仮面ライダー斬月・艦   作:はちコウP

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この作品は2015年5月29日にpixiv https://www.pixiv.net/novel/series/452817 に投稿した作品を加筆・訂正した物となります。

『仮面ライダー鎧武』『艦隊これくしょん』の基本設定をベースに独自要素、解釈を詰め込んでおります。

本作における艦娘の設定は公式ノベライズ作品『陽炎、抜錨します!』及び『鶴翼の絆』を参考としております。


※今後、分量が多い話は複数パートに分けて投稿します。


【第八話】part1

 急速に発達した低気圧の影響により海は荒れ、激しい波が巻き起こる。

 曇天の空模様ではあるが、幸いにも雨は未だ降りだしてはいなかった。

 その天気の下で、三人の艦娘が洋上を駆けていた。神通・叢雲・不知火である。

 三人は今、基地周辺海域の哨戒任務に当たっている。とはいえ、最近この海域で深海棲艦を発見する事は殆どない。

 だが、そんな状況といえど三人の艦娘の表情は真剣そのもの、気を抜いた様子は微塵も感じられなかった。

「今にも降り出しそう」

 叢雲が苦い顔で空を見上げる。

「波が高くなってきました。加えて雨が降ってくれば、航行は困難となりますね」

 その後ろを進む不知火は、警戒しながら周囲を見渡す。

「では、哨戒任務を中止して基地へ帰還しますか?」

 先頭を行く旗艦の神通が言った。

「冗談、そんなのゴメンだわ」

「この程度の時化で航行を止めるなどとあっては、艦娘の名折れです」

 叢雲、不知火は揃って神通の提案を否定する。

 大規模な作戦行動時においては、荒れ狂う海を航行して、敵地へ向かう事も珍しくない。最悪の場合、今の様な荒天の状況下で敵と遭遇する事も。それを知った上で神通は、二人に言葉を投げかけたのだ。対して返ってきた二人の艦娘の答えには、一片の迷いも感じられなかった。

「わかりました。では哨戒を継続します」

「了解!」

「了解しました」

 指揮下の駆逐艦娘の力強い声を受け、神通は口元に微笑を浮かべる。

(返事に意志の強さが感じられます。頼もしい限りですね。しかし……)

 神通は、灰色の雲が流れる空へと視線を向ける。

(何か胸騒ぎがします。悪い事が起こらなければいいのですが……)

 吹き付ける強風が、神通の長い髪を激しくなびかせた。

 

          ――――――――――――――――――――――――――――――

 

 その少し前……

 

 激しく吹き荒れる風の中、深海棲艦の残骸に生っていた果実を咥えながら飛行するカラスは、腹を空かせた我が子の待つ巣へと向かっていた。

 と、その目の前の空間が波打つように歪みだした。それと共に、突如として灰色のオーロラのようなものが出現する。

 驚愕したカラスは、衝突を回避しようと羽をはばたかせ、急制動をかける。が、その瞬間、突風が吹きすさんだ。

 その風にあおられた二羽のカラスは、バランスを失い体勢を大きく崩してしまう。そしてカラス達は、思わずくちばしに咥えられた果実を離してしまう。二つの果実は森の中へと吸い込まれるように落ちていった。

 どうにか体勢を立て直したカラスは、獲物を失ったことに対し口惜しそうに一鳴きすると、その場を飛び去っていった。

 一方で森に落ちた一つの果実の周りには、野鼠の群れが集まりだしていた。

 

          ――――――――――――――――――――――――――――――

 

 基地裏手の森、その更に奥深くにある開けた一角、そこには夕張・陽炎・黒潮、三人の艦娘達が集まっていた。

「うん、みんな集まったね。それじゃあ、成果を発表しましょうか!」

「ですね!」

「負けへんで!」

「じゃあ行くわよ。せーのっ!」

 夕張の掛け声を合図に三人は、後ろ手に持ったカゴを一斉に突き出した。

 その中には真っ赤に熟した木苺がいっぱいに詰まっていた。どのカゴにも満載である。

「あ~これは……」

「引き分け……かな?」

「せやなぁ」

 あっさりとした勝負の結末に、一時は気分が盛り下がる三人であったが、それぞれのカゴと互いの顔を見合わせると、ニンマリとした表情を浮かべた。

「勝負は引き分けだけど、これだけあれば十分な量が作れそうね」

「それだけじゃ使い切れそうにないから、ジャムなんかも作ってみます?」

「あ、それ凄くいいかも!」

「にしても、こないぎょうさん取れるとは思わんかったわ。この辺は穴場やったんなあ」

 三人で会話に花を咲かせていると

「……ん?」

 夕張の頬にヒヤリとした感触が走った。手で触れると、水滴が付いているのがわかった。夕張は空を見上げる。

「あ……雨だ」

 陽炎と黒潮も視線を上へ。そこには黒々とした雨雲が広がっていた。三人が木苺集めに夢中になっている間に、天候はすっかり悪くなっていたようだ。すぐに二人の顔にも、雨粒がポタポタと落ちてくる。

 初めは弱かった雨粒の勢いは、瞬く間にその強さを増し、あっという間に土砂降りの大雨になる。

「うわ、最悪!」

 艦娘は海で戦いを行うため、水に濡れる事には慣れている様に思える。だが実際には艤装の防御効果により水濡れを軽減しているだけであり、普段の生活においては、他の人間と同様に水に濡れてしまう。それによって体を冷やしてしまえば、当然風邪をひくこともある。

「あ~あ。もう濡れて帰るしかないか。傘持ってくれば良かったな」

「その心配は無いで、夕張はん」

「え?」

「ウチについてきたってや」

 得意気にそう言うと、黒潮が小走りで駆け出した。

 夕張と陽炎は、黒潮の行動に疑問を抱きつつも、駆け足で彼女の後を追いかけていった。

 

          ――――――――――――――――――――――――――――――

 

 部屋の中には紙の擦れる音、カリカリとペンで書き物をする音が静かに響いている。

(神通、叢雲、不知火、今日出撃している者の組み合わせは二日後まで継続させ、次は夕張、陽炎、吹雪で哨戒部隊を組ませるとしよう。残るは天龍と……)

 貴虎は考えを巡らせつつ、ペンを走らせる。

 提督業、艦娘運用における戦略のいろはを学びつつある貴虎は、徐々に仕事を任されるようになっていた。

 今やっている哨戒任務のスケジュール組みも、その一つである。

「こんな所か」

 スケジュールを組み終えた貴虎は、右手に持ったペンを置く。

 こわばった筋肉をほぐすため首、肩を軽く動かす。そんな時、彼の視界の端に鉢植えが映る。

 DJサガラの残していった、黄金の果実の力の一端。授けた本人にすら分からない、未知の可能性を秘めた物。

 それは未だに、変化の兆候すら見せてはいない。だが、もし仮にその力が発現したとして、ヘルヘイムの脅威が確認できていない現在、それは何かの役に立つのであろうか?そんな疑問が時折、貴虎の脳裏に浮かんでくる。

(だが、何もなければ、それはそれで構わない。この世界の者が、我々の世界と同じ危険に曝される必要はないのだからな)

 物思いにふけっていた貴虎は、ふと時計を見上げる。時刻は日没の少し前ごろ、食堂で夕食を取り始めるのに丁度いい頃合いであった。貴虎は机の上の書類を引き出しにしまうと部屋を後にし、食堂へと向かっていった。

 

 部屋の主が居なくなり、暗くなった室内は、シンと静まり返る。

 と、そんな静寂と暗闇を打ち消すように、鉢植えから微かな光が溢れ、瞬きだした。

 その輝きは、川辺にて命の炎を燃やす蛍のように儚く、しかしながら力強いものであった。

 

 別棟の玄関口まで来た所で貴虎は、遠くから近づいてくる人影を目にした。

 早足気味に近づいてくる作業着に身を包んだ青年。その手には工具箱が握られている。

 彼も貴虎に気付いた様子で、視線が合わさると軽く会釈をする。

「お疲れ様です。こちらの責任者の方ですか?」

 貴虎の正面に立った青年が尋ねてきた。

「いや、私は違うが」

「そうですか。実は、この建物の空調設備の修理・点検を頼まれまして、お伺いさせて頂いたのですが」

「では、提督を呼んできましょう」

「あ、大丈夫です。その、提督さんのお部屋が、こちらで合っているのかが知りたかっただけでして。問題無いようでしたら、早速作業を始めさせて頂きたいのですが」

「分かりましたお願いします」

 作業着の男は再び会釈をすると、ガチャガチャと工具箱を鳴り響かせながら、建物の中へと進んで行った。

(空調の修理か。私には快適に感じられていたが、知らない所でガタがきているのか?)

 小さくなっていく男の背を見ていた貴虎は、入り口へと向き直ると、歩を進め始める。

 貴虎が外へ出た丁度その時、ポツポツと雨が降り出した。程なくして勢いを増したそれは、あっという間に地面濡らし、水たまりを作り始める。

「……雨か。急ぐとしよう」

 貴虎は食堂へ向け、勢いよく駆け出して行った。

 

          ――――――――――――――――――――――――――――――

 

 屋根に激しく打ちつける雨音と、強風にあおられ軋む材木が立てる音に不安を覚えつつも、落ち着いて休める場所へ辿り着けた夕張は安堵する。

「どうにか雨は凌げそうね。それにしても、森の中にこんな小屋があったなんて知らなかったわ」

 雨粒に濡れた顔を手で拭いつつ陽炎が言う。

「こないだ山菜採りに来た時に見つけたんやで。けど、こんな早う役立つとは思わんかったわ」

「ホント、黒潮のおかげで助かったわ。ありがと」

 陽炎の言葉に対し、黒潮は得意気な表情を浮かべる。

 突然の豪雨に襲われた夕張達は、黒潮の案内で小さな山小屋の中へと逃げ込んでいた。

 この小屋は、深海棲艦が出現する以前、この島の元々の住民が生活を営んでいた頃に使用されていたものである。

 島民が疎開し、基地を建設する際に、多くの建物は取り壊されていたのだが、島の奥にあったこの小屋は、手つかずの状態で残されていた。無論手入れは行き届いていないので室内は荒れ放題であったが、雨風を凌ぐには十分だった。

「うわ~服がビショビショ」

 夕張はスカートの裾を掴み、ギュッと力を込めて絞る。浸み込んでいた雨水が、ポタポタと音を立てて床に滴り落ち、小さな染みを点々と作っていく。

 更に上着を脱いで絞る。スカートより多くの水を含んでいたのか、上着から零れ落ちる水滴は、床上の染みを水たまりへと変えていく。陽炎達も同様に服の水分を落とし始めた。

 夕張は下着も乾かそうかと考え、それに手をかける。が、女性ばかりの空間とはいえ、流石にそこまでするのは気恥ずかしいと思い直し、十分に絞った上着を再び着用する。

 肌にまとわりつくような湿り気が若干不快だったが、ビショビショに濡れたままよりは、大分マシというものだ。

「何だかワクワクするわね」

 陽炎が口を開く。

「どういう事や?」

「子供の頃にさ、友達と一緒に秘密基地とか作った思い出って無い?そんな事思い出してさ。」

「あ~あったなぁ」

「懐かしいわね~」

「夕張さんも経験あります?」

「もちろんよ。私の時は男の子のグループに混じってやってたなあ」

「ウチもそうや」

 黒潮が手を挙げて応える。

「最初は男の子が計画を立ててコソコソやってるんだけど、女子グループにバレて、結局一緒になって作るのよね」

「絶対に秘密だぞ!とか言っておいて、ドンドン広まっちゃうんですよね」

「そうそう!懐かしいわ~」

 夕張が遠くを見つめるような瞳を天井へ向ける。

「でも……あの頃は、本当に自分が基地で働いたりする事になるなんて、思いもしなかったなあ」

 いつ終わるとも知れない、深海棲艦との戦いの日々。いつどうなってもおかしくない、死と隣り合わせの生活。

 今所属している基地は前線からは遠く、夕張は激戦区と呼べる戦場とは、とんとご無沙汰である。だが、今この時にも戦いを繰り広げている者はおり、日々体に傷を刻んでいる。夕張達もそれとは無縁ではない。命令が下されれば、過酷な環境に身を投じ、命を懸けて戦わなければならないのだ。

 夕張の脳裏に、そんな思いがよぎる。いつの間にか彼女の表情は、真剣な面持ちになっていた。

「夕張さん……」

 陽炎の不安げな声に、ふと我にかえる夕張。

「って、辛気臭くなっちゃったね、アハハハ。でも自分で選んだ道なんだから、しっかりしなきゃ!」

 夕張はスッと立ち上がると、握り拳を作り右腕をグッと天へ向け突き上げる。

「我が選択に一片の悔いなし!……ってね。」

「……何ですかそれ?」

「えっ?」

 得意気な表情の夕張とは正反対に、陽炎と黒潮はポカンとした表情を浮かべている。

「あ、え~っと知らない?結構有名なセリフなんだけど」

「う~ん……黒潮知ってる?」

「いや、わからへん」

 陽炎と黒潮は小首を傾げる。

「あ、はははは。ま、まあ気にしなくていいよ、うん」

(これがジェネレーションギャップってものなのね……そんなに歳は離れてないと思うんだけどなあ)

 そんな事を思いつつ、ほのかに染めた頬を、指でポリポリとかく夕張。

 と、その時、窓の外で白い光が瞬き、少し遅れてバリバリと激しい音。

 山小屋のすぐ近くで落雷があったようである。三人の艦娘は、その衝撃に体をビクッと震わせた。

「結構近かったみたいね」

「おお、天が震えておる……」

「ビックリしたわあ。この辺に落ちたんかな?」

 膝を抱えて座っていた黒潮は、立ち上がると窓の方へ近づいていった。そして窓辺に立ち、外の様子を窺い始める。次の瞬間、再び雷鳴が響き渡った。

 閃光は室内をほんの一瞬真っ白に染め上げ、爆音の衝撃が周囲の空気を震わせ、建物をも軋ませる。

 先程とは比べ物にならない程の落雷の激しさに、夕張は思わず身震いをした。

「さっきより近いわね……」

「すぐ近くに落ちたみたいですね」

 言うと陽炎は、黒潮の方へと視線を向ける。すると彼女は小刻みに体を震わせていた。

 黒潮が落雷の衝撃に驚いているのだろう、と思った陽炎は

「大丈夫よ、そんなに怖がんなくて。昔やった嵐の中での航行演習の時の落雷に比べたら、大したことないわよ。それに今は部屋の中にいるんだから、こんなのへっちゃらよ、へっちゃら」

 と笑い混じりに声をかける。黒潮の不安と恐怖を紛らわせようとする彼女なりの配慮だった。

 すると窓の外へ顔を向けていた黒潮が、ゆっくりと陽炎の方へと振り返りはじめる。

 体は外の方へ向けたまま、首だけをゆっくりと動かしながら。

 その目は大きく見開かれ、口を何か言いたげにパクパクと動かしている。外を指さした右手は、ガクガクと小刻みに震えている。

「あ……ああ……」

「ちょっと、そのリアクションはオーバー過ぎるんじゃない?あんた、そんなに雷苦手だったっけ?」

 陽炎の問いかけに、黒潮は首をフルフルと横に振る。そして唾をゴクリと飲み込み、絞り出すように声を出す。

「……ちゃうねん。か、か、か」

「か……蚊?」

「か、怪物や!怪物がおったんや!外に!」

「怪物ぅ?」

 陽炎は腰を上げると黒潮の隣に向かい、外を覗きこむ。目を凝らして遠くを見つめ、左右にも注意深く目を向ける。

「何もいないじゃない。何かの見間違いじゃないの?」

「そないな事無い!ウチはハッキリ見たんや!稲光に照らされたごっつい怪物の影!」

 両手で大きな円を描くようなジェスチャーをしながら、激しい剣幕で黒潮は叫ぶ。

 その剣幕に陽炎はたじろぎつつも

「わかった、わかったから落ち着いて」

 と、両手を前に突き出し黒潮をなだめる。

 壁際に座っていた夕張も、尋常ではない黒潮の様子が気になり、彼女らの元へ近づこうとした。

 が、そんな夕張の耳に、奇妙な音が聞こえてきた。

「ん?」

 夕張は耳をすましながら周囲を見回す。聞こえてくるのは吹き荒れる風と、雨の音だけである。

 気のせいか、と思い直し夕張は立ち上がる。

 ……バシャリ……バシャリ

 聞こえてきた音に、ビクリと体を震わせた夕張は、背にしていた壁の方へ素早く振り返った。

 雨の音に混じって聞こえてきた謎の音。それは壁の向こうから響いてきているようである。

 不規則にたてられるその音に、意識を集中する夕張。

(何かの……足音?)

ガリッ!……ガリッ!

(!?)

 目の前の壁、その向こうから異音がする。それは何者かが爪を立てて、木を引っ掻く音の様だった。

 夕張に緊張が走る。その音は暫くの後に収まり、代わって水たまりを踏み歩くような音がする。が、それもすぐに聞こえなくなる。辺りには再び、風雨の音のみが響き渡る。

「……陽炎、黒潮、二人とも、こっちに来て」

「え?」

 言われた陽炎が小首を傾げる。

「早く!」

「は、はい」

 黒潮を連れて、陽炎は夕張の傍へと駆け寄る。

「どうかしたんですか夕張さん?」

「黒潮の言ってた事、本当かもしれない」

「え?」

「ホンマか夕張はん!?」

「とは言っても、正体不明の怪物がいるなんて、私もちょっと信じにくい。でも何かがいるのは、確かな気がする」

「……」

「ほら、そんな顔しないで。とにかく今は警戒しましょう」

 複雑な表情をしている黒潮に笑いかけると、夕張は改めて周囲を見渡した。

 室内には幾つかの家財道具が、ほったらかしにされている。元々軽い休息のための小屋だったようで、おいてある家財道具等は、普通の家のそれに比べ随分と少ない。夕張は万が一に備え、薪ストーブの傍に置いてあった火かき棒を手にする。武器として扱うには心もとないが、丸腰よりは幾分かマシというものであろう。

「ひゃぁ!」

 突然、陽炎が声をあげた。

「陽炎!何かあった!?」

「だ、大丈夫です。首筋に冷たい感触があったんで驚いたんですけど……」

 と、陽炎は天井に視線を向ける。夕張もそれを目で追う。すると天井の数か所から、雨漏りが発生しているのが見えた。どうやら彼女は、その水滴に驚き声を出してしまったらしい。

「もう、脅かさんといてや」

「へへへ、ごめんごめん」

 頭をポリポリとかく陽炎。その様子に夕張と陽炎が苦笑し、緊張した空気がほんの少し和らいだ。と思われたその時

 ドンッ!ドンッ!とドアの方から、何かを叩きつけるような音が響いてきた。三人は思わず息をのむ。

 夕張は陽炎と黒潮を保護するように一歩前に出ると、手にした火かき棒を両手で握り、構えをとる。

 なおもドアは音を立て続けている。どうやら何者かが、体当たりをしているようだった。繰り返される衝撃にドアが軋み、ミシミシと音をあげて歪んでいく。

 夕張の手にじっとりと汗がにじむ。手の震えを気力で押し止めながら、ドアの方をじっと見つめる。

 深海棲艦と勇ましく戦う艦娘と言えども、丸腰の状態では、その力は普通の女性と何ら変わりない。普段から体を鍛えているため、常人よりは強靭な肉体と体力を備えてはいるが、猛獣や武器を持った者を相手にするのは、流石に厳しいというもの。だが、それでも夕張は、自分より年下の娘達を守るために、勇気を奮い立たせていた。

(怪物でも何でも、やれるもんならやってみなさい!私がやっつけてやるんだから!)

 次の瞬間、衝撃に耐えきれなくなったドアが、メキメキと音を立てて砕け折れる。

 それと共に姿を現した異形のモノに、艦娘達は驚愕の声を上げた。

 

 

 

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