はこのノートを取ることで何か自分に役立てることのできるものないかと模索していたのだ。
彼はそんなノートを、ぱらぱらぱらと流し読みすると不意にノートを閉じ、ノートを両手で包み込んだ。
「——ふんっ!」
——ボン!
爆豪が手の平から火花を散らすのと同時に、教室に少し焦げたにおいが漂い始めた。理由は言うまでもない。彼が個性を発動させてノートを爆破したのだ。
当然ノートには焼け跡がくっきりと残っており、表紙のその有様を見てもノートの中身も悲惨なことになっているだろう。
「な、なにしてるんだ、、、」
自分の努力の結晶たる物をそんな扱いをされた緑谷は、驚愕しぽつりと言葉をこぼすが爆豪がその声を無視し教室の窓を勢いよく開け放った。そして、ノートを持った手を大きく振り上げた。
さすがに緑谷も次に爆豪が何をするのか理解できたようだ。緑谷が爆豪に駆けていこうとした。しかし、
「う、うわ!」
爆豪の取り巻きの一人が、足を引っかけて緑谷を転ばした。そのせいで爆豪がことを行う時間を与えてしまった。—ノートが彼の手から放たれた。ノートはそのまま地面へ落下してしまう。
その様子を呆然と見ていた緑谷は、はっ、と顔を上げ急いで窓へ駆け寄っていく。しかしいくら慌てふためいたとしても、落ちていってしまったものをつかめるわけでもなく、ただ窓から顔を出し見つめることしかできない。
「そんなもん、てめぇが持ってたって意味ねーだろ。てめーはどうせ”無個性”なんだからよぉ。」
「そう言ってやるなって爆豪。哀れな緑谷少年にはまだ現実が見えていないのですよ。」
そんな緑谷に爆豪とその取り巻きたちの陰湿な攻撃が始める。こんな光景は日常茶飯事だ。無個性を理由に彼らは馬鹿笑いをしながら、緑谷を不当に追い詰めていく。いつも通りなのだ。いつも通り。しかし今日はいつもより少し当たりが強いような気がした。そして爆豪は、
「そんな、木偶の棒の”デク”くんにもひとつだけチャンスがありまーす」
そんなことを不意に言いだした。そして、緑谷に向かって、
「来世の自分にかけて、屋上から身投げのダイブ!!きっと次は個性持ちになれるぜぇ!!!」
「————っ!」
そんなまるで、
今日一日反抗という行動をしてこなかった緑谷が始めて、強い意志を込めて爆豪を睨み付けた。しかしそんな緑谷に、
「なに?」
と、手の平を爆発させて威嚇しながら凶悪な笑みを浮かべ緑谷の心を一瞬でへし折った爆豪は、颯爽と教室を出ていった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「くそっ、なんだよかっちゃん。あれで僕がほんとに飛び降りてたら、自殺教唆なんだぞ、分かってんのか。」
いや、爆豪は恐らく緑谷ができないと踏んで言ったに違いない。さすが幼馴染なだけはある。そのことを緑谷も分かっているだろう。だからこそ彼はこんなにも悔しそうな顔をしているのだろう。
しかし彼は急に頭を振り拳を握りしめて言った。
「いや、こんなことでめげてられない。僕は”最高”のヒーローになるんだから!」
そう、強い意志のこもった瞳を持って顔を上げる。先程まで通っていたちょっとしたトンネルのような道の先から、強い日の光が照らして———
「おっ!!いい感じの隠れ蓑見っけ!!」
いるのではなく、全身がヘドロで出来た人物が立って居た。おそらく異形型の個性だろう。そんなことを急な出来事でフリーズした頭で緑谷は考えていた。
——そして体を180度回転して、全速力で逃げ出した。しかし、
「んっ!!」
「おいおいそりゃないだろよ、ガキ。いくら異形型の個性持ちだからってそんな急に逃げ出したら失礼だろ?まあ、俺は
ヘドロの体をした自らを敵と名乗る男は、逃げようとしていた緑谷にまとわりついた。
緑谷は今日、先程爆豪に投げ捨てられ見事池に入っていったびしょびしょのノート、を片手にとぼとぼと帰路についている。ちなみに今日はいつも通る最短距離の通学路ではなく、少し遠回りのルートを歩いている。今は少しでも歩いたり眺めたりなど別のことをして今日の出来事を考えないようにしたかったのだろう。しかし、それが裏目に出てしまう。
緑谷は必死になってヘドロから逃げだそうとした。しかし、ヘドロの体は流動性でうまく掴めず逃げ出すことができない。そして次第に自らの意識が遠のいていくのがわかった。口を防がれうまく呼吸ができでいる感覚がしない。
「へっ!全くこんなご時世に一人呑気にこんな暗い所歩いてちゃいけねぇよ全く。だから俺みてーな奴に狙われるんだよバーカ。さあ、体をもらうぜ。そうすりゃいくら『あいつ』でも——」
「私を呼んだかな?」
ふと、後ろに何か重い物が降ってきたような振動がしてきた。そしてその方向から聞こえてくるこの声は、聞き間違えることのないこの声は、緑谷出久だけは決して間違えないこの声は、
「デトロイト——っ!」
この人は、この
「——スマァァァァッッッッッシュ!!!!」
緑谷とヘドロ男の背後に降り立った大男は緑谷の腕をつかんでヘドロから引き剥がし、ヘドロ男に暴風を纏ったかのような拳を振るった。そしてヘドロを粉微塵に吹き飛ばした大男は腰に手を当て、胸は張り、輝くような笑顔でこう言った。
「もう、大丈夫!なぜって??」
それは大男がヒーローとしてデビューした事件の映像で彼が言い、それから『平和の象徴』とまで言われるヒーロになった今でも彼の代名詞として語り継がれている言葉。それを聞いた誰もがどんな状況にあっても安心できるそんな言葉。それを、
「私が、来た!!!」
「オ、オールマイト、、、!」
緑谷出久がこの世で最も尊敬するヒーロ——No'1ヒーロー「オールマイト」は高らかに宣言した。
この作品の1話1話の長さ(文字数)について
-
もう少し少ない方がいい
-
もう少し長い方がいい
-
ちょうどいい